表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
38/290

38. VS湖 2

水上へと多数発現された水柱の上にあるパンパンになっている水球を見た雄太は、背中に薄ら寒いものを感じ、現在発現させている両腕の膨張を解除し、代わりに背中から4体の土龍を発現させて自身の前へと重ねて並べ、更に2体の土龍を両腕から発現させて自身の身体を二重にして包んだ。


水上にあるパンパンになった多数の水球は、今までの沈黙を破るかの様に、水上で好き放題に水を吸収している赤腕や、湖から離れて土龍の壁を展開させている雄太へと向けて一気に水線を発散させる。




シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュン──




湖を唯我独尊ではしゃぎ回る様に貪り喰っていた赤腕は、発散された無数の水線によって針を刺された風船の様に多くの赤腕を弾けさせ、水線が発射される前に土龍で4層の壁を作って攻撃へと備えていた雄太へと向かった水線は、土龍の堅い装甲を3層まで貫き、あわや4層めを貫いて雄太まで届くと言う所で止まって消えた。




クソ!あのチュッ○チャ○ス、 マジで凶悪過ぎるだろ!!




無数の水線を発射した水球は、まるで萎んだ風船の様に細くヒョロヒョロとして小さくなっていたが、再度、水線を発射するかの様に次々とその身をピンと立て、即座に丸々と膨れ上がってきた。




あれだけの攻撃をまだ撃てるのか!?




雄太は水線の威力もさることながら、少しのインターバルはあるが続けて撃ってくると言う事に驚愕し、水上に展開させている全ての赤腕を水上から離して空中へとバラけて滞空する様に指示をだす。


水上にあった無数の赤腕は、雄太がだした指示によって、まるで水辺を飛び立つ鳥の様に一斉に水上から離れて空中へと向かって浮かび上がり、獲物を狙う獰猛な鳥の様に空中にて湖を見下ろす様に滞空した。


雄太は湖へと先を向けて滞空している赤腕へと、雄太の頭上前方へと移動する様に指示を出すと同時に、腕の形をしている全ての赤腕の先を筒状へと変形させた。



「ソッチがその気ならコッチだってやってやる! 俺とお前と何方が先にくたばるか、盛大な撃ち合いといこうじゃないか!!」



雄太が対空している大量の膨張からスライム弾を放つと同時に、湖も一斉に空で滞空している膨張や雄太へと向けて水球から水線を発射した。




シュシュシュシュン──


パスパスパスパスッ──




互いに気の抜けた様な音を響かせてはいるが、双方から発射されたスライム弾と水線が空中で激しく飛び交う様は、まるで何処ぞの紛争地帯の最前線を思わせるかの様に、青と赤の無数の弾幕が飛び交う異様な光景を作りだしていた。


湖は連続して無数に放たれたスライム弾によってその身を孔だらけにしており、スライム弾が被弾した水柱や水球は、その身を爆散させて数を減らしていく。


一方、雄太はと言うと、滞空している赤腕が湖から放たれた水線によって千切れ飛んだり弾けたりしてはいるが、雄太本人への攻撃は、眼前に展開している土龍の壁で全ての水線をギリギリで防いでいた。




クソ!?


早いとこあの水の球をなんとかしないとコッチまで孔だらけになるぞ!?


「他は無視してあの水の球と柱を狙い撃てぇぇぇぇ!!」



雄太が赤腕に向かって指示を出すと、雄太の顔にあるディスプレイ上に映っている全ての水球へと赤いロックマークが現れてピタリと貼り付き、滞空している無数の膨張は、まるで、水球へと貼り付いている見えないロックマークへと目掛けて狙い撃つかの様に指向性を持ち、集中的に水球を狙い撃ちし始める。


再装填にインターバルが必要で、4発同時に1回ずつしか放つ事ができない水球に対し、雄太のスライム弾は吸収したスライムが尽きない限りスライム弾を射出し続ける事が可能であり、膨張からは、まるで、無限とも思える様に絶えず連続してスライム弾が水球とその周りへと射出され続けていく。


湖の水球と水柱は、雄太によってロックオンされた事で先程とは違って的確に撃ち抜かれてその数を大幅に減らしていき、水球の数が少なくなった事によって雄太へと放たれる水線の数がだんだんと減ってきた。


更に数分の撃ち合いの後、湖より無数に発現されていた水球と水柱は、指向を持たせたスライム弾によって的確に撃ち抜かれた事で、全ての水球と水柱は湖からその姿を消滅させた。


無数に発現されていた水柱と水球を破壊された湖は、筒状の膨張から再度赤腕へと変わった膨張によってその身を吸収されて更に縮小し、リポップしたアーススライムと同じくらいの大きさまでその身体を縮小させた。



「我慢比べは俺の勝ちだな。 大分ちいさくなったな、 おい」



雄太は獲物を狙う様な獰猛な笑みを浮かべ、赤腕を6対の羽へと変形させて背中へと展開しながら、小さくなった湖へと向けてゆっくりと歩を進める。


身体を縮小させた湖の体内には、ハンドボール程の大きさの青いコアが縦横無尽に動いているのが遠くからでも見る事ができ、まるで近寄ってくる雄太に対して酷く怯えている様にも見て取れた。


雄太が近づくに連れ、湖はコアだけでなく、自身の体表を激しく上下へとボコボコと震わせながら蠢めかせる。


湖から現れて上下している大小のボコボコの蠢きは、雄太が一歩、また一歩と近づく毎に激しさや速さがどんどんと増していたのだが、距離が後2mというところで急にピタっと動きを止めて静かになり、まるで極限まで磨きあげられた鏡面の様に歪み一つない真っ直ぐな水面となった。


雄太は急に動きを止めた湖を怪訝に思い、湖まで残り2mという所で脚を止め、いつでも膨張を発現できる様に戦闘態勢をとると、湖の中心がグググっと上へと向かって競り上がっていき、まるで何かを形造る様にモゾモゾと動き始めた。


迫り上がってモゾモゾと動いている水の塊は、だんだんと細部の形がはっきりとしだし、終いには、まるで、美しい彫刻の様な身体と足まで届く長い髪を靡かせている水の塊でできた女性の形へと姿を変えた。


その水の塊でできた女性は、見る人が見れば、知る人がその姿を見れば、目の前に居るのはあくまでも水属性のスライム種ではあるが、とっさに『ウィンディーネ』と言う『水を司る精霊』の名前が浮かびあがっただろう。


水の塊で象られた女性は、まるでジェスチャーをして何かを訴えるかの様にバタバタと手足を大きく動かしながら酷く怯えて焦っている様な動作をしており、声を出せないのか、口元を大きくパクパクとさせてはいるが無音であり、ただ単に水が窪んでいるだけの悲しげな目で雄太を見つめていた。



「・・・必死なところ残念だが、そんな典型的なハニートラップは俺には通じねぇんだよ」



雄太が水の塊へと放った声と共に、雄太の背中で羽の形をしていた赤腕から1本の赤腕がシュルシュルと蛇の様に鎌首をもたげながら現れた。


雄太の背中にある羽から1本の赤腕が現れたのを機に、2本、3本と背中の羽が1本1本解けていくかの様に、総勢100本の赤腕が空中へと現れてニョロニョロと身体をくねらせながら滞空する。


1本、また1本と雄太の背中から現れてくる赤腕は、まるで目の前にある餌を吟味しているかの様にニョロニョロと動きながら水の塊へと指向性を向けており、その光景を見ていた水の塊は、輪郭がはっきりとしない顔を恐怖で酷く歪めた。



「さぁ、お前達、デザートの時間だ」



雄太はゆっくりと水の塊へと向けて掌を向け、



「この階層のガーディアンをかけらも残さず──」



伸ばしていた指を拳の中へと握り込む。



「──喰らい尽くせ」





雄太が「喰らい尽くせ」と言葉を発すると、ニョロニョロと動いていた100本の赤腕は、まるで時間が止まったかの様に一斉にピタリと腕先を水の塊へと向けて動きを止める。


そして、その群れの中にいた1本の赤腕が水の塊を見て「ニタァ〜」と笑うかの様に口角を吊り上げたかと思うと、一斉に「ぐぱぁ〜」っと顎門を開きながら水の塊へと飛びかかって周りの湖ごと貪る様に捕食し出し始めた。




~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜〜〜!!




水の塊は、恐怖や悲しみ、絶望や怒り、憎悪や渇望といった何とも言えない様な様々な表情を作りながら、雄太の背中から伸びている無数の赤腕によってその身を捕食され──




──その身を完全に吸収された。




『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』




『スライムスーツノLVガ上ガリマシタ』




『スライムスーツノLVガ上ガリマシタ』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ