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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第4章 動き出す歯車 編
180/290

180. 想い

その後、雄太の指示の元に各自が動き始めた現在。


雄太は右に芽衣、左に日向を抱え、隠密で姿を隠している赤兎状態で空を翔けている。


結構な速度と、高層ビルを見下ろせられるほどの上空にいる事で、日向は再度気を失い、芽衣はキャーキャー言いながらも雄太との空の散歩を楽しんでた。


「橘花さんっ!スゴイっ!凄いですよぉぉぉぉぉ!!空を飛んでますよぉぉぉぉぉ!!」


移動するにあたり、大声は出すなと言い聞かせていたのだが、飛び上がると同時に2人が悲鳴を上げてとても煩かったので、ソレならと雄太は地上へと声が届かないほどの高さへと翔け上がったのだが、日向は途中でダウンしたのだが、芽衣はまるで、遊園地の絶叫系を楽しんでいるかの様に大はしゃぎであった。


元々高所恐怖症だった雄太としては、日向の気持ちはいやというほど分かるのだが、キャーキャーと悲鳴を上げながら高所を楽しんでいる芽衣の気持ちはイマイチ分からない。


「・・・木下さん・・・そろそろスライムダンジョンに到着するから、声をあげるのはマジでやめて・・・」


「無理です!こんな楽しいのに喜ぶなっていうのは絶対に無理です!」


雄太が芽衣とであった当初の、冷たく、ピリピリとしてカミソリの様に尖っているという印象とは違い、今の芽衣は年相応の女性と言った様に、笑顔で雄太との空の散歩を楽しんでいた。


「はぁ〜・・・」


何を言ってもコレは無理だな、と思った雄太は、自身と芽衣を包み込む様に、まるでシャボン玉の様に膨張の膜を発現させて包み込んだ。


「これで姿も見えずに声は漏れないと思うが・・・」


いきなりシャボン玉の様な薄い膜に包まれた芽衣は、「わぁ〜」と感嘆の声を上げながら喜び、まるで御伽の世界にいるよかの様に目をキラキラとさせて雄太が発現させた薄い膜をキョロキョロと見ていた。



雄太は自身と芽衣を覆っている膜をダンジョンゲートにぶつけない様に慎重に降りて行き、ダンジョンの中へ入ると同時に膜をそのまま展開させながら全速力で1層の階段がある広場へと向けて走り出した。


未だに雄太の脇に抱えられている芽衣は、自身を包んでいる膜によってダンジョンの壁にぶつかるという恐怖心が大分薄れており、そのまま安心して雄太に身を任せたまま速い移動を楽しんでいた。


やがて雄太が階段の前へと到着しようとしたところで、雄太がカモフラージュの為とアーススライムがリポップした時に即時に吸収する様に設置した、階段を覆いかぶさっていた膨張がモゾモゾと蠢き出し、雄太に呼応する様に階段を顕にさせた。


雄太はそのまま階段の中へと飛び込んで駆け下りて行き、同じ様に再び膨張で階段を覆い隠した。


裏ギルドの地下駐車場からそのまま飛び出して空を駆け抜けて行き、空を翔けている最中、途中でギルフォードと鬼達を発現させる為の膨張を鳥のフンの様にペッと切り離して準備し、そのままこうしてスライムダンジョンの2層へと走ってきたのだが、その間、ものの15分足らずという異常な早さで到着した。


芽衣や日向を抱えていなければ、5分以内で来れたなと考えながらも、2層の階段を降りきった先で芽衣と日向を下ろし、ミカを発現させた。


「橘花さん!今度また、私を空の散歩へと連れて行ってください!今度は、大きな丸い月と光り輝くたくさんの星が見える夜空を翔け抜けたいです!」


「そんなのは、サンタさんかド○え○んに頼んでください。それか、そこにいるミカでも同じ事が可能と思いますので、ミカに毎日頼んでください」


「無理です。僕はマスターと同じ事はできない自信があります!それだけは胸を張って断言できます!」


「私はその・・・橘花さんと一緒に空の散歩へいきたいかな〜・・・」


「えっ?何か言いましたかっ?ミカ!今度飛び方を教えてやる!」


芽衣の言葉はしっかりと聞こえていた雄太であったが、面倒!無理!と言わんばかりに、敢えて聞こえていないフリをして話をすり替えた。


「・・・本当、マスターは最低ですね・・・」






日向が目を覚ますのとギルフォードと鬼達が来るのを待っている間、雄太はアリアと話ができる様にエルダに指示を出した。


『ユータぁ。クサリちゃんのとこにいる餓鬼と繋いだわよ。話していいわよ』


「おお。ありがと!あ〜。あ〜。聞こえてますかアリアさ〜ん」


雄太は、アリアと頭の中で会話をすると言う事に少し抵抗があった為、目の前に餓鬼を発現させてソレに向かって話始めた。


『はい。聞こえています。お久しぶりです。タチバナ様。その節は色々と助けていただきありがとうございました』


雄太の目の前にいる餓鬼が、口をパクパクさせながらアリアと同じ声を発して喋り出した。


見た目はかなりシュールだが、この方が話している感があるから、まぁ、いいかと雄太はそのまま話を続けた。


「いえいえ、こちらこそ先日は手伝っていただきありがとございました。タイミングも最高でしたし、マジでかなり助かりました」


『お役に立てて何よりです。私もやっと、このダンジョンマスターなる力に慣れてきましたので、ここで何かお困りのことがあれば、その辺に向かって色々とお伝え頂ければ思います。私、ダンジョンマスターの力で、このダンジョン内であれば自由に移動できる様になりましたので、直接お側へと参る事も可能ですので』


「え?」


と驚く雄太が無意識に声をあげるのと同じタイミングで、今までアリアの声を伝えていた餓鬼の横へと薄い半透明の身体をしたアリアがいつの間にか現れていた。


『ウフフフフフ。お久しぶりです』


雄太の前へと現れたアリアは、まるで悪戯を成功させた子供の様に楽しそうに笑顔で笑っている。


「アリアさんもできるんですねソレ・・・」


『も?』


アリアの声は相変わらずの脳内へと直接聞こえる様な声であり、雄太の言葉へと小首を傾げながら聞き返してきた。


「いや、俺の知り合いでアリアさんの他にも年季の入ったダンジョンマスターがいまして、今のアリアさんの様にいきなり俺の目の前に現れることができたり、ダンジョンの内部を自在に操ったりする事ができたりするんですよ。 まぁ、薄気味悪いお化けマリモみたいな見た目なんですけどね」







ぶわっくしょぉぉぉぉぉぃい!








『アラアラ?お化けマリモなんですか?話せる機会があれば、色々と教えて頂ければと思っていたのですが、マリモでしたらどの様にお話しして良いのか・・・』


雄太は自身の言葉を本気にしたアリアが面白く声を上げて笑う。


「──ハハハハハハ。まぁ、俺がアリアさんと離れて話をしている様な要領で、今度お話しする機会を作ってあげますよ。拒否しようものなら、ダンジョン内で暴れてやりますんで!」


『そ、そうですか・・・でも、この前の様に派手にやられては、私もかなりキビシーかな〜と・・・』


アリアは雄太のダンジョン内で暴れるという言葉を聞いて、急に視線をウロウロとさせた。


『そ、そのですね・・・こ、この前のタチバナさんの戦いによる大規模なダンジョン内の破壊のせいで、私のリソースがですね・・・』


「あ?」


雄太はアリアが漏らしたリソースという言葉を聞いて辺りを見回すと、そこにはこの前のザガンと雄太が戦った破壊の後はなく、綺麗さっぱり元のスライムダンジョンの2層に戻っていた。


「あ、アリアさんもなんですね?魔素の吸収が足りなくてリソース不足っていうのは」


『え?あ?へ?タチバナさんは、そんなダンジョンの裏事情までご存知なのです、か?』


「え、ま、まぁ・・・昨日もそのマリモの様な知人に、ダンジョンのリソースについてガミガミと怒られまして・・・」


『私、そのマリモさんとお話しが合いそうですね・・・』


アリアは、まるで姿の見えない心の友を得たかの様に、じーっと何かに打ちひしがれるように遠くを見つめた。


「そ、そうだ。この前、俺が捕まえて放置していた魔族ってどうなってます?なんか、この前はそのまま押し付けた様な形になってしまってすんませんです」


『あ、あの鎖でぐるぐる巻きのアレのことですね?あれならこの2層の湿原エリアの水中深くに沈めておりますので、後ほどこちらへとお持ち致しますね』


「あ、ありがとうございます。お手数かけますです」


『いえいえ。と言いますか、あれは、やはり魔族なんですね・・・』


アリアは少し暗い顔をして雄太へと視線を合わせた。


「・・・魔族を知っているんですか?」


雄太の質問へとアリアは少し表情を歪ませ、悲しそうな顔をして俯いた。


『はい・・・私がまだミディアにいた頃、私の婚約者が魔族に捕まったという噂を聞いたもので・・・私もその真相を確かめる為にギルドへと色々とお話を聞きに行こうとした矢先に宮廷魔導士に捕まってしまったもので・・・』


アリアはこんな姿になっても尚、遠い昔の婚約者の事を真剣に心配していた。


「アリアさんに婚約者が?」


『はい。あの方とは、王宮での任務が終わり次第婚約するというお約束をしておりましたが・・・私はこうなってしまい、もし、あの方がご無事に王都へとお戻りになられていたら・・・私を必死で探し続けているのではないかと・・・それで、私はあの方をずっと待たせてしまい、あの方を悲しませているのではと思うたびに、心が張り裂けそうで・・・』


アリアは絶望や悲しみに満ちた様な暗い顔をし、目尻へと溜めていた涙がいく筋も線を引きながら溢れ落ちた。


「・・・きっと、その婚約者もアリアさんと同じだったと思いますよ・・・こんな綺麗な人に、こんなに大事に、ずっと、大切に思われていたら、その命をかけてでも、人生の全てをかけてでも、ずっとアリアさんを探し続けると思いますよ」


雄太の言葉がトドメになったのか、アリアは今までため込んでいた何かを吐き出すかの様に大声をあげて泣き出した。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 芽衣が今後、役に立つどころか余計な事をして計画をダメにしそうで心配。 歳をとってからの娘だから甘やかされて育ったのかな。自分が上位に立ったからと言って偉そうにする態度もきっと雄太も好き…
[一言] 隠密行動で叫ぶとか こっちの指示も聞けないなら置いていけば?
[一言] 慰める前に本人出すなりしたれよw
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