7. スライム狩り
ダンジョン内を歩いている雄太は、薄暗くて暗がりの箇所はあまり良く見えない筈なのに、何故か何処にスライムが居るのかという事が分かったり、あちこちでスライムが居る気配の様な感覚をピンポイントで察知できた。
あ、これってアレか?
もしかしてスキルの同族察知ってヤツか?
やはりグラトニーから得られたスキルは、最早スライムキラーと呼べる程スライムを狩るのに特化している様だった。
スライムの位置が分かった雄太は駆け足でスライムへと近付き、スライムの端へと手を触れて即座にコアを吸収し、スライムをゼリーへと変貌させた。
『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』
だからどんだけ種類やスキルがあんだよスライムって!?
雄太はまたしても新たに獲得した能力に驚愕し、最早訳が分からない状態になってしまっていた。
次は一体どんなスライムなんだ?
─────
橘花 雄太(25)
ユニークスキル:
【擬装】 (アクティブ)
-【収納】 (アクティブ)
-【スライムスーツ】 (アクティブ)LV 1
<スライムグラトニーベース>
・身体強化 (パッシブ)
・同属察知 (パッシブ)
・同属捕食 (パッシブ)
・スライムナイト:硬化変形 (パッシブ) 衝撃吸収 (パッシブ)
・スライムソルジャー:NEW
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・・・ソルジャーって
・・・スライムなのにソルジャーってどう言う事ぉ!?
何を持ってソルジャー定義なんだよ!
雄太はゲル状のスライムとソルジャーをどうにか結び付けようと考えていたのだが、幾ら考えても明確な答えが出せないと思いこれ以上深く考えるのを止めて、取り敢えずスライムソルジャーの詳細をポップアップさせた。
─────
【スライムソルジャー】
・斬撃変形 (パッシブ)
スーツへ短刀を追加
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「うわっ!?またスーツが!?」
スライムソルジャーのポップアップを確認したと同時に、雄太の尾骶骨のあたりがモゴモゴと動き出し、暫くすると腰の後ろへと鞘に収まった短刀が現れた。
「何じゃこりゃ・・・」
雄太が出現した腰の短刀を抜いてみると、柄から刃先迄が全て真っ黒なサバイバルナイフの様なものだった。
「今度は武器かよ・・・このスーツ、神かよ・・・」
雄太は抜いた短刀を暫く眺めていたが、スライムの気配を感知した事で我に帰り、短刀を鞘へと戻してスライムゼリーを拾って収納へと仕舞い込んだ。
そして少し離れた次のスライムへと向かって駆け出したのだが、自分の脚が速くなっている事に気付いた。
俺ってこんなに速く走れてたっけ?
あ、身体強化ってヤツかコレ?
スライムスーツを擬装している雄太は、擬装をしていない時とは違い、まるで別人の様な俊敏な動きができていた。
そんなこんなで次のスライムを触って吸収し、ゼリーへと変貌させた。
『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』
ホント何種類いんだよ!?
スライムの種類の多さに少し慣れて来た雄太は、スライムを吸収し、声が聞こえた瞬間にサッとスキルボードを出現させた。
─────
橘花 雄太(25)
ユニークスキル:
【擬装】 (アクティブ)
-【収納】 (アクティブ)
-【スライムスーツ】 (アクティブ)LV 1
<スライムグラトニーベース>
・身体強化 (パッシブ)
・同属察知 (パッシブ)
・同属捕食 (パッシブ)
・スライムナイト:硬化変形 (パッシブ) 衝撃吸収 (パッシブ)
・スライムソルジャー:斬撃変形 (パッシブ)
・スライムメイジ:NEW
─────
「メイジキタぁぁぁぁー!!魔法要素キタぁぁぁぁー!!」
メイジって事はアレか!
やっぱ、魔法的なヤツが使える様になるのか!!
雄太はメイジと言う表示にウキウキしながら概要をポップアップさせた。
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【スライムメイジ】
・膨張変形 (アクティブ)
スーツを膨張させる事ができる。
スライムを捕食すればする程膨張を拡大させる事ができる。
─────
え?
どう言う事?
膨張って何?
って言うか、これってアクティブスキルなの?
メイジは?
魔法は?
俺の喜びを返せぇぇぇぇ!!
メイジの癖に魔法じゃねぇのかよ!!
今迄はスーツに何かしらが現れていたパッシブスキルだったのが、今回は任意で出現させるアクティブスキルであり、しかもスライムメイジと表記があったのに全然メイジらしいスキルじゃない事に雄太はガッカリし、期待を裏切られた事に対して怒りが湧いてきた。
こんなん、一体どうすればいいんだよっ!
雄太は怒りに任せて地面にあるスライムゼリーを拾い上げようと腕を伸ばすと、伸ばした腕に何か違和感があった。
「!?」
雄太はスライムゼリーを収納へと仕舞い、自身の腕を不思議そうに眺めているとスキルについての詳細が分かった。
「・・・マジかよ・・・」
雄太が呟きながら自身の腕を伸びる様に意識しながら前へと翳してみると、スーツから赤黒い半透明で、まるでゼリーの様な何かが腕の形を作りながら伸びていった。
膨張変形ってこう言う事か・・・
スゲぇーな・・・
って言うか、やっぱスライム特有のスキルだなこりゃ・・・
雄太は何度か腕を伸ばしている内にある事を思いついた。
腕増やせるんじゃねこれ?
雄太は第3の腕を出現させる様に背中へと集中すると、背中から触手の様な腕が1本伸びて雄太の前へと現れた。
伸びた腕は少しコツがいるが、雄太が思った通りに自在に動かせる様で、試しにもう一本腕を追加すると、途端に膨張のコントロールを失った。
難しいなこれ・・・
今のところ動かせられるのは腕1本が限界か?
これから要練習だなこれは。
膨張変形は雄太が思っていた以上に使えそうなスキルであり、多くの膨張変形を同時に使用するには要練習必須なスキルだった。
頑張って千本とか動かせる様になりたいな!
ダンジョンに良い印象がなかった雄太だが、スキルを覚えた事で楽しくなり、まるでオモチャを与えられた子供の様に目をキラキラとさせてやる気が出てきた。
「よし!次いくか!」
やる気が出てきた雄太は、次のスライムを狩る為に、スライムの気配がする方向へと足を向けた。
次のスライムへと向かいながら、練習の為に背中から腕を1本出しながら歩いている雄太は、眼前でウニウニ空中を蠢いている腕を見てフと思った。
って言うか、この膨張の腕でスライムを触ったらどうなるんだ?
俺が触るのと同じ様に吸収できるのか?
丁度、次のスライムが目視できた辺りで雄太は膨張の腕を見ながら立ち止まった。
ちょっとやってみるか?
雄太は眼前に見えるスライムへと膨張の腕を伸ばして触る様にイメージしながら身体へと力を入れた。
膨張の腕がイメージした通りにスライムの端へと触れると、雄太がスライムを触れた時と同じ様にコアを吸収し出し、スライムをゼリーの塊へと変えた。
「おぉぉぉ!」
コレで触ってもイケるんだな!?
って言うか、スキルを使ってスライムを触わったらさっきの鉄パイプやペットボトルみたいに溶けないんだな!?
・・・って事は・・・
雄太は膨張の腕を見つめて集中し、腕の先にある手を広げたり閉じたりしながら考え込んだ。
次に、膨張の腕を操って雄太の腰にある鞘から短刀を抜く様に動かすと、腕は問題なく鞘から短刀抜き出し、雄太の眼前へと真っ黒な短刀を持ってきた。
この腕は物への干渉もできるのか?
雄太は徐に自身の手を広げ、掌の上へと収納からスライムゼリーを1つ取り出した。
膨張の腕の中にある短刀を仕舞い、そして、雄太の掌の上にあるスライムゼリーをつかむ様に膨張の腕を操ると、腕は問題なくスライムゼリーを摘み上げた。
試せる物が今はコレしかないけど、物への干渉は問題なくできる様だな・・・
そんじゃ、こんなのもできるのか?
雄太は膨張の腕が摘み上げているスライムゼリーを収納へと仕舞う様に意識すると、腕からスライムゼリーが消え、収納のイベントリへと移動した。
「マジかよ!?」
コレもできるのかよ!?
なにこの便利スキル!?
ヤバくね!?
見た目はあれだけどマジで自分の腕と同じじゃん!!
って事は──
雄太は高揚する気持ちを抑えながら近くにいるスライムへと膨張の腕を伸ばし、手の面積を拡大させながら捕獲する様にスライムを握り潰した。
すると、膨張の握り拳の中に居たスライムは、即座にコアを吸収され、膨張の拳の中にはスライムゼリーだけがプカプカと膨張に包まれて漂う様に残った。
次に、拳の中に残ったスライムゼリーを収納へと仕舞うと、膨張の拳の中からゼリーが消え、雄太の収納のイベントリへと移動した。
「──できたよ・・・」
できちゃったよ!?
マジでスライムキラーだよコレ!?
って言うか、コレを使えばスライムを狩る効率が凄い事になりそうだな・・・
ちょっと試してみるか。
膨張の腕を併用してスライム狩りを試す事にした雄太は、自身で7匹、膨張の腕で12匹と合計19匹程スライムを吸収していった。
自身でスライムを吸収した場合は、まず、スライムへと手や足で触れてコアを吸収し、その後に残ったゼリーを拾うと言う動作があった為、膨張の腕を使ってスライムを握り潰し、コアとゼリーを一緒に吸収、収納した方が何かと効率が良かった。
しかし、19匹もスライムを狩ったのに、今までの様にポンポンとスキルを覚える事がなかった。
俺がスライムを触るより、腕を使ってスライムを狩った方が効率が良いな。
ってか、スキル増えないな・・・
狩っている感覚的にはソルジャーとかナイトとかだったから、同種を狩ってもこれ以上はスキルは覚えないのかもな・・・