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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
37/290

37. VS湖 1

雄太によって発現された100の赤腕は、まるで逆に雄太を喰らい尽くすかの如く、其々が乱雑に蠢く様にグジャグジャと激しく暴れ出した。



『──グゥうっ!? なに格好つけて一気に出してるのよっ!? バカなの!?  ──グっ!?』



エルダは雄太が一気に発現させた赤腕の統率と制御に手間取っている様で、雄太の頭の中では柄にもない真剣で必死なエルダの声が響いていた。



『──ウグぐぅっ!!  ・・・いい加減  言う事を  聞けや  コラぁぁぁぁぁぁぁ!!』



何かがブチキレたエルダは、雄叫びをあげながら100ある全ての赤腕のコントロールを無理矢理奪いとる。



エルダによってコントロールされ統率された赤腕は、まるで6対の巨大な赤黒い蝙蝠の羽の様に模られ、雄太の背中にて禍々しく顕現された。



『──ハァハァハァハァハァハァ・・・  どうよ、  ──ハァハァ、やってやったわよ! ユータ! わたしはこれの制御に専念するから、 指揮は任せたわよ!』



エルダはそう言うなり沈黙し、一言も喋らなくなった。



「上出来だ相棒」



エルダが沈黙した後、雄太は口角を上げて三日月の様な笑みを浮かべながら左右の腕へと瞬時に赤腕を発現させ、発現された赤腕は肩口から徐々に緑色へと変わっていき、指先には紫色の鋭角な爪が現れた。


同時に背中からは4体の炎龍が発現し、4体の炎龍は咢にある牙を紫へと変色させた。



「これから、捕食タイムだっ!!」



雄太が両腕の膨張を伸ばして湖へと紫の爪を突き立てると、湖は更にウネリを上げながら水面を激しく波立たせた。


雄太が湖へと爪を突き立てた箇所は、何の抵抗もなく紫色へと染まっていき、瞬く間に爪が突き刺さった周囲を広範囲に紫色へと染め上げる。


続けて其々の炎龍が顎門を大きく広げながら湖へと齧り付く。




ジュアァァァァァァァァァァァァァァァl




炎龍が齧り付いた箇所からは水が大量に蒸発する音が鳴り響き、蒸発している側から紫色に染まっている箇所が現れた。



「さぁ、赤腕共よ! 思う存分喰らい尽くし、この飢えを、この渇きを、俺の為に、存分に満たせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



雄太の厨二的な掛け声と共に、雄太の背中に発現していた巨大な6対の羽は、まるでシュルシュルと糸が解けていくかの様に大量の赤腕となり、天を覆い隠す様に湖へと向かって伸びて行く。


湖へと伸びて行った大量の赤腕は、次々に水面へとビチャン、ビチャンと被着すると、掌を握ったり開いたりを繰り返し、まるで蟲が何かを餮るかの様に湖を吸収し出した。




バチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュバチュ──




大量に被着した赤腕にその身を吸収され続けている湖は、怒り狂ったかの様に数本の水柱を立てる。


そして、現れた水柱は、其々が繋がって巨大な津波へと変形し、雄太へと向かってその身を嗾かけてきた。



「そう来たか!?」



湖が嗾けた巨大な津波が迫ってくると、大量の赤腕は雄太を守るかの様にウジャウジャ、グルグルと雄太の周りへと集まっていき、津波へと先端を向けた巨大な円錐状へと変形し始める。



「かかってこいやコラぁぁぁぁぁぁぁ!!」



赤腕の円錐が出来上がったと同時に、雄太へと津波が襲いかかって来た。




ゴッパァアァァァァァァァァァン!




巨大な津波は雄太の円錐を飲み込む様に覆いかぶさるが、円錐は鋭利な部分を点に津波の重量を分散させる様に突き刺さり、突き刺さったと同時に先端の周りを吸収しながら津波の壁を突き破った。


雄太へと覆いかぶさった津波は、湖から別れて陸に上がっているが、地面へと水が浸透することなくプルプルとした水が固まっている状態を保ちながら雄太の周りを水の塊が取り囲む。


そして、その内の大きな塊が徐に激しくざわめき出したかと思うと、まるで雄太の膨張の様に多くの水柱を天へと向けて一直線に突き立てた。


天へと向かって立っている水柱は、急に糸が切れたマリオネットの様にグニャリと重力に従うかの様に崩れだし、崩れだした水柱は地面へとぶつかる寸前で軌道を変え、先端を鋭角にしながら四方八方から雄太へと襲いかかって来た。




ッ!?


クソ!




雄太は瞬時に円錐状の赤腕を1層のデカいスライムと戦った時と同じ様なドーム状へと切り替えて、自身の周りへと展開させる。


無数の水柱は雄太が展開したドームへと次々と突き刺さっていき、ドームの内側へとその先端を露出させていく。


雄太は、ドームの内側から露出して動きが止まっている水柱の先端を、4体の炎龍と自身の両腕に発現させている溶解と毒の腕を伸ばして直ぐに吸収する。


雄太によって水柱がドームの内側から吸収された事によって赤腕のドームには多くの穴が目立ち始めるが、ドームを形成している赤腕は、雄太によって刺さっている水柱が吸収された端から急速に自動で穴を塞ぎ始めた。




エルダか!?




100の赤腕で形成したドームに空いた多数の穴は、エルダのコントロールによって雄太の意思に沿って思う様に操る事ができ、しかもある程度は自動で動く様になっていた。


長い時間、雄太がドームに籠って大量の水柱を防ぎながら吸収し続けていると、雄太の周りにあった多くの水は、全てを雄太によって吸収し尽くされ、雄太の周りは水分の無い元の地面の姿へと戻っていた。


周りに水がなくなった為、雄太は湖へと意識を向ける余裕ができ、巨大な津波を嗾けた湖へと視線を移すと、そこには水が引いて干からびた緩やかなすり鉢状の地面が露出している箇所が現れていた。




ふぅ〜。


結構吸収できた様だな。


っていうか、まだあんなに残ってるのかよ・・・




緩やかなすり鉢状の底には、湖だった全体の2/3程に減った水が溜まっており、雄太は今のやり取りで湖の1/3を吸収していた。



「それじゃ、引き続き根比べと行こうじゃないか!」



雄太は背後の赤腕を操り、左右から伸びている大きな赤腕で前面を覆う様にしながら緩やかなすり鉢状の底にある水へと向かって走りだし、湖へと近付くと同時に、前面に展開している大きな2本の赤腕を使ってバチン!と平手で湖面を叩きつけた。


赤腕を叩きつけられた湖は、赤腕を激しく叩きつけられても水しぶき1つ上げず、まるでプリンを指で弾くかの様にブルンと大きく震えた。


水がプリンの様に震える光景を見た雄太は、毎晩寝る時に使っている水龍の姿が思い浮かんだ。




だんだんとヤツのコアに近付いて来た様だな!




だんだんと終わりが見え始めた雄太は、最初と同じ様に大きな赤腕を分散させて細かくし、広範囲で水を吸収し始める。


大量の赤腕によって再度吸収されだした湖は、まるで自身の身体を蟲に貪られているのを嫌がるかの様にブルブルと水面を激しく波立たせた。


雄太は湖の吸収を追い込む様に、両腕の毒の爪を水面へと向けて突き立てながら炎龍を操って水へと近づける。


毒爪を突き立てられた箇所は先程と同じ様に紫色が浸透していったが、炎龍が湖へと近くと、今までプルプルとしていた水が過剰に反応し、まるで炎龍を攻撃するかの様に炎龍の体へと向かって無数の水の棘を伸ばして串刺しにした。


雄太は無数の水の棘によって串刺しにされた4体の炎龍を動かそうとするも、水の棘によってガッチリとその身を固められており、炎龍は徐々に水の棘を吸収しながらその身を蒸発させられたかの様に消えてしまった。



「!?」



雄太は鎮火されて蒸発して消し去られた炎龍を再度発現したが、炎龍が水へと向かうと、同じ様にして無数の棘に串刺しにされて鎮火されながら蒸発して消されてしまった。



「やってくれるじゃねぇか・・・」



雄太は初めて自分が発現した膨張を消し去られた事に対して抑えきれない怒りを覚え、今度は4体の炎龍を発現させるのではなく、4体分をまとめてサイズを大きくさせた1体の巨大な炎龍を発現させた。


巨大な炎龍は、無数の水の棘に襲われるも貫通されるまでには至っておらず、棘が刺さった端からへし折って薙ぎ払うかの様に顎門を大きく開け、身に受けた棘を一つ残らず捕食する。




現在、水の上では巨大な炎龍が棘の処理をしつつ、無数の赤腕によって好き放題水を吸収しており、水の体表は目に見えて小さくなっていた。


巨大な炎龍と大量の赤腕のコンボにより、湖の大きさが当初の1/3となった所で、水の棘がピタリと止む。


雄太はコレをチャンスと思い、炎龍で湖を好き放題に餮らせていると、再度湖から無数の水柱が現れた。



「またそれかよ! 芸がねぇんだよ!」



雄太が炎龍を操って水柱を喰べに向かわせると、炎龍が齧りつこうとしている水柱の先端が突然プクーっと丸く膨らんだ。


炎龍が丸く膨らんだ水の塊を顎門を開けて噛みつこうとした瞬間、水の塊から、まるで、ビームの様な圧縮された4つの水線が炎龍の口内へと放たれた。




シュシュシュシュン




口内へと水線を放たれた炎龍は、4つの水線によって口から頭を貫通され、貫通された勢いで頭を爆散させた。


炎龍の頭を貫通し爆散させた4つの水線は、その威力を全く衰えさせる事なく、真っ直ぐにすり鉢状になった地面の上にいる雄太の元へと向かって飛んで行く。



「!?」



雄太はかろうじて炎龍の頭を貫通してきた水線へと反応する事ができ、自身の身体を思いっきり右へと投げ出して地面を転がる事でなんとか躱す事に成功する。


転がりながらもギリギリで水線を躱した雄太は、急ぎ起き上がって先程まで自身が立っていた場所へと視線を向けると、地面へと複数の細く深い穴が穿たれており、水球から放たれた水線の速さは、一瞬でも目を逸らせば追視する事は不可能と思わせる程速く、1発でも当たれば確実に死に至る程の威力を持っていた。


雄太は穴が穿たれている地面から水上へと急ぎ視線を移すと、水上に出現している多数の水柱は次々と先端を膨らませていき、今にも弾けそうな程にパンパンになった水玉を水柱の上へと発現させていた。



「マジかよ・・・」




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