とある会話 36
Z「君たちは、勇気がある」
V「何が良いたいんです?」
Z「わたしは、こう見えても、頼りないかも
知れんが、君たちのリーダーってことになって
いる」
X「それで?」
Z「 分かるだろう?この宇宙ステーションに
到着してから、司令部に真の任務を指示して
もらえると思っていた。地球ではリーダー
用の任務に関する指示などは受けなかった。
君らと同じだ。全く同じ内容の指示を
与えられて出発しただけだ。それは
ただ単に三密を解消するために
この宇宙ステーションに滞在すること、と。
さすがに驚いたよ。司令部と通信できないこと
に焦ったが、連絡がつかないことが実は
この装置の成功を意味するのかも知れないと
推測するようになったからね」
Y「 今さら感傷に耽るんですか?じゃあ、この
三密解消冬眠カプセル装置は実験成功って
ことで国へ帰って良いですよね、Zさん!」
Z「 ところがね、Yさん。前に、誰かの質問にも
答えたが、帰還の許可を司令部から得ていない
んだ。わたしには、こちら側の判断で
一方的に地球へ帰還する、まさにその権限
がない。そんな力を持ち合わせていない
んだ。そして、もう1つ言わせてくれ」
Y「何です?」
Z「 われわれは、このまま三密解消実験を
続けなければならないんじゃないかと
いうことだ。おそらく地球の司令部は
われわれの様子を何らかの方法で、
地球から把握している気がするんだよ」
Y「まさかまだ続けるとでも言うんですか?」
Z「 ああ。これが任務なら、途中で職務を
投げ出すわけにはいかないだろう。
なあ、そうだろ?今、ここで起きている
出来事は緊急事態などとは全く違うとしたら?
三密解消用の冬眠カプセルでの実験中なんだ
と考えてみたら、どうビジョンが
変わるだろうか?みんなどうだ?君たちは
誰よりも国を思う気持ちの強い愛国者だろ?
そんな君たちが職務を途中で放棄して
帰還用宇宙船でここからそそくさと
逃げ出すとはわたしにはとてもじゃないが
想像できない。なぜなら君たちこそが
この任務に選抜された勇者だからさ」
C「 Zさん、それがあなたにとっての
不都合な真実ですか?」
Z「 違うよ。この装置の有効性を検証できない
こと、そのことこそが
わたしにとっての不都合な真実なんだ」
E「 検証できない?さっきあなたは検証したいから
協力してくれと頼んだじゃないですか!
何を言ってるんですか?前言を覆すん
ですか?」
Z「 すまん。君らが、地球へ帰還すること
ばかりに集中しているから、引き止める為に
言ったまでだ。Fさんが前に言ったこと
覚えてるか?」
F「勝手な判断で帰還したら国に処分されると
いう話のことですか?」
Z「 そうだよ。わたし自身は、帰還用宇宙船で
地球へ降下することはこのステーション滞在
計画を破壊してしまうことになるんじゃないか
と考えている。それを決断して国へ戻ってから
待っているのは、司令部からの怒りと強烈な
非難と処分だけだろう」
G「 帰還したら、地球で待っているのは
処分だけか。参ったな。どうすりゃ良いんだよ
勝手な判断でここから地球へ帰還したら
国全体からステーション計画失敗の汚名と責任
をなすりつけられそうだ
困った!これは、まさに不都合な真実だ!」
Z「不都合な真実はもう1つあるんだ」
G「何です?実はこの装置の有効性を検証
できるとは思ってはいない
とさっき言ってたことですか?」
Z「ああ、そうだ。それが本当の不都合な真実だ
まあ、わたしの話を聞いてくれ」