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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
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5. 未知との遭遇

「は?」


俺は突然の声に訳が分からず、声の出所を探る様に自身の頭上を見上げて声を上げてしまった。


「え?どう言う事?」


突然聞こえてきた声に疑問だらけで立ち竦んでいると、激しい頭痛と共に大量の何かの情報が頭の中をかき回している様な感覚に陥って視界がグラグラしだし、更に酷くなった頭痛に耐える様に、俺は両手で頭を押さえながらその場で蹲ってしまった。


「がっ!」


一瞬でも気を抜けばスっと意識が飛びそうになる感覚を我慢し、俺は浅く早い呼吸をしながら頭痛に耐えた。


「うぐっ!フッフッフッフッフッフ───」


俺のTシャツは、滝の様に吹き出している冷たい変な汗によってびっしょりと濡れており、身体が段々と冷たくなって手足の感覚が無くなっていく様な感覚と共に、キーンと言う耳鳴り迄もが聞こえて来た。


そんな極限とも思える様な状態で頭痛を我慢する事数分、今までの激しい頭痛が嘘の様に違和感すらも残さず消えて無くなり、まるで身体が一度リセットされて再起動から復帰した様な感覚と共に思考が段々とハッキリしだし、思考と身体の感覚が戻ってからは、何故か頭痛が起こる前より頭も身体もスッキリしていた。



声と言い、頭痛と言い、なんだったんだ今のは・・・


しかも何故か頭と身体がスッキリして、視界が広くなった感じさえするぞ・・・


って言うかスキルって言ってたけどなん──!?



俺が頭の中で考えを整理している間に、向こう側が透けて見える板の様な何かが俺の眼前の空中に浮かんでいた。


俺が視界を動かすとソレも一緒に動き、体を反転させて振り向いたり膝を曲げて屈んだりしても俺の視界にピッタリと貼り付いており、動いた事でブレる事も消える事もなかった。


空中に浮いている薄い板は、まるでARの様な感覚で俺の目に貼り付いている様な感じだ。


板には何か文字が書いており、そこにはこう記載があった。




─────

橘花 雄太(25)


ユニークスキル:

【擬装】 (アクティブ) NEW

─────




「な!?なんだこりゃ!?」


そこには俺の名前と年齢?が記載され、名前の下にはユニークスキルと言う欄があり、その中に【擬装】とあった。


俺は益々訳が分からず、「スキルの擬装って一体何だ?」って思った途端に、【擬装】の横へと小さな画面がポップアップされた。




─────

【擬装】 (アクティブ)

自身で倒したモンスターコアを指輪で吸収し、倒したモンスターの特徴の装備を発現させる。

─────




え?


どう言う事?


指輪?


何ソレ?



俺は、反射的にスキルの横に注釈的に出てきた小さなポップアップに記載されている文を読み、文の意味が分からずに自身の両手を広げて記載にあった指輪を確認する様に指へと視線を移した。


すると俺の左手の中指には、いつの間にか見覚えのない真っ白な指輪が嵌っていた。



・・・指輪だ


・・・もしかしてこの文にある指輪ってコレの事か?



俺は自分の左手をクルクルと表にしたり裏にしたりしながら指に嵌っている指輪を見た。


指輪は真っ白で何の装飾もなく、俺の指にこれでもかと言うくらいピッタリと嵌っており、指輪を外そうとしても、まるで自分の身体の一部の様に動かす事も外す事も出来なかった。


しかも、指輪を触ると、指輪を透過して、直接自身の指に触れた感触を感じ、ボリボリと指輪をかくと、指輪の下にある指には皮膚を削られた感触があった。


まるで指に立体的に描かれた指輪の様な感じだ。


取り敢えず、文を読む限りでは、俺がモンスターを倒して、この指輪にモンスターコアってのを吸収させれば、モンスターの特徴の装備?ってのを発現させる事ができるらしい。


これからの装備で悩んでいた俺には嬉しいスキルだな。


でも、その装備を得るにも、先ずはモンスターを倒さなくてはならない。


ダンジョンへ入ると同時に何故かいきなりスキルを得る事ができて、装備も何とかなりそうな感じだし、なんか運が回ってきた感じかコリャ。



取り敢えず、先ずはモンスターを倒してこのスキルを試してみないとな。



雄太は思い掛けない幸先の良いスタートに少しテンションが上がってきた。


テンションの上がっている雄太は、地面から鉄パイプを拾い、後ろポケットからビニール袋を取り出して左手首へと謎液体が入っている袋をかけた。



取り敢えずコレで何処までやれるか試してみるか。


ヤバくなったら謎液体をぶっ掛けて即逃げって感じで。



雄太は周囲を警戒しながら通路の先へと歩き出した。


しかし、暫く通路に沿って歩いてはいるのだが、まだまだ入り口付近な為か一向にモンスターを見かけない。



おばちゃんや見張りの人が言うには、此処はスライムしか居ない最弱なダンジョンって事だけど、そのスライムすら全く見当たらないんだが、どう言う事だコレは?



雄太が歩いて来た後ろを振り返ると、入り口の光はすでに見えなくなっており、それでもやっぱりスライムは見当たらなかった。


ソレでも雄太は、薄暗い中で気付かずにスライムを踏んでしまう事や、天井からいきなり落ちて来ると言う事態を恐れて、しっかりと周囲を警戒しながら通路を進んでいる。


壁を見たり足元を見たり、天井を見たりと警戒しながら進んでいると、前方の地面で何かがモゾモゾと動いているのが見えた。


「──!?」


雄太は警戒を強めて歩くスピードを落とし、鉄パイプの先を向けながらゆっくりと前方で動く物体へと近づいた。


薄暗くてハッキリと見えなかった動く物体は、近付くにつれてハッキリと目視出来る様になり、そこには赤黒いゲル状の粘液質の物体が、同じく青いゲル状の粘液質の物体と混ざり合っていた。



アレがスライムか。


って言うか色違いのが2種類いるのかアレは?



雄太が遠目からスライムの様子を見ていると、赤黒いスライムは、まるで青いスライムを吸収?捕食している様に見えた。



何だありゃ?


共喰いでもしてんのか?



青いスライムは赤黒いスライムによってどんどん青い部分の面積を侵食されており、終いには赤黒いスライムが青いスライムの中にあった丸い石みたいなのを自身の中へと包み込んだ。


包み込まれた青い石は、赤黒いスライムの中でシュワシュワと気泡を上げながら融けていき、まるで赤黒いスライムの中で消化されている様に見えた。



マジで喰ってんのかよアレ・・・


スライムってカニバリズムなのか?



青いスライムを吸収し終えた赤黒いスライムは、次の獲物を求めるかの様にズルズルビチャビチャと音を立てながら彷徨い出した。


雄太は赤黒いスライムの後を追って遠目から観察していると、赤黒いスライムはどんどん青いスライムを吸収?捕食していき、捕食する毎に少しずつ体積が増えている様にも見えた。


また、赤黒いスライムの中にも、青いスライムと同じ様に拳大の丸い石みたいなのがあり、雄太はアレがおばちゃんが言っていたスライムのコアと言う事に気が付いた。



アレを壊せばスライムは倒せるって事だな。


って言うかこの鉄パイプでアレを壊せるのか?


取り敢えず一度試してみないと分からないな・・・


タイミングをみてコアを突いてみるか・・・



雄太は赤黒いスライムの後を追いながら、コアを突くタイミングを見計らう為に赤黒いスライムの動きを観察する事にした。


そして暫く観察していて分かったのは、スライムのコアはゲル状の中でゆっくりではあるが不規則に動いており、赤黒いスライムが青いスライムのコアを取り込んでシュワシュワと溶かしている時だけは、赤黒いスライムのコアがピタッと静止すると言う事が分かった。



タイミング的にはあいつが他のスライムのコアを吸収している時だな。


って言うか、あいつ、このまま全てのスライムを吸収する気か?


青いスライムを見つけ次第吸収しまくってるぞ・・・



観察していた事でコアを突くタイミングは分かったのだが、赤黒いスライムは止まる事なく青いスライムを見つけ次第次から次へと吸収しまくっていた。



ヤバくないかアレ・・・


マジで異常なんじゃね?



赤黒いスライムの異常さに少し気が引けてきた雄太だが、赤黒いスライムが次に青いスライムを吸収する時に動く事にした。


そうこうしている内に、赤黒いスライムが次の青いスライムを見つけて動き出した。


赤黒いスライムは今までの通り、青いスライムへと接触して端からジワジワと吸収し出し、ゲル状の身体を吸収し終わると最後に残ったコアを吸収し出した。



今だ!



雄太は赤黒いスライムがコアをシュワシュワと吸収し出したタイミングで、静止している赤黒いスライムのコアへと鉄パイプを突き立てた。


コアへと真っ直ぐ突き立てられた鉄パイプは、赤黒いスライムのゲル状の表面へと触れると、ブニョんと言う感触と共に触れた端から鉄パイプをジューっと溶かしていき、コアまであと少しと言うところで雄太が思ってた以上に鉄パイプはコアへは届かなかった。


「クソ!」


雄太は悪態を吐きながら溶けた鉄パイプを手放し、即座にスライムから離れて逃げ出した。


雄太の攻撃によって赤黒いスライムは前方にいる青いスライムではなく雄太をロックオンし、追いかける様に動き出した。


今までズルズルと遅く動いていたスライムは、雄太に攻撃された事によって急に体積を広げたり縮めたりしながら雄太に追いつかんばかりのスピードで追いかけて来た。



マジかよ!?


あいつこんなに早く動けるのかよ!?


足止めできるか分からないが、取り敢えずコレでも喰らっとけ!



雄太は走りながら顔だけを後ろへと向けながら、手にしていたボトルが入っている袋を後ろへと置く様に放り投げた。


スライムは雄太が投げた袋へと俊敏に反応し、雄太を追いかけながら体面積を広げて袋を包み込む様に受け止めて、包み込み終わると同時に袋を体内で溶かし始めた。


しかし、鉄パイプを溶かした時の反応とは違い、袋を溶かし終えてケミカルな液体が入っているボトルを溶かし始めたスライムは、シューシューと白い煙を出しながら悶える様に伸びたり縮んだりと暴れ出した。


その異様な光景を後ろ目で見ていた雄太は、少し様子を見る為に距離を取って脚を止め、遠目からスライムが悶える様に暴れている様子を見る事にした。


煙を出しながら暴れていたスライムは、赤黒いゲル状の部分がまるで蒸発して消えていくかの様に段々と体積が小さくなっていき、終いにはコアだけを残して姿を消した。


「アレ?マジで?消えたぞあいつ・・・」


雄太はゆっくりと消えたスライムの方へと歩いていき、地面に転がっているコアを足で軽く蹴り、触れても問題が無いかを確かめた後、恐る恐る指先で摘む様に拾った。


すると拾ったコアが青く光りだし、一際光が激しくなったところで左手の指輪へと吸い込まれていった。




『【擬装】ヘト【スライムグラトニー】ガ追加サレマシタ。【スライム擬装】ヲ発動シマス』




指輪へとスライムのコアが全て吸い込まれたタイミングでまたしても頭上から声が聞こえて来た。


「は?」


声が聞こえたと同時に指輪が赤黒く光りだし、今まで真っ白だった指輪に赤黒い宝石の様なモノが出現した。


すると再度指輪が赤黒く光りだし、雄太の身体が光りに包まれた。


「おいおいおいおいおいぃぃぃ!? どうなってんだ一体ぃぃぃ!?」


自身を包む赤黒い光が一際激しくなった事で雄太は咄嗟に腕で顔を隠す様にしながら目を瞑ってしまったが、光は直ぐに収まり、雄太はゆっくりと腕を下ろしながら目を開けた。


「!?」


目を開けた雄太の目に映ったものは、自身の腕や指先がまるでさっきのスライムの様に赤黒くなっており、目視できる範囲で自身の身体を確認してみると、雄太の身体はまるで赤黒い全身タイツの様なモノに首から上を残して包まれていた。


「・・・・・・何だこりゃ・・・」



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