54/140
鉄壁
――――――――――――――――――――
刃を通さない防御壁
暴力的な事象を全て無効化する力
やる気の見えない怠けた少年
――――――――――――――――――――
頭の後ろで手を組みぶらぶらと戦場を歩く
黒い外套にフード姿は敵兵の視線を一つに集めた
数人の兵士が子ども相手だろうと襲いかかる
斬りつけた刃は折れた
刺した槍は砕けた
少年の外套には傷一つない
ならばと、一人の兵士が首元を狙った一振りを放つ
折れては砕けて散る刃
武器よりも硬い少年の外套に兵士達は唖然とした
少年は何事もなかったかのように歩き続ける。
逃がすまいと、敵兵に掴まれ持ち上げられる少年
揺れたフードの隙間から金色に輝く瞳が垣間見えた
数人の敵兵が持ち上げられた少年の周りを囲む
瞬間、吹き荒れる風に兵士達は目を伏せた
初老の男がナイフを手に兵士達の首を丁寧に掻き切っていく
少年を持ち上げていた敵兵も、後を追うように地に伏せ血液を垂れ流す
少年は男を見上げて一言だけ口にした
「ありがと」




