147. 衣替えの季節です
このフロアにあるものがダンジョン内で有効活用できると分かった雄太は、プレハブごと全てのものを収納へとしまった。
「これでかなりダンジョンライフが充実しそうだな」
『って言うか、もう、こんだけ揃えばダンジョンに住めばよくない?家賃も光熱費もタダだよ?』
「確かに・・・」
『必要そうな魔道具も、あのアンドロなんとかに作らせれば、地上より快適に過ごせるわよね?』
「だな。まぁ、一旦、ジジイに情報を売って、その後どうするか考えるか?」
エルダは、思わぬ拾い物をした事でホクホクになっており、雄太は、今後の生活について色々と考える必要がありそうだと頭の中に湧いて来るアイディアで埋め尽くされそうになった。
「とりあえず、下に行って囚われている人を解放しに行くぞ。その後に色々と考えるわ」
4層にあったモノを綺麗さっぱり回収した雄太達は、5層の最下層へと続く階段を降りていった。
最下層は、相変わらず発光した巨大な柱が規則正しく並べられている神殿の様な作りになっており、先ずは、特殊なモンスターを確認すべく神殿の奥へと歩を進めた。
「ここも相変わらずだな・・・」
「主ぃ。コイツら、一旦ここに置いておいていいですかい?」
「あ、あぁ。そうだな。戦闘の邪魔になるし、特殊なモンスターに殺されない様に、一旦この辺にでも置いておくか」
『では、餓鬼達を5体程発現させ、見張りをさせます』
「そうだな」
『それと、3層のスライムは全て回収しましたので、3層の餓鬼達は回収済みです』
「お、ご苦労さん」
シスが5体の餓鬼を発現させると、鬼達は手にしていた魔族をグルグル巻きにしている鎖を手放し、餓鬼達へと預けた。
「そんじゃ、行くぞ」
「「はっ!」」
魔族を餓鬼達へと預け、気にするモノがなくなった鬼達は、雄太の言葉と共に戦闘体制に入り、雄太の前へと出て周囲を警戒し始めた。
「シス。膨張を展開させておけ」
『ロジャー』
「エルダは鬼達のフォローだ」
『りょーかーい』
雄太達が神殿内を前へと進みながら戦闘準備を整えていると、前方に、何かが蹲っている様な塊が見えた。
「主。前方に敵です」
「あぁ。目視できてる」
ヤシャから前方に現れた何かの報告を聞き、自身の目でソレを目視した雄太は、両腕へと赤腕を発現させた。
しかし、赤腕を発現させた雄太は、急に足を止め、自身の両腕を捻ったり角度をつけたりしながらマジマジと眺め始めた。
『どうしたのユータ?』
エルダは、急に足を止めて自身の腕を真剣に見始めている雄太の行動に気付き、少し心配そうなトーンで声をかけた。
「いや、な・・・俺って、今まで膨張を腕にしか発現していなかったなぁっ、て思ってな・・・ぶっちゃけ、コレって足にも発現できるよな?」
『んん?』
『そうですね』
エルダは、雄太の言っている意味が分からず返答に困り、シスは何かに気付いたのか、雄太へと相槌をうった。
「って事で、接敵する前に、ちょっと試していいか?」
『イエス。マスター』
『え?何すんの?試すって何?また変な事しだすの?』
「変な事ってなんだよ。一体、俺がいつ変な事したんだよ」
『え?嘘でしょ!?アレだけの異常な事を散々しておいて、自覚がないとか嘘でしょ!?』
エルダは雄太の返答に対して驚愕しており、何かをブツブツと呟き出した。
「そんじゃ、足にも膨張発現。っと!?」
雄太が脚へと膨張を発現させると、雄太の視界が一気に1m程高くなり、急に視界が変わった事で、雄太は身体のバランスを崩して少しよろめいた。
「まぁ、できるっだろうって事は分かっていたけど、足に発現するとこうなるのか・・・」
雄太の足は、膨張に包まれ、一回り異常大きくなって高さも上がっており、膨張は雄太の膝上から足にかけて、細長い3角柱の様にだんだんと太くなり、足はまるで素足の様に5本の指がある見た目になっていた。
「ん〜・・・コレじゃ、なんか動きづらいな・・・」
雄太は自身の足を見ながらどうするのがベストなのかと言う事を腕を組んで考えており、膨張の足をグニャグニャと蠢かせながら色々な形へと作り変えていった。
色々と形を作っては変形させてを繰り返している内に、雄太はあることに気付いた。
(脚に発現させた膨張は、何の為に発現させたんだ?腕のヤツは腕力の強化と防御、攻撃で使っているよな?そんじゃ、脚は?)
雄太が膨張を使用する時のコンセプトに気付いた瞬間、雄太の頭の中へと色々なアイディアが溢れて来た。
(腕は防御や攻撃で、脚は・・・速度や跳躍と言った動きの部分を重視する感じか?瞬発力を上げるには、人間の足の様な形ではダメだな・・・犬や狼、鳥って感じの形か?)
雄太の足の膨張は、だんだんと雄太の足に合わせるように細くなって獣の脚の様な形へと変わっていき、さっきよりは動きに小回りが効く様になった。
(次は、コレにどうやって跳躍や瞬発力をつけるかだが・・・あ、競技用の義足とかジャンピング竹馬的な感じにすれば、コンパクトになって良い感じになるんじゃねぇか?)
膨張は、雄太の考え通りに形を変えていくが、上や前への反応はよさそうでも、後ろや横の反応に対して弱そうなブレードの様な見た目になった。
(ん〜・・・もうちょっとこう、なんかなぁ・・・イメージは兎みたいな感じなんだけどなぁ)
と言う事でウサギの様な脚をベースに、競技用義足とジャンピング竹馬を足したり引いたりと言う事を繰り返し、機械的な兎の脚の様に曲がり、足首から下はブレード状の足になった膨張の姿になった。
『ユータ・・・なんなのよそれ・・・』
エルダは、異様に変質した膨張を纏っている雄太の姿を見てドン引きした。
雄太の脚は、機械的な兎の様な足になっており、脚に膨張を発現させた事でバランスを取るかの様に腕の赤腕もやがて地面につくかと言うくらいに長くなっており、首は動きの衝撃を抑える為か、首周りでコルセットの様になっている膨張が後頭部へと向かってフードの様になり、そのフードの頂点には、ウサギの耳の様なものが2本、ダランと地面へと引きずる様に垂れ下がっていた。
今や、雄太の見た目は、赤黒く半透明な何かに包まれた腕の長い二本足の兎の様な異様な見た目へと変わっており、一言で表すのであれば、まるで何処ぞのモンスターの様な見た目になっていた。
「ん?コレか?」
『どう見たってどこぞのモンスターにしか見えないんですけど・・・腕が異様に長いわ、足首から下は板なのかなんなのか分からない様な形状になっているわで・・・それに何なの?その長いウサギの耳みたいなの?また変な発作が起きたの?』
エルダは、雄太がまた、厨二と言う発作が出たのかと心配になっていた。
「人をなんだと思ってんだよオマエは」
『例の不治の病が出たんでしょ?』
「俺はそんな病なんてもってねぇよ!コレは、アレだ! 脚に膨張を発現させて、膨張の役割的コンセプトを追求した結果、こんな形になった。そんでもって腕は、脚に膨張を発現させた事でアンバランスになった体幹を調整していたらこうなった。頭は、激しい動きに耐えれる様に首回りを調整していたらこうなった。そんで、ついでに、どこかに赤腕を付けようとしたら、見た目が兎みたいだから耳みたいな感じで付けてみた。よって、この状態は赤兎と呼ぶ事にする。以上!」
『以上じゃないわよ!ユータの見た目と思考が異常よ!』
ノリで脚に膨張を発現させようと考えたことから始まり、雄太の見た目は、最終的に、エルダが言う様に異常で異様な見て目となってしまっていた。
「しかもな。今回の改良はコレで終わりじゃねぇんだよなぁ」
『え“!? まだ何かコレ以上にあるの!?もう、ユータは指先と言い、おかしなスキルと言い、完璧に人間を辞めていらっしゃるわよ・・・自覚できてんのかしら?』
「ヒデー言われ様だな・・・出来たモンは出来てしまたんだから仕方ねぇだろ。ってか、指の事は言うな。マジで思い出したくねぇ・・・」
少し発想を変えただけで、雄太の異常なスキルは、更に異常を通り越したスキルへと変貌してしまい、変貌したスキルを見たエルダによって、何故かディスられまくっていた。




