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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 2. 第1章 新たな世界 編
275/290

275. なんだソレ

色々とごめんなさいwww

仕事や家の問題に忙殺されて、思いっきりとち狂って投稿していました。。。

_| ̄|○川


274話を修正し、275話を再投稿しますです。。。

274話めから読んだ方が良いかもです。


引き続き楽しくお読み頂ければです!




カミールは城塞都市の門へと伸びる道から逸れて、舗装がされていない道の外れへとグルゥヴァーを停めた。



「このまま入場の列を待つのも時間の無駄だから、ここから歩く。  早いところハンターギルドにも報告しないといけないしな」



グルゥヴァーを停車させたカミールは、後部座席にいる雄太へと顔を向ける。



「まぁ、あんた達が急ぐって言うんなら俺はソレでいいけど」


「急かせてしまってすまない」



雄太達がグルゥヴァーから降りると、カミールはハンドルから引き抜いたハンターカードへと魔力を注入する様に親指で抑え、徐にグルゥヴァーへとペタッと貼り付けた。


すると、グルゥヴァーは雄太が収納へとモノを収める時の様に一瞬で姿が消え、その代わりにカミールが手にしているハンターカードが数秒明滅した。



「どこでも駐車場みたいだな・・・」


「え?  何か?」


「あ、いや、その、何でもない・・・  ちょっとした独り言?」



ハンターカードの便利さに驚いた雄太は、ついつい声が漏れてしまっていたらしく、雄太の声を聞いたオリカから恥ずかしそうに顔を背けた。



さまざまな形のグルゥヴァーが城門へと並んでいるのを横目に、雄太達は少し早足で歩き始める。




城門まで半分の距離に差し掛かったところでオリカがカミールへと口を開く。



「私、先に行っています。  先に行ってヤキムや門兵さんと話して来ます」


「あぁ。  すまんが頼む」



カミールへとそう告げたオリカは、城門へと向かって走り出した。



「なんか、色々と動いてもらって悪いな」



雄太が前方を走るオリカの背中を見ながらカミールへと礼を言うと、カミールは首を横に降った。



「いや、これくらいどうって事ない。  俺たちは君に命を救われたんだ。  君があそこでゴブリンを殲滅していなければ、今頃はこの長閑な風景が悲惨なものに変わっていただろう」



カミールはそう言いながら、右手に伸びるグルゥヴァーの列へと顔を向けた。



「そ、そうか?  まぁ、  俺は身分証の金欲しさに動いただけだし、お互い様って事でそこまで重く考えないでくれ」


「君がそう言っても、俺たちの命を、この風景を救ったのは君なんだ。  君に救ったと言う自覚がなくても、それだけはどうか、心の片隅にでも残しておいてほしい」


「努力するよ。  って言っても、まぁ、明日には忘れているだろうけどな。   ククク──」



雄太はカミールの重い言葉を聞きながら、自嘲しながら笑う。


そんな雄太を馬鹿と思ったのか、頭の上にいるラキは、白けた様な目で雄太を見つめる。



「それにしても君はすごいんだな。   命を助けてもらいながら詮索する様で悪いが、最初に会った時は聞いたことのない様な言葉で話していたし、身分証もお金もない君は何しにザーガに来たんだ?」



カミールは肩を並べて歩いている雄太へと顔を向ける。



「まぁ、全ては明かせないけど、モンスターを探していてな。  それで情報収集の為にここに寄ったって感じか?」


「ククク──  おいおい。 なんで君自身で言っていて疑問形なのか分からないが、君はどんなモンスターを探しているんだ?」



カミールは、何故か疑問形で答えた雄太が可笑しかったのか軽く笑う。



「俺が探しているモンスターはスライムだ。  って言うか、スライムって言って通じてるか?」


「・・・・・・スライムか」



雄太がスライムと言うと、カミールは前を向きながら少し表情を険しくさせ、そのカミールの表情に雄太は何かが引っかかる。



「なんでそんな顔するんだ?  ってか、スライムって分かるよな?  あの、グニグニグニャグニャヌルヌルしたモンスターなんだが?」


「あぁ。  知っているさ。  スライムか・・・  まぁ、君の様にチカラがあるのであればソコまで危険はないと思うが・・・」


「は?  スライムが危険?  なんでだ?」



雄太は小首を傾げて意味が分からないと言った感じの少し驚いた表情でカミールへと視線を向ける。



「だいぶ前から、  もう5年近くになるかな。  ある日を境に急にスライムの数が激減したんだよ。  その時は何かの予兆かもしれないと言う事で各地のハンターギルドは大騒ぎだった」



カミールは懐かしむ様な顔で歩く先の城門を見つめる。



「あの大騒ぎを後に、ダンジョンからはスライムが忽然と姿を消した。  それこそ、リポップも一切ない。  ダンジョンだけでなく地上からもスライムが姿を消した」


「マジ、ですか──!?」



雄太はガイアにミディア中のスライムを駆除してこいと言われたのだが、カミールの言葉を聞いて驚愕した。


驚愕したのは雄太だけでなく、雄太の頭の上にいるラキも同じであり、鳩が豆鉄砲を食らったかの様な驚いた顔を見せた。



「まぁ、あの時は俺もかなり恐怖したな。  なんせ、ダンジョンからも地上からも、全てのスライムが姿を消したんだからな。  それから4年後、まぁ、今から1年前だな。  そんな急に消えたスライムがいきなり姿を表した」


「え?」


「!?」



雄太とラキは落とされた後に上げられた様な、意味の分からない感覚に陥り、先ほど以上に驚愕の表情となった。



「なんだソレ?」


「君が思う通り、正しく『なんだソレ』だよ。  なんせスライムが急に現れたんだ」



スライムが現れた時の状況を思い出したのか、カミールの顔がさらに険しくなった。



「急に現れたスライムは、とある小さな村に現れたんだ」


「何しにだよ。  まさか、スライム如きが人を襲うって目的で現れたんじゃねぇよな?」



雄太の言葉を聞いてカミールの身体がビクッと小さく跳ねる。


そして、鋭い目つきで雄太へと顔を向ける。



「そのまさかだよ」


「んな訳あるか。  スライムだぞ?  その辺をノソノソと這ってゴミや草を喰っているのがお似合いな、あの、スライムだぞ?  ってか、俺のスライムの認識って合ってるよな?」


「あぁ。 君のスライムの認識は間違っていない。  俺だってスライムの認識なんてそんなものだ」



しかし、カミールの表情は未だに険しく、『だが』と話を途中で切った。



「今までそう言う認識だった筈のスライムは過去のものになった」


「はぁ?  なんだそれ?  意味分かんねぇぞ?」


「俺だって意味が分からないさ。  そんな俺や君の認識のスライムは過去のものとなったんだ。  その村に現れたスライムは素早く動き次々に村の人間を襲って食い殺した。  ソレも服すらも残さずに、 だ」


「なんだよ服すらも残さずにって?  ってか、素早くってなんだよ?  んな訳あるか。  それって噂とかなんじゃねぇのか?  それか、誰かが見てたとかあんのかよ?」



雄太の言葉を聞いたカミールは、無意識の内に自然と拳を力強く握っており、握られた拳から革のグローブが軋む音が聞こえて来た。



「あぁ。  見たさ。  そのスライム1匹を倒すのに、大勢のハンターや一つの騎士団が動いた」


「1匹って。  マジで言い過ぎだろソレ?  俺が何も知らないと思って馬鹿にしてんのか?  グニャグニャジュルジュルした軟体動物の様なダルダルな奴だぞ?  そいつは、空を飛んだり、毒か何かを持った特殊なスライムだったのか?」



カミールは首を横に振る。



「そのスライムは──」 



そして、胸の奥へと封印していた恐怖を絞り出すかの様な、低く、恐ろしく冷たい声を吐き出した。



「──人型だったんだよ」


「「!?」」



カミールの絞り出された様な声を聞いて、雄太の脳裏へとエルダの顔が過る。



「嘘だろ?  スライムのクセに人形って何だよ?  意味が分からないぞ」


「嘘ではない。  あの場には俺も補給部隊として参加していた。  あの時のスライムは確かに人型で、ヤツは多くの仲間を瞬時に食い殺した」


「瞬時にって。  スライムがそんな瞬時に何かを吸収できる訳が──」


「誰だってそう思うだろうが、ヤツはやりやがったんだよ。  俺たちに攻撃されて、自身の身体がボロボロになると、死体やその辺に居た者達を身体へと取り込み、まるで飲み込む様にして喰いやがった」



雄太はスライムグラトニーを、スライムダンジョンにいたガーディアンを、自身のスキルを、そして、エルダへと与えたスキルの事を考えた。




瞬時に吸収して回復しただと?


俺でも、あの馬鹿でもできなくはない。


できなくはないが、まさか、あの馬鹿・・・




「しかも、そのスライム、俺たちと同じ様に言葉まで喋りやがったんだよ。  モンスターのクセに」


「・・・・・・」



雄太は心臓の鼓動が早まるのを感じ、無意識に左胸へと右手を当てる。

  


「見た目は全くの人だ。  おまけに言葉まで話しやがる。  アレをあそこで逃していたら、あの時以上に被害が広がるのは確実だっただろう」


「って事は、   そのスライムを倒したのか?」



雄太の心臓の鼓動がさらに早くなり、雄太の額から嫌な汗が流れ、頬を伝わり、顎の先から地面へと垂れ落ちる。



「あぁ。  誰かの放った攻撃が偶々スライムのコアを破壊したのか、そのスライムは黒い霧の様になって消えていったよ。  あの時のヤツの顔は今でも忘れられない」



カミールは指で目尻をつまむ様にして抑え、再度目をカッと開く。



「コアを破壊されて消滅するまで、奴は、まるで死にゆく人間の様に『死にたくない』と『死ぬのは嫌だ』と喚き散らしていたよ」



雄太は胸を押さえていた腕に力が入り、ギュウっと膨張のスーツを握りしめる。


そして、少し震える声でカミールへと尋ねる。



「・・・そうか。  それで、そのスライムの見た目は、どんなん、だったん、だ?」



雄太の心臓を押さえている手は震え、顔からは汗がポタリポタリと垂れ落ち続ける。


そんな、確実に異常な状態の雄太のおかしな姿を見たカミールは、心配そうに雄太へと視線を向ける。



「お、おい。  大丈夫か?  体調でも悪いのか?」



そして雄太へと手を伸ばそうとするが、ソレを雄太は手を前へと出して制する。



「大丈夫だ。  なんでもない。  ソレよりもスライムの見た目だ」


「あ、あぁ。  10代後半くらいの若い少年の姿だったよ」




かミールの言葉を聞いた雄太は、安堵するかの様に盛大に息を吐き、強張っていた身体の力がガクンと抜け、軽く足をよろめかせた。



「本当に大丈夫なのか?  顔色が悪いぞ」


「大丈夫だ。  問題ない」



雄太は無意識の内に硬くなっていた身体をほぐすかの様に、大きく深呼吸をしながら両腕を広げる。



「そうか。  そんなスライムじゃ、狩るのは大変そうだな」


「大変なんてもんじゃない。  いくら君が強いと言っても、1人で狩れる様なモンスターでないのは確かだ。   俺が聞いた話じゃ、他の場所でも同じ様な人型スライムが多数目撃されて、ソレ相応の被害が出ているんだ。  長い間、魔族がナリを潜めていると言うのも怪しいが、最近では、もっぱら人型スライムによる被害の話が尽きないな。  ソレを知ってか知らずか、君がスライムを探していると聞いたもんだから、  君はそんな危険なスライムを追う理由があるのかと思ってな。  例えば、身内や知り合いの仇とか」



カミールは少し悲しげな表情をするが、雄太は笑って答える。



「仇って訳ではないが、ちょっとした依頼と言うか、スライム探しと言うか、趣味?と言うか・・・  まぁ、 俺はスライム狩りを生業にしてるんだよ」


「これまた、  こんな大変な時に・・・  他人の生き方にとやかく言える様な事をやっている様な俺ではないが、これだけは言える。   スライムには気をつけるんだ。  アレはもう、最弱のモンスターではなくなっている。  下手したら魔族より危険だっていう奴もいるくらいだからな」


「あぁ。  それは確かにヤバそうだな。   精々、増長せずに十分に気をつけるさ。  これでも、俺はスライム狩りのプロだからな」


「クックックックックックッ──   スライム狩りのプロか。  クックックッ──   一昔前までなら酷く馬鹿にされてる様なフレーズだな。   まぁ、今では逆の意味で馬鹿にされそうだがな。   お?  どうやら話はついた様だな?」



雄太の言葉を聞いて笑うカミールは、スライムの話をする前の様な表情へと戻り、門の箇所で手を振るオリカへと視線を向けた。



「そうだな。  スライム狩りのプロとか馬鹿げてるよな」



雄太もカミール同様に門前で手を振るオリカの姿を捉え、表情を表情を柔らかくさせながら門の方へと向かって歩を進めていく。



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