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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
40/290

40. ウォータースライム スキル検証

雄太はスキル検証の為に右腕へと膨張を発現させた。



「そんじゃ、【槍棘】っと」



雄太が右腕にある膨張へと槍棘を発現させると、右腕の膨張の表面がグググっと持ち上がり、1本の透明で赤黒い棘が現れた。



「まんま湖のと同じだな・・・  って事はアイツみたいに複数同時に出せる筈だよな?」



雄太がそう意識しながら自身の腕に発現している棘へと視線を向けると、シュシュシュシュと行った様な感じで毬栗みたいな見た目へと変わった。



「おぉ!? 俺が思った通りに棘を出せるぞ!? って言うか何? このスキルの出しやすさ!? 今までと全然違う感じがするんだけど!? どう言う事!?」



雄太は、自身が発現させたスキルが、まるで雄太の思考を先に読み取って瞬時に、且つスムーズに発現された感覚に対して驚愕し、何故こうなったのかという事を考えた。



「・・・あ・・・  そう言うことか・・・」



雄太はエルダが雄太のスキルをコントロールするという人柱になった事を思い出し、これまでエルダと過ごしてきた日々を思い出しながら虚空へと向けて両手の平を合わせて目を瞑った。




死んでないからぁぁぁぁ!!




「ん?」



雄太は何処からかエルダの声が聞こえた気がした。


雄太がスムーズに膨張から出したり引っ込めたりしている槍棘は、一直線で発現させる事は可能だが、1回の動作で曲線で発現させる事はできなかった。


雄太はなんとかして直線以外で槍棘を出そうとして考えた結果、1回発現させた槍棘の先端から横や斜めへと向けて槍棘を発現させる事で槍棘の直線的な動きへと変化をつける事ができた。


自在にカクカクと鋭角に曲がりながら伸びていく槍棘は、まるで透明で赤黒い線で織り成された幾何学的模様が空間へと広がっていくかの様に神秘的で美しかった。



「・・・なにコレ・・・  マジでカッコいいんだけど・・・」



雄太は自分の右腕から伸びて立体的にカクカクと空中へと発現されている槍棘を見て、無謀にもアーティスティックな心が芽生えてしまった。



「芸術は、  線と線の繋がりなんだな・・・」




クッサ! マジでクッサ!! キッモ!!




「ハッ!?」



悪い癖が出てきてしまった雄太は、またしてもダークサイドへと向かい始めたが、何処からかエルダの声が聞こえた様な気がしたので、気持ちを改めながら膨張から槍棘を解除し、次のスキル検証へと移る為、右腕に発現させている膨張へと次のスキルを発現させた。



「【分離】!」



すると雄太の右腕を包み込んでいた膨張は、まるで皮膚が剥がれ落ちたかの様にズルリと地面へと向かって落ち、膨張が剥がれた箇所からは雄太の腕が露出した。



「!? え!? 膨張が取れ!? えぇぇ!?」



雄太は膨張が取れ落ちた事でかなりで焦りだし、地面へと落ちている膨張の塊と自身の右腕へと視線を行ったり来たりさせる。


雄太が視線を行ったり来たりさせていると、地面に落ちている膨張の塊が急にモゾモゾと動き出し、まるで雄太が最初に狩ったスライムグラトニーを思い起こさせた。



「動くのかコレ!? マジで!? これが動くとか、見たまんまスライムだろコレ!?」



雄太は分離のポップアップを再度出現させ、目を点にしながらスキルの概要を読む。



「もしかして・・・   俺がこれを自在に動かせられるのか!?」



分離によって雄太から離れて動く膨張は、スキルの概要に書いてある通り本当に雄太の意思で動かす事ができ、雄太が形を変える様に意識したところ、ウォータースライムの最後に現れた水の塊の様にグニャグニャっとその身体を変形させ始めた。


姿を変形させた分離は、人型や獣型、蟲型等の脚がある体型へと形成すると脚を使って歩く事ができ、スライムの様なゲル状とは違ってそれなりの速度で動いたり跳ねたりと身体を動かせる事ができた。


また、予め分離へと雄太が行動の指示を出せば、雄太が何も指示を出さなくても自動で勝手に動かせられる事ができた。



「何この便利スキル!! こんなの出現させられるなら、二手にも三手にも分かれて狩りし放題じゃねぇか! って言うか、ぶっちゃけ、もうエルダを発現させる意味無くね!?」





もっと頑張るから捨てないでぇぇぇぇぇぇぇ!!





雄太は分離の色々な使い方を考える事が止まらず想像がどんどん膨らみ、まるでおもちゃを与えられた子供の様に分離へと夢中になった。



「あれだな。 色々と想像が止まらないが、先ずはこれだな」



雄太がそう言うと目の前の膨張がグニャグニャと変形しだし、雄太の眼前には透明で赤黒いスライムの様なツルツル、プニプニの身体をした、ガリガリで下っ腹がポコンと出ている子供の様な可愛らしい風貌の膨張が現れた。



「本の中でしか見た事がないから大体こんなもんだろ。 この状態の分離は【餓鬼】と名付けよう。 今度から狩りの時はこいつらを沢山放ってスライムを捕食させることにしよう。 スライムに飢えている俺にはぴったりな感じだな!!」



雄太は自分が考えたアイディアに満足そうに笑みを浮かべ、無邪気に雄太の周りを走りまわっている膨張の頭を撫でる。


膨張はまるでその身に意思があるかの様に、目を細めてニコニコとしながら雄太に撫でられているのを気持ちよさそうに頭を差し出していた。



「そんじゃ次は、っと」



雄太は頭を撫でている餓鬼へと向かって無機物捕食で吸収させていた火をエンチャントすると、餓鬼はどんどんと体表の見た目を変えていき、その身を炎の様に燃え上がらせた。



「お? これもできるな?この状態の餓鬼は炎鬼? で、あとは土鬼、水鬼って感じか? 土鬼は、基本、俺のボディーガードで決定だな」



雄太は言葉を発しながらスライムダンジョン1層の地面をエンチャントさせた土鬼と水をエンチャントさせた水鬼を発現させる。



雄太によって発現された3体の小鬼は、まるで友達同士の様にじゃれ合っており、雄太はその光景を見て微笑ましくなり、久しぶりに和んだ感じがした。


雄太は次に、小鬼達の身体を大きくする様に指示したが、まるで分離させた膨張が足りなかったのか、身長は高いが、まるで針金の様な細くヒョロヒョロな風貌へとその身を変形させる。



「・・・これはアレか・・・  分離させた膨張が足りないって事なのか?」



そう考えた雄太がヒョロヒョロの炎鬼へと触って膨張を追加する様に意識したところ、炎鬼はみるみると膨れ上がっていき、雄太がイメージした通りのムッキムキな炎を纏った鬼へと姿を変えた。



「これはこれで、俺の膨張を結構持っていかれるぞ・・・ 鬼軍団を作るには、スライムの吸収が足りてない感じだな・・・ まぁ、とりあえず次の実験だ」



次に雄太が眼前の鬼へと背中から4本の赤腕を出現させる様に指示すると、鬼は身体を細くさせながらも4本の赤腕を出現させた。



「鬼から赤腕を出現させたら鬼から赤腕側へと膨張を持っていかれるのか・・・  赤腕をつけるなら最初っから赤腕が付いている鬼を発現させなければならないのか? そうなったらまたさらに膨張を持っていかれるな・・・  ウォータースライムにもスライム弾を撃ちまくったから現状は餓鬼を使うのが効率がいい感じかな?」



今後は餓鬼を使うと言う事を決めた雄太は制御や調整の為にエルダへと話しかける。



『お〜い。 居るかぁ〜? 入るぞ〜?』



雄太はまるで、親しい友人の家に入るかの様にエルダへと声をかける。



『はいはいは〜い!! 居ますですよ〜!! 何もないところですがどうぞ〜!』



さっきまで大泣きしていたエルダは存外元気そうだった。



『お、おう・・・  そんじゃ、お邪魔します。 さっきぶりだが元気そうで何よりだな・・・ いや、違う、そうじゃなくて、今、新しいスキルの検証をしてたんだが、面白い事ができてだな、【分離】で膨張を切り離して餓鬼っていう動かせる膨張の分体を作った』


『え? 何それ・・・  わたしと言う物がありながら何処の馬の骨と何やってんのよ!! この人でなし!!』



雄太は少しエルダから少し離れた事でこいつはやっぱりとてつもない馬鹿だったと再認識させられた。



『やっぱり言うのやめた。 俺、パン屋になってくるわ』


『ちょーっと待ったぁぁぁぁぁ!! 冗談よ!  じょ  う  だ  ん。  挨拶みたいな軽いフレンチジョークよ! そう、挨拶!!』



雄太がパン屋になると言う言葉を聞いてエルダは盛大に焦って雄太を引き止めにかかった。



『・・・話してもいいか?』


『どうぞ! なんなりとご主人様!!』


『・・・分離で作った膨張の分体な。 俺が餓鬼を発現させた時はそれをお前で操ってくれ。 自由気ままにとまではいかないが、基本は貪欲にスライムを吸収する感じで、俺の言う事を聞いて俺を攻撃やモンスターから守る様な感じで、ってできるか?』



雄太は今後の餓鬼についての利用方法をエルダへと伝える。



『全然できるわよ。 ユータが赤腕を操っている感じに少し思考性を持たせれば良いのね?』


『まぁ、そんなとこかな? そんじゃ、そういう事──』



雄太が言葉を言い終える前にエルダが間髪入れずに話かけてきた。



『──他は? 他に何かある? アレしたいコレしたいとか?』


『いや、ないが?』


『いや、絶対ある筈よ! もっとユータはやりたい事やわたしに助けて欲しいほとが沢山ある筈よ! 無くても何かひねり出して! もっと長くなる様な会話のキャッチボールをして!! お願いだからわたしともっとお話ししてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』


『・・・・・・』



エルダの意図が分かった雄太は沈黙でエルダへと答えた。



『やっと話せたと思ったらこれだけなんてあんまりよぉぉぉぉぉ!! お願いだからわたしと話してぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・』



エルダの声はドップラー効果を残しながら雄太の頭の中からフェードアウトしていった。



「・・・さてと、 おばちゃんが言うには、ガーディアンは大体5、6時間くらいでリポップするらしいけど・・・  今日はもう疲れたから明日調べるか。 そんじゃ、今日も1層に続く階段でお泊りって事で」




雄太は発現させている餓鬼を解除して、全速力で階段へと戻って行った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 薄々思っていたけど主人公の趣向が変すぎ。下っ腹が出てあばら骨がでた餓鬼が可愛いって…。じゃれあっている餓鬼とか不気味なんだが。 犬や虎とかなら、じゃれあっても違和感はないけど…
[一言] 鬼?属性?硬くもなるし弾飛ばせる鬼? やばい。最高か
[一言] 分離、いずれエルダが復活の際には自立活動できるんすね。 まさにその時は糸の切れた凧で 色々やらかしてくれそうw ところで、分離のスキル検証というなら、遠隔操作で活用する上で  ・活動の…
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