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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 2. 第1章 新たな世界 編
272/290

272. 誰でもできる簡単なお仕事

門兵に言われた通り、雄太は元居た大森林へと戻ってきた。


森と草原の切れ目を眼下に、雄太は森の奥へと向けて空を駆けて行く。


門兵には森の入り口まで歩いて2時間程かかると言われていたが、スゴイ速さで空を駆ける雄太は、ものの5分で森の入り口へと到着した。


また、森の奥へは行くなと言われていたのだが、転移して直ぐに爆散させたモンスターの脅威を考えた雄太は、アレなら問題ないと言う事で入り口から更に森の奥へと向かう。



ここら辺でいいか?



ある程度奥へと向かっていた上空で足を止め、そのまま森の中へと駆け降りる。



地面へと足を着けた雄太は、直ぐ様地面へと膨張を展開し、寄生変形を辺りへと振りまく。



これでモンスターが来ても把握できんだろ?


って言うか、ドロップの── 


──何つったっけ?


まぁ、地球みたいにモンスターをバカ喰いしたら、ドロップが手に入らないから気をつけないとな。



雄太は地面へと展開した膨張へとモンスターは捕食はしない様に意識を向ける。



「貴様、また奇怪な事をしておるな」



雄太の頭の上にいるラキは、目を細めながら森の中に散って行った霧状の膨張へと視線を向ける。



「ん?  これか?  これは、モンスターや周囲を感知する為だ。  俺自身、スライム以外はほとんど感知能力的なヤツがないからな。  って事で、こうしてスキルで補ってんだよ」


「ホウ。  殊勝な事で」


「なんで上から目線なんだよ。  んじゃ、お前はモンスターの探知できんのかよ?」


「モンスターの気配を探るなど造作もない。  貴様がどうしてもと言うのであれば手伝ってやらんこともないがな」



ラキは腰に羽を当てながら雄太の頭の上でふんぞりかえる。



「いや、いいや。  モンスターはもう捕まえたから」


「は?  何を言っておるのだ貴様は?  強がりにも程があるだろうに」



ラキはニヤニヤとしながら足元の雄太へと視線を向ける。



「強がりじゃねぇし。  ってかホレ、来たぞ」


「何が来たのだ?  モンスターが来れば私が、教え──!?」



雄太が指をさした方向には、膨張の触手によってグルグルに拘束されたモンスターが、コレまた地面に展開された膨張によって、まるでベルトコンベアに載せられているかの様に数体並んで運ばれてきた。



「さぁ。  仕事の時間だ」



雄太は腰に刺している短刀を抜き取って、目の前で膨張でグルグル具捕縛されて並べられているモンスターへと突き刺した。


モンスターは捕縛されている膨張から逃げる事も声をあげることもできずに、まるでまな板の魚の様に雄太に止めを刺されて生き絶える。


息絶えたモンスターは、門兵が言っていた様に、息絶えたと同時に身体の上へと色々な多角形のガラスの様なクリスタルの様な透明の薄い板を発現させ、板へと色を着ける様にモンスターの身体の一部が板へと吸い込まれて行く。



「簡単なお仕事だな。  残った部分は捕食して膨張の糧だな。  そんじゃ、どんどん行くぞ」



雄太の指示に従って、地面に張り巡らされている膨張が次々と雄太の前へとモンスターを運んできた。



「モンスター素材の買取とか、どんな金額がつくかさっぱり分からんし、指定の金額に足りないってのも後々面倒だから、今のうちに狩れるだけ狩っとくか」



ナイフで止めを刺していた雄太は、次々と目の前へと運ばれて来るモンスターを、流れ作業で来ては刺す、来ては刺す繰り返す。


雄太が止めを刺した後は、膨張がソウルとその他を振り分け、ソウルは地面へと積み上げられて行き、ソウルが抜かれたその他は、地面へと広がる大きなすり鉢の様になっている膨張へと投げ入れられて行き、そこで捕食して膨張へと変換された。


雄太の頭の上にいるラキの目に映る光景は、最早、命のやりとりが左右される狩りと呼べる様なものではなく、ライン工の単純で簡単な流れ作業であった。



「貴様・・・   異常過ぎるだろ・・・   こんなもの狩りと呼べんぞ・・・」


「あぁ?  なんだよクソ鳥!  思った以上にモンスターが多くて、今、忙しいんだよ!  お前も人型になって手伝え!」  



驚愕の表情で固まっているラキは、雄太によって理不尽に怒られ、その声で我へと返る。



「手伝えるか!  と言うか、そもそも私は地上の事には干渉できん!」


「使えねぇ!  マジでお前使えねぇ!  マジでお前何しにこの世界に来たんだよ!?  俺のサポートで来たんじゃねぇのかよ!?  微塵もサポートできてねぇんだけど!?」


「私はアレを捉える為に貴様をサポートするのだ。 ソレ以外は私は何者にも干渉せん!  と言うか、この際だからはっきりと言わせてもらうが、そもそも、貴様は私の手伝いとか要らぬだろ?  こんな異常な異能を持っている貴様に、私のサポートはなの必要か?  と言うかもう、私を地球に帰してはくれんか?  貴様1人でアレの捕獲も何もかも全て出来るだろ?」


「・・・・・・」



ラキは半ばヤケになりながら雄太の頭の上で不貞寝するかの様にゴロリと寝転がった。


雄太は黙々と手を動かしながらも、自身の頭の上で寛いでいるインコに呆れかえって、ガイアへと文句言うかの様に天を仰いだ。



「ハァ〜。  もうなんでもいいから、お前、俺の邪魔だけはすんなよ。  なんならお前の目標のモノを見つけるまでどっか行っててもいいぞ」


「そうしたいのはやまやまなんだが、貴様を監視すると言う目的もあるのでな。  私としても色々とこの世界を見て回りたいのだが、渋々こうしておるのだ。  全く、せっかく地上に顕現できたと言うのに、憂鬱で堪らん」



ラキは寝転がりながら盛大に溜め息を吐いた。



「その言葉そっくりそのまま返すわ。  なんで俺が口煩い姑みたいなヤツと四六時中一緒に居なきゃなんねぇんだよ・・・」



雄太はガイアとラキへの怒りを発散するかの様に、次々と運ばれてくるモンスターへと短刀を突き刺した。












─2時間後─


雄太の背後には山の様な色とりどりのソウルの山が積み上がっていた。


そして、その山を見ている雄太は、しまったと言う様な顔をしながら額に手を当てて盛大に溜息を吐いた。



「やっちまった・・・   どれがデカいモンスターのヤツだったか忘れてしまった・・・」



雄太は色々な色を灯した様々な形のソウルへと視線を彷徨わせるが、どの色の形やソウルがどのモンスターのモノだったのかを把握できておらず、乱獲したものの、種類毎に全く整理ができていない状態だった。



「オイ・・・  問題はそこじゃないだろ。   問題はどうやってこの量を持ち帰るかだろ」



そんな色とりどりに輝く薄い板の山を見つめているラキは、驚きと共に呆れかえっていた。



「量は別に気にしなくて良いんだよ。  こんなの、1個も100個も俺にとっては同じだ。  ソレよりも、どれが高く売れるのかって事だな・・・  流石にコレ全部見せて査定してもらうのも時間かかりそうだしな」


「いや・・・  コレを全部見せるのはアウトだろ。  査定の時間云々ではなくて、根本的に量の問題だと思うぞ」



雄太は腕を組んで顎に手を当て、この山をどうやって売るかを考えるが、ラキも同じ様に羽を組んで顎に手を当ててはいるが、戦闘らしい戦闘を一切せずに、これだけの量のモンスター素材を、2時間そこらでライン工の作業的に量産した事に頭を痛めていた。



「ま、いっか。  どうにかなるだろ」


「いや・・・  どうにかなるモノなのかコノ量は?  余裕で1,000に届いている数だろ?  と言うか、貴様、この森のモンスターを狩り尽くしたのではないか?」


「いや、流石に狩り尽くしてはないぞ。  俺だって常識くらいはある」


「どの口が常識を語っておるのだ?  貴様の常識は何次元に存在しておるのだ?」



ラキは呆れ果て、雄太の力について考えるのを止める事にした。



「とりあえず、入れ物だな。   こんな感じでいいか?」



雄太は膨張を操作して小さな麻袋の様なものを発現させた。



「オイ。  なんなのだその小さな袋は?  コレだけの量を狩っておいて、まさか、ソレに入るだけしか持って行かないと言う事はしないよな?  貴様は快楽殺人主義者か何かなのか?  3角形に切ったメロンやスイカの頂点だけを食べたりするのが好きなのか?」



ラキは雄太が膨張から発現させた、バスケットボールが1個だけしか入りそうもない袋を見て口角を引くつかせる。



「ばっか!  んな勿体無いことするか!  折角、俺が汗水垂らして集めたモンだぞ!  全部持って行くに決まってんだろ!」


「ソレは、アレか?  今日はその袋に入るだけ持って行き、残りはここに埋めて隠しておくと言う算段なのか?  と言うか、貴様は微塵も汗水一滴垂らしておらぬではないか。  途中から飽きたのか、水の様なソファーを発現させて、ソレに寝転がって眠り始め、運ばれてくるモンスターに止めを刺してしたのも貴様の操る触手であっただろうが・・・」


「ばっか!  俺は目を閉じてスキルを操るのに集中してたんだよ!」


「次々に際限なく運ばれて来るモンスターと、余りにもオートメーション化された無限に動き続けそうな狩りと呼べるのかも分からなくなってきたこの光景に心配になった私が、酷く焦りながら貴様を起こしていたのは、この異常な光景を見た私の頭がおかしくなったからなのか?   それに、寝起きの第一声が、寝ぼけ声で『起こしてくれてありがとう』と言っていたのは誰だ?」


「・・・・・・」



ラキの座る雄太の頭の後部には、グシャッとした寝癖がついており、ラキは、アホ毛の様に跳ねている雄太の寝癖をグイグイと引っ張った。



「まぁ・・・  人生、  色々あんだよ」



雄太は明後日の方に顔を向け、遠い目で木々の隙間から見える光へと視線を移した。



「確かに・・・  貴様と過ごしたこの短時間だけで、私の中の常識は音を立てて崩れていったがな」



ラキは目の前にあるキラキラと光る薄い板が積み上がっている山を見て無表情となる。



「それで、どうするのだ?  今日はその袋だけなのか?」


「あ、あぁ。  そうだったな。  いや、全部持って行くぞ」


「貴様が操るあの触手を使って運ぶのか?」


「いや、こうやって普通に」



雄太は右手を山積みのソウルへと手を翳した。



「な!?」



雄太が山積みのモンスターのソウルへと手を当てると、そこにあったソウルの山が一瞬にして消えた。


その一瞬の出来事を見たラキは、盛大に驚き、驚愕の表情のまま固まった。



「俺のスキルにある収納の中に入れたから、同じくスキルで作ったこの袋からいつでも好きな量が取り出せる。  そんな魔道具がこの世界にあれば、御の字で、なければ、日を改めて小分けにして販売って感じだな」



雄太は膨張で発現させた麻袋をゴソゴソとしながら青いソウルを取り出し、頭の上に居るラキへと見せた。



「・・・・・・」



ソウルをラキへと見せて袋の中へと仕舞った後、手にしていた麻袋も消し去った。



「これでしばらくの路銀には足りるだろ。  そんじゃ、日が暮れない内に街に戻るぞ」


「ちょっ!?  いきなり──!?」



雄太が跳躍するために膝を曲げて屈むと、ラキは雄太の頭から振り落とされそうになってしまい、咄嗟に雄太の髪を掴んでしがみ付いた。


空高く跳躍した雄太は、最高到達点まで達すると、寸分違わずに街の方向へと向けて空を駆ける。



「お、オイ!  急に走り出したが、この方角で合っておるのか!?」


「あぁ。  問題ない。  街の壁には既にマーキングしといたからな。  って言うか、街まではもう、転移でも移動できるんだけど、知らない世界の景色は色々と見ておきたいからな」



そう言う雄太は、空を駆けている途中で足元からスノーボードの板の様な形の膨張を発現させて自動で飛行させ、飛んでいる自身へと隠密を発動させて姿を消し、行く時は見る余裕がなかった眼下の景色へとゆっくりと視線を移し、異世界の風景を眺め始めた。



「貴様はもう何でもアリだな・・・  貴様のやる事にいちいち驚くのも馬鹿らしくなってきたわ」



ラキは顔を撫でる心地よい風に目を細めながら、雄太と同じ様に異世界の風景へと視線を向けた。



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