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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第4章 動き出す歯車 編
175/290

175. ギルフォード

悔しそうに手を握り締めながら俯く近藤へと木下が真実を伝え現実を突きつける。


「お前が言う鍵についてだがな・・・門を開く以外に魔道具として使えるのはルカ、ただ1人だけだ・・・あの魔道具はルカ専用の魔道具であり、いくら魔王が鍵を手に入れようとも、門を開く鍵として以外に使う方法はないだろう」


「くっ・・・」


俯いている近藤の顔は己の馬鹿さ加減を呪うかの様に酷く歪み、握り締めている手を置いている机からミシミシと軋む音が鳴る。


「お前は始めから利用され、踊らされていたんだよ。王国を守護する筈の聖騎士ともあろう者が真実を見誤るとは・・・」


「アリアは、貴方には自分より他の困った人達を助けて欲しかった筈よ。今の貴方を見たアリアはなんて言うでしょうね」


クレシアは、更に近藤の心を揺さぶる。


「私は、私は──」


「まぁ、お前の気持ちも分からんでもない。愛する者を助けたいと望む事は間違ってはおらん。・・・だが、お前はやってはいけない事をやってしまったのだ。魔族に魂を売ったお前はどの面下げて婚約者の下へと行けるんだ?今のお前は誰だ?誇り高き聖騎士、ギルフォードなのか?それとも、ギルドの最高責任者、近藤なのか?」


近藤は、握っていた両手をゆっくりと顔へと持っていき、顔を隠した。


「──私はなんて事をしてしまったんだ・・・」


自分がした事に対して間違いを悟り、後悔し、嘆いている近藤へと雄太が声をかけた。


「ジジイもクレシアさんも、もうその辺でいいだろ?」


「小僧。何を言って──」


雄太は木下を睨む。


「魂を売ったのは近藤さん自身だが、ソレをする事になった元凶を作ったのは魔族達だ。 ジジイ・・・アンタだって種を植え付けられて、ダンジョンに閉じ込められていたんだろ?もしかしたら、アンタもアッチ側に居た可能性もあったんだぞ?」


「ぐぅ──」


「それが、偶々お袋に助けられ、偶々仲間がいて、偶々俺に出会っただけだ。もし、近藤さんと同じ様にその偶々がなかったらどう言う状況になっていた?」


自身も一度種を植え付けられた木下は、雄太の言葉を聞いて言葉を飲み込んだ。


「近藤さん。アンタはただ単に婚約者を探しだし、解放する為だけに、利用できる全てのモノを利用しただけだ。それが悪いか悪くないかで答えるなら、10人中10人が悪いと言うだろうさ。だが、そこまでの覚悟を持って行動できるかって聞いたら、10人中10人ができないと諦めるだろう。しかし、アンタはその棘の道を突き進んだ。だろ?」


「・・・・・・・」


近藤は、雄太の言葉に何も返せなかった。


「誰かが文句を言ったら、じゃあ、オマエがやってみろって言えばいい。アンタの道を阻む者がいれば、他の方法を代案しろと言えばいい。やりもしない、代案も提案しない様なクソみたいな奴らの言葉なんて、全て一切合切無視しろ」


雄太は近藤へと言葉を紡ぎながら、木下とクレシアを睨みつけた。


「他人なんて、どこまで行っても他人なんだよ。全ての良し悪しを事後だけで決めつけやがる。俺の両親は魔族が牛耳っているギルドの手によって殺され、俺の生活は同じく魔族が牛耳っているギルドによって壊された。ここまでやられた俺だけど、俺は、アンタの様に怒り狂い、復讐に身も心も委ね、ギルドを潰そうとは思わなかった」


「き、君は──!?」


「あ、勘違いしないでね。俺はそこまで聖人君子的な考えは持っていないから。俺の怒りの矛先は、ソレを指示した奴、手を汚した奴だけだ。まぁ、俺にちょっかい出してくる奴には容赦しねぇけどな」


雄太は似た様な境遇の近藤へと救いの手を差し伸べる。


「アンタに種を植え付けたヤツは覚えてるんだろ?」


「・・・・・・」


近藤は無言で頷く。


「アンタの婚約者をダンジョンへと縛ったヤツも覚えてるんだろ?」


「・・・・・・」


近藤は再度頷く。


「だったら、俺と一緒にそいつらを潰しに行かないか?」


雄太の誘いを聞いた近藤は、まるで、今まで彷徨い歩いていた迷路から抜け出せた様な感覚を覚え、大きく目を見開いて雄太と視線を合わせた。


「私は・・・私などで良いのか?」


「アンタにはソレをする資格がある。そして覚悟もある。アンタがそれを望むのであれば、俺がアンタに力をやる」


雄太は近藤の目を見つめ返しながら口角を持ち上げた。


近藤の目に映る雄太は、まるで甘い言葉で囁き、絶対的な契約を仄めかす悪魔の様な存在に思えた。


「・・・私は・・・私は、魔族が憎い・・・アリアを・・・私の全てを奪い去った魔族が憎い! うぅっ・・・」


近藤の頬を伝い、顎先から滴が垂れ落ちる。


「シス。いけるか?」


「イエス。マスター。その者は種を植えられ、適合してしまっているので、既に人間の括りにはいないです。ですので──可能かと」


この流れの中で、唐突にシスに声をかけた雄太に対し、木下、ヤリク、クレシア、近藤は吃驚したが、更にシスの意味不明な雄太への答えに対し、一同は思考が停止したかの様に動きを止めた。


「近藤さん。これから、俺がアンタを魔族の呪縛から解き放つ。そして力を与える。そうすれば、アンタはいつでもアリアさんと一緒にいる事ができる様になるだろ」


アリアと一緒に居られると言う雄太の言葉を聞いた近藤は、再度驚き、一瞬、目には嬉しさの光を灯したが、そんな都合の良い話がある訳がないと言った様な表情で雄太を強く睨みつけながら口を開いた。


「・・・条件はなんだ・・・」


「クククク。何、些細な事さ。俺に喰われろ」




!?




雄太の言葉を聞いた近藤、木下、ヤリク、クレシアは、一斉に驚愕した顔を雄太へと向けた。


「こ、小僧・・・お前、そんな趣味が・・・」


「だから、ユータ君って女の子に容赦なかったのね・・・」


「芽衣ちゃん、悲しがるだろうなぁ・・・」


木下、クレシア、ヤリクはそうだったのか、と納得した様に、腕を組みながらウンウンと首を降り始めた。


「馬鹿っ!違うしっ!そんな趣味ねぇし!オイっ!みろよコレ!おっさんだぞ!おっさん!加齢臭のするおっさんだぞ!?俺はストレートでノーマルだっつうの!」


近藤は、引きつった顔で身の恐怖を感じたかの様に雄太と目線を合わせない様にソワソワと動かし始めた。


「オイ!そこのおっさん!そんなんじゃねぇから!キョどり出してんのがバレバレじゃねぇか!?あからさまに視線が定まってないぞ!?」


「・・・い、いや・・・最近の若い子は、何て言うか、己に忠実と言うか・・・」


「だから!その考えは捨てろ!そんなのその辺にでも捨てちまえ!俺が言いたいのはだな!」


木下、クレシア、ヤリクは雄太の後ろでヒソヒソと話し始め、近藤はオロオロし始めた。


「オイコラっ!そこのオマエらぁぁぁぁ!ヒソヒソと話すなぁぁぁぁ!そしておっさん!オロオロするなぁぁぁぁ!とりあえず話を進める為に、簡単に説明するぞ!そこでオロオロしているおっさんは、魔族に種を植えられた。そして、一回身体を乗っ取られた為に人間じゃなくなった!しかし!おっさんのスキルと言うか体質と言うか、属性?って言うかによって、おっさんの身体を乗っ取った魔族が浄化された!そこまではいいな!」


「あ、あぁ」


雄太の怒涛の説明に、近藤は引き気味で答えた。


「そんで、魔族が浄化されたことによって、おっさんの身体を支配していた魔族の意識は消え、おっさん自身に戻った!間違いないな!」


「あ、あぁ」


「身体は魔族だが、意識はおっさん!って事で、魔族に乗っ取られた者特有のスキル、転生で、今の身体に移った!そうだな!」


「あ、あぁ」


「おっさん!「あ、あぁ」しか言えねぇのかよ!?まぁ、いい。続けるぞ!そんなおっさんはもう人間ではない!この近藤って人の身体の中にある種がおっさん自身だ!そんで、俺はその種に近藤って人とは違う身体を与えることにした!」


「「「「え?」」」」


ビシぃっという効果音が鳴りそうな勢いで、雄太は近藤へと人差し指を差し向けた。


それを見ていた木下、ヤリク、クレシアは、「いきなりナニ馬鹿な事言ってんのコイツ?」と言った様なアホを見る様な顔で雄太へと痛い者を見る様な視線を向け、近藤は全く意味が分からないと言った様な顔で口を開けて呆けている。


「って事で!発現!【槍棘】!」


雄太がスキルを称えると、近藤を指差している雄太の指から赤黒い1本の棘が発現され、近藤の胸を貫いた。


「ガハっ!?」


「こ、小僧!?」


「ユータ君!?」


「ちょっと!?何してんの!?」


いきなり雄太によって胸を貫かれた事によって、近藤は口から血を吐き出し、ソレを見ていた木下、クレシア、ヤリクはいきなりな出来事に対して驚愕した。


「【暴食】!」


「ぐぅ──」


雄太に種を捕食された近藤は、くぐもった声を上げてフロアへと倒れた。


「小僧ぉぉぉぉぉぉ!」


「ユータ君!どういう事よ!?」


「オイオイオイオイ!?まだまだ彼から聞きたいことは沢山あったんだぞ!?いきなりなんて事してくれてんだよ君は!?」


雄太のいきなりの攻撃に対し、木下は怒り、クレシアは驚愕し、ヤリクは、他の情報を得られなかった事に対してなんて事をと言った様な顔をした。


「ウルセェな。まぁ、見てろって。発現!」


雄太は3人の意見も感情も思惑も全てを無視し、淡々と足元へと膨張を展開させる。


そして、雄太が展開させた膨張がモゾモゾと蠢きだし、人型を造りながら上へと迫り上がって来た。


「な!?」


「え?」


「嘘だよな──?」


迫り上がって来た膨張は、だんだんと1人の人間らしく細部が整い、赤黒い塊へと色とりどりの色が着いていき、そこには、金色で緩やかなウェーブのミディアムヘア、日本人離れしたホリが深く整った顔立ち、色白で無駄な筋肉が一切ない細身の青年が姿を現した。


「ギ、ギルフォード!?」


「嘘でしょ・・・」


「マジかよ・・・」


突如として現れた、見知った顔の青年に対し、3人は目を見開いて驚愕した。



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[一言] スライムによって宿っていたギルフォードが抜けたら、本来の近藤さん(未登場)の人格はどうなるんだろな?
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