とある会話 58
Z「 出発前から決められていたことなんだ。
良いも悪いもない。仲間のことは忘れろ」
F「なぜ、僕を残した?」
Z「 君が優秀だからだ。司令部に説得して
みせる。君を生かして帰らせることは
司令部の指示にはない。私が、それだけは
何とかしてやるよ。
ともに、世界を制圧するために知恵を出し、
覇権を握る手段を次々と考え出して、新しい
時代を作ろうではないか?君は優秀だ。だから
火球にせず、残した。どうだ、改めて質問しよ
う。君は、断れないはずだ。言語誘導幻覚剤が
効いているはずだからね」
F「違うだろう?」
Z「 ほう。まだ反対意見を言えるのか?君は
薬に強いなあ。そろそろ、私の意見に
いやいやながらも妥協して賛成しても
良い時間なんだが。特殊な耐性があるのか?
フッ(笑)
まだ自分の意見を言える力が残っているのか?
これは手強いな。これから私が君に言うことに
君は賛成する必要がある。賛成しなければ
いけない。君が逆らおうとしても、わが国が
開発した幻覚剤の力には逆らえまい。時間の
問題だ。じゃあ、聞くぞ。現実は力で変更
するものだ。真実は力で変更できる。賛成
だろ?」
F「 うっ・・・現実は力で変更・・・うっ・・
真実は力で変更・・・」
Z「 できるか、できないか、どっちだ?
賛成するか?賛成しろ。逆らえば
冬眠カプセルで、偽装火球行きだ!」
F「どうするんだ?力で全てを作り変える
つもりか?」
Z「そうだ。悪が善になり、善が悪になることも
可能だ。われわれが覇権を握れば、すべてが
可能だ。加害者が被害者になり、被害者が
加害者にだってなりうる。犯罪者は無罪になり
何もしていない者が有罪になることも可能だ。
どうだ、そんな世界でやりたい放題
やらないか?真実が嘘になり、嘘が真実に
改竄される。何でも思うままだ!賛成するか!
真実に、こだわる優秀なF君!フッ(笑)
真実を捨てることができるか?教えてくれ!」
F「 そ、そ、それが聞きたかったんだろ?
真実の探究を捨てることを目の前で
確認したかったんだろう?だ、だから
僕を、わざと残した。仲間たちと一緒に
偽装火球としてミサイル試射実験に
使わなかった。真実を棄却させることを
楽しみたかったんだろう?
優秀だからじゃない。そんなことくらい、
僕にも、わ、分かってるよ、あんたの意図は」
Z「 ほう。賢いじゃないか。まだ思考能力は
健全だな。これは驚いた。新しい覇権時代の
ルールに従うか?どうだ?生きるも死ぬも
君の決断次第だ!楽になれ!われわれの
新しい覇権時代の哲学に従うか?どうだ!」
F「うっ・・嘘と暴力が真実や正義になるのか?」
Z「 そうだ!これから戦争で勝ち、すべての
真実と正義は、われわれが決める!
ついてくるか、ついてこないか?
シャトルで帰還するか?偽装火球化して
敵国上空で藻屑となるか?さあ、どうする?
私の意見に従って思想転換して楽になれ!
それとも、カプセルに横たわり、火球として
飛ばされたいか?さあ、答えるんだ!」
F「・・・・あんたは、幻覚剤の影響は?」
Z「 私が自分に噴霧するわけないだろう。
何を今さら言ってるんだ?どうした?
従え!真実を今から捨てろ。正義も捨てろ。
全ての事実を力で作り変えるんだ。
シャトルで帰還し、敵国を滅ぼすために
ともに戦うか?どうなんだ?」
F「うっ・・・」