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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 2. 第1章 新たな世界 編
289/290

289. いや、ホントソレな

完全に自身を無視し、男へと背を向けながら話し始めた雄太達に対し、ワナワナと身体を震えさせる男は我慢ができずに大声を上げた。



「ナニ言うてるかマジで分からんって言うてるやろ!!  俺を無視すんなやぁぁぁぁぁ!!」





バキぃっ!!





男は怒りながら手を添えて身体を支えていた大木の一部を握り潰しながら再度大声を上げる。



「って言うか、オマエらせめてこっち向けやぁぁぁぁぁ!!」



そして、握り潰した大木を半ばから軽くもぎ取り、怒りを込めながら雄太達へと向けて腕で押し倒した。


沢山の葉を生い茂らせた大木は、バサバサバキバキと大きな音を立てながら雄太達へと向かって倒れて行く。



「クっ!?」


「──っ!?」



ギルフォードとエゼルリエルは、大木を避けるためにサッとその場から飛び退くが、雄太は涼しい顔で倒れてくる大木とその先にいる怒れる男を視野へと収めながら、ボソリと一言呟く。



「邪魔だな」




瞬間、




今まで上空で漂っていた4体の小さな炎龍が雄太の前へと現れると、4体を四隅の頂点として雄太の前へと赤い四角い膜を発現させた。



「収納っと」



そして、炎龍が発現させた赤い膜へと触れた大木は、綺麗さっぱり跡形もなく雄太の目の前からその姿を消し去った。


赤い膜を発現させた小さな炎龍は、大木を消し終えると雄太の周りへと移動してフワフワと宙を漂い始めた。



「・・・・・・」



目の前で急に消えた大木を見た男は、頬を引き攣らせながら雄太を凝視する。



「何やねん・・・  ってか何してんねんオマエ・・・  ソコは悪態吐きながら必死に飛び跳ねて木を避けるのがテンプレちゃうんか・・・」


「んなん知るか。  お前の考えを俺に押し付けるな」


「アホか。  オマエ以外はちゃんと飛んで避けとったわ。  って言うか、何処行ったんやあの木。  それになんやソレ?  なんでスライムが燃えながら宙に浮いとんねん」


「さぁな」


「”さぁな”ちゃうやろ。  明らかにオマエの仕業やろソレ?  って言うか、もっと言葉のキャッチボールせぇや!  なんで俺がオマエに気ぃきかさなアカんねん!  自発的に俺の質問に答えろや!  って言うか、めっちゃ俺の分かる言葉喋れてるやんけ!!  今までの俺はなんやねん!?  巫山戯んなよボケ、カス、ドアホが!」



雄太の適当すぎる態度にキレ始めた男は、中腰となって両手の指をワキワキと動かしながら、怒り心頭と言った感じで雄太へと大声を上げた。



「それこそ、なんで俺がオマエに気をきかさなければならないんだ?  誰も俺がオマエと同じ言葉を喋れないとは言ってないぞ。  自分の知らない言葉が聞こえたら、先ずは相手に共通の言語を話せるかどうか聞くのが常識だろ?  少し考えればそれくらい分かるだろ?  馬鹿なのか?」

 

「オマっ──!?  くぅぅぅぅぅぅ──!!  急にキャッチボールできたと思ったら、めっさ腹立つ事言いよったで!?  なんなんやオマエはっ!!  似た様な大きな気配を感じて仲間と思った俺が馬鹿だったわ!!  オマエとは絶対に仲間になどなるかぁぁぁ!!」



男は雄太の物言いに更にキレた様子で、バンバンと地団駄を踏み出した。



「こっちこそオマエの仲間になんてな──」



”仲間になんてなるか”と言いかけた雄太は、何かを思い付いたのか、最後まで言葉を口にするのを止め、一瞬の間思考した後にニヤァ〜っと口角を吊り上げて悪そうな笑みを浮かべる。



「──わりぃわりぃ。  いきなりのオマエ登場で俺も酷く動揺して、オマエが同類ってのをすっかり失念してたわ。  許してくれ」



雄太はそう言いながらペコリと頭を下げる。



「な、なんや急に!?  オマエ、どんな情緒してんねん!?  不安定すぎるやろ!?」



いきなり雄太の態度が変わった事に対し、ギルフォードとエゼルリエルは瞬時に雄太の奇行について理解した。


そして2人は、目の前にいる男には分からない速度で自身の身体へと膨張の膜を覆っていく。



「いや、ホントソレな。  毎日の様によく言われるわソレ。  な?」



2人が膨張で身体を覆い始めたのに気づいた雄太は、エゼルリエルへと顔を向けて話を振る。


雄太に話を振られたエゼルリエルは、心底そう思っているかの様に真顔でリアルな頷きを返す。



「・・・なんか、急にオマエが可哀想に思えてきたで・・・  いや、この場合、オマエのツレの方が可哀想なんか?」



男は可哀想な者を見る様な優しくも悲しいと言った表情を雄太へと向ける。



「それで、オマエは何しに此処に来たんだ?」



雄太はエゼルリエルのリアルな頷きに対して怒りを覚えたのか、つま先で地面をグリグリとさせて怒りを押し殺しながら男へと問いかける。



「あぁ。  さっきも言うた様に、俺と同類の大きな気配を追って、どんなヤツなのか顔を見る為に此処までやって来たっちゅうだけや」


「そうなのか?  って言うか、同類はそれ程珍しいもんじゃないだろ?」



雄太は昨日倒したゴスロリスライムと、エルダの使いと言っていた人型スライムを思い出した。


そして同時に、目の前の男は雄太がマークしていたザーガに居たスライムであった。



「まぁ、そんなに珍しくはないが、昨日、急に他の同類の気配が消えよってな。  しかも、オマエの気配と一緒に居る時に他の気配が突然消えよった。  夜は夜でけったいな大爆発が起こるわで、こらアカン思うてな。  そんでもって、残ったオマエの気配を追っていると、消えたり現れたりとヘンテコな事になっておるしで。  ってな訳で、オマエが消えた辺りを探っとったちゅう訳や」


「って言うかオマエ、さっきから気配気配って言ってるけど、そんなに俺の気配ってデカいのか?  って言うか、俺だけかと思ったけど、オマエや他の同類も同類の気配って感じられるのかよ?」



雄太は軽く首を傾げながら男へと問う。



「オマエの気配はデカかったり小さかったりと俺もよう分からん。  今までこんなの感じた事がない。  せやからこうして一目見ようと難儀してまでオマエを探しに来たっちゅうわけや。  同類の気配を感じられるとか、そんな常識も知らんのか?  知らん言葉を使ってたと言い、スライム常識を知らん事と良い、さてはオマエら──」



男は今までのヘラヘラとしていた表情から一転し、雄太達を見定めるかの様な真剣な表情へと変わった。


そんな男に睨まれている雄太達は、戦闘となる事を予測して警戒し、それぞれが無意識の内にピクリと指先が動いた。



「──最近ポップした新参スライムなんか?」


「「「新参スライム・・・」」」



しかし、続けられて出て来た男の言葉は雄太達の予想していなかった言葉であり、いつも冷静なエゼルリエルとは違い、ギルフォードは「どうすれば良いんだ」と言った様に、チラチラと雄太とエゼルリエルへと視線を投げかけた。



「そうだ。  俺たちは最近此処でポップしたスライムだ」



ギルフォードの視線を無視した雄太は、なんでもないかの様にサラリと男へと即答した。


それを見たエゼルリエルとギルフォードは、”コイツマジかよ”と言った驚いた表情で雄太を凝視する。



「此処でポップしたんかい・・・  大森林でポップするとか、そりゃぁ、気配も大きい訳や」


「とりあえず、オマエが言う俺の気配のデカさは自分では全く知らんが、昨日、俺が様子見がてらに初めて人間が集まっているところに行って、そこで運良く同類に会えたんだが・・・  小っこくて変な喋り方をする異様に強い人間と出くわしてだな・・・  それで、同類は、右も左も知らない俺を逃がす為に・・・  その・・・」



急に、如何にも悲しんでいるかの様に顔を右手で隠す様な仕草をする雄太を見て、エゼルリエルとギルフォードは更に驚いた。



「あぁ〜。  そりゃ、災難やったな。  オマエが出会ぉたヤツは、ザーガの城塞都市のハンター共を纏めているギルドマスターや。  戦ったとしても俺が負けることはないと思うが、けったいなスキルを持っておってな。  俺も、アイツとは自分から進んで戦おうとは思わん。  とにかく、クソ面倒なヤツや。  まぁ、あんなヤツはのらりくらりと躱して居ればいい」


「あぁ〜。  確かに面倒くさいヤツだったな」



雄太は昨日会ったパレアの事を思い出し、確かに面倒くさかったと正直にそう思い、ウンウンと頷いた。



「まぁ、オマエならその内できる様になると思うが、俺みたいにスライムの気配を極力隠せる様にしぃや。  でないとこの先、生きるのにしんどくなるで」


「助言どーも。  早速、仲間と練習しておくわ」



雄太はエゼルリエル達へと視線を移し、男は顎先をしゃくって雄太へと笑みを浮かべながら、スタスタと雄太達の近くへと歩いて来た。



「ちゅぅか、オマエの仲間はえらい薄い気配やな・・・  此処まで近くに来てやっと同類の気配を感じられるレベルや。  相当弱そうやな。  ・・・まぁ、足しにはなるか?」


「足し?」



何かを見定める様な男のドス黒い視線により、エゼルリエルとギルフォードはピクっと表情を強張らせるが、雄太は男の言葉に何かを感じたのか、男を軽く睨みつける。



「いや、なんでもあらへん。  ってか、そんな露骨に怖がんなや。  なにも、オマエらを取って喰うっちゅう訳やないからな」



男はそう言いながらもチロっと舌を出して上唇を湿らせる。



「まぁ、オマエがコイツらのボスって訳やろ?  これからはお互い密に連絡取っていこぉや。  お互い、生き残る為になぁ」



男は頭の後ろで腕を組みながら、まるで極上の獲物を見つけて喜んでいるかの様にケタケタと笑いだした。



「「「・・・・・・」」」


「ほんじゃ、俺は街へ戻るわ。  俺の名はオフェルや。  エトワースっちゅうホテルにおるから、気軽に遊びに来ぃや」



オフェルと名乗った男は、これ以上雄太達と話す気はないかの様にクルリと雄太達へと背を向け、頭の後ろで腕を組んでいる手をヒラヒラと振りながら森の中へと歩みを進めた。



「まぁ、オマエらが来ぃひんかったそん時は──」



男はピタリと足を止め、背後にいる雄太達へと横顔を向ける。


背後を振り返っている男の横顔は、細かった目が大きく開かれ、嬉しさを我慢できないと言った様子で口角が吊り上がっている、醜悪な表情となっていた。



「──俺からアソビに来たるわ」


「「「!?」」」



ニィ〜っと口角を吊り上げている男の醜悪な表情を見た雄太達は、自然と身体が反応して身構えた。



「ほななぁ」



男は雄太達の反応を知ってか知らずか、顔を前へと向けて大きく頭上で後ろでをブンブンと振りながら、再度歩を進めて森の中へと消えて行った。



「「「・・・・・・」」」



男が去った後、雄太達へと暫く静寂が訪れたが、静寂を破る様に雄太が口を開く。



「アイツ、自分では名乗っておきながら、俺達の名前を聞く気は一切なかったな」



それにギルフォードが続く。



「そうだな。  アイツの話は、私達の事を全く知ろうとしていなかった」



続いてエゼルリエルが溜息を吐きながら口を開く。



「アレの顔は見たわよね?」



エゼルリエルは確認するかの様に、雄太とギルフォードへと交互に視線を移して目を合わせ、



「アレは私達を喰べる気よ。  まるで──」



そして、雄太へと視線を固定させる。



「──アンタみたいにね」  



エゼルリエルの言葉へと同意する様に、ギルフォードが雄太を見ながら無言で頷く。



「私達がアイツの同族と知った時の顔を見た?  まるで、餌を前にして喜んでいる獣の様だったわ」


「あぁ。  アイツの態度には俺も流石に気づいたわ。  『オマエらは俺に見つけられた。  もぅ逃がさねぇぞ』って感じで露骨にグイグイ来てたな」


「なんなのよ一体。  この世界で何が起こっているって言うのよ」



エゼルリエルは頭痛を抑えるかの様に、指でこめかみを挟みながらフゥ〜っと溜息を吐いた。



「そんなの知らずに今すぐアリアのいる地球に帰りたいんだが・・・  益々スライムの謎が深まっていくぞ・・・」



ギルフォードは恨めしそうに雄太へと視線を向ける。



「しゃぁねぇ・・・  餅は餅屋って事で、直接スライムにでも聞くとするか」


「え?」


「は?」



エゼルリエルとギルフォードは、さっきの今で、いきなり不穏な事を言い始めた雄太へとバッと勢いよく顔を向けた。



「なんだよオマエら・・・」


「アンタ、  今からあの男を追う気でしょ?」


「追うなら1人で行ってください。  私やエゼルリエルは足手纏いですから。  ここでマスターの帰りを待っているんで」


「いや・・・  アイツはこのまま泳がせておく。  って言うか、昨日捕まえた人型スライムに直接話を聞こうと思っただけなんだが・・・」


「「!?」」



雄太の言葉を聞いたエゼルリエルとギルフォードは、驚きで表情を固めた。



「アレ?  言ってなかったっけ?」



「「聞いて(ないわよ!)(ないぞ!)」」



エゼルリエルとギルフォードは、驚きを最大限に表に出して雄太へと詰め寄って来た。



「すまんな。  今の今まですっかり忘れてたわ。  あ、そう言えば新しいスキルも獲得していたな──」



マイペースすぎる雄太の行動に対し、ギルフォードはがっくりと顔を下へと向けながら地面へとしゃがみ込み、エゼルリエルは再びこめかみを指で挟んで頭を振った。


雄太は男の位置を確認するかの様に、ヘッドマウントディスプレイ越しに辺りをキョロキョロと見渡し始めた。



「おうふ。  アイツ、もう街に到着しているぞ。  散々しんどいとか言っていたクセに、全然ヨユーじゃねぇか」


「いや、そんなの誰が聞いても嘘に決まっているでしょ?  そんなの信じてたのマスターだけだぞ」



地面へとしゃがんで座っているギルフォードがエゼルリエルへと顔を向けると、エゼルリエルはこめかみを抑えている指の隙間から雄太を見ながらコクリと無言で頷いた。



「マジかよ・・・  あのヤロー・・・  今度会ったらぶっ飛ばしてやる!!」



雄太はオフェルと名乗った男へと怒りの声を上げながら、地面へと膨張を展開させた。


そして足元に広がる膨張へと向けて手を翳し、



「出てこい!  人型スライム、1号!  2号!!」



どこかの悪の組織の親玉の様な声を上げた。



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