とある会話 18
I「率直に言います。4人は、誰かに、消されたの
ではないかと思うようになったんです」
W「おいおい、Iさん、殺人事件だって言うのか?
確かに、今この宇宙ステーションで起こって
いることは、非常事態かもしれないが」
J「Iさん、わたしも同じ意見です。
宇宙ステーションで生活してから
不自然なことが、あまりに多すぎます。
わたしは、ほんとに、もう、限界なんです。
正直、地球側との通信の不調や
冬眠カプセルによる体調不良、そのほか、
何もかもが、理解できないことばかりで、
失望を通り越しています。つらいんです。
この滞在の無意味さを、毎回、毎回、
冬眠カプセルから起床するたびに、
痛切に感じています。
わたしは、今すぐ、今すぐに、
地球に帰還できれば良いのです!
どうやったら帰還できますか?理屈は、もう
じゅうぶんです。Iさん、わたしは、
QさんやAさん、Hさん、Uさん達には、
おそらく、
もう会えないような気がしています。
だからこそ、一刻も早く、
ここから脱出したいんです!」
B「Jさん、落ち着こうや。自分もね、限界
来てるんだよ。通信ができない状態に
おちいっている可能性はじゅうぶんあるよ。
むしろ、地球側と詳細な連絡が取れない
ことが、みんなを不安にさせて来た。
地球で何が起きているのか?地球側から
指示は、なぜないのか?あいさつ程度の
文章がスクリーンに写し出されるだけと
いう、その繰り返しこそが、何かが
起きていることを表しているんだと思うんだ」
W「地球に帰りてえよ。あんたたちだけじゃ
ない。うんざりしてるよ。殺人事件だと
したら、もう、限界だよ。犯人を警戒
しながら滞在しなければいけないんだ。
犯人が誰かも分からない。事件だと決まった
わけじゃない、だけど、おそらくIさんが
正しいのかもしれない、とも、
うすうす思ってるよ。
だけど、まだ、事件だとか認めたくないんだ
よ、俺は」
I「Uさんが、Uさんが、何かをつかんでいたん
じゃないでしょうか?気になることがあると、
前回、言ってましたよね?
Uさんは、何かを知ったんじゃないですか?」
B「その可能性はあるかもしれない。でも
Hさん、Aさんも、このまま見つからなかった
場合は、3人とも、何者かに消されたことに
なってしまう。Hさん、Aさんには、消される
理由は見あたらないよ。そしてQさんも、
消されたとしたらね、理由は何?」
J「無理があるんですよ。宇宙ステーションに
いない、見つからない、犯人がいる、
なぜ、どうやって?全ての理由が分からない。
わたしは、地球に帰りたい、帰還したいだけ
なんだ、細かい理由も、いらない。
帰還方法を教えて下さい。知りませんか?」
I「スクリーンだと思います。Uさんは、
スクリーンの点検をしていました。
たしか、Qさんもです。覚えてますか?
少なくともQさんとUさんは、スクリーン操作
を担当して、装置を調べていたんです」
W「こうなったら、俺たち4人で、スクリーン
装置の点検作業をしないか?点検作業を
4人でやるんだ。1人より4人なら、まだ
安全だろう?」
B「そうしよう。とりあえず、今の話は
ここだけにして、スクリーンルームに戻ろう。
おそらく今日の通信は、前回と同じセリフしか
表示されない。その後、定例ミーティングが
ある。その際に、4人で点検作業を申し出ない
か?」
I「そうしましょう」
J「分かりました」
W「よし!点検してやるぜ!」