124. どっち側?
「それにしても・・・何故じゃ!?何故、こうも妾の身体が動かぬのじゃ!?」
カミラは雄太の膨張によって身体を侵食され、首から下を動かせずにチョコンとベッドの上に正座していた。
「とりあえずそういう事だから、こういう状況になったら、アンタは何もできないだろ?って事で、大人しく俺を帰してくれ。どうやったら俺はあの広い場所に帰れるんだ?」
「ならぬっ!首から上はまだ動くのじゃ!さぁ、ズボンを脱いで妾の元へと来るが良い!凄いぞ!妾のテクはすごいんじゃぞ!」
「・・・・・・」
カミラはこの様な状況になっても雄太から精力を吸い取る事を諦めようとはぜず、レロレロと舌を出して雄太を挑発しだした。
「ほへ!ほんあほおに!ほおひへほおひふふうひ!」
「・・・って言うか、どんなアホ顔だよ・・・どうやっても俺をここから帰す気は無いのか?」
「ないっ!妾がお主のをもらうまでは、断じてここから帰す気はない!ちなみにじゃが、この部屋は、我らサキュバスの特殊スキルの中じゃ。妾を殺せば、お主も永遠にこの空間に閉じ込められて死ぬぞ」
「え?」
カミラはいきなりとんでもない事を言い始め、雄太はカミラの言葉に対してドン引きしてしまった。
「ウソですよね?」
「本当じゃ。我らサキュバスは、いつでもどこでも食事ができる様に、各々がこの様に部屋を作るスキルを先天的に持っておる。故に妾が死ねば、お主はここから永遠に出られんぞ」
「・・・・・・」
雄太は、このピンクな部屋を見渡しながら出口らしき場所を探す様に歩き出した。
部屋の中には3つのドアがあり、それぞれのドアは、風呂、トイレ、キッチンとなっていて、カミラが言う様に外へと繋がるドアはなかった。
雄太が入ってきた通路は、雄太が部屋に入ると同時に消えており、雄太は正しく閉じ込められている状態だった。
「ククククク。いくら出口を探そうが無駄じゃ!この部屋の持ち主である妾、若しくは、妾が承認した者にしか出入口を開口ことはできん」
雄太はそれぞれのドアを見てきた後に、ベッドがから少し離れた場所へと白い椅子を持ってきて腰を下ろした。
「コレってスキルなのか・・・部屋を作るスキルってスゲーな・・・って事は、行けるか?」
「はぇ?」
椅子に座っている雄太は、右手へと赤腕を発現させ、部屋の床を触り始めた。
「なっ!?何をする気じゃ!?なんなんじゃ、その禍々しい腕はっ!?」
カミラは、雄太がいきなり発現させた赤腕に対して酷く驚愕するも、雄太によって身体を浸食されているせいで、ただされるがままに見ている事しかできなかった。
「ちょっとした実験だよ。ここがスキルなら喰えるんじゃねぇかなって・・・お?イケそうだぞ」
雄太が触れている地面は、雄太のスキル、【暴食】によって掌の形をした穴が空いた。
「穴の中は真っ暗だな・・・コレって、異空間ってやつか?」
「わ、妾のお気に入りの絨毯がっ!?お、お主っ!なんて事をしてくれたんじゃぁぁぁぁぁぁ!!その絨毯だけで、どれくらいの生気が必要になると思っておるのじゃぁぁぁぁぁ!!」
カミラはお気に入りの絨毯へと、雄太の手形の穴を開けられた事で酷く激昂しており、激昂しているカミラを見た雄太は、口角を吊り上げて悪い顔をした。
「ほほう。コレはアンタのお気に入りなのか?大人しく俺を返さないと、お気に入りのハートの絨毯が穴だらけになってしまうなぁ。あ、そういえば、バスルームに良い感じの猫足タイプのアンティークバスタブがあったな?」
「や、やめるのじゃぁぁぁぁぁぁ!!あのバスタブだけはやめるのじゃぁぁぁぁ!!あれは、絨毯なんぞ比にならん程に生気をを費やしたのじゃぞぉぉぉぉぉ!」
カミラは、雄太が思った通りに反応し、首を動かして身体を動かそうとしていた。
「じゃぁ、俺を帰してくれ。俺はこれから下に行くという用事がある」
カミラは、下着姿で綺麗に正座したまま雄太を射殺すかの様に視線を向けていたが、雄太の下へ行くという言葉に対してピクリと反応した。
「お主・・・今、なんと言った・・・」
「だから、さっさと俺を帰してくれってーー」
「違う。今、お主は下へと行くとか言いおったな」
「ん?あぁ・・・俺はこのダンジョンに遊びに来たんじゃなく、下に用事があんだわ。だから、さっさと俺を帰してーー」
「決めたぞ。妾はお主をここから絶対に出さん。妾の部屋を壊されようが、妾が殺されようが、絶対にここから出さん!」
カミラは、雄太の言葉を聞いて何かを決心したかの様に静かになった。
「マジかよ・・・仕方がない・・・多分、この空間を喰い破って出ることもできると思うが、アンタを完全に操って出してもらう事にするわ」
「か、完全に操るじゃと!?人間如きがサキュバスである妾を完全に操るじゃと!?笑わせるなよ小僧がっ!サキュバスの女王である妾を簡単に操られると思うなよ!妾の身体をお主の思う様に蹂躙できたとしても、この心までは屈さぬわ!」
「いや・・・その言い方だと、まるで、俺が鬼畜みたいじゃねぇか・・・って言うか、意識を奪うくらいどうって事ねぇぞ・・・【縛鎖】」
雄太がスキルを発現させると、寄生によって膨張を身体中へと侵食されたカミラは、ガクッと首が項垂れて意識が飛んだ。
「ほらな。解除」
雄太が縛鎖を解除すると、カミラは意識が瞬時に戻り、ハっと目を見開きながらキョロキョロと辺りを見回した。
「わ、妾は今、意識を失っておったのか?」
「あぁ。アンタの意識を奪って操るとかすぐだぞ?俺としても友好的に事を進めたいから、大人しく俺を帰してくんねぇかな?この後にミノタウロスやバフォメットの掃除が待ってんだよ・・・そんで、その後下にも行かなきゃいけねぇし、今日中に終わるのかよこれ・・・」
「・・・・・・」
意識を戻されたカミラは、雄太の言葉を聞いて無言になった。
「おいおい。今度はだんまりかよ・・・頼むから早く帰してくれよ。俺的にスケジュールがパンパンなんだよ・・・」
カミラは、正座しながら無言で下を向いて俯いており、雄太はその光景を見て面倒臭そうにため息を吐いた。
「なぁ。頼むよ。大人しく俺を帰してくれよ。俺としても話し合いができるなら人道的に事を進めたいんだよ」
「・・・お主、今、ミノタウロスやバフォメットの掃除と言ったか?」
「あぁ。言ったよ。アレらをさっさと片付けて、下の階層に行きたいんだよ俺は」
「・・・分かった。お主を元のフロアへと帰そう」
「お?マジで!助かるわーー」
「だが、その代わり、お主が下へと行く目的を妾へと教えるのじゃ。ソレを聞けるまでは妾はお主をここから絶対に帰さん」
「・・・・・・」
カミラは顔をあげ、真剣な眼差しを雄太へと向けた。
「はぁ〜。別に教えても良いけど・・・その前に逆に聞くが、アンタ達は、モンスターじゃなくて、デミヒューマンって事でいいんだよな?」
「フン。妾達サキュバスを、知性のない下等なモンスター共と一緒にするでない」
「んじゃ、なんでこんなとこで暮らしてるんだ?ダンジョンから出て、明るい地上で暮せばいいだろうが?」
「妾達は、ここに居続ける理由があるのじゃ。その理由をよそ者であるお主に教える筋合いなどないわ」
カミラは相変わらず雄太を射殺すかの様に視線を向け続けていた。
「まぁ、別に知りたくもねぇが、じゃぁ、なんで俺が下へ行くって事で怒ったり、ミノタウロスやバフォメットを倒すって言った時に期待の様な目を向けたんだ?」
「・・・・・・」
カミラは雄太の質問に対して無言になり、何かを探るかの様に雄太の目から視線を外さなかった。
「・・・お主・・・本当にあのミノタウロスとバフォメットを倒すのか?」
「倒す。そしてコアを手に入れる。って言うか、多分ミノタウロスとバフォメットは、今のアンタと同じ状態になっている筈だ。って事で、後は内側からボンって感じか?」
「・・・お主化け物か・・・既にアレらの身体の自由を奪っていると言うのか?」
「まぁ、多少時間はかかったが、そろそろ頃合いじゃねぇかな?」
『シスどうだ?』
『侵食完了です』
「あ、もう奪えているわ・・・」
雄太は侵食具合についてシスへと確認し、既に完了しているという報告を受けた。
「・・・化け物め・・・それで、お主は何故下へと行く?」
「悪いが、その前にもう一つ聞くが、アンタは王国側か?」
ブチ
「貴様ぁ・・・今なんと言った?」
雄太の質問に対し、カミラは雄太でも分かる程に激昂し、大量に殺気を含んだ射殺す様な視線を雄太へと向け、雄太もその殺気に反応してしまい、声のトーンを落として再度カミラへと確認した。
「だから、アンタは王国の手下や仲間なのかって聞いてんだよ」
「ふ、巫山戯るなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!我らをあの様なゴミ糞と一緒にするでないわぁぁぁぁ!!あのゴミ糞達のせいで、姉様がっ!姉様がぁぁぁぁぁ!!」
カミラは首から血管を浮き上がらせながら、王国に対して怒りに満ちた感情を剥き出しに雄太へと向かって吠えた。
「・・・分かった。まぁ、どっちでも良いが、話を進める為に、一旦、アンタが向こう側でないと仮定しておこう」
「仮定も糞もないのじゃっ!あの様な奴らと一緒にされるくらいなら、今すぐこの舌を噛み切って自害してやるわっ!」
どうやら、カミラは心底王国を嫌っているらしく、雄太はダンジョンの下へと行く目的を話す事にした。




