表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第4章 動き出す歯車 編
163/290

163. 朱雀

縛鎖を容易にへし折り、膨張による自爆攻撃へも全く効果がないザガンは、徐に顔を下げ、腕を下へと広げてドッシリと腰を屈め、グッと両足の裏を地面へと押しつけて、まるで走り出す前の様な格好を取り出した。


「ヤバイ!?」


雄太の脳裏へと嫌な予感が思い浮かんだ瞬間、ザガンはその巨体でもって雄太へと向かって突進を始めた。


雄太は走り来るザガンの前方へと膨張を無数に展開させ、執拗に膨張の自爆や爆炎で迎撃するも、ザガンは気にも留めないといった様な様子で、まるで狂牛の様に顎を引いてこめかみの角を前に向けて雄太へと突進して来た。




「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」




雄太はザガンが来る前に赤兎の機動力でザガンの猛進を躱すも、走り去って行く巨体の衝撃波によってその身を激しく吹き飛ばされる。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」


雄太は吹き飛ばされたその身を空を蹴って立て直して地面へと着地するも、ザガンは雄太を執拗に追う様に旋回し、その巨体でもって地響きを立てながら縦横無尽にダンジョン内を駆け回った。


緑の草原や湿原が広がっていた穏やかなスライムダンジョンの2層は、綺麗な晴れた青空とは違い、地面は走り、暴れまくるザガンによって見るも無残に荒れ果てた姿となっており、生息していたスライム達はザガンによって尽く踏み潰されてその身を消滅させていった。


スライムの中にはアシッドスライムやポイズンスライムと言った特殊なスライムも多く居たのだが、ザガンの脚は溶解も毒も、ものともせずに全てを等しく踏み荒らしていく。


雄太はピョンピョンと飛び跳ねながら右へ左へ、上へ下へと立体的に動いてザガンを躱しているが、巨大化したザガンの驚異的な突進から逃げるだけで精一杯だった。


「クソっ!あんなクソデカいの、一体どうやって倒しゃ良いんだよ!」


雄太はザガンの猛進を躱しながら、自身のスキルを頭の中で組み合わせたり応用した場合等と言う様に、色々とザガンを倒す方法を考えるが、コレと言ったザガンに致命傷を与える様な方法が思い浮かばず、取り敢えずと言った様な感じで、ザガンが少しでも脚を止めた瞬間に、赤腕の拳へと威力を乗せて殴るだけとなっていた。


隙を見て赤腕で殴り続ける雄太の攻撃は、派手な衝撃波と音とは裏腹に、巨大なザガンの体内へはまるで届いておらず、殴る為にザガンへと近づく事で反撃のリスクが増すばかりであった。


そんな雄太のチマチマとした効きもしない攻撃に対し、ザガンは苛立ちを覚え始め、顎を下げて腰を屈めていた体勢からゆっくりと直立し、雄太へと向かってガパッと大きな口を開いた。


ザガンが大きく口を開くと、開いた口の中へとこめかみの角から漆黒の炎が渦を巻いて集まり始め、口の中の漆黒の炎は、ザガンの口の中でギュッと凝縮、圧縮されるかの様に球体を形成し始めた。


ザガンの口の中で圧縮され続けている球体は、徐々にその身を肥大化させていき、まるでザガンが漆黒の球体を咥えている様に見える大きさへと変貌した。


そして、角から口内へと続いていた漆黒の炎の動きが止まり、一瞬の静寂の後、ザガンは雄太へと向けて咆哮した。



「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」




雄太へと向けて発せられたザガンの咆哮と同時に、口の中で力を溜めていた漆黒の炎は、まるでレーザービームの様に巨大な一筋の線となって雄太へと襲い掛かった。


「!?」


雄太は瞬時に赤兎の脚をフルで利用し、自身の右側へと向けて走り出すも、ザガンは雄太を追う様に首を左へと動かして、口から漆黒の巨大なビームを放ちながら雄太の動きを追いかけた。


「クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


雄太は脚を使って走るだけでなく、赤腕を伸ばして前方へと掴んで自身の身体を引っ張る様に加速し、背後から迫りくる巨大な漆黒のビームから必死で逃げた。


雄太を追う漆黒のビームにより、ダンジョンの地面には、まるで渓谷の様な深い溝ができており、雄太が地面へと展開させていた膨張も尽く破壊されており、雄太は膨張の消費を抑える為に地面へと展開させていた膨張を解除した。


「エルダぁぁぁぁぁぁぁ!」


『ユータ!?』


そして、雄太はザガンの巨大なビームから必死で逃げながらエルダへと思考を繋げる。


「アリアさんに言ってアレをあの巨体へとぶつけろぉぉぉぉぉぉ!」


『う、うん!分かった!』


「早くしろっ!このままでは追いつかれる!」


雄太は、自身の背後へと迫り来る漆黒の巨大なレーザーによって地面が抉られ渓谷を造っている光景を横目に、急かす様にエルダを通してアリアへと合図を送った。


雄太がエルダを通してアリアへと合図を送ると、ザガンの背後から巨大な水の塊りが津波の様に襲い掛かった。




「〜〜〜!?」




ザガンは背後から襲いかかって来た巨大な津波によってその身を飲み込まれ、雄太への追撃を止めた。


ザガンへと纏わり付いた津波は、雄太の合図と共に現れたこの2層のガーディアン、ウォータースライムであり、当初の予定では、エルダを通じてアリアへと合図をした際に近藤やランカー達へと嗾けると言う事で準備させていたモノだった。


ザガンを飲み込んだウォータースライムは、ザガンを取り込む様にブヨブヨと蠢きながらザガンの身体へと纏わり付いており、ザガンへと纏わり付いているその身の内側へと向けて無数の巨大で鋭利な棘を発現させた。


ウォータースライムが発現させた無数の棘は、やはりと言って良いのかザガンへと突き刺さる事はなかったが、ウォータースライムはザガンをその身の中へと顔まで包み、ザガンは苦しそうにその身を包み込んでいるウォータースライムを激しく掻き毟った。




「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」




ウォータースライムの身体は、ザガンの豪腕に掻き毟られている事によってその身を削られてどんどんと縮小していき、ザガンの全身を包み込んでいた塊りは徐々に体積を減らし、残すはザガンの胸から上を包み込んでいるのみとなった。


「よしっ!良いぞ!そのままソイツを抑えてろっ!」


アリアが嗾けたウォータースライムによって、漆黒の巨大なビームに追われる事がなくなった雄太は、赤兎に包み込まれている中、自身の腰から短刀を引き抜いた。


「一か八かだ!」


雄太が腰から短刀を引き抜くと、手にしていた短刀は赤兎の長い腕の先へと移動し、掌の位置で動きを止めた。


「発現!炎龍!【溶解】付与!【毒爪】付与!【爆炎】付与!【一点突破】付与!【縛鎖】付与!【超越】付与!【暴食】付与!膨張追加!」


雄太は、炎龍を左手へと発現させて次々とスキルの付与をした後に、右手へと炎龍を叩き込んで短刀へと膨張を追加し、


「【造形変形】!槍!朱雀っ!!」


造形変形によって短刀が刀身となった薙刀の様な真紅の槍を赤腕の手の中へと発現させた。


雄太が発現させた真紅の槍は、赤兎の体長に合わせて3m程の長さとなっており、雄太は発現させた槍を軽く振り回しながら槍の重心を確認しだした。


雄太が振り回す槍の刀身は、燃え盛る炎の様に轟々と蠢いているかの様に見え、雄太が槍を振る度に、刃先からは槍の先を追うかの様に小さな火の粉が飛び散っていた。


槍を振り回していた雄太は、柄先を握り、柄の後ろを脇で挟む様に燃え盛る様に蠢いている真紅の槍の刀身を地面へと向けて構えた。


槍を構え、ザガンへと視線を固定させた雄太は、槍先を地面へと向けたまま、顔に纏わり付いたウォータースライムを必死で掻き毟っているザガンへ向けて全力で走り出した。


ザガンへと向かって走る雄太は、背後からソニックブームを発現させながらどんどん加速していっており、ザガンの巨大な脚へと肉薄すると同時に、走る勢いのまま右下へと向けていた槍先を左上へと両手で槍を握って薙ぎ払い、ザガンの脚へと真紅の槍で斬りつけた。


雄太がザガンへと槍で斬りつけた瞬間、真紅の槍先が炎の様に伸びていき、ザガンの脚の直径を超えた。




斬!




「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」




ザガンの右脚は、雄太の真紅の槍によって斬り離され、斬り離された足先は斬られた先から発火し、絡みつく様に燃え広がりながら溶け始め、斬り離されたザガンの足先は、融解しながら消滅した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ