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お城
砂嵐が舞う 砂塵が覆うその奥に
薄茶色の視界のその先に
なんとも寂びれた古城が一つ立派に聳え立つ
円柱の灰色レンガの建物
その両サイドに少し背の低い同じ建物が一つずつ
片方は崩れてしまって元の形が分からない
けれど、対を成しているものがある
だから、崩れる前の姿が想像出来る
誰も居ないお城
誰も近寄らないお城
誰も気づかないお城
「かわいそう」と小さく呟く
途端に砂嵐が激しく舞き起こる
いや、舞い・怒った
それはまるで、呟いた言葉に反応したかのように思えた
かわいそうなどと思うな、と
これはこれで気分が良いのだ、と
言っているような
そんな気がした
「また来るね」
返事はない
けれど、壊れかけの建物から灰色レンガが落ちていく
それはまるで
手を振ってくれているようでした




