27. ポイズンスライム
お待たせしました。
引き続き、お楽しみいただければです!
「ウっ、ううっ、ヒック、うぇ゛っ、シクシクシクシク・・・ わたしの足がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・ ひっく、え゛っく・・・」
腕ばかりを警戒していたところのアシッドスライムによる予期せぬ足への接触により、エルダの右足は無残にもくるぶしくらいまで溶かされ、雄太の膨張で身体を得ているエルダに接触したアシッドスライムはエルダの足を溶かしながら吸収された。
「膨張も難なく溶かすとかホントヤバかったな・・・ 膨張で身体中を覆っていても、あんなので触れられたらマジでアウトだろ・・・」
足を溶かされた事で身体を折り曲げて縮こまりながら横になって泣いているエルダを無視し、雄太はタバコを吸いながら獲得したスキルを確認する。
─────
橘花 雄太(25)
ユニークスキル:
【擬装】 (アクティブ)
-【収納】 (アクティブ)
-【超越】 (パッシブ)
-【並列思考】 (パッシブ)
-【スライムスーツ】 (アクティブ) LV 5
<スライムグラトニーベース>
・身体強化 (パッシブ)
・同属察知 (パッシブ)
・同属捕食 (パッシブ)
・スライムナイト:硬化変形 (パッシブ) 衝撃吸収 (パッシブ)
・スライムソルジャー:斬撃変形 (パッシブ)
・スライムメイジ:膨張変形 (アクティブ)
・スライムスナイプ:狙撃変形 (アクティブ)
・スライムジェネラル:統率変形 (パッシブ)
・アーススライム:アースエンチャント (パッシブ) 土属性耐性 (パッシブ) 質量追加 (アクティブ) 無機物捕食 (アクティブ)
・エルダースライム:意思疎通 (パッシブ) 造形変形 (アクティブ)
・アシッドスライム : New
─────
「あの膨張を溶かす程の威力は期待大だな。 良い感じのスキルであって欲しいな」
雄太は期待を込めながらアシッドスライムのスキルをポップアップさせた。
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【アシッドスライム】
・溶解 (アクティブ)
膨張から溶解液を排出
・溶解耐性 (パッシブ)
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「ヨッシャー!! いい感じの来たぞ! 溶解の耐性まで来た! これで難なくアシッドスライムも吸収できそうだな」
アシッドスライムと同じスキルや耐性を得られた事で、次からアシッドスライムの吸収を恐れる事が無くなった雄太のテンションは爆上がりしており、逆に足を溶かされたエルダは、足と一緒に心までもが溶かされてしまったのか、まるで凄いトラウマを植え付けられたかの様にテンションがダダ下がっていた。
「外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い・・・」
「・・・・・・」
雄太に羽交い締めにされながら、目の前で自身の足をゆっくりと溶かされた事でトラウマを抱えたエルダは、股の間に両手を挟んで横になりながら一人でブツブツと呪文の様に何かを唱えていた。
「・・・ おい・・・ いい加減にしろよ。 ちゃんと足だって問題無く治ってるだろうが。 ブツブツ言ってないでさっさと次行くぞ」
雄太が先を促すもエルダは全く反応せず、起き上がろうとする様子も見せずにそのまま横になりながらブツブツと何かを唱え続けていた。
「あぁぁぁもうっ! 面倒臭ぇなおい! 解除ぉぉぉぉ!」
雄太は全く起き上がって来ないエルダが面倒臭くなり、エルダの発現を解除する。
『外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い外怖い・・・』
「!? ひぃぃぃぃぃぃ!? 怖ぁぁぁぁぁっ!? 何コレぇぇぇっぇ!? マジで怖いんですけどぉぉぉ!? 頼むから俺の頭の中で何かブツブツ言うの止めてぇぇぇぇ!! こっちの気が変になるわぁぁぁぁぁ!!」
エルダの発現を解除した途端に雄太の頭の中ではエルダがブツブツと何かを呟いている声がノンストップで響き渡り、雄太は得も言えぬ恐怖に襲われながら恐怖で顔を引きつらせた。
「はっ、発現んんん!! ──ハァハァハァハァハァハァ! オマエ、頭おかしいんじゃねぇの!? 怖すぎて発狂するかと思ったわ!! 俺の頭の中でブツブツ言い続けるのマジでやめろって! 夢に出てくるだろうがぁぁ!!」
再度発現されたエルダは雄太を無視して地面で足を抱えてブツブツ言いながらコンパクトに座っており、アシッドスライムに溶かされた心の傷の回復の兆しが全く見えなかった。
「クソっ。 マジで面倒臭ぇな・・・ 仕方ねぇ、アレでいくか・・・」
雄太は質量追加でエルダの質量を無くし、エルダを膨張の紐で繋げながら風船の様に引っ張って動いた。
心をアシッドスライムに溶かされたエルダを風船の様に引っ張りながらスライム察知で見つけた普通のスライムとアシッドスライムを狩っていると、またしても見慣れぬ色のスライムを発見した。
新たなスライムは毒々しい光沢のある紫色で、見た目からも明らかにコレがポイズンスライムだと言う事が分かった。
ポイズンスライムの毒々しい色は、膨張で触るのも躊躇われる程の禍々しさを持っており、雄太は一瞬、横で浮いているエルダをそのままぶつけてやろうかとも思ったが、これ以上エルダが壊れるのは今後の雄太の生活に支障が出かねないと判断し、腕に発現させた膨張を長く伸ばしてから触って吸収する事にした。
雄太は膨張を鞭の様に3m程伸ばし、少し離れたところからポイズンスライムへと触れる。
ポイズンスライムへと触れた膨張は、触った先から凄い速さで紫色に変色しだし、明らかに毒が膨張へと侵食してきている感じで膨張の発現先にいる雄太の元へとどんどんと毒が迫って来た。
「ヤバっ!? 速っ!?」
雄太はポイズンスライムの毒の侵食の速さに焦りながらも膨張を更に伸ばしていき、5m程伸ばしたところでやっとポイズンスライムを吸収する事ができた。
『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』
「ふぅ〜。 流石は2層と言うか何というか、やっぱり簡単に一筋縄じゃいかない感じだな」
雄太は5mまで伸ばした膨張が4m半くらいまで紫色に染まっているのを見ながら、いつの間にか汗が吹き出ていた自身の額を左腕で拭った。
4m半まで紫色に染まっていた膨張は、新たなスキルを獲得した途端にだんだんと通常の透けて赤黒い状態へと戻っていった。
「毒への耐性を獲得した感じかコレは?」
─────
橘花 雄太(25)
ユニークスキル:
【擬装】 (アクティブ)
-【収納】 (アクティブ)
-【超越】 (パッシブ)
-【並列思考】 (パッシブ)
-【スライムスーツ】 (アクティブ) LV 5
<スライムグラトニーベース>
・身体強化 (パッシブ)
・同属察知 (パッシブ)
・同属捕食 (パッシブ)
・スライムナイト:硬化変形 (パッシブ) 衝撃吸収 (パッシブ)
・スライムソルジャー:斬撃変形 (パッシブ)
・スライムメイジ:膨張変形 (アクティブ)
・スライムスナイプ:狙撃変形 (アクティブ)
・スライムジェネラル:統率変形 (パッシブ)
・アーススライム:アースエンチャント (パッシブ) 土属性耐性 (パッシブ) 質量追加 (アクティブ) 無機物捕食 (アクティブ)
・エルダースライム:意思疎通 (パッシブ) 造形変形 (アクティブ)
・アシッドスライム : 溶解 (アクティブ) 溶解耐性 (パッシブ)
・ポイズンスライム : New
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雄太はステータスを出してポイズンスライムの箇所をポップアップさせる。
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【ポイズンスライム】
・毒爪 (アクティブ)
膨張に毒の爪を出現させる
・毒耐性 (パッシブ)
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「やっぱり毒耐性を獲得しているな。 今度から新しいスライムを発見したら、真っ先に吸収して耐性なり何なりを獲得してから狩りをする必要があるな・・・ 1層と違ってマジで面倒臭いな・・・ まぁ、丁度良いし、ここで新しいスキルの確認をしておくか」
雄太は横でフワフワ浮いているエルダを無視して新しく獲得したスキルの確認をし始める。
「先ずは【溶解】! っと」
雄太が溶解を発現させると、右腕に纏っていた赤腕がアシッドスライムの身体と同じ様な半透明な緑色へと変化した。
「なんか蛇とかカエルみたいな感じだな・・・ ビビッドカラーすぎて目が痛ぇな・・・」
変化した自身の腕の色に文句を言いつつも、試しにその辺に落ちていた石を触ってみると、エルダの足を溶かした時と同じ様に「ジュ〜」と言う音を経てて煙りをあげながら石を溶かした。
「ヤベーなコレ・・・ こんなので殴ったらスライムとか関係なくどんなモンスターでも確実に殺れるんじゃねぇか?」
雄太は再度、溶解を試す様に溶解の腕で地面を触ってみると、これまた「ジュ〜」と言う音を経てながら地面を溶かして掌の形の穴を開けた。
「・・・これを全身に纏っていたらマジで無敵だと思うんだが・・・ いや、たかがスライムのスキルだぞ・・・ 俺の気のせいだろ・・・ とりあえず次いくか・・・ 【毒爪】!」
雄太はたかがスライム、されどスライムと言ったグルグルと渦巻く自身の思考を切り替えるかの様に溶解を赤腕から解除し、替わりにポイズンスライムから獲得した【毒爪】を赤腕へと発現させた。
すると、右腕に発現させていた赤腕の指先が濃い紫色へと変色し「グググ」っと鋭利に尖り始める。
鋭利に尖った指先は、まるで猛禽類の指先を思わせる様に尖っており、膨張で大きくなった薄く赤黒い掌と相まって厨二心を擽られる見た目へと変貌した。
雄太は変貌した指先の掌を開いたり閉じたりし、まるで少年の様に目をキラキラと輝かせて頬を紅潮させながらじっくりと眺めていた。
「・・・ カッコいいなこれ・・・ ──ハっ!? いかんいかん! 俺はもう25歳なんだぞ! 俺を無意識に純真無垢な童心へと戻すとか、なんて素晴ら──いや、けしからんスキルなんだ!! こんなけしからんスキルなんてずっと使い倒してくれるわぁぁぁぁ!!」
と言いながら雄太は無意識に左腕にも膨張と毒爪を発現させ、右足をピンっと伸ばし、左足を曲げて立ち、右腕を上段で引いて、左腕を下段で伸ばしてと、まるでどこぞの少で林な拳法の構えの様な厨二丸出しなポーズを取ってしまっていた。
ジぃぃ〜〜
「「・・・・・・」」
雄太が厨二丸出しのポーズを取っていると、空中で浮いていたエルダが雄太を馬鹿を見る様な、痛い者を見る様な目で見つめており、エルダに見られている事に気付いた雄太はエルダと視線があった瞬間に必死で居住まいを取り繕って「ゴホン」と咳払いをする。
「これはアレだ。 スキルの検証であって、決してアレな訳ではない。 ──分かるだろ? 念の為もう一度言うが、決してアレな訳ではないからな」
ジぃぃ〜〜
「「・・・・・・」」
「だ、だからそんな目で俺をみるなぁぁぁぁ!! あぁ、そうだよ!! 確かにカッコいいって思ったよ!! って言うかこんなのが出てきたら誰だってカッコいいって思うだろ!? ホラっ! オマエも発現させてみろよ! 俺の気持ちが分かるから!! 騙されたと思ってやってみって!!」
ジぃぃ〜〜
「「・・・・・・」」
「悪かった。俺が全て悪かった。 今までの事はマジで謝る。ホントゴメンナサイ・・・ だからそんな目で俺を見るのだけはやめてくれ。 お願いですから、──そんな目で俺を見るのはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! その無言もガリガリ俺のHPを削ってるからぁぁぁぁ!! ダメージが半端ないから!! マジで心をエグられ続けてるから! せめて無言だけはやめてくださいぃぃぃ! ホントやめてぇぇぇぇぇぇぇ!! これ以上無言でそんな目を向けられると本当に立ち直れなくなるんでマジでやめて下さいぃぃぃ!! お願いしますぅぅぅぅぅ!!」
雄太は浮いているエルダへと向かってジャンピング土下座をし、真っ赤になった顔を隠す様に自身の額を地面へと擦り付けた。




