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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
34/290

34. ユーザーVSアーススライム 4

日向は左手にある槍を強く握りしめ、期待を込めながら立ち込める土煙へと視線を固定させる。


他のメンバー達も限界と言わんばかりに息を荒くさせてはいるが誰一人として土煙から視線を外す事は無く、その目には期待と疲労が映しだされていた。


休みを兼ねながら土煙が晴れるのを待つ事数分、漸く土煙が晴れてアーススライムの姿が現れ始める。




・・・・・・




アーススライムの身体は、触手が千切れたり、色々な箇所に穴が空いたり欠けたりと言う今にも身体が千切れて倒れそうな状態になってはいるが、どうやらコアには傷一つ入っていないらしく、完璧に仕留めると言う迄には至ってなかった。



「・・・一体なんなんだコイツは!?」



日向達は、何度も全力の集中砲火を放ったにも関わらず、完全に仕留めきれていないアーススライムの姿をみて驚愕する。



「いくらレアとは言え、たかがスライム種が何故こんなにもしぶといんだ!?」



一同が驚愕していると、アーススライムは身体中から天へと向かって一纏めにした触手を伸ばし、伸ばされた触手はアーススライムの頭上で分散され、まるでアーススライムを中心として円形に囲む様に地面へと突き刺さっていく。


その姿は、まるで巨大な鳥籠の中にいる様な見た目となっており、アーススライムは、地面へと突き刺した触手を使い、ストローで何かを飲むかの様に、『ゴキュンゴキュン』と触手に波を立てながら勢いよく地面を吸収し始めた。


突然のアーススライムの異様な行動と不可思議な光景に対し、日向達は目を見開いて口を大きく開きながら呆然と立ち竦む。



「な、なんなんだコレは!? 一体、ヤツは何をしているんだ!?」



触手を使って地面を勢いよく飲み込んでいるアーススライムの身体は、日向達の攻撃によって損傷した箇所がみるみると凄まじい早さで回復し始め、触手が地面を吸収しだして、ものの2~3分で完全にその身を修復させた。



「なっ!? 地面を吸収して回復しただと!?」



完全回復したアーススライムは、鳥籠状に展開されていた触手を地面から引き抜き、日向達を威嚇する様にグニョグニョと激しく暴れさせる。


堅い体表、多数の触手、重い攻撃、見えないコア、自己修復、と言ったスライムの域を超えているアーススライムと言う存在に対し、日向達は驚愕を顔へと張り付けた。



「この事を、直ぐにでも本部へと報告しなければ・・・」


「こんなのが最弱ダンジョンの、しかも第一層にいるなんて・・・」


「私達だけでコレを対応するなんて厳しすぎるわ・・・」


「これは、 こんなのは、 ピュアが導入される レベルだぞ・・・」



日向達は知らず知らずの内に後ろへと後退り、本能的にアーススライムには敵わないと言う事を悟った。



「急いでここから退避するぞ! 殿は私が勤める! お前達は負傷者を連れて先に行け!」



日向が1人だけで殿を勤めると言う事に対し、安岡が待ったをかける。



「日向さん。 俺も日向さんと一緒に残ります。 遠距離攻撃ができる後衛がいた方が、触手の対応が楽になるでしょ?」


「・・・そうだな  ・・・すまんが一緒に頼む。 ではこれより急ぎここから退避する。 安岡の攻撃後、一斉に出口へと向かって走れ!」



“了解”




メンバー達は、アーススライムへと視線を固定させながら負傷者を担ぎ、ゆっくりと退避の準備始めた。



「安岡。 私が10数えた後に開始だ」



日向からの指示に対し、安岡はコクリと無言で頷く。



「10、9、・・・」



パーティーメンバーは、緊張からか額へと大量の汗を吹き出しており、ゴクリと音が聞こえてきそうな程に喉を唸らせて固唾を飲みながらその時を待った。



「──3、2、1、 走れぇぇぇぇ!!」



安岡からファイアアローが放たれ、日向と安岡以外のメンバー達は一斉に出口へと向かって走りだす。


放たれたファイアアローは、1本の触手を弾けさせただけに留まり、アーススライムへの直撃を難なく塞がれ、安岡からの攻撃に反応したアーススライムは安岡と日向が居る位置へと向かって全ての触手を向かわせた。


日向達へと一斉に襲い掛かって来た触手は、範囲外に居る日向達の4m手前で止まり、煩わしそうに触手をピンと伸ばしたりしながらグニョグニョと蠢いていた。



「やはりここ迄は届かない様だな・・・  安岡、ヤツの位置を固定する為に本体を狙い続けろ。 もしコイツが動いたら、私達は終わりと思え。 お前が倒れたら私が担いででも必ず助けてやる」


「その言葉忘れないでくださいよ。 こんな最弱ダンジョンで死ぬなんてマジでゴメンですから」


「そう言えばそうだったな。 此処は最弱ダンジョンだったな。  クックックックッ──」



安岡の言葉で日向は此処が最弱ダンジョンだった事を思い出し、思わず笑いがこみ上げてきてしまった。



「それでは、殿らしくもう少しだけ時間を稼ぐぞ! 【身体強化】!」



日向が気を張る様に言葉を発しながらスキルを発動させて安岡の前へと立ち、触手へと向かって槍先を向ける。



「ですね!  【ファイアアロー】!」



日向の右斜め後ろから放った安岡のファイアアローは、飛び出した触手によって再度塞がれ、1本の触手を破裂させただけでアーススライム本体へは全く届かなかった。


安岡の攻撃を合図に、日向は、大量の触手の群れへと着かず離れずで前後へと頻繁に脚を動かしながら手にしている槍で触手の先端へと突きや打ち込みを放ってタゲ取りをし、タゲが集まったところで安岡が隙を突いて本体へとファイアアローを放つと言う事を繰り返す。




2人が同じ事を繰り返す事10分、触手の数は一向に減ることも動きが衰える事もなく、まるで永遠にも思えるかの様な時間を感じている2人は、いくら触手が届かないからと言っても、触手の量が量だけに一瞬も気を抜く事ができず、日向は極度の緊張と集中によって滝の様に身体中から汗を流し、安岡は安岡で魔法の放ち過ぎによって表情や動きには疲労を隠す余裕すらもないくらいにフラフラと身体を揺らし始めていた。



「安岡ぁ! そろそろ撤退するぞ! まだ走る余裕はあるか?」



日向は触手へと打ち込みながら声だけを安岡へと向けて確認を取る。



「──ハァハァハァハァ。   ・・・走れるか走れないかで言ったら、走りたくないですけど、状況的に、走るしかない、ですよね。   ──ハァハァハァハァ」


「無駄口を叩けるくらいなら走るのは問題なさそうだな! 後、 何発いけそうだ?」


「──ハァハァハァハァ。  この後、走るって事を考慮すると、 後、 1発が限界ですね。  ──ング。  って言うか、 2発撃ったら、俺、マジで意識飛びます。  ──ハァハァハァハァ」



安岡の疲労と消耗はそろそろ限界に近付いており、顔だけをアーススライムへと向けて両手を膝へと着いて身体を支え、腰を折って辛そうに立っていた。



「お前が放った魔法が着弾するタイミングで私は離脱する! お前も放ったら直ぐに走り出せ! いいな!」


「りょ、  了解です!」



安岡は、最後の魔法を放つ為、浅く早い呼吸を繰り返して呼吸を整え始める。



「──ッ!   いきます!  【ファイアアロー】!」



安岡が本体へと放ったファイアアローは、これまでと同じ様に飛び出して来た触手によって阻まれ、安岡は魔法を放ち終わると同時に出口へと向かって走りだす。


それを視界の隅で確認した日向は、この場所から離脱する為にバックステップで触手の攻撃範囲から抜け出ようとしたところ、2本の触手が融合して1つになり、1つになった触手は今まで限界だった攻撃範囲を抜けて日向を叩く様に上方から伸びて来た。



ドッ!



「!?  ──ガハァぁぁぁぁ!?」



ドガッ!




日向は、バックステップをしながら咄嗟に槍を上方へと構えて何とか触手の直撃を防ぐ事はできたが、バックステップで滞空しているタイミングで上から下へと叩かれた為、地面へと頭と身体を強く打ち付けられ、一瞬で意識を飛ばされた。


1本の、今までの限界範囲を超えて来た触手が日向を叩くと、他の触手も同じ様に次々と2本1対で1本となって混ざり合い、触手の数は減ったものの、最後の最後でアーススライムは攻撃範囲を広げた。


先に走りだしていた安岡は、日向の呻き声と何かが地面へと叩き付けられた様な音が聞こえた事によって無意識に自身の背後を振り返ると、地面に日向が無防備で倒れている姿が目に映った。


その倒れている日向の頭上では、次々に2本が1本となって攻撃範囲を超えて来ている触手が増えていき、今にも日向を叩き潰そうと日向の頭上でグネグネと蠢いている。



「なっ!? なにやってんだよあの人はぁぁぁぁぁぁぁ!!」



範囲を広げだした触手と地面で倒れている日向を見て状況を把握した安岡は、反射的に踵を返し、急いで日向へと向かって走りだす。


安岡が日向へと向かって走りだしたタイミングで、滞空していた触手が一斉に日向へと降り注いだ。



「クソッタレぇぇぇぇ!!  【ファイアバースト】ぉぉぉぉぉ!!」



安岡は日向へと降り降ろされている触手の群れへと向かって、威力はないが広範囲に爆発を起こせる魔法を放ち、触手の動作を食い止める。


余力のない状態で魔法を放った安岡は、走っている脚へと力が入らず、走っている勢いによって前のめりに倒れかけたが、なんとか力を降り絞って日向の元へと滑り込む様に駆け寄った。



ズザァァァァァァ



「クソっ! 細い身体の癖になんで重てぇんだよっ!」



安岡は倒れている日向の左腕を取って肩へとかけて身体を持ち上げ、愚痴りながらも急いで広場の外へと向かって走りだす。


安岡が放った魔法の爆炎は直ぐに晴れ、日向を抱えて走っている安岡を見つけた触手が次々と安岡達の背後へと伸び始める。


安岡は触手に後ろから追いかけられるも、なんとかギリギリで背中を触れられていない状態であり、このまま逃げ切れるかと思ったところで、疲労が溜まりに溜まりまくっている安岡の膝がカクンと抜けて走る勢いが落ちてしまった。


触手は走る勢いが落ちた安岡へと追いつき、安岡の背中を激しく打ち付けた。



ドガッ!


「ぐがぁぁぁぁぁ!?」


ズザッ!


ザッ!


ゴロゴロゴロゴロ──




背中を強打された安岡は、抱えていた日向と一緒に前方へと弾き飛ばされて激しく地面へと転がる。


弾き飛ばされて地面を転がった事で安岡は日向を手離してしまい、安岡は背中の痛みに耐えながらも身体を起こして触手と日向の位置を確認したところ、触手は範囲の限界にいるのかグネグネと滞空して留まっており、日向は安岡の少し離れた右側で倒れていた。


安岡はフラつく脚で急いで日向へと駆け寄って再度日向を担ぎ、ゆっくりとだが確実に、ダンジョンの出口へと向かって歩を進める。



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