47. VS小さな太陽
小さな太陽から伸びてくる多くの触手は、その先に触れた地面や壁を容赦無く爆破しながら破壊しており、雄太達は触手の先には触らない様に全力で躱し続けていた。
炎の触手を躱しながら、吸収する為の糸口を探す様に炎の触手や小さい太陽を観察していた雄太は、炎の触手についてある事に気付く。
炎の触手の先端に触れた壁や地面は爆発するかの様に弾けていたが、先端ではなく炎の触手の側面に触れた壁や地面は爆発している傾向が全く見られなかったのであった。
試してみるか・・・
雄太は背中の羽から1本の赤腕を伸ばし、炎の触手を躱すと同時に、赤腕で炎の触手の側面へと触れる。
すると、側面から雄太の赤腕によって触れられた炎の触手は、赤腕を爆破する事なくその身を赤腕へと吸収された。
!?
爆発がない!?
数度の同じ検証により、炎の触手を側面から触れれば吸収する事ができると分かった雄太は、迫ってくる無数の炎の触手を全力で躱し続けるのではなく、小さい太陽へと顔を向け、炎の触手を迎え撃つ為に赤腕を展開させながら構えをとった。
雄太へと向かってくる無数の炎の触手は、雄太の背後から伸びて展開させている赤腕によって、先端をいなす様に側面から掴み取られ、尽く吸収されていく。
雄太はこの炎の触手の吸収方法を鬼人と大鬼へと共有し、鬼人と大鬼も同じ様に炎の触手の先端を避けつつ側面から触って吸収し始めた。
雄太達は炎の触手を吸収できる方法を見つけ、爆破の攻撃を受けずに問題なく吸収する事ができたのだが、小さい太陽は周りのマグマへと触手を伸ばし、赤々とドロドロに燃えたぎるマグマを吸収し始めた。
やっぱりこうなるよな・・・
雄太は、小さい太陽が周りのマグマを使って回復すると言う事を今までのガーディアンとの戦いの経験から薄っすらと感じており、案の定、小さな太陽は、自身の触手が減ってくると、四方へと触手を伸ばして周りのマグマを吸収し始めた。
このままマグマが尽きるまで我慢比べをするか?
それはそれでどんだけ時間がかかるんだろうな・・・
っていうかこの周りのマグマって無くなるのか?
雄太はこのまま小さな太陽を吸収し続けようと考えたのだが、マグマは尽きるのかどうかと言う事を考えるが、多分、コレは尽きる事はないだろうと結論付け、早々に根比べをするのをやめた。
そうなると、あの、マグマを吸収している触手が邪魔だな・・・
こうも周りが円形になっていちゃ、反対側の触手の対応もキツイな・・・
そうなると・・・
「鬼人! 大鬼! 解除!」
雄太は自身の中で何か結論つけたのか、唐突に鬼人と大鬼の発現を解除した。
『スライムスーツノLVガ上ガリマシタ』
『スライムスーツノLVガ上ガリマシタ』
よし!
スライムゴーレムの分を回収できたからスーツのレベルが上がった!
『エルダ! 今のスーツのレベルだと餓鬼は何体出せる?』
『ユータの半分を使っても60体はいけるわ!』
「よっし! そんじゃぁ! 餓鬼、発現んんんん!!」
雄太は、発現を解除して吸収した、鬼人と大鬼から得られたスライムゴーレムのストックによってスーツのレベルアップをし、60体へと発現させる量が増えた餓鬼を全て発現させた。
「おまえらぁぁ! あいつの触手を残らず喰らい尽くせぇぇ!! そんでもって喰らった分は全部俺に寄越せ!!」
雄太は60体の餓鬼へと指示を出すと、自身の背中の赤腕を10本へと減らし、代わりに先端を筒状にして小さな太陽へと先端を向けた。
『エルダ! スライム砲であいつの触手の先端を狙って撃て! どうせ爆発するなら先に爆発させてやる!』
『分かったわユータ! ユータの視線と餓鬼達の視線をディスプレイへとリンクさせて、360°、全方位から炎の触手の位置を突き止めるわ!』
『頼む! 俺はあいつの周りを走りまわって全ての触手をロックしていく!』
雄太は、小さな太陽から伸びている触手を視界へと入れながら小さな太陽の周りを時計回りに走りだし、発現させたスライム砲を炎の触手の先端へと向けて乱射し始めた。
雄太に乱射されて先端を先に爆破させた炎の触手は、後追いで餓鬼達が先端へと触れても直ぐに爆発する事はなく、小さな太陽は急ぐ様に爆発する先端を再度発現させるかの様に触手を激しく蠢めかせるが、爆発する先端を発現させる為には数十秒のリキャストタイムがある様で、先端はサッと一瞬で再生する様子はなかった。
しかし、雄太と餓鬼達は、再生の為の数十秒のリキャストタイムを待ってやる程トロくも甘くもなく、雄太が先端を狙撃した触手は餓鬼に群がられて数秒も経たない内にその身を吸収されていった。
マグマを吸収する為にマグマへと伸びている触手に関しては、雄太が触手の途中を狙撃して千切れさせてマグマとの接触を断ち、60体の餓鬼による炎の触手の吸収とスライム砲の乱射によって、小さな太陽はだんだんとその身に保っている炎の密度が緩くなり始めた。
だいぶ炎の密度が緩くなってきているな・・・
炎の触手を吸収する事約1時間、現在、雄太の視界に写っている小さな太陽は、初見とは違って太陽と呼べる程の炎の密度がある見た目ではなくなっており、まるで大きい火の玉の様な見た目へと姿を変貌させていた。
こいつ・・・
火や熱耐性さえもっていれば、今までで一番弱ぇんじゃねぇか?
雄太がこの3層のガーディアンである小さな太陽について考えていると、小さな太陽は炎の触手を出すのを止め、ギュッギュっと自身の密度を高めるかの様にその身を縮小させ始めた。
「!?」
ドギュン──
ドギュン──
ドギュン──
ドギュン──
・・・・
・・
・
まるで、雪を握って小さく固める様に密度を濃くしながら身体を縮小させていく小さな太陽を見た雄太は、何か嫌な予感を感じてすぐさま餓鬼達を解除し、眼前へと土龍を幾重にも重ねたドーム型の結界を作り出して展開させた。
土龍の結界が完成すると同時に、極限まで圧縮されて真っ黒な球の様になった小さな太陽へと、ビキビキと幾つもの赤く光り輝く亀裂が走り始めた。
来る!
雄太がそう感じたのと同時に、小さな太陽はその身を激しく爆破させた。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
小さな太陽の大爆発によって火山の上部は跡形も無く吹き飛び、上空にはキノコ雲が現れ、まるでこの場で核爆弾が爆発したかの様な凄まじい衝撃を伴った大爆発が起きた。
グゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?
大爆発の衝撃によって、雄太が発現させた土龍の結界はバキバキと衝撃を受けている外側から順に凄い速度で割れていき、結界の外装が壊れるたびに雄太は必死になって内側から土龍の結界を発現させて結界を修復して維持し続け、小さな太陽の大爆発はわずか数分の出来事ではあったが、必死になって土龍の結界を貼り続けていた雄太にとっては、永遠にも思える程に長い時間が経っている様に感じた。
数分後、雄太は衝撃が収まったのかどうかを土龍を通して外の状況をエルダに確認してもらい、ゆっくりと土龍の結界を解除し、結界の表へと姿を表した。
雄太が姿を表したそこは、火山の上部が綺麗サッパリと跡形もなくなっており、足元には歪な円状になった中腹だけが残されていた。
中腹の真ん中にはあの大爆発がなんともなかったかの様に無傷な下へと続く階段がある祠のみが残っており、火山は祠だけを残して周りに流れていたマグマも含めて火山の上部と周りの全てが吹き飛んでいた。
「・・・マジかよ・・・」
小さな太陽の大爆発により、雄太が立っている場所は3層を見下ろす様な形で眺めが良くなっており、爆発の影響があった場所はギザギザとした溶岩地帯ではなく黒い岩が削られてできたかの様な円状の更地へと変わっていた。
「自爆とかありかよ・・・」
そう。
3層のガーディアンは──
──最後の最後で盛大に自爆したのであった。
『エルダ。 あいつ盛大に自爆しやがったぞ・・・』
『まさか、自爆するとは予想外だね・・・ よっぽどユータに食べられるのが嫌だったんじゃないの? 2層のガーディアンなんて吸収されながら泣き叫んでいる様にも見えたし?』
『イヤイヤイヤ!? なにサラッと俺が鬼畜みたいな感じで言っているんだよ!?』
『イヤイヤイヤ!? どう見ても鬼畜でしょうが!? スライム種を見境なく食い尽くす害悪ね! 終いにはスライムをリサイクルして鬼にしちゃってるし! どんだけスライムの存在を否定してくれているのよ!?』
『否定してねぇし! って言うかそのままスライムを発現させて、なんの役に立つって言うんだよ!? って言うか、スキルと融合してなかったらオマエもマジで役にたってなかったからな!』
『キィィィィィィィィィ!? 何よそれ!? わたしは他のスライムとは違って役に立ってますぅ!』
『そんじゃ、スキルと融合してなかったらオマエはなんの役に立ってたんだ?』
『え〜っと、それは、その、アレよ! そうアレよアレ! アレでかなり役に立ってるわよ! わたしのアレは、それはもう、かなりなアレだしね!』
『もう、出だしが「え〜っと」って言っている時点でアウトだろ・・・ しかもアレって一体なんなんだよ? 何回アレアレ言ってんだよ・・・ スキルと融合してちっとは真面になったかと思ったが、オマエの素は相変わらず残念なままなんだな・・・』
雄太とエルダが不毛で無駄なやり取りをしていると、雄太のディスプレイへとスライムを表すアイコンが現れた。
『オイ? コレは一体どう言う事だ?』
『まさか、 ──ガーディアンがまだ生きているんじゃ・・・』
雄太の質問へと答えたエルダは、この状況の中でオヤクソクと言わんばかりに盛大にフラグをおっ立てた。
『「・・・・・・」』
さて、これからどう言う風に既成概念やテンプレを壊してやろうか・・・
面白い、続きが気になると言う方は何卒評価もしくはブクマを頂ければです!!
引き続きお楽しみ頂ければです!!




