259. 原点回帰
雄太に触れられスキルを発現されたエルダは、身体が光の粒子に包まれて一糸纏わぬ光の姿となり、くるりと身を翻して雄太の背後へと回り、気高くも、慈愛に満ちたりた顔で、両目を閉じながら雄太を背後から優しく抱き寄せ、光り輝きながら雄太へと融合した。
と言った様な、何処ぞのアニメの様な綺麗な融合はなく、雄太に触れられている頭からグニャグニャとスライムへと変わっていき、雄太を取り込み捕食するかの様に雄太の左手から順に、ゆっくりと雄太を青いスライムの身体で覆っていった。
「・・・うっぷ──」
まるで、エルダと言う、蠢く青い未知の物体が自身を捕食する様に、モゾモゾ、ニュルニュルとゆっくりと身体へと纏わりついて来る様子に嫌悪感を覚えた雄太は、顔を引き攣らせながら若干の吐き気を催した。
スライム状のエルダが雄太の全身へと纏わりつくと、更にエルダのスライムの身体がモゴモゴと蠢きながら、まるで、全身タイツの様なスライムスーツの姿へと変わり、遅れて、籠手や胸当て、肩当てや脛当て、ブーツと言った様な形へと各部分が迫り上がって変貌した。
エルダがスライムスーツとなるまでに、約5分ほどの時間を有し、雄太は、途中でエルダを纏うのをやめるかどうかと言う事を必死に悩み考えた程であった。
雄太へと纏わりついて変貌したエルダは、エルダの趣味が多望に含まれているのか、何処ぞの特殊部隊の様なタクティカルチックな姿であり、これからマルバスと戦うと言う事を考えると、どこか頼りない様な出立ちであった。
『どぉ! ユータ!』
しかも、頭に被っているタクティカルヘルメットの様な物からは、ご丁寧に耳元へとエルダの声がインカムの様に聞こえており、細部へとエルダの拘りが見てとれた。
「あぁ・・・ すごいですね・・・」
雄太は無表情でエルダへと答えるも、当のエルダは褒められたと思っているのか、鼻息を上げながら言葉を続けた。
『ゴーグルもあるのよゴーグル!』
エルダの言葉とともに、ヘルメットに着いていたゴーグルが勝手に下がって雄太の顔を覆う。
「全自動ですね」
『凄いでしょ! もぉ、このエルダ戦闘スーツ『乙型』は覚えたから、次からは一瞬で換装できるわよ! わたしとユータの夢のコラボが成した技よ! 急いで商業ライセンス取るわよ!』
「あぁ。 そうだな・・・ 夢のコラボだな・・・」
雄太は死んだ魚の様な目でエルダへと返事をする。
「それで、エルダさん。 これの防御力や攻撃力は如何程で?」
『そんなのある訳ないじゃ無い! ただ単にわたしを纏っているだけなのよ! 何寝ぼけた事言っているのよ! そんなのユータの担当でしょ!』
「ですよねぇ〜・・・」
なんで俺、コイツを必要としてたんだっけ・・・
雄太は、半地下の隙間から見える空へと視線を移し、紙装甲を纏う意味を思い出す様に考え始めた。
『見た目は大事よ! ブラフよブラフ!』
じゃぁ、こんなショボい見た目じゃなくていいじゃねぇか・・・
雄太は、エルダの色々とブッチゃけてる言葉へと心の中で突っ込むも、取り敢えずエルダを纏う事には成功したので、この後は自分でどうにかする事にした。
「まぁ、とりあえずお前を纏うことは成功した訳だ。 そんじゃ、ココから色々とイジっていくぞ」
『え? イジる?』
「あぁ。 時として、人はコレを魔改造とも言う」
『え? 魔改、造──?』
「そんじゃ、 ──先ずはコレからだ! エルダ! リンク!」
『ヒぇっ!?』
雄太は、ダラんとさせている左腕へと右手を当て、神経を集中させるかの様にスッと目を閉じ、纏っているエルダを自身の左腕とリンクさせた。
雄太がエルダと左腕をリンクさせた瞬間、雄太の纏っているエルダが盛大にブルっと震える。
『アヒぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
そして、エルダは、奇声を上げながらモゴモゴと大きく波打ち、『ボンっ』と膨張するかの様に、雄太に纏わりついていたエルダ特製の乙型の格好が弾けて水の球体の様な姿となって雄太の身体を包み込んだ。
球体の中にいる雄太が目を開き、左腕を徐に前方へと突き出すと、雄太の左腕にある深紅の奇妙な模様が、まるで水へと染み込んで流れ出ていくかの様に次々と水の球体の様な姿となっているエルダの中へと踊り出でた。
球体の中へと現れた模様は、浮かび上がる様にして球体の外側へとその姿を表し、球体の表面へと深紅の模様を刻みつけた。
『あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!』
雄太のリンクによって模様を刻まれたエルダは、何がどうなっているのかは全く知らないが、酷く痛がっている様であり、雄太を包む蒼い球体に浮かぶ深紅の模様は、赤々とその身を輝かせた。
「そして、各種付与!」
エルダへと模様が定着したのを感じた雄太は、突き出していた左腕の手の平を広げ、球体の様なエルダの内部へと、雄太の思い描く色々なスキルを付与し始めた。
雄太がエルダの内部へとスキルを付与し始めると、雄太が広げている手の平から模様が現れてエルダの内部へと張り付いていき、同時に球体の周りにある模様からは、すごい勢いで魔素を集める様な集気音が鳴り響き始めた。
雄太の手の平から次々と出て来る模様は、段々とエルダの内部を幾重にも埋め尽くしていき、蒼かったエルダの球体は、重なる深紅の模様によって、赤黒い球体へと姿を変えた。
そして、赤黒い球体の中にいる雄太は、口元に獰猛な笑みを浮かべながら呟いた。
「【赤腕】」
瞬間、雄太を包み込んでいた球体へと無数の線が入り、皮が剥がれ捲れるかの様に次々と赤いスライムの腕が雄太の背中から現れ、中心にいる雄太の周りへと滞空した。
「やっぱり、 スライムを狩るのは ──コレしかないだろ」
雄太の周りへと滞空している無数の赤腕には、雄太の左腕の様な模様が現れており、ソレを見た雄太は、ニィ〜っと口角を吊り上げた。
「エルダ改め、 スライムキラー ──起動」
雄太の呟きと共に、雄太の周りへと滞空していた赤腕の手の平へと一筋の線が入り、線は次々にばかぁっと開き、ギザギザの歯を持った口が現れた。
「エルダ。 いけるか?」
雄太が虚空へと向けて声を発する。
『ハァハァハァハァ── 人の身体になんて事してくれてんのよ!! フゥフゥフゥフゥ──』
雄太の周りに滞空している赤腕の1本が雄太へと向く。
「勿論、 これの動かし方は解るよな?」
雄太は自身へと向いた赤腕へと視線を向ける。
『愚問よ! わたしを誰だと思っているの! 全てのスライムを統べるエルダースライムのエルダ様よ!』
雄太口角を吊り上げている雄太の口がさらに吊り上がる。
「上出来だ。 そんじゃ、お前の配下にお仕置きに行くとするか」
『何言ってんのよ! お仕置きなんかじゃ生温すぎるわ! わたしへと粗相を犯したスライムは、須く喰らい尽くしてわたしの養分としてくれるわ!』
「クククククク── 怖ぇ〜怖ぇ〜」
赤腕によって雄太の身体が持ち上がり、蜘蛛の脚の様に動いて半地下の階段をゆっくりと上がり、雄太が闇夜に包まれた道路へと姿を表す。
「場所は分かるか?」
『ウッスらだけど、多くのスライムが地上に集まっている気配を感じるわ』
「そんじゃ、 先ずはそこだ」
雄太の言葉と共に、蜘蛛の脚の様に道路へと手を着いている赤腕が屈む様に折れ曲がり、道路へと無数の亀裂を走らせながら空へと向かって飛び上がる。
雄太が空へと飛び上がると、雄太の背中の膨張が変形し、3対のコウモリの翼の様な形へと変貌してバサッと広がる。
「さぁ──」
「『──狩りの始まりだ(よ)』」




