122. カミラ様
雄太がラキと言うサキュバスに連れられて向かった先は、ダンジョンの壁だった。
このダンジョンの全貌は、基本的に大きな洞窟の様な空洞であり、ダンジョンの壁はゴツゴツとした岩肌となっていた。
「着きましたよぉ」
「??」
雄太は壁の前に立っているラキの着いたと言う言葉に耳を疑った。
「・・・着いたって・・・ダンジョンの壁に着いたって事なのか?」
「まぁ、確かにぃ、ここはダンジョンの壁ですけどぉ、今日はここがカミラ様へと繋がる場所ですぅ」
「今日は?繋がる?」
「はいぃ。カミラ様とお会いするにわぁ、毎日変わる担当者によって変わりますのでぇ、例えばぁ、明日ぁ、同じ場所に来たとしてもカミラ様にお会いすることはできなくなっておりますぅ。と言う事でぇ、カミラ様の御前へ行くにわぁ、その日の担当者とカミラ様しか知らないのですよぉ。しかもぉ、その日の担当者わぁ、ご当選者様をお迎えするだけが仕事となりますのでぇ、石板から担当者のデータが消えて指名できなくなっておりますぅ。石版の指名欄に映るぅ、私達サキュバス達わぁ、30分毎にランダムで変わっていきますのでぇ、名前を覚えたりぃ、メモを取ったりして今日の担当者を探すと言うのは不可能となっておりますのでぇ、当選を待つ以外にお客様達がカミラ様に会える事はないのですよぉ。なのでぇ、ここでこう言った様にご当選者様にご説明をした方がぁ、担当をしたサキュバスの今後の安全にも繋がりますぅ」
「情報統制が半端ねぇな・・・」
雄太は、ラキから聞いたカミラ様なる者に会う為の道のりは、果てしなく困難でほとんどゼロに近い体制をサキュバス達が取っている事に驚いた。
「ってか、サキュバスの安全ってなんだ?」
「それはですねぇ。以前にカミラ様にお会いしたご当選者様がぁ、この様に私達が親切にご説明しているにもかかわらずぅ、その時のご当選者様には全くご理解していただけずぅ、その時の担当者を探しだして力尽くで無理やりカミラ様の居場所を聞き出そうとしたんですよぉ。終いにはぁ、本当に何も情報を知らないその担当者を殺してしまったんですよぉ」
「狂ってるな・・・って言うか、あんた達デミヒューマンってモンスターじゃないんだよな?もし、殺した場合、一体どうなるんだ?」
雄太は純粋にその部分が気になってしまい、思わず口に出して聞いてしまった。
「好奇心が旺盛なご当選者様ですねぇ。私個人へもそれくらい好奇心を持って頂ければぁ、とても嬉しいのですがぁ・・・」
「あっ・・・スマン・・・つい気になって・・・不謹慎だったな・・・」
「いえいえぇ。大丈夫ですよぉ。逆に知っていただいた方が今後の私達の扱いも変わってくるとおもいますのでぇ」
「そうなのか?」
「はいぃ。私達サキュバスわぁ、モンスターではなくデミヒューマンですぅ。容姿が少し人間と違う箇所があるだけでぇ、身体の構造はほとんど人間と同じですよぉ。なのでぇ、性的行為を行えばぁ、ちゃんと赤ちゃんもできますしぃ、殺されれば血もでますしぃ、死んでしまえばちゃんと遺体も残りますぅ。ちなみにぃ、サキュバスはですねぇ、性的行為を行った時の精力を生きる為のエネルギーとして生存してるんですよぉ。人間で言いますご飯と同じ感覚ですねぇ。一応ぉ、ご飯も食べますがぁ、嗜み程度と言う感じですねぇ」
ラキはサキュバスについての生態を語り、食事情、見た目以外はほぼ人間と言い切った。
「まぁ、少し違う見た目と食事事情以外は人間と同じってことは分かったが、性的行為を行えば子供ができるって言ってるが、こう言うことをやり続けて大丈夫なのか?」
雄太は、自身の背後に見られる光景を親指で指差してラキへと質問した。
「大丈夫ですよぉ。子供は簡単に産めない身体なのでぇ」
「簡単に産めない?」
「はいぃ。サキュバスのご飯は精力なのでぇ、精力を糧に生存してまぅ。魔力がある場所では精力を食事として取れるんですがぁ、魔力がない場所ですとぉ、精力はそのまま出産へとつながりますぅ。魔力がない場所なんてそうそうないのでぇ、基本的に子供は産めないですねぇ」
「なかなか難儀な生き方だな・・・」
「そうでもないですよぉ。サキュバスは精力を取り続けている間は不老で長生きですしぃ、子供を作ろうと思えばぁ、魔道具で周囲の魔力を絶てば良いだけですのでぇ。まぁ、サキュバスは種族の特性的にぃ、そうそう恋に落ちることはないですけどねぇ」
(サキュバスを愛しても一方通行って訳か・・・そりゃ、確かにこうなるわな・・・)
雄太は呆れた様な顔をしながら、自身の背後で盛大にハジけまくっている人間とサキュバスの姿を目にした。
「それでわぁ、これよりカミラ様の元へとお連れいたしますぅ。ひらけぇ〜サキュバスの股ぁぁぁぁぁぁ」
「・・・・・・」
ラキは下ネタが入りまくっている巫山戯た言葉を口にしながら壁へと手を当て、雄太は、その酷い下ネタ具合にドン引きしながら無言で白い目でラキを見た。
すると、ラキが手を当てた壁には、ピンクを基準とした、白いファンシーな装飾があしらわれた、お花畑の女の子が考えた様なメルヘンチックな扉が現れた。
「でわぁ、ご当選者様ぁ、行ってらっしゃいませぇ。夢の様な一時お楽しみくださいませぇ」
ラキは扉を出現させた後に、まるでどこかのメイドの様に綺麗にお辞儀をして扉を開いた。
「は、はぁ・・・それじゃ、行ってきます・・・」
雄太はラキが開いたメルヘンチックな扉を潜り抜け、ピンクと白を基準とした痛い通路を進み始めた。
雄太が痛々しい通路へと足を踏み入れると、ラキによって扉が閉じられ、扉は閉じられたと同時に消滅してピンクの壁へと変わってしまった。
「・・・どうやって帰るんだコレ・・・」
雄太はすっかり閉じ込められてしまい、迂闊すぎた自分の行動を悔やんでしまった。
『シス。寄生をばら撒いて先行させろ。それと、背景に合わせて膨張の結界を展開させろ』
『ロジャー』
雄太がシスへと指示を出すと、雄太の足元から密集して煙の様な霧の様な寄生変形が散布され、同時に四方八方へと背景に偽態した膨張が伸びて広がって行った。
霧の様な寄生変形が散っていき薄れ始めると、雄太は通路の奥へと向かって歩を進めて行った。
(このピンクと白を基準とした壁や装飾、どんだけ趣味に走ってんだよ・・・)
雄太が見渡す通路の壁や天井は、ピンク一色に染まっており、そのピンクい壁や天井に、白でユニコーンや色々な花、星やお城、馬車や冠を被った王子様のシルエット等が描かれていた。
(やっぱ、来るんじゃなかったな・・・だんだんと嫌な予感がしてきたぞ・・・)
雄太は暇つぶしのためと思って軽々と迂闊にここへと来てしまった事を後悔したが、ここなら人目もないので、いざとなったら鬼達を発現させて戦える様に心構えた。
雄太は少し緊張しながらも奥へ奥へと進んでいくと、少し開けた空間へと到着した。
(うわぁ〜・・・痛った〜い・・・)
雄太の眼前には、まるで、御伽噺に出てくる様なお姫様の部屋の様な装いが広がっており、部屋のド真ん中には、天板からピンクを基準とした白い花がついたレースのカーテンが垂れ下がっている大きめのベッドがあり、家具や装飾品は、ピンクと白の猫足のアンティーク調の家具や、地面にはハートの形をしたピンクのモコモコした絨毯が敷かれており、天井にはシャンデリアまでぶら下がっていた。
雄太はドン引きしながらその痛々しい空間へと足を踏み入れると、真ん中にあるベッドの上の布団がモソモソと動き出した。
ベッドの上がモソモソと動き出すと、ムクっと何かが起き上がり、レースのカーテン越しに黒いシルエットが動き、雄太の方へと顔を向けた。
「遅いのじゃ。あまりにも遅すぎて、妾は寝てしまっておったぞ」
(のじゃ!?妾ぁぁぁぁぁ!?)
雄太は、ベッドにいる人物から発せられた痛々しい言葉使いに対して更にドン引きしてしまい、何も言葉を返す事ができなかった。
「ほぉ。この妾を前にして無言とは・・・お主、さては妾のこの至極の美貌に対して声が出なくなったのじゃな?」
この、のじゃ妾は、自身の姿がカーテンで遮られている事によってシルエットしか雄太は見れていない状態であると言う事に気づいていない様だった。
「あ、あのぉーー」
「ーー良いぞ。何も言わずとも良いぞ。妾も、妾自身の美貌には声も出ぬからのぉ。妾ですらなんと言って良いのか分からぬこの美貌に、お主がこの妾の美貌に対して何かを表現する事もできるまいて」
「いえ、そのですねーー」
「ーーそうそう。妾の名はカミラと言うのじゃ。今宵は、お主の肉体を隅々までお主が心ゆくまで堪能させてもらうから、お主もしっかりと気合を入れるのじゃぞ。さぁ、早々に激しく交じりあおうぞ。クックックックック」
雄太は、何かを伝え様にも、全ての言葉をカミラなる者に遮られてしまい、カミラと名乗る者は自己主張を続けながらも、上から目線で雄太からマウントを取るかの様に言葉を紡ぎ始めた。




