とある会話 44
---冬眠カプセルが開く---
F (起床日か?)
F (誰もいないのか?僕は、アキレスと亀状態に?)
F「誰かいませんか!」(返事はない)
F (今、ここに見えている現象から推測すると
冬眠カプセルの周辺には、仲間の姿はない)
F (Zさんは、この宇宙ステーションで起こった
出来事を、冬眠カプセル装置が作り出した
アキレスと亀状態による3密解消だと
説明した。僕は、最後の最後まで、Zさんの
説明を信じることはできなかった。理由は
分からない。僕は、リーダーであるZさんの
話が、真実とは思えなかったんだ。証明は
できないなら、仲間たちが消えた理由は、
アキレスと亀状態であることによる必要など
ないはずだと考えていた。他の理由でも良いはず
だと思っていた。だから細胞に変化が与えられて
時間の流れがある時点から進まないかの様な
時間軸を生きることになるなど、ありえない、
到底受け入れられない説明だった。ステーション
に到着したばかりのころの時間軸の周辺を
永遠に近い緩やかな感覚で向かい続ける状態など
信じようがないじゃないか?
なぜ、アキレスと亀状態じゃないと
いけないんだ?僕は、哲学だと言うならば、
Zさんには、こう言いたかった。それは、僕なら
フッサールの現象学的観点から、目の前に広がる
ありのままの事象を、つまり出来事をそのまま
観察し、過剰な思い込みを入れないで物事を
考え、結論に向かうアプローチを伝えたかった。
現象学的観点から考察すれば、ただ単に
仲間たちは宇宙ステーションから突然
姿を消した。それだけしか言えないはずなんだ。
でも、今、こうしてカプセルルームで1人になり
誰も周囲にいないとなれば、どうやら僕の
現象学的観点からの推理は、Zさんのアキレスと
亀状態説に敗北したことになるのだろうか?
まさかとは思うが、現代の科学技術の力は、
遠い昔の作り話に思える伝説さえも実現して
しまえるのかもしれない・・・)
F (スクリーンルームへ行ってみるか・・・)
F ( もしや、永遠にスクリーンルームへさえ
たどり着けないわけじゃないだろう?)