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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第3章 波乱の解放 編
112/290

112. ここにも

雄太の指示に従い、白く大きな扉へと向かって行ったラセツとヤシャは、急に足を止めて扉の横に広がる暗い虚空へと視線を向けた。


「おい、どうしたんだ?」


雄太は急に足を止めた鬼達に声をかけ、反射的に両腕へと赤腕を発現させて周りを警戒した。


「主ぃ。スライムの気配がする」


「は?」


「そこの闇にスライムがいます」


雄太は、ヤシャが指を差している方向にある暗闇へとディスプレイを通して視線を向けた。


すると、ラセツやヤシャが言う様に、暗闇の中へと無数の赤いアイコンが次々に現れた。


「うおっ!?なんだこりゃ!?」


暗闇へといきなり無数に現れたスライムの反応に対し、雄太は不意をつかれて盛大に驚いてしまった。


「なんでこんなところにスライムが大量に湧いてんだよ!?」


「どうかしたんですか橘花さん?」


雄太が盛大に驚くと、雄太の驚いて荒げた声が耳に入った芽衣は、周囲を警戒する様に気を張りながら眉間にシワを寄せ、怪訝な顔つきで雄太へと声をかけた。


「あの闇の中に・・・大量のスライムがいます・・・」


「え?」


雄太は眼前にある暗闇を指差し、芽衣へとスライムが大量にいると言う事を教えた。


「主ぃ。どうする?」


「主。勿論狩りますよね?」


「マスター!これはもう、狩るしかないですよね!」


スキルズはスキルや膨張の糧となる獲物を前にし、嬉しそうに雄太へと視線を向けた。


「まぁ、勿論、狩るには狩るんだが、って言うか、なんでこんなところに大量にスライムがいるんだ?オマエ、ここにスライムがいる理由について何か知ってたり、心当たりってあるか?」


雄太は横にいるエルダへと質問しながら視線を向けた。


「ん〜ん・・・なんでだろうね?自然発生したのかなぁ?スライムって基本、ダンジョンのお掃除係りみたいな感じなんだけど・・・ここだと戦闘自体もなさそうだし、ゴミや死体とかも無いと思うんだけどなぁ?多分、ただ単にここに住み着いた感じじゃないかな?」


「住み着いたってどう言うことですか?基本、モンスターと言うのは階層間は移動できない筈ですよね?」


芽衣は、エルダのスライムが住み着いたと言う言葉に反応し、雄太とエルダの会話を割ってダンジョンの常識を確認する様にエルダへと質問した。


「まぁ、普通はそうだね。でも、スライムに関して言えば、階層間の階段を除けばどこにでも発生するよ」


「え?発生?」


「うん。発生」


「移動じゃなくて発生?」


「そ。発生」


元、モンスターで、元、スライムのエルダから、カミングアウトの様なスライムについての裏事情が飛び出てきた。


「オマエ、なんだよそりゃ?移動じゃなくて発生ってなんだよ?」


エルダの言葉に対し、雄太も気になったのか、エルダへと問い詰める様に質問を投げた。


「んっとね。スライムは冒険者に倒されても、倒された時に飛び散ったスライムの肉片?カケラ?が残っていれば、時間が経てばどんどん大きくなって復活?できるの」


「はぁ!?なんだよそれ!?んな事できる訳ねぇだろ!?できたとしても一体どんな構造や仕組みなんだよ!?」


「そのまんまだよ。冒険者によって倒されたスライムは、スライムの肉片が冒険者の洋服や靴とか持ち物とかに付着したりして、いろいろなところに運ばれていくの。そして、その運ばれた場所に合わせて魔素を取り込んで新しく進化していくの。だから、スライムは種類も多いし、どこにでもいるの。ミディアでは魔素が多いからダンジョン外にも沢山のスライムがいるよ。まぁ、この世界には魔素が少ないからダインジョン外にはいないけどね」


「スライムはタンポポかよ!?」


「その話は本当なのですか?それでしたら、階層間の階段には何故スライムがいないのですか?」


「え?だってあの階段、魔素が全くないじゃん。そんなところにはスライムだけじゃなく、ダンジョン内の全てのモンスターは確実に住めないし、向かおうとも思わないよ。ダンジョンにいるモンスターは、ダンジョン外のモンスターとは違って、魔素を吸収して生命の維持をしてるから、魔素がない場所にいる事はできないよ」


エルダから伝えられたスライムの生態系やダンジョンのモンスターについての情報は、雄太や芽衣の想像以上のものだった。


「それで、ここにスライムのかけらが運ばれてきて、コイツらは時間をかけて進化を遂げて、ここに住み着いたと?」


「多分、そうだね。そして、肉片から大きくなっていき、コアを得たモンスターとしてフロアに住み着いてしまえば、ダンジョンに新たなモンスターとして認められて管理され、冒険者に倒されてもリポップもするよ」


「スライム・・・すげーな・・・って言うか、スライムグラトニーはなんでリポップしないんだ?」


「あぁ、アレはダンジョンで発生したスライムじゃないし、コアも人間が手を加えた自然なコアじゃなかったから、ダンジョンに認められなかったんだよ」


「俺には同じモンスターにしか見えなかったし、オマエの言うモンスターのコアの違いってのも全く分かんねぇわ・・・」


雄太はダンジョンの構造や仕組みについて意味が分からなくなってきた。


「エルダさん。エルダさんは何故ここまでモンスターに、いや、スライムに関して詳しいんですか?と言いますか、その情報は本当に正しいのですか?これは、エルダさんの理論的な推測とか憶測といった感じの例え話なのですか?」


芽衣は、エルダが言うスライムや、ダンジョンのリポップする為の条件について怪しんでおり、信じられないと言った様な顔をしてエルダへと視線を向けている。


「木下さん。コイツが言っている事は間違いないと思う。なんせ、コイツは元々はモンスターで、スライムだったからな」


「はぁ!?」


芽衣は、雄太がエルダの言っている事を信じている根拠と理由に対して意味が分からず、声を荒げながら胡乱な目つきで雄太へと視線を向けた。


「コイツは・・・エルダは、元々、エルダー種って言う長年生きているモンスターで、エルダースライムって言うモンスターだったんだよ。モンスター、スライムとは言え、エルダー種と言う特別な存在の為なのか、初めて会った時も人型の姿をしながら流暢に人語を喋っていた。それを、俺のスキルで吸収し、今はこうして俺のスキルの一部として発現させているって感じだ」


「ますます意味が分からないんですが・・・人語を喋って、人型のモンスターって・・・そんなの、今まで見たことも聞いた事もないんですが・・・しかも、吸収して発現ってどう言う事なんですか?」


「まぁ・・・俺も自分の目でソレを見て初めて知ったんだけどな。エルダー種の事についてはジジイやヤリクさん。クレシアさんなら色々と知ってんじゃねぇかな?」


「そうそう。吸収と発現は酷いわよ!あの日、ユータと出会ってしまったわたしは、ユータによってこの身体も心も、自由も含めて、わたしの全てを奪われてしまったのよ」


「え?」


芽衣は雄太へとゆっくりと顔を向け、獣を見る様な目で雄太をドン引きしながら見つめていた。


「オイっ!?言い方ぁぁぁぁ!?オマエ、マジで殺すぞ!って言うか、オマエが自分から俺に喰われたんだろぉがぁっ!?」


「え?喰われた?」


芽衣は更にドン引きして後退り、雄太から距離をとった。


「ち、違うから!?俺のスキルは、スライムを収取してスキルを獲得するって言う変わった条件のスキルで、コイツは俺に助けを求めて、その報酬の代わりに自分の身を差し出したんだよ!!」


「え?助けを求めて来た相手を、その助ける報酬として吸収したんですか?」


芽衣は更に雄太から後退って距離を取り、鬼畜を見る様な冷たい目で雄太を見つめ、雄太は芽衣へと説明すればする程、底が見えない泥沼へと自らハマっていった。


「いや!分かるよ!その気持ちは分かるんだけど!色々と事情があったんだよ!時間がある時にでもその事について話すから、っだからそんな目で俺を見るなって!」


雄太は芽衣の視線に対し、なんだか居た堪れなくなってしまい、盛大に狼狽ながらとりあえずこの話を終わらせようとしていた。


「と、とにかくだ!ここにスライムがいる理由は分かった。オマエ達!新たなスキルと糧を得るぞ!」


「「「ハっ!」」」


「そんじゃ、全てを狩り尽くせ!」


「「「了解!」」」


雄太に指示を出されたスキルズは、闇と同化して目視できないスライムを狩る為に暗闇へと向けて散り散りに走って行った。


『シス。寄生変形を散布しろ!速攻で終わらせるぞ!』


『マスター。既に散布しておりますが、スライム種へは膨張を寄生させる事ができません。スライム種への寄生変形での攻撃は、寄生変形の膨張が小さすぎる為、逆に取り付いた端から即時に吸収されてしまっています。寄生変形による捕食や暴食での攻撃も、寄生変形の密度を濃くすれば対応は可能ですが、一進一退の攻防になってしまうので、とても効率が悪すぎます』


『マジかよ!?』


雄太の無敵と思われていた寄生変形は、スライム種の体内へは取り付く事ができずに全く効果がない様で、シスの報告を聞いた雄太は、寄生変形の意外な弱点を知って驚いてしまった。


『無敵のスキルと思ってたけど、まさかのスライム種には効かない攻撃とか・・・いろんな意味でスライムってヤベーな・・・』


『ですが、スライム種以外へは寄生変形の効果は絶大ですので、今後は使い分けていけば良いかと思います』


『そうだな・・・』


雄太は、万能で無敵のスキルであっても、物事は簡単に一筋縄じゃいかないと言う事を身をもって知った。


『まぁ、このタイミングで、このスキルの弱点や利用方法が分かっただけでも良しとするか・・・この事を知らずに、意気込んで階層主クラスのスライムと戦ってたら、マジで色々とヤバかったかもな・・・』


スライム種へは寄生変形を使えないと言う事を知った雄太は、スキルズが狩りをしている姿をボーっと眺めていた。


雄太がスキルズがスライムを吸収している姿を眺めていると、雄太の頭の中へと新たなスキル獲得を告げる声が聞こえてきた。



『スライムスーツニ新タナ能力ガ追加サレマシタ』



『スライムスーツノLVガ上ガリマシタ』




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