とある会話 30
C「まさか、私たちが亀で、消えてしまった
仲間たちがアキレスとでも言うつもりですか?
馬鹿にしないで下さい!」
Z「惜しい!Cさん、君は優秀だ。でも少し違う」
E「Zさん、いったい何が楽しいんです?クイズを
出しているつもりですか?」
G「冬眠カプセルに注目してくれと言ったけど
次にいきなりアキレスと亀?飛ぶ矢は止まって
る?意味が分からないですよ、わたしには」
Z「仮説だが、もしわれわれがアキレスで、
ステーションから消えてしまった仲間たちが
亀だとしたらどうだろうか?」
K「は?ここにいるメンバーがアキレスで、
消えていったメンバーが亀ですか?
全く理解できません。Zさん、冗談にしても
ひどすぎます。徒競走なんてしてないじゃ
ないですか」
Z「われわれは、冬眠カプセルに数えきれない
くらい入ったよな?」
L「どうしちゃったんですかZさん?今さら
当たり前のことを聞かれても・・・この
冬眠カプセルに何か仕掛けがあるんですか?」
M「冬眠カプセルに何回入りましたかね?
わたしも途中から数えてないですね。
合計何回でしたっけ?」
Z「Mさん、思い出せなくても良いんだ。わたしも
そうなんだ。回数を覚えていたはずだが
なぜか忘れてしまっている」
N「でも、毎回、地球時間で300日後に設定して
カプセル内で就寝していましたから、みんな
起床日は同じはずです。だからカプセルが
300日後に開いた時は、みんなそこにいるはず
ですよ。それなのに、仲間たちは消えていた」
Z「そこなんだ、ポイントは。大事なのは、
そこの話なんだ」
O「いやあ〜参りましたね。堂々巡りですよ。
今までみんなでその話をしていたのに、
Zさん、もったいつけて、またカプセルが
開いた時点に話を戻すんですか?その
時、メンバーがいなかったこと、さらに
どこを探しても見つからなかったことを
知りたいんです」
P「Zさん、わたしたちがアキレス役なら、
消えたメンバーが亀役だとしても、すぐに
追いついて見つけられるはずですよ。
なぜかと言えば、同時にカプセルが開くはず
ですからね。永遠に亀に追いつけないわけあり
ません」
R「ちょっと、良いですか?追いつくもなにも
このステーション内は競技場でも運動場でも
ないから、例えば彼らが、われわれの先を
走ってたとしてもすぐに相手の背中を確認
できるはずです」
S「どうなってんだ?運動会でもやって、
先を走っていた仲間がそのまま消えて
どっかにゴールしちゃったとでも言いたいの?
ここ運動会のグラウンドじゃないよ、
せまい宇宙ステーションだよ?
それに、消えた仲間たちが自分の前を
走ってる姿を見たことなど1度も
ないよ。他のみんなも同じだろ?」
V「バカバカしいなあ。アキレスとか亀とか。
わたしがアキレスで、消えた仲間が亀なら
1秒あれば、一瞬で追いつけるはずだよな?
例え話にしては、ひどすぎる」
Z「みんな、冬眠中は、身体の細胞全部止まって
いるだろう?そして起床時に解凍プロセスを
経て、意識を回復して体を動かせる様になる」
X「それがどうかしたんですか?」
Z「みんな、それぞれの冬眠カプセルの中で
300日間、体の機能を全部停止させて
横たわっていたことになる。脳も含めて
全ての細胞が止まっていたんだ」
Y「Zさん、どうしちゃったんですか?
冬眠カプセルと停止した細胞、
そこにアキレスと亀が何の関係があるって
言うんです?」
Z「A Watched Kettle Never Boils・・・」
Y「は?何て言ったんすか?ウォッチ?
時計がどうかしたんですか?」
Z「見つめる鍋は煮え立たない。って意味らしい」
Y「参ったよ、こりゃ参った。聞いたかみんな?
Zさん、今度は英語のレッスン始め出したよ」
Z「アキレスと亀、飛ぶ矢は止まっている、
じっと見つめていると鍋は沸騰しない。
これは全部同じテーマだと聞いたことが
あるんだ・・・」