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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
50/290

50. ピュアVSアーススライム 2

スライムを殲滅しながら最奥へと向かっていく日向達は、スライムからドロップされたコアやゼリーには目もくれずに最奥へと向かって走り続けた。


今回の調査には、前回、アーススライムと対峙した安岡を初めとした日向のパーティメンバーの後衛の5人が参加しており、今回の調査メンバーの前衛は、指揮を取る日向と前衛と中衛ができる笹川の2人のみで、その他のメンバーはアーススライムに合わせて後衛がメインの構成であった。


笹川が参加した理由は、遠距離攻撃以外でのアーススライムの討伐検証をする為であり、派遣されてきた3人のピュアの中でランクは下から数えた方が早いが、唯一のランカーである。


笹川は、見た目の細さに対してまるで釣り合っていない様な自身の身長程もある大剣を一本、背中へと背負っており、重そうな大剣を背負いながらも息一つ乱さずにかなりの速度がある進行についてきているのを見た日向は、流石と言う言葉しか思い浮かばなかった。


一方で湯屋は、余程自分の能力に自身があるのか、最弱ダンジョンと言う事でナメてるのか、手ぶらで軽装という巫山戯た格好であり、安田は杖にローブと言う如何にもザ・後衛と言う魔法使いじみた格好をしていた。


ダンジョンに沸くスライムを殲滅しながら最奥へと進む事1時間、日向達はアーススライムが居る最奥の広場の前へと到着した。


アーススライム討伐前の為に各自で最終確認を兼ねた休息を取る事になり、現在各々が好きに休息をとっている。



「皆んな。 休んだままで聞いてくれ。 これより3分後にアーススライムの討伐を始める。 先ずは標的を起こす事から始めるのだが、湯屋君、君に頼めるかい?」



日向に名指しされた湯屋は、スポーツドリンクを片手に呆けた顔で自身の顔を指差した。



「え? 僕?」



「あぁ、この中で遠距離、火力持ちの君に一番槍をお願いしたい。 前回の教訓もあってか、標的へと接近して近距離で標的を叩き起こすよりは遠距離攻撃で標的を起こす方がベターだ。 その為、君の火力のある能力で遠距離から標的を起こしてくれ。 標的がいる場所は私がペイントボールを投げてマーキングするから、そこへと向かって遠距離からの攻撃を頼む」



日向に名指しされた湯屋は、ここまで来るまでに相手をしていたスライムと言う雑魚に対して大分飽きていたのか、「マジで!?いいの!?」と嬉しそうに顔を輝かせていた。



「では、そろそろ始めるぞ。 各自、湯屋君が標的を起こすまでは、離れた場所から周囲を警戒しつつ、私がマーキングした箇所から目を離さない様に。 迂闊に標的の攻撃範囲に入ってヤツの触手に捕まってしまった場合は命は無いと思え! これよりアーススライムと接敵する! 各自気を引き締める様に!」



日向の声と共に、メンバー達は日向と湯屋を中心にして各自が最奥の広場の壁に沿りながら散開し始める。



「それじゃいくぞ! 【身体強化】! フンっ!」



日向は、スキルを発動させて手にしていた黄色い蛍光色のペイントボールを、アーススライムが居る位置へと向かって投げつけた。


日向が投げたペイントボールは、ほぼアーススライムが居る位置へと弧を描きながら向かって行き、地面へと落ちると同時にボールが割れて黄色い蛍光塗料をブチ撒けた。



「湯屋君!」


「あいあいさー! そんじゃ、一発いっちゃうよー!!」



日向が湯屋へと合図をすると、手ぶらの湯屋は、徐に自身の左腕を何かを掴む様な形で手を広げて眼前へと伸ばし、そしてギュウっと虚空を掴む様に手を握り込む。



「顕現せよ!  【ガーンディーヴァ】!」



湯屋が叫ぶと、湯屋の左手には弦が赤く発光し、藤頭に二股の槍先の様なものがついているくすんだ金色の弓が現れ、湯屋が右手で赤く発光している弦を顔の横へとゆっくりと引っ張っていくと、弦が引っ張られるのと同じ速度で弦へと赤く光る矢が発現した。


どこからともなく現れた弓と矢を手にしている湯屋の姿を見たユーザー達は、一同が驚きの表情を見せており、その能力を知っていた日向は、横目でその光景を捉えるだけで眼前のアーススライムが居る箇所へと視線を固定させていた。



「飛べ! 【アグニ】!」




シッ──    


──ィィィイイイイン




今までの巫山戯た態度とは打って変わった獲物を射殺すかの様な眼差しの湯屋から射放たれた赤く光る矢は、薄暗いダンジョン内で赤く光る軌跡を空中へと残しながら鋭角に黄色い蛍光塗料がブチ撒けられている地面へと深々と突き刺さる。




ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!



ブォォォォォォォォォォォォ!!




鋭角に地面へと突き刺さった赤い矢は、日向がマーキングした箇所へと着弾と同時に衝撃波と爆炎を生み出しながら業火の様に燃え盛った。




・・・・・・




眼前で炎が竜巻の様に渦巻いている光景を見ているユーザー達は、全員が目を見開いて驚愕しており、笹川は何かが気に入ったのか目をキラキラと輝かせ、逆に安田は薄暗かったダンジョンが急に明るくなった事で半目にして右手で顔を遮りながら燃え盛る炎をウザそうにしていた。



「フフン」



湯屋は左手に弓を持ち右手で前髪をかき分けながら、火柱を立てて渦を巻いて燃え盛っている炎を見ようともせずに得意げに鼻で笑った。



「・・・流石、湯屋君・・・ いつ見ても凄いとしか言いようがないな・・・」



日向は湯屋が発現させた炎を見つめ、目を細めながらもアーススライムが居る位置から目を逸らす事はなく視線を固定し続ける。





ボフンっ!





日向達が炎へと視線を向けていると、炎が一際大きくなって弾け、そこから無数の岩でできたかの様な触手が炎をかき消しながら激しくグニャグニャと暴れ、蠢いて現れた。




!?




「・・・ヤツだ・・・  起きたぞ」



今まで湯屋の能力の威力に驚いていた安岡が、先日の光景を思い出したかの様に畏怖が混ざっている声でボソリと呟いた。


暴れる触手によって燃え盛る炎をかき消したアーススライムは、見た目は無傷ながらも湯屋が放った炎の矢に対して、まるで怒りを表すかの様に岩と岩が打ち合う様な音を立てながら触手同士を激しくブツけていた。



「デカっ!? って言うか、僕の炎消されちゃったよ! 凄いね!」


「・・・あいつ、  絶対怒ってる、 よね?」



自身が放った炎を触手によって難なくかき消された湯屋は、何故か楽しそうにアーススライムを見つめ、激しい音をたてながら触手同士を打ち合っているアーススライムの姿を見た安田は、場の空気を読まずにユーザー達を恐怖へと誘う言葉を呟く。


安田の呟きが聞こえたユーザー達は、怒り起き上がっているアーススライムから視線を外す事ができず、顔に恐怖を貼り付けながらゴクリと唾を飲み込んだ。



「結衣ちゃん! なんてこと言うの!? みんな怖がっているじゃない! もうちょっと空気読んで!」



そんな中、笹川は怒り狂っているアーススライムの姿を見てもまだまだ余裕なのか、「めっ!」と言いながらアーススライムから視線を外して安田へと人差し指を立てながら説教を始める。



「些か穏やかな起こし方ではないがこうして標的も起きた。 これよりアーススライム討伐を行う! 各自攻撃用意!」



恐怖を顔に貼り付けて棒立ちしていたユーザー達は、日向から発せられた攻撃用意と言う言葉に対して反応し、各自が我にかえって心を落ち着けてアーススライムへと向けて手を伸ばす。



「合図が出るまではピュアの3人は待機! 先ずは前回のおさらいだ! 火属性攻撃で行くぞ!」



そして、日向は、まるで遠くに居るアーススライムを握り潰すかの様に伸ばした掌をギュっと握る。



「攻撃開始!」



日向の合図によって、ユーザー達はアーススライムへと向けて火属性魔法を一斉に放った。




ファイアアロー!!




ユーザー達が放ったファイアアローは、一直線に怒れるアーススライムへと向けて放たれたが、アーススライムは既に臨戦態勢であり、向かって来る5本の炎の矢へと自身の触手をブツけて次々と迎撃した。




ボガンっ!


バガンっ!


ドゴンっ!


ズガンっ!


ドガンっ!



ファイアアローへと触れた触手は、先端を爆散させたり途中から千切れたりしてはいるが、本体のアーススライムへは1本として届いてはおらず、しかし、火属性を嫌っているのか、更に触手をガチガチと激しく打ち付けたり、岩の様に見える本体の体表をまるで地震が起きた地面のごとくグニャグニャボコボコとウネらせ始めた。



「思った通りだ! 標的は火属性を嫌っている! 各自5発連続で撃った後、一度手を止めろ!」



了解!




ユーザー達は日向の指示の通り、各自続けて連続して5本のファイアアローをアーススライムへと向けて発射した。




ファイアアロー!



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドゴ〜ン!




5人のユーザーから連続して放たれたファイアアローは、数本が触手を掻い潜ってアーススライムへと着弾し、アーススライムの身体を貫通させた。


身体を火属性の魔法で貫通されたアーススライムは、もがく様に身体をうねらせ、触手を手当たり次第に壁や地面へと叩きつけて怒りを露にさせていた。



「前回よりはマシだが、ユーザーの攻撃ではやはり火力が足りないか・・・」



魔法を連続して放ったユーザー達は、少し息が荒れ始めており、アーススライムの苦手属性が火だと言う事が分かったとしても、5人の絶対的な火力が足りずにアーススライムへと軽傷を負わせただけにとどまっていた。



「仕方ない。 安田君、頼めるか?」



日向は壁際でしゃがみながら眠そうな眼でボーっとアーススライムを見ている黒髪の少女、安田へと声をかけた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 日々更新ありがとうございます! 夜に新話を読むのが日々の楽しみです。 ピュアの人達、1層は勝てるかもしれませんが、2層・3層は無理っぽそうですね〜。 個人的には、1層も無理であって欲し…
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