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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第2章 追憶のレジスタンス 編
102/290

102. これから

地面へと倒れた木下は、黒く豹変していた身体が次第に元の人間の姿へと戻っていった。


雄太は、地面へと屈み込んで倒れた木下の鼻へと手を伸ばし、呼吸の有無を確認するが、木下は静かに寝息を立てており、身体は酷くボロボロな状態となってはいるが、どうにか無事な様子を見せていた。


(ふぅ〜。どうやら殺さずに済んだ様だな・・・こんなの寝覚めが悪すぎるぞ・・・なんで俺がこんな悪役をしなければいけねぇんだよ・・・)


雄太がここまで傍若無人な態度を取ったのには訳があった。








ー昨晩ー


雄太が芽衣と一緒に裏ギルドのアジトを出て行った時。


「木下さん。それでは、また明日」


「・・・橘花さん・・・少々お時間を頂けますでしょうか?お話したい事があります」


「はぁ・・・大丈夫ですがなにか?」


雄太は黒いバンへと乗る前に芽衣に話があると言われ、バーの中へと戻っていった。


再度店内へと戻って来た雄太と芽衣、スキルズを見たバーテンは、雄太達をボックス席へと案内した。


「お飲み物は?」


「あ、じゃぁ、ロングアイランドアイスティーを・・・4つで」


「私はチンザノ・ロッソをソーダで」


「畏まりました」


バーテンは注文を取るとカウンターへと戻っていった。


「それで、話と言うのは?」


「はい・・・組織に入って早々この様な事をお伝えするのは忍びないのですが・・・組織内で不穏な動きが見られております」


芽衣はメガネのブリッジを上げて雄太の目を見た。


「それは俺が聞かない方が良い話なのでは?」


「いえ、どうやら、橘花さんを巡っての事らしいです」


「え?俺?」


雄太は芽衣の発言に驚き、自身の顔を指差した。


「はい。組織内で雄太さんへとヘイトを集めている動きがありました」


「え?どういう事?」


「橘花さんをこの組織と対立させようという者達がいるという事です」


「!?・・・何故です?」


「私も詳しくは分からず、誰が何故、どういう目的で橘花さんとギルドを対立させようとしているのか、情報を集めているところです」


雄太は組織に入って早々変な事に巻き込まれた様だった。


「それで、俺に話があるというのはこの事ですか?」


「失礼します」


雄太と芽衣が話していると、バーテンがドリンクを運んできた。


「ども」


「ありがとうございます」


雄太達は運ばれて来たドリンクを片手に話を続けた。


「話というのは?」


「えぇ。この事を踏まえ、明日、橘花さんが来た時にその者達を炙り出します。そして、対立させる目的を吐かせます」


「そうですか・・・まぁ、俺も面倒事に巻き込まれるのは嫌なので、よろしくお願い致します」


「つきまして、明日は橘花さんにはできるだけ傍若無人で棘のある態度で、私も含めて皆と接して頂けますでしょうか?そうすれば、橘花さんとギルドを対立させようとする者達が釣れると思いますので。その後は私で処理します」


「・・・分かりました。よろしくお願いします」


「こちらこそ、組織に入って早々ご迷惑をおかけし申し訳ございませんがよろしくお願いいたします」


・・・・・・


・・・・


・・





(木下さんに頼まれた様に振る舞ってみたが、結果はこう言う事だったのかよ・・・そりゃぁ、密かにも動くわな・・・って言うか、思っていた以上の内容だったし、そりゃ、木下さんにも秘密にするわな・・・)


雄太は安らかな顔で地面へと倒れている木下を見下ろして複雑そうな顔をしながらエルダを発現させた。


「一体どうなってんだよコレ?スライムってのは、人の身体に侵入して宿主の身体を豹変させて操る事もできるのかよ?」


「バカなの?普通に考えてそんな事できる訳ないでしょ?人の身体を操るとか、身体を乗っ取るだけじゃなく、脳まで乗っ取らなきゃ無理でしょ。脳を乗っ取った上に宿主と違う魔力を使って宿主の固有のスキルまで使うとか、寄生したスライム自体に知識や膨大な魔力がないと絶対に無理よ」


「ってか、スライム種って一体なんなんだよ?種類の多さもそうだが、スキルがぶっ飛び過ぎていて、ホントおかしすぎだろ?」


「ソレにはわたしも不思議に感じているのよね・・・なんでスライムだけこんなに種類が多いのかホント謎だわ・・・」


雄太がエルダと話をしている、クレシアの肩を担いだヤリクが雄太の下へとやって来た。


「雄太君・・・エージは・・・・」


「どうにか無事だ。早いところ傷を治してあげてくれ」


「エージに・・・エージに埋め込まれていたモノはどうなったのぉ?」


「多分、俺が取り除いたと思うが、一応確認はしてくれ」


「分かったわ・・・」


ヤリクに肩を担がれ、身体を預けていたクレシアは、フラフラと木下の下へと歩み寄り、木下の側へと座って傷を回復し始めた。


クレシアの手からは白く暖かな光が放たれており、少しずつ木下の傷を癒し始めた。


「雄太君。ありがとう。エージからドス黒い魔力が綺麗さっぱり消えているわ・・・よかったねぇ・・・エージぃ・・・」


クレシアは木下を癒しながら涙を流し始め、木下の頭を優しく撫でた。


「雄太君。エージを救ってくれて、本当にありがとう。それと、君に対して本当に申し訳ない事をした。すまなかった・・・」


ヤリクは雄太へと向けて深々と頭を下げた。


「雄太君。辛い事をさせてしまって、本当にごめんなさい・・・」


クレシアも立ち上がってヤリクの横で同じ様に頭を下げた。


「とりあえず、ジジイも無事そうで良かったよ。この事は、木下さん、あ、芽衣さんへも伝えるんだよな?」


雄太の言葉を受けたヤリクとクレシアは、どうしようか?と言った具合にお互いに顔を見つめあっていた。


「芽衣さんへもちゃんと伝えてあげてください。彼女も彼女なりに、この組織の事を心配している様ですので」


「・・・分かった。芽衣ちゃんへは俺から伝える」


ヤリクは闘技場の壁際で倒れている芽衣へと視線を向けた。


「それで・・・雄太君はこの組織に居てくれるの?」


クレシアは再び屈んで木下を治癒しながら雄太へとこれからについて質問した。


「とりあえずはって形で・・・俺はこれから特殊なダンジョンに潜るから、あまりここへは顔を出せないが・・・」


「そうなのね・・・特殊なダンジョンへ行くのね・・・理由を聞いても?」


雄太は話そうかどうか迷ったが、ミディアから来たこの人達ならと思い、スライムダンジョンでアリアに頼まれた事を話した。


「ーーそうなんだぁ・・・雄太君は、あの人達を解放できるんだぁ・・・それって、最下層のモンスターも倒すって事だよねぇ?」


「そうなるかな・・・」


「それだったら、芽衣ちゃんは役に立つから、本当に一緒に連れていってくれないかな?」


「いや、それは本当に無理だ。俺でも最下層にいるモンスターは厳しいのに、俺へと一発も攻撃を当てられない彼女ではカナリ厳しい。彼女が役に立つ姿が全く想像できない・・・」


「そこは、俺が守るとか言うんじゃないのぉ?」


クレシアはニヤついた表情で雄太へと視線を向けた。


「本当に勘弁してくれ。いざと言う時に極力隙は作りたくないし、必要な人員は既に揃っているんで」


雄太は背後にいる鬼人と大鬼へと視線を移す。


「でも、実際は1人なんだろ?」


ヤリクは話に割り込み、何かを含む様な言葉で雄太へと質問した。


「多分、アンタは俺の事を知っているんだろうが、あまりホイホイと人には言わないでくれると助かる。ギルドに知られれば、それこそ厄介以外の何者でもないからな」


雄太とヤリクの会話に対し、クレシアは意味が分かっていないのか、頭にハテナマークを付けながら会話を聞いている。


「俺達としても、雄太君については鍵の事もあるし、本当は隠し通したいんだが、もう既にギルドの連中に雄太君の存在はバレてしまっているし、そんな雄太君が、ここに何度も足を運ぶのも色々と厄介事を運んでくる恐れがあるかもしれない。って事で、俺は雄太君がダンジョンに行く事は賛成だ。そして、雄太君や雄太君のオトモダチの強さを見れば、芽衣ちゃんが足で纏いになると言うのも分かるよ」


「ヤリクも雄太君と同じ事言うの?」


クレシアはヤリクまでもが雄太と同じ様に芽衣が足手纏いでしかないと言いだしたので、少しムっとした様に頬を膨らませた。


「まぁ、あんた達の言いたい事も分からなくもないから、俺がダンジョンを踏破して終わった後にパーティーを組むって言うのはどうだ?」


「俺はそれでいいと思う。クレシアは?」


ヤリクは木下を治療しているクレシアへと視線を向けた。


「う〜ん・・・ヤリクがそう言うならそれで良いよ。今はエージの容体も大丈夫そうだしね」


「だな。俺は、エージの暴走が心配だったから、芽衣ちゃんをエージから離す為に連れて行って欲しかっただけだしな」


「そんじゃ、俺はダンジョン踏破、あんた達は一旦、俺を無視するって事でいいか?」


「そうだな。その方がお互いに動きやすいだろう。特殊ダンジョンの資料は昨日、日向が纏めてくれているから、帰りにカウンターで受け取ってくれ」


「分かった。ありがとう。それじゃ、各ダンジョンの踏破をした後は、ここに顔を出す様にするわ」


「お互いに色々と情報は交換しといた方がいいよね」


「何か知りたい場合や情報が入った場合は、上のバーでバーテンに伝えてくれ。その時は下からバーへと人をよこす様にする」


「分かった」


これで話は終わりだと言わんばかりに雄太はスキルズへと視線を移した。


「それじゃ、後の事は俺とクレシアで上手い事やっておく。雄太君は取り敢えず組織に入るが、約束通り、雄太君が認めた人がいなかったから誰も連れて行かないって伝えておくよ」


「まぁ、俺は元からそこで寝てる奴らには期待していなかったけどな」


「そんな事言わないの。一応、コレからは同じ組織の仲間になるんだよ!っていうか、キミの力が異常すぎるの!」


ヤリクは雄太の言葉に対して笑っているが、クレシアは雄太を諭す様に言い聞かせていた。


「そんじゃ、俺はダンジョンの資料を受け取って帰るわ。明日、ダンジョンに行く前に上に寄るから何かあればそん時で」


「あぁ。分かった」


「分かったわ。私達も傷ついているみんなを運ばなきゃだからここでお別れね」


「そんじゃ、またな」


「あぁ。ダンジョン踏破後にまた」


「心配ないとは思うけど、無事を祈ってるわ」


雄太はボロボロな状態になっている闘技場を後にし、カウンターからダンジョンの資料を受け取って自宅へと帰って行った。

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