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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第1章 怒涛のダンジョン 編
10/290

10. 買い取り1

長椅子に座って待つ事数分。


おばちゃんがカウンターから出て来て、雄太へと着いて来る様にと目線を合わせて合図をする。


雄太は急いで長椅子から腰を上げ、早足でおばちゃんの後を着いて行く。


おばちゃんは『第一応接室』と言う表札がある場所へと雄太を招き入れ、中にあったソファーへと座る様に指示する。


そして、壁際にあった冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して雄太へと渡して自身も雄太の対面にあるソファーへと腰をおろした。


「それで、今日初めてダイバーライセンスを取ったばかりの装備も何も無いあんたが、こんな時間までダンジョンの中で一体何をやっていたんだい? それに、見た感じ手ぶらの様だけど、何を買い取ってもらうつもりなんだい?」


「そうですね。 先ずは俺がダンジョンに入ってからなんですけど──」


雄太はおばちゃんの質問へと答える様に、ダンジョンに入ってからの出来事を伝える。


「ふぅ〜・・・ あんたの話を聞く限り嘘を言っている様には聞こえないけど、なんだい? その【擬装】ってスキルは? 今までそんなスキルなんて聞いた事ないわよ・・・ しかもダンジョンに入った瞬間に使える様になったとか、一体どう言う事なんだい・・・ そんなスキルの現れ方なんて、ピュアでもないし、ましてやユーザーでもないじゃないかい。 本当にダンジョン内でスクロールは使っちゃいないんだね? って言うか長い事ここで仕事しているけど、スライムダンジョンからスクロールが出たとか聞いた事もないよ。 それを考えるとあんたの言っている事は事実なんだろうがねぇ」


おばちゃんは、雄太が伝えた急なスキル発現やダンジョン内で雄太が体験した内容について頭を抱えながら聞いていた。


「しかもなんだい? スライムの種類が沢山あるとか合体する大きいスライムがいるとか、そんな報告は今まで一度も聞いた事がないよ・・・ あんた、一体何をしでかしたんだい?」


おばちゃんは雄太の報告を聞いてますます訳が分からなくなり、雄太に差し出したはずの水を引ったくって飲みだした。



あ・・・


俺の水が・・・



「俺はスキルなんて持っていなかった至って普通の人間だよ。 今はかなりの極貧生活をしてるが・・・ そんじゃ、証拠を見せるんで、ここで俺が話したスキルを発現させても?」


雄太は、雄太の話を聞くだけではまだまだ信じきれていないおばちゃんへと証拠を見せる為に、スキルを使用して良いかどうかを尋ねる。


「いいけど、あんたスキル使用のライセンスはちゃんと持ってるんだろうね?」


「あぁ。ソレだけは持ってるよ。 ほらコレ」


雄太は財布の中から【ダンジョン外スキル使用許可証】と書かれたライセンスを取り出し、テーブルの上へと置いた。


「何でスキルも無いのにそんなん持ってだい? まぁ、今はその話はいいとして、確かに、間違い無いね。 そんじゃ、そのあんたに表れたって言うスキルを見せておくれ」


「分かった。そんじゃ、買い取ってもらう物もスキルを見せながら一緒に出すんで・・・ あ、この辺に買い取ってもらう物を出すから」


雄太は入り口の横の開けたスペースを指差しながらソファーから立ち上がる。


「そんじゃ、いくよ。【擬装】!」


雄太がスキルを発現させると、ダンジョンでスライムと戦った時と同じ様に、赤黒いインナーの上に真っ黒なボディーアーマー、ガントレット、サルエルパンツの様なダボっとしたパンツ、ニーハイブーツ、ゴーグル、腰に短刀を刺した姿へと変わった。


「・・・・・・」


おばちゃんは雄太の様変わりした姿を見て目を見開き、口を全開に開けて驚いた表情のまま固まってしまった。


「そんで、コレが買い取って欲しいものだ。 ──よっと」


雄太は開けた場所へと右手をかざし、226個のスライムゼリーを出現させた。


1個がルービックキューブ程の大きさがあり、それが226個も綺麗に並べてあるので、一気に出された素材は、なかなか壮観な状態になっている。


「これで俺が言っている事が事実っていう証拠になるかい? そんで、コレって買い取ってもらえるかな? とりあえずなんとなく拾って来たものの、俺にはコレを買い取ってもらえるのかどうかが分からなくて」


雄太が出現させた大量のスライムゼリーを見たおばちゃんは、頬をヒクヒクと引きつらせながらスライムゼリーの山を見て再度固まった。


「そ、そうね・・・ って言うか、コレってスライムゼリーじゃない・・・ ダイバーの装備や日常品、食用や美容品と言った色々な使い道があるから随時買い取りはしているわよ。 って言うか、最近はスライムゼリーのドロップがめっきり減っているから、今だと状態次第にもよるけど、1個200円前後で買い取っているわ。 よくもまぁ、コレだけの量を集めたわね・・・ すぐに買い取りの係の者を呼んでくるからここで待ってて。 それと、その格好は普通の格好に戻しておくんだよ」


そう言うとおばちゃんは慌てる様にドアを開けて出て行った。


俺はおばちゃんに言われた通りに擬装を解除してスライムゼリーの山を見ながらソファーへと座る。



個200円って事は、今ここには226個あるから──


45,200円!?


マジで!?


あ、手数料10%取られるんだったな・・・


それでも40,680円!?1日で4万も稼げるのかよ!?


1日100個売ったとしても18,000円・・・


マジかよ!?


今日の晩ご飯は思いっきり贅沢できるぞオイ!!



雄太は売れるかどうか分からずにとりあえず拾って来たと言うだけのスライムゼリーの意外な販売額に驚き、最早、今夜の晩ご飯の事しか考えられなくなった。


今日の晩ご飯は何を食べようかと雄太が真剣に悩んでいると、ノックの音と共に会議室のドアが開き、おばちゃんと一緒に小綺麗な格好をしたビッチリ七三分けのメガネの男性が入って来た。


「待たせたね。 それじゃ、素材は彼に鑑定してもらうから。 あ、彼は鈴木君。 ここのハロワで買い取りを担当してもらってるわ」


「はじめまして。鈴木と申します。 それで、買い取る物はどちらに?」


雄太とおばちゃんは鈴木に無言で回答するかの様に、開いたドアで隠れている開けたスペースを指差した。


鈴木はメガネのブリッジを人差し指で持ち上げながら、雄太とおばちゃんの指先を追ってスライムゼリーの山へと視線を移したところで手に持っていたタブレットを落として固まった。


鈴木のリアクションを見たおばちゃんは、「だよね」と思いながら額へと手を当てて、「ふぅ〜」っと溜息を吐きながら鈴木へと先へ進める様に促した。


「鈴木君。 そこに山になっている素材の買い取り手続きをお願い。 必要なら他の職員へも素材鑑定の手伝いを頼んで頂戴」


「・・・は、はい! 他の職員を呼んで来ます!」


鈴木は落としたタブレットを拾い、走って部屋を出て行った。


「私や鈴木君のリアクションで分かったと思うけど、あんたは普通じゃ無い事をやったのよ? まぁ、あんたにはその自覚は全く無いと思うけど。 この買い取りをしながら、あんたのスキル登録もするから今朝渡したカードを出しな」


おばちゃんはカードを出す様に右手の掌を雄太へと向けた。


雄太は後ろポケットからカードを取り出し、おばちゃんへと差し出す。


「認証のところに指をおいて、カードを起動させな。 そうすれば、今あるあんたのスキルがカードの表じゃなくて裏に出るから。 そこに出るスキルがあんたのスキルって事になるから。 他にスキルを隠していてもそこに全て記載されるから覚えておくんだね。 スキルが追加されたらそれを更新する義務があるから、都度更新する様にするんだよ」


おばちゃんは、慣れた様に雄太へとカードでスキルを登録する方法を教える。


「分かりました。 ──そんじゃポチっと」


雄太はおばちゃんに言われた通りカードへと指を押し付けて起動させると、スキルが登録されたのか、カード全体が緑色に光った。


カードの発光が収まると、カードの裏には【スキル】と言う欄が現れており、そこには【擬装】と言う記載があった。


しかし、カードの表記とは違い実際の雄太のスキルはユニークスキルであり、しかも、その擬装に内包されているスライムスーツや他のスキルについての記載は全く無かった。


実際には、雄太はカードに記載が無い数多くのスキルを使う事が出来るのだが、カードには、ただ、【擬装】とだけが表示されていた。


多分コレは、大まかなスキルの名称は確認できても、何かしらの条件によってスキルの詳細迄は確認が出来ない為なのであろう。


雄太がカードへとスキル登録をしていると、再度ドア開いて鈴木が2名の職員を連れてやって来た。


「コレが査定する素材になります。 量があるので手分けしてお願いします」


そう言って鈴木がドアに隠れている大量のスライムゼリーを指差すと、新しく入って来た2名の職員は、表情を引き攣らせながら固まった。


「ほら。 コレで分かったかい。 あんたが採ってきた量がどれだけ異常かと言う事が。 あんたの話を聞く限りでは、こんなのが毎日続くんだろうが・・・」


「「「・・・・・・」」」


おばちゃんが発した毎日この量が続くと言う言葉に対して、鈴木と他2名の職員の顔が更に引き攣った。


「・・・冗談ですよね」


鈴木が連れて来た2名の職員の内の若そうな女性職員は、まるで化け物を見る様な目で雄太へと視線を向ける。


「・・・明日もダンジョンに行くんで、多分、暫く続くのかな・・・」


雄太が申し訳なさそうに女性職員へと返答すると、女性職員はガクっと膝を突いて崩れ落ち、悲壮感を漂わせながら地面へと両手を着いて深く俯いた。


それを見ていた鈴木ともう一人の中年男性職員も、涙ぐみながら天井を見上げたり、鈴木に至ってはおばちゃんへと雄太からの買い取りに対して猛抗議をし始めた。


「春日所長! こんな量を毎日査定するなんてどんな罰ゲームですか!? こんな量の査定を毎日やるのでしたら人員の増員か彼に専属の担当を付けて下さい!」


「え?所長?おばちゃんが?」


雄太は取り乱している鈴木が発した言葉に疑問を感じ、思わず思った事が口に出てしまった。


「あぁ。悪いね。 そういやあんたには言ってなかったけど、こう見えてあたしゃここの所長を任されている身でねぇ。 職員が少ないからカウンター業務も兼任しているのよ。 それは兎も角、こんな量を毎日持って来てくれるだろうあんたは、此処のハロワにとっちゃ最高のお客様って事になるねぇ。 今後とも贔屓にしておくれよ。 と言う事で、鈴木くん。 ブツクサ言わずにちゃんと査定するんだよ。 こんな上客逃したらタダじゃ済まさないからね」


おばちゃんは、まるで悪戯が成功した子供の様に笑みを浮かべながら、雄太へと向けて手を差し出して握手を求めた。


「おばちゃんがここの所長って事には吃驚したが、今更なんで言葉使いも態度も改めるってのはなんか嫌だから今まで通りに接するけどいいよな。 そんじゃまぁ、こっちこそ宜しく」


雄太はマジか!? と言う様な顔をしながら、今迄のおばちゃんの態度がデカかった事に納得がいき、素直に差し出された手を握っておばちゃんと握手をした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 弱いモンスターはリポップが早いのならスライムキラーな主人公は上客。 職員の涙の数だけ電子マネーが増えるのだ。そのうち査定数が千や万単位にwww あとライセンスカードの仕様のため情報漏洩が最…
[気になる点] 高額で査定が難しいアイテムならともかく、200円程度で、 安い類似品も無いような物を査定するのにそんな悲観する事無いのでは
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