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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第4章 動き出す歯車 編
184/290

184. 再会

雄太に暴食を丸投げされたシス、雄太に責任を丸投げされたギルフォードは雄太の行動に対し唖然となってしばらくの間沈黙する。


その沈黙を破るかの様にギルフォードが口を開く。


「橘花君。分かった。私は君の言葉を信じる。アリアを捕食してくれ」


「そうか。そんじゃシス、やってくれ」


『ロジャー』


ギルフォードの決意、雄太の指示により、シスは縛鎖で捉えているアリアの捕食を始める。


シスが制御している雄太の膨張により、精神体のアリアの意識を崩さない様、細心の注意を払いながらゆっくりと解析しながら足先から徐々に捕食が始まった。


膨張に捕食された箇所から次第に姿を消していき、残すは雄太達に視認ができている胸部から上を残すのみ。


『マスター。ここまで捕食した結果、アリアさんの精神体には2つの精神体がありました。1つはアリアさん本人の、そして、もう一つは魔族の精神体です』


やはりと言うべきか、雄太が感じた様に、アリアは肉体を失ってもなお、魔族によって精神を汚染されており、今回の暴走に至ったと言う事が窺い知れた。


「やっぱり種を植え付けられていたか・・・そりゃ、ダンジョンに縛りつけるとか、転移とか色々やってんだから、種も縛りつける前に植え付けとくよな・・・って事は・・・」


雄太は今まで解放して来たダンジョンの事を思い出し、他のダンジョンで鎖に囚われていた者達も、アリアと同じ様に種を植え付けられているだろうと言う考えが過ぎる。


「クソ・・・面倒くせぇな・・・2度手間かよ・・・」


「どうしたんだい橘花君?」


「いやな、アリアさんに種が植え付けられていたって事はだ、他のダンジョンで囚われていた人達にも種が植え付けられてんだろうなって思っててさ・・・」


「あぁ。例外なくそうなるだろうね・・・」


「マジで面倒だ・・・」


雄太はゲンナリとした顔を右手で覆い隠す様に抑えて俯く。


雄太とギルフォードが話している内に、縛鎖でできた両手の中からアリアの姿は消えていた。


『マスター。第一段階を完了しました』


シスの言葉と共に、縛鎖の両手が開き、両掌の上には、右手に白い小さなスライムが、左手には黒い小さなスライムが蠢いていた。


「こ、これは!?」


掌の上で蠢く小さな2体のスライムを見てギルフォードが声を上げる。


『白い方がアリアさんで、黒い方が魔族です。アリアさんと魔族の切り離しは成功しました。これで問題なくアリアさんを吸収できます』


「よかったな。そんじゃぱっぱとやるぞ。シス。そのまま暴食だ」


『ロジャー。魔族の方はどうしますか?』


「そのまま吸収して膨張の糧にしろ」


『ロジャー』


雄太に言われるまま、シスは巨大な縛鎖の手を操作して握りしめる。


シスが両手を握りしめてスライムを吸収すると、雄太の頭の中へとスキルを獲得するアナウンスが流れて来た。





『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』





(お?スキルを獲得したぞ?)



アリアを暴食した雄太は、とりあえず獲得したスキルは置いておき、地面へと膨張を展開させてアリアを発現させる。


モゴモゴと地面から競り上がりながら蠢く膨張が人の形を作り始め、雄太達の前へと祈る様に胸の前で両手を握りしめながら目を瞑っている女性が現れた。


「ア・・・アリア・・・」


ギルフォードは目を見開きながら姿を現したアリアから目が離せなくなっており、ギルフォードの口から溢れた名前に反応するかの様に、閉じられていたアリアの目がゆっくりと開く。


「こ、此処は・・・」


「アリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


アリアが目を開き言葉を発したと同時に、ギルフォードはアリアへと駆け寄ってその身を強く抱きしめた。


「アリア!アリア!やっと会えた!」


「ギル?」


アリアは驚いた様に目を見開き、胸の前で組んでいた両手をダランと体の横へと垂らす。


「あぁ。私だ。ギルフォードだ」


「こ、これは一体?」


アリアはギルフォードに抱きしめられたまま、ギルフォードの背中越しに持ち上げた自身の両手を見つめる。


「私はもう君から離れない!私はずっと君の側に居る!これからはずっと一緒だ!」


「ギル・・・」


アリアは、持ち上げて見つめていた両手をギルフォードの腰へと動かして強く抱きしめる。


「ギルぅぅぅぅ。グスっ。会いたかったよぉ。ずっと、ずっと会いたかったよぉぉ、ギルぅぅぅぅぅぅ!」


アリアはギルフォードの温もりを感じて自然と涙が溢れ出し、次第に感情が高まって顔をぐちゃぐちゃにしながら大泣きし始めた。


アリアが泣き始めた事で、ギルフォードも同じく涙を流し、お互いに、長い長い再会を喜び合う。


「グスっ。良かったですねぇ〜」


「はい。本当に良かったですねぇ〜」


この光景を見ていた芽衣とミカもつられる様に泣き出した。


鬼達は興味がないのか、ただただ抱き合うギルフォードとアリアを静かに見つめ、日向は感極まったのか、涙を堪える様に顔を上へと向けていた。


『成功して良かったですねマスター』


「あぁ。良かったな」


雄太は、自分のスキルによって1つの幸せを取り戻せたと言う思いと共に、柔らかい表情でギルフォードとアリアを見つめる。








雄太は、ギルフォードとアリアが落ち着くのを待った後に声をかけた。


「ギルフォード、そしてアリアさん。感動のご対面の中すまないが、時間がないからそろそろ本題に進むぞ」


雄太の声を聞いたギルフォードとアリアは、お互いの背中から手を離して雄太へと向き合う。


「橘花君。本当にありがとう・・・」


「橘花さん。グスっ。色々とご迷惑をおかけしました」


雄太へと向き直ったギルフォードとアリアは、雄太へと深く頭を下げた。


「別に礼を言われたくてやった事でもないし、頭をあげろって」


雄太が少し照れながら顔を背けながら言葉を返すが、ギルフォードとアリアは雄太の前へと片膝をついて頭を下げた。


「我、ギルフォードは、再度、橘花君、いや、我がマスターへとここに忠誠を誓う。そして我が身は、マスターの前へと現れた脅威をなぎ払う、決して折れない剣となろう」


「私、アリアもギルフォードと同じく、橘花様へとここに忠誠を誓います」


いきなり片膝をつき、仰々しく近いを立てて来たギルフォードとアリアを見た雄太は、頬をかきながら2人へと答える。


「まぁ、そんなに畏るな。もっと気楽にやれ、気楽に。これからかなり忙しくなると思うから、2人とも手伝ってくれ」


「「はっ!」」


ギルフォードとアリアはさらに深く頭を下げる。


「そんじゃ、これからの事を話すから立ってくれ。そんでみんなも集まってくれ」


雄太の言葉で2人は立ち上がり、周りでこの光景を見ていたみんなが集まった。


「一応、もう一度これからの事を話しておくぞ」


全員が雄太の言葉へと頷く。


「先ずはギルフォードと鬼達で、このダンジョンで俺が捕縛した魔族を外へと連れだしてくれ。それをハロワへと連れて行き、おばちゃんと鈴木さんへと伝える。あの2人ならこれからの事に力になってくれると思う」


「「「はっ!」」」


アリアと言う餌を与えられたギルフォードは、鬼達同様、すっかり雄太の信者となっており、何故か目がギラギラと輝いていた。


「一応、魔族はこの1体を残して、ギルフォードと鬼達が殲滅したって事で。いいな?」


「「「はっ!」」」


「・・・・・・」


雄太はギルフォードの変わりっぷりにドン引きしており、何故そっち側へ行ったんだと言う様な目で、ギルフォードの横に居る鬼達へと視線を向けた。


「・・・そんで、近藤さんは死んだって事にする。魔族に跡形もなくバラバラにされたって事でな」


「え?それじゃ、今、裏ギルドに居る近藤さんはどうするんだい?」


「名前を変えて、裏ギルドで面倒見ればいいんじゃないですかね?どうせ、ギルフォードが抜けたせいで性格も口調も変わってると思うし」


「できなくはないと思うが、どう見ても顔は同じだろ?」


「大丈夫ですよ。この世の中には似た様な顔がいっぱいいるんで」


「・・・・・・」


日向は雄太の適当具合に言葉を返す事ができなかった。


「日向さんはギルフォードと鬼達をサポートしてください。ギルフォードはある程度慣れてると思いますが、今の身分や肩書きでは日向さんの方が力がある」


「あぁ。分かった」


「それで、日向さんのサポートで、ギルフォードと鬼達は魔族の存在をこの世界に発表して世間の目に魔族の姿を曝け出すんだ」


「「「はっ!」」」


「ギルフォード」


「はっ!」


「何かあれば、お前は縛鎖を使って捕縛した魔族を本来の姿へと変身させろ」


「はっ!」


「アレを見れば大抵の人は信じるだろ。ネットと言うネット、メディアと言うメディア、全てを大炎上させろ。そして、シスが作らせている魔道具を配布して、西洋の魔女狩りならぬ、魔族狩りの先頭に立て。お前はこの世界の勇者となるのだ!」


「はっ!だが、そんな大役、私で良いのか?」


ギルフォードは雄太が言う勇者という言葉を聞き、申し訳なさそうに返答する。


「ばっか!お前以外は誰もできねーよ。アリアさんを守りたいんだろ?って言うか、俺の剣になるって言ったんだから、魔族を根こそぎ刈り取るのがお前の役目だろ?」


「そうだったな!了解した!私がその大役をしかと引き受ける!魔族は全て殲滅だ!」


「って事で、お前らも遠慮なく向かってくる魔族はかり尽くしていいからな?」


「「はっ!」」


雄太が鬼達へと指示を出すと、鬼達は目をギラつかせながら笑みを浮かべた。


「それで、次にアリアさん」


「はい?」


「アリアさんはその姿になっても、未だにダンジョンマスターなんだよな?」


「はい。どうやら、その様です・・・」


「って事はここから動く事はできないのか?シス、ちょっと試しに、裏ギルドに居るエルダの所にアリアさんを発現させてみて?」


『ロジャー』


雄太の指示と共に、地面へと展開させている膨張へとアリアが吸収され、その姿が消えた。


『マスター。エルダの下への発現は不可です』


が、すぐにその姿を雄太達の前へと現した。


『どうやら、作成した偽核がダンジョンコアとなり、ダンジョンから移動させる事ができない様です』


「まぁ、全てがそう上手くは行かないわな・・・」


「申し訳ございません、橘花様・・・」


アリアは役に立てずに申し訳ないと言った様な顔で頭を下げる。


「まぁ、そんじゃ、アリアさんには別の事をやってもらうか」


「へ?」


雄太の言葉でアリアが驚き頭をガバッと上げる。


「アリアさん。最下層にある転移装置って作れます?」


「え?」


雄太の突然の言葉にアリアの思考が固まる。


「アレと同じものを作って欲しいです。俺の膨張で」


「え?」


「アリアさんの今の身体は、俺のスキルでできているんですよ。だから、俺の膨張であの転移装置を作る?付与するみたいな事ってできませんか?」


アリアは、雄太の言っている意味が分からず、唖然として雄太を見つめた。



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