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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第5章 世界と異世界 編
216/290

216. カーチェイスかよ!?

前方の母親を連れ去ったワゴン車からは銃撃や魔法が、後方からは空を滑空してくる、まるでガーゴイルの様な出立ちで全身真っ黒な装いの魔族達が雄太たちの乗っているセダンを挟み込む。


「なんなんだよコレ!? 完璧に挟まれてるじゃねぇか!? って言うかコレ、完璧に計画されていた事案だろ!?」


雄太は現在の状況に対して吃驚しており、芽衣と運転手の磯島は、無言で眉根を寄せて険しい表情となっている。


「なにコレ!? 一体どうなってんの!?」


雄太は前を見たり後ろを向いたりと忙しなく顔をキョロキョロとさせながら芽衣へと説明を求めた。


「・・・ 昨日、私がお母様の泊まっているホテルへと赴き、本日の事についてお話をしましたところ、お母様が真偽を確認するとか言ってギルド本部へと連絡を取りました」



え?


マジで?



「なにしてくれてるのっ!? そんなの殺してくれって言っている様なもんじゃねぇか!?」



雄太は芽衣の報告を聞いてさらに驚いた。



「はい・・・ 私もお母様を止めたんですが、母は、その・・・ 責任感が強いと言いますか・・・ 理不尽が嫌いと言いますか・・・」


「静江様は正義感の塊の様なお方でございます」


「バっ・・・・・・」



雄太は、揃いも揃ってイカれているこの家族に対してうまく言葉が出てこなかった。


そうこうしている内にも、前方から発せられる魔法や銃撃が酷くなり、雄太たちの前を走っている多くの車は激しく大破したり、事故を起こしたりとひどい有様になっていた。



「その結果がコレだ。 責任と無謀を履き違えた結果がコレだよ!! 分かってんのか!? 権力がある奴らなんてのは、その他大勢なんて全く考えてないんだよ! 如何に自分の地位をこのまま保ち続けるかって事しか考えてねぇんだよ! どうせこの襲撃も魔族が現れたとかって言って、速攻で切り捨てるぞ! そうなったら、ギルドの奴らの思うツボじゃねえか!」


雄太は、会社によって不当に解雇された事や、罪を擦りつけられた事を思い出しながら芽衣へと向けて大声を上げた。



「アイツら、コレを機に魔族の存在に気づいたじゃま者であるアンタの母親を消して、そして、このままこの魔族たちに罪をなすりつけて、自分達の隠れ蓑にするぞ!?」


「ごめんなさい・・・」


「クソ! なんで俺にいち早く連絡しなかったんだよ! その結果がこのクソみたいなカーチェイスかよ!?」



雄太は苛立たしげにドサリと深く背を持たれさせながら大きなため息を吐く。



雄太がこの状況について考えていると、やはり騒ぎが大きくなっている為か、パトカーのサイレンが鳴り響いて来た。



『そこの暴走車両! 今すぐ発砲を止めて、速やかに車両を停止しさせなさい!』



こめかみを指で挟む様に押さえながらこれからについてを考えている雄太とは裏腹に、複数のパトカーが芽衣の母を乗せたワゴン車へと近づいて行く。


この状況でよくもそんな事が言えるなと、こめかみを押さえている雄太が平和ボケで日和ったパトカーの集団を窓から眺めていると、パトカーはワゴン車からの銃撃や魔法によって悉く大破された。


運転手の磯島は険しい顔で次々と大破していくパトカーを躱していくが、その中の1台のパトカーが横転して宙を舞い、地面をバウンドしながらこちらへと突っ込んできた。



「グゥぅぅ!?」



磯島は、前からやって来る、宙を舞ながら激しく地面をバウンドするパトカーを躱す為に大きくハンドルを切ろうとするが、雄太は後部座席から身を乗り出して磯島の手をガッと握って押さえる。



「爺さん。 そのまままっすぐアクセル全開で進め」

 

「ばっ!?───」



磯島は、雄太の取った行動に対して反論しようと、横目で体を前へと乗り出している雄太の顔を見た瞬間、何かを思ったのか、そのまま避けるのを止め、無言でそのままアクセルを踏み込んだ。



「どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがって! こうなったらとことんやってやるからなっ!!」



雄太は磯島のハンドルから手を離すと同時に、背中から複数の赤腕を発現させて、後部座席の左右の窓をブチ破った。



「キゃぁぁぁ!?」



雄太が急に赤腕を発現させて窓をブチ破った事で、芽衣が軽く悲鳴をあげるも、雄太は意に返さずにそのまま車から飛び出た赤腕を操る。


そして、地面をバウンドしながら向かってくるパトカーへと向けて、まるでオモチャの車を扱うかの様に飛び跳ねているパトカーを赤腕で鷲掴みにし、そのまま空いている車道へとそっと置いた。



「ダメだなこりゃ。 普通の警察では話にならねぇ。 木下さん! ジジイに連絡して魔族と戦う準備をさせろ! ジジイにもブレスレットはすでに渡してある! って言うか、ここまで派手にやらかせば、俺が捕縛した魔族を晒すよりも上手い流れを作れるかもしれねぇ!」


「は、ハイ!」



芽衣は雄太の指示にしたがって、腕のブレスレットから木下へと連絡を取り始めた。



「そんで爺さん! あんたはこのまま、あのワゴン車を一直線に追いかけろ! アイツらの攻撃は気にするな! 俺が全て片付けてやる!」


「う、うむ」



雄太の指示を聞いた磯島は、ハンドルをギュウッと握り、更にアクセルを踏んで速度を上げる。



そんな中、後ろのガーゴイルの様に空を飛びながら追ってくる魔族達から、雄太が乗っている車へと向かって色々な魔法が飛んできた。



「クソが! 追いつきやがったか!」



雄太は悪態をつきながら赤腕を広げて後ろからの魔法を防御する。



「シス! こっち来い!」



雄太は助手席へと膨張を発現させ、シスをスライムダンジョンから呼び寄せた。



雄太によって呼び寄せられたシスは、丁度、助手席に座る様な形で発現され、現在の状況を理解しているかの様に落ち着きを見せながら手をちょこんと膝の上で組んで前を向いて座っていた。



「シス! この車を守れ! 俺はあのウザいのを片付けた後に前の奴らを潰してくる!」


「ロジャー」


「橘花さん! ギルマスが代わって欲しいとのことです!」


「手短に!」



すると、雄太のブレスレットへとディスプレイが現れ、怒り狂った木下が大声を上げた。



「小僧ぉぉぉぉぉぉ! 静江はっ! 静江は無事なのかぁぁぁぁぁ!」


「ウッセェっ! そんに大声で喋らなくても聞こえてるっつうのっ!! 無事かどうかで言ったら、”マダ”無事なはずだ! 今から俺が助けに行くところだ! 手短にっつったろ!」


「すまんが、 静江を、 静江をどうか頼む!」


「あぁ! 全力は尽くす! ジジイはこの事を警察にでも自衛隊にでも言いに行け! ギルドの奴らをこのままフェードアウトさせない様にしっかりと脇を固めろ!」


「分かった! 静江の命を狙ったクソ共は、ワシが必ず潰してやる!」



雄太と話す木下は、雄太が今までに見た事がないくらいに怒っており、どこかへと向かって走っているのか、木下の画面が激しく揺れていた。



「シス! そんじゃここは任せたぞ! 木下さん! あんたは何かあった時の為にこの爺さんを守ってやってくれ!」


「ロジャー」


「はい!」



雄太はシスと芽衣へと言葉を発すると、左後方のドアを開けて勢いよく後方の空へと向けてバク宙して飛び去った。


雄太は空中へと飛び上がると同時に、姿を赤兎変え、態勢を整えるかの様に虚空をピョンピョンと飛び跳ねる。



「先ずはお前らだ! って言うか、お前らは表に出てくるのがまだ早すぎるんだよ! おかげでこっちの計画が狂いそうじゃねぇか!」



雄太は上空で思いっきり手足を伸ばして大の字になって空中で減速し、その下を真っ黒な魔族達が飛び過ぎ去って行く。



「って事で、お前らは残らず喰い尽くしてやる!!」



魔族が雄太の下を凄い速度で通り抜けて行くと、雄太は空中を蹴って一気に通り過ぎて行った魔族達へと距離を詰める。



雄太が追いついて来たのを視認した魔族は、後方を飛んでいた5体が前方の5体から離脱し、雄太を妨害するかの様にその場で滞空した。


そして、雄太へと向かって手を伸ばし、各々が各種魔法を打ち放つ。


魔族が放った魔法は、火、水、土、と言った槍の様に尖った魔法であり、そのどれもが、的確に雄太をピッタリと狙い打っていた。



「こんなん、効くかボケぇぇぇぇぇぇぇ!! 喰らい尽くせぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



雄太が向かってくる魔法へと向けて掌をかざすと、雄太の側の虚空がモゾモゾと蠢き出し、放たれた魔法へと向かって、二筋のレーザーの様に青い炎と黒い雷が飛び出した。


青い炎と黒い雷は、放たれた魔法とぶつかり、空中で大爆発を起こす。






ドっ────────ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォオオン!!






大爆発が起きると同時に、爆発から生まれた衝撃波が周りを襲い、その衝撃によってビルのガラスが一斉に割れ、キラキラと輝きながら下へと落ちて行った。



「っ!? 散ったガラスから排除しろ!」

 


雄太がそう告げると、モクモクと煙が上がっている爆発の爆心地より、青と黒の龍が飛び出し、飛び出した黒い龍から無数の細かなプラズマの様な線が空中へと走り、降り注ぐ全てのガラスを灰へと変え、


他の場所では、青い龍より放たれた鱗粉の様な細かい炎によって飛び散ったガラスが火の粉の様に青く燃え上がり、散ったガラスはほぼほぼ排除された。


その光景を見ていた5体の魔族は、いきなり現れた2体の龍に対して驚いており、2体の龍は、魔族の魔法を食い止め、降り注ぐガラスの破片を片付けた後に雄太の横へと戻って滞空した。



「よくやった。 さぁ、今度はアイツらを喰っていいぞ!」



雄太の呟きを聞いた2体の龍は、雄太の前で滞空している魔族へと向けて、燃え盛る青い炎と、迸る黒い雷を発生させている凶悪な顎を大きく開けた。



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