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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第3章 波乱の解放 編
148/290

148. 実働検証

「うしっ!実働検証も兼ねてちょっくら性能を試して来るわ!俺が指示を出すまでは手出しすんなよ」


「「はっ!」」


『まるで新しい玩具を手にした子供ね・・・』


膨張を纏い、赤兎状態となった雄太は、スキルズへと指示を出した後に前方の暗がりで蹲っている特殊なモンスターへと向けて駆け出した。


いつもの様に駆け出した雄太の速度は、撓る赤兎の脚が雄太の強化された肉体と相まって、今までの倍以上に速度が出ており、雄太は自身の身体の制御が出来ずに前のめりになって頭から転びそうになった。


「ぬぉっ!?」


しかし、脚の膨張に合わせて長くなった腕でもって地面へと手をついて体勢を立て直し、なんとか頭から地面へと突っ込む事を避けた雄太は、制御が上手く出来ない体になれる為にジグザグに動いたりサイドステップを繰り返しながら、赤兎によって上がった速度や身体能力を慣らす様に動き回った。


「「・・・・・・」」


後方にいる鬼達から見えている雄太の動きは、まるで、射抜かれた矢や発射された弾丸の様に初速が全く捉えきれておらず、鬼達は、更に進化した雄太の所業に対し、目を輝かせ、口角を吊り上げて喜びの笑みを浮かべていた。


「流石は我が主だ」


「主は更に高みへと登っていくのぉ」


鬼達は、雄太の異様な動きに対してうっとりとした顔で見つめながらも更に己の闘志を燃やし、高鳴る鼓動を抑え、逸る気持ちを抑えるので精一杯だった。


『完璧に人間を辞めている動きね・・・モンスターでもあんな動き方しないわよ・・・ってか、初速で変な波動とか出し始めているじゃないのよ・・・絶対に頭おかしいでしょ・・・ユータは一体、何と戦うつもりなのよ・・・』


エルダは鬼達の目を通して雄太を見ており、動きに慣れて来た雄太が更に速度を上げ、踏み込んで足を地から離す瞬間に発生しているソニックブームによる波動を見て驚き呆れていた。


スキル【超越】により赤兎の速度に慣れて来た雄太は、走る速度を上げ、地を蹴った後に【質量追加】や【浮遊】で自身の質量を無くし、飛び跳ねるだけで音速の領域へと足を踏み入れていた。


「おぉ!?質量追加や浮遊はこう言う使い方もあるのか!?今まであまり使わなかったスキルだけど、これは色々と使えそうだぞ!」


地面を縦横無尽に動いていた雄太は、質量追加と浮遊を効果的に使い、地面だけを動くのではなく、空中へも動きに幅を広げ、目に入る空間を立体的に動き始めた。


「ウッヒョ〜!こりゃぁ良いっ!ホバーボードで飛ぶより動きやすいわ!」


雄太の動きは、まるで、四方を壁で囲まれた部屋の中で暴れ回るスーパーボールの如く立体的に跳ね回っており、空中も地面も関係なく動ける様になっていた。


そうこうしている内に、雄太は目的の特殊モンスターの前へと到着し、弾丸の様に飛び跳ねていた雄太の身体は、まるで空中に浮く羽の様にフワリと地面へと降り立った。


雄太の目の前には、大蛇がトグロを巻いている様なモンスターがおり、雄太が近づいた事によってその巨体を持ち上げた。



ズズズズズズズズ──



巨大で長いそれは、巨体を持ち上げただけでも10mはあり、尻尾の先まで入れると一体どれほどの長さになるのか考えもつかない様な長さのモンスターであった。


しかも、持ち上げた身体の先は、腕が8本ある人間の様な見た目になっており、人型の身体の部分は、キンキラキンとド派手な金色の装飾でゴチャゴチャと身体中を飾っていた。


「どこぞの七つの海を股にかけているアラブの王様かよ・・・」


普通の人であれば、目の前で起き上がった巨体をに対して恐怖する場面なのだが、雄太は目の前の巨体を見上げながら雑な感想しか思い浮かばなかった。


『ちょっ!?ちょっとユータぁぁぁ!?』


雄太の目の前で鎌首を擡げる様に起き上がった巨体に対し、エルダは焦った様に、恐怖しながらユータへと声をかけた。


『な、ナーガよ!絶対にナーガよアレ!!』


エルダは、雄太が聴き慣れない名前を口にしながら慌てふためいていた。


「なんだソレ?」


『蛇神よ!サーペント種の主にして、神格化された亜神よ!』


「亜神?」


雄太はエルダの言っている意味が分からず、小首を傾げて目の前の巨体を眺めていた。


『逃げるのよ!今すぐここから逃げるのよ!あんなのに敵う訳がないわ!魔族の奴らは一体どうやってあんなのをここに閉じ込めていたのよ!?頭おかしいんじゃないの!?この世界を滅ぼす気満々じゃないのよ!』


鎌首を擡げ全容を表したモンスターの姿を見たエルダは、雄太の頭の中で必死になって盛大に喚き散らしており、今すぐここから逃げろと言ってきた。


「赤兎の試運転には丁度良いじゃねぇか。どこまでやれるか試してやる」


雄太は、頭上で二股になった蛇の様な舌をチロチロと口から出し入れさせながら雄太を見下ろしている巨体と視線を合わせ、ニヤリと口角を吊り上げた。


『馬鹿言ってんじゃないわよ!亜神なのよ!地上で生きているとは言え、腐っても一応は神なのよ!?そんな奴に敵う訳ないじゃない!』


「はん。言ってろ。もし、コイツが神だとしたら、こうやって対峙した今、どの道俺達はここから逃げられる訳がない。だったらやれるだけやってやる」


『アンタ本当にイカれてるわよ!?いつからそんな戦闘狂になったのよ!?指が青くなって、頭までイカれたんじゃないの!?』


「指の事は言うなって!って言うか、オマエが言う様に亜神だったら、マジで逃げられる訳がねぇだろ。ホレ、見てみろよ?奴さん、俺達を逃すつもりはないらしいぞ?」


雄太が視線を合わせているナーガは、8本の腕へと剣や槍、シミターや戦斧と言った様なそれぞれの腕で違う武器を発現させた。


『矮小な人間風情が。我を愚弄しておいて大人しく逃す訳がなかろう。 貴様はここから生かして返さぬわ』


「しゃ、喋ったぞ!?いや、アイツの声が降って来る様に聞こえるぞ!?」


『黙れ人間。只でさえも、魔族共によって得体の知れぬモノをこの身へと植え付けられ、この様な場所へと封じ込められておると言うのに、この我を腕試しへと使おう等、死を持って身の程を知るが良い』


ナーガは8つの手首を翻し、雄太へと向けて全ての矛先を向けた。


「上等だ!魔族なんかに捕まる様な雑魚が俺を殺れると思うなよ!」


『よく吠えたな人間。 貴様は簡単に死ねると思うなよ。 貴様の、身体を、心を、魂を、痛ぶり、嬲り、蹂躙し、死を乞うても死なぬ様、時間をかけて少しずつ殺し続けてやるわ』


ナーガは雄太を見下ろしている姿勢から上体を逸らし、直立しながら殺気を込めた視線で雄太を睨みつけた。


「殺すのか生かすのかどっちなんだよ?オマエの言っている意味が全く分かんねぇんだよ。亜神だかなんだかしらねぇが、見た目に反して小物クセェ事言いやがって。 って言うか、オマエはこの場で俺に喰われるのは確定なんだよ。この後色々とやる事があるから、巻きでいくぞ!」


雄太はナーガを見上げながら、左足を前に腰を落とし、左腕を前に突き出し、右腕を引いて構えを取った。


『調子に乗るなよ!人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


ナーガは直立していた上体を倒れ込む様に雄太へと向け、倒れ込む身体に合わせて手にしている8本の巨大な武器を雄太へと向けて振り下ろした。


「遅ぇっ!」



ドガガガガガガガガガガっ!



雄太は、先ほどまで居た場所へと2つのソニックブームの波動を残し、襲いかかってきた8本の武器をサイドステップで難なく躱しながら、武器の攻撃範囲外へと移動し、まるで空を翔る様に飛び上がって伸びきっているナーガの1本の腕へと、コレまたソニックブームを纏った赤腕の衝撃の乗った拳を叩きつけた。


「フっ!」



ドゴンっ!



メキィ!




雄太によって拳を叩きつけられたナーガの腕は、鈍い音を立てながら折れ曲がった。


『なんだとっ!?』


雄太によって易々と攻撃を躱されただけでなく反撃まで食らったナーガは、信じられないモノを見る様な驚いた目で自身の折れ曲がった腕を見つめた。


『え?ユータさん・・・なんなんですかその動きは・・・』


鬼達の目を通して雄太とナーガのやりとりを見ていたエルダは、先ほど以上の速さを見せた雄太の動きと、今までに見たことのない異常な攻撃力に対して驚いた。


「色々と体の動かし方と、今まであまり使っていないスキルの扱い方に慣れただけだ」


『え?・・・そんな異常な力を持ったスキルなんてユータには無かったよね?・・・』


『エルダ。マスターはスキルが進化した事によってスキルも身体能力も格段に向上しています。しかも、【超越】の影響により、自身の限界に慣れた端から次々と限界を超え続けています』


「そんなんいちいち知らねぇよ。進化してからなのか、赤兎になってからなのか知らねぇが、何故か、身体が俺の思い通りに動いて、想像通りにスキルが使えている。だから、ただ、やりたい様に思った事をやっているだけだ」


困惑しているエルダに対しシスがなにやら説明をしているが、雄太は自身が置かれている状況については何も知らず、できるからやっていると好き勝手に動いているだけだった。


『我の攻撃を避け、同時に腕をへし折るとは・・・貴様、本当に人間か?』


ナーガは自身の折れた腕から雄太へと視線を移し、殺気の籠もった目を細めながら雄太を睨みつけた。


「どう見たって人間だろぉがっ!俺は100%人間だっ!」


『いや、もう、人間辞めてると思うんですけど・・・』


雄太は何故かナーガの言葉に対して全力でキレており、両腕の赤腕へと真っ赤に燃える様な鋭利に尖った指先を発現させた。


燃え盛る様な赤く鋭い指を発現させた雄太は、眼前で両手を合わせ、両手の指を広げてナーガへと向けて力を込めた。


「ふき飛べ!」


すると、真っ赤に燃える様な10本の鋭い指先が、ナーガへと向かって高速で発射された。


『クっ!?』


ナーガは、雄太の手から射出された10本の真っ赤な指先に対して何かを思ったのか、巨大な金色の盾を発現させて盾の中へと身を屈めた。




ドドドドドドドドドドドドンンっ!




雄太から射出された指先は、ナーガが発現させた盾に当たると同時に盛大に爆発したのだが、盾によって塞がれた筈の爆炎は、爆発すると同時に、真っ赤に燃え盛るマグマの様な10体の龍へと形を変え、まるで生きているかの様に蠢きながら、盾を回り込む様に四方八方からナーガの本体へと向かって襲いかかった。




ドドドドドドドドドドドドン!




『キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』


完璧に盾で防いだと思ったところで、10体の真っ赤に燃え盛るマグマの様な龍へと姿を変えた指先によって四方八方から不意に襲われたナーガは、まるで、蛇の様な呻き声を上げながら巨大な盾を手放した。


「飛び道具がただ当たって弾けるだけだと思うなよバカが」



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[一言] どっちがモンスターか判りません(笑)
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