145. 待つ訳ないだろ
雄太が指をバカにされて怒りを燃やしている中、シスから声が上がった。
『マスター。もう1人が起き上がりそうですので縛鎖で拘束しました』
「あ、そう言えばもう1人いたな・・・完全に忘れてたわ・・・」
雄太は、口うるさくチョロチョロと動き回っていたスキンヘッドの事しか記憶になく、もう1人を完全に忘れていた所でシスからの報告により現状を思い出した。
「そんじゃ、オマエら。もう1人を確保して来い」
「「はっ!」」
「エルダは俺の中に戻って、鬼達をサポートしろ。ここは、俺とシスでなんとかなるだろ?」
「りょう、か〜い」
鬼達は雄太の指示の元、まるで何かの蛹の様になっている赤腕の塊の横を通り抜け、先ほど、シスの爆炎によって行動不能になったもう1人の下へと向かった。
エルダは、シスと同じ様に地面へと展開している膨張で鬼達を支援する為に、雄太に発現を解かれて雄太の中へと戻っていった。
「シス。赤腕に縛鎖を付与しろ。あのハゲ、とりあえず大人しくさせるぞ」
『ロジャー』
雄太はシスへと指示を出すも、シスは少し慌てた様に直ぐに雄太へと返事をした。
『マスター。縛鎖での捕縛は失敗です。あの中でスキンヘッドが何かしらの結界を張っており、捕食で結界へと浸食するも、次々に修復されています』
「マジでクッソ面倒くせぇヤツだな・・・」
雄太はスキンヘッドの往生際の悪さに心底呆れており、眉間にシワを寄せて露骨に嫌そうな顔をした。
「我慢比べといきたい所だが、下に行くって用事もあるしなぁ・・・そんじゃ、一旦解放して、その結界ってやつを解いてもらうことにするか・・・」
雄太は心底面倒臭そうな顔で右手の握り拳を前へと突き出し、バッと握っていた拳を広げた。
すると、滞空していた赤腕の群れに包まれていたスキンヘッドは、背中に発現していた目を点とした、正6面体の黒い結晶の様な見た目の結界で自身を包み込んでおり、赤腕の拘束が解かれたと同時に地面へとドサっと落ちた。
「マジでしぶといハゲだな・・・」
「テメェ。この化け物が・・・よくもやってくれたな・・・俺様を解放したのは余裕のつもりかよ?」
スキンヘッドは結界に包まれたまま、地面へと片膝をつきながら雄太へと憎悪をぶつける様に睨みつけており、右手には赤腕によって捕食されて短くなった錫杖の柄を握っていた。
「急ぎなんで、オマエと我慢比べしている暇がないだけだ。さっさと終わりにさせてもらうぞ」
「クソがっ!俺様を解放した事を身を持って分からせてやる!」
スキンヘッドは、短く柄だけとなった錫杖をポイッと無造作に投げ捨て、両手で印の様な構えをとった。
「マジでブチ殺してやるよっ!【解放】っ!」
スキンヘッドは言葉と共に両手で組んでいる印の形を次々と変えていくと、スキンヘッドの肌の色が両手から徐々に黒く染まっていった。
「【爆炎】【溶解】【捕食】炎龍!!」
雄太は印を次々と組み、肌の色がだんだんと変わっていくスキンヘッドの何かを待つつもりもなく、3つのスキルを付与させた炎龍を発現させ、スキンヘッドへと向かって放った。
「クっ!?」
スキンヘッドは雄太が放った炎龍が向かって来ていることに対して嫌そうな顔をしたが、そのまま炎龍の顎門によってその身を飲み込まれ、炎の火柱に身体を包まれた。
轟々と燃え盛るネバついた火柱の中にいるスキンヘッドは、周りに展開していた結界を維持している黒い目を1つ、更に1つと炎龍によって捕食され、とうとう結界を維持する事ができずにその身を業火に包まれた。
「ク、 ソっタレがァァァァァぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
業火に身体を包まれたスキンヘッドが雄叫びを上げると同時に、燃え盛っていた炎龍の火柱は、一度内側へと凝縮されるかの様に萎み、一通り萎みきると弾けて爆散した。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
爆散した炎龍の跡には、呼吸を荒くしながら身体中からシューシューと煙を上げ、焼けた肉の様な匂いを放っている真っ黒なスキンヘッドが、今にも倒れそうな状態で、両手をダランと下に下げて中腰の姿勢で立っていた。
「ハァハァハァハァハァハァハァ──」
身体中が黒く変色した中腰で立っているスキンヘッドの姿は、ギザギザの歯を剥き出しにし、口が耳まで裂け、顎に小さな2本の角を生やし、目の上に4対、両目尻、両肩、両腕などと言った身体中に沢山の目がある姿へと変貌していた。
「ハァハァハァハァハァ── テメェには、相手の、変身が終わるまで、待つ、って言う、ハァハァ── 常識ってモノは、ねぇのか、よ── ハァハァ──」
スキンヘッドは雄太の炎龍によってかなり焦燥しきっており、深く腰を落とし身体を支えている脚はガクガクと震え、今にも膝をついて倒れそうな状態だった。
「んなん待つ訳ねぇだろ。俺が戦隊モノの悪役だったら、主人公が変身する前に確実に殺っているわ。って言うか、そんなに変身を邪魔されたくないんだったら、家を出る前から変身して来い」
「ハァハァハァハァ── クソ、が・・・」
ドサァ・・・
スキンヘッドは、雄太のロマンをぶち壊す発言を聞いた瞬間に、力なく地面へと崩れ落ちて倒れた。
「【縛鎖】!」
スキンヘッドが倒れた瞬間、雄太は、まるで、ダンジョンに囚われていた者達と同じ様に無数の鎖でスキンヘッドの身体中を拘束し、アンドロマリウスと同じ様にスキンヘッドの意識を奪った。
『お疲れ様です。マスター』
「あぁ。オマエもな」
雄太がスキンヘッドを捕縛し終えると、鬼達が雄太の下へと向かって来た。
「主ぃ。こっちも終わりやしたぜぇ」
「お疲れ様です。主」
『ユータ〜。終わったよ〜ん』
大鬼は、まるでミイラの様に鎖でぐるぐる巻きにされて捕縛された魔族を肩へと担いでおり、雄太の下へと到着するや否や、ドサっと鎖によってぐるぐる巻にされている魔族を無造作に地面へと放り投げた。
「お、ご苦労。ご苦労。っていうか、こいつらどうするよ?俺的にはもっと情報を吐かせたいしな・・・」
雄太は顎に手を当てながら足元に転がっている2つの鎖の塊へと視線を移した。
『隠密をかけて隅っこにでも放置しておけば?』
「いや、コアの部屋まで行ったらそのまま入り口まで転送するし、またコイツらを取りに戻って来るってのも面倒くせぇわ」
「それじゃ、ワシが担いで持っていきましょうか?」
「ん〜〜・・・担いでいたら、いざって時に両手が塞がってるってのも困るしなぁ・・・」
「それでは、我とラセツで鎖で引きずって行くと言うのでは如何でしょうか?そうすればいざって時にも素早い対応が可能かと」
「そうだな。それでいくか。そんじゃ、シス。隠しておいたアンドロなんとかも、こいつらと同じ様にぐるぐる巻きにしてくれ」
『ロジャー』
シスは、隠しておいたアンドロマリウスを地面に展開させた膨張を使って雄太の下へと移動させ、地面に転がっている2体と同じ様に縛鎖でぐるぐる巻きにした。
「そんじゃ、さっさと下へと向かうぞ」
「「はっ!」」
『ユータ。その辺で散らばっているスライムはどうするのよ?』
「おぉ・・・完全に忘れてたわ」
雄太はエルダの指摘で、ガラスの筒が割れて地面へと散っているデビルスライムへと目を向けた。
「とりあえず、餓鬼達に吸収してもらうわ。シス。餓鬼を10体ほど発現させてスライムを吸収させてくれ」
『ロジャー』
シスは雄太の指示に従って、地面へと展開させている膨張から10体の餓鬼を発現させた。
「オマエら。スライムを全て吸収したらシスに報告してくれ」
”タマタマぁ〜”
雄太が餓鬼達へと指示をだすと、餓鬼達は一斉に手を上げながら返事をした。
「そんじゃ、下に行くぞ」
「「はっ!」」
雄太達は、ラセツが2体、ヤシャが1体と捕縛した魔族をガリガリと引きずりながら、4層へと続く階段へと向かって歩を進めた。




