追憶
一軒家、朝食、テラスにて――
リビングから庭へと続く窓を開ける
皿に載せたトーストとコーヒーを持つ
テラスにある丸いテーブルの上に置く
向かい合わせになるように置かれた椅子は空席のまま五年が経つ
大好きだった君が亡くなって五年
――まだ熱いコーヒーをすする 触れた唇と舌が火傷した
広い庭では君の声も 飼っていた犬の鳴き声も聞こえない
君を失った彼は 後を追うようにして亡くなった
見上げた空には嫌味な太陽がこちらを凝視していた
――まだ熱いコーヒーをすする 少しだけ飲むことが出来た
トーストの匂いに釣られたのか小鳥が周囲を飛び交い始める
常連であり 見慣れた小鳥はテーブルの上に足を置いた
どうぞと皿を押し込む 小鳥が一瞬羽ばたいた
――コーヒーをすする 体に熱が蓄積される
いくら熱い飲み物を飲んでも 心は冷めたままだった
小鳥が再びテーブルへと足を乗せた
三羽の小鳥がトーストを啄む
――私はただコーヒーを飲む
君に会えない悲しみが今でも不意に訪れる
コーヒーカップを持つ手が微かに揺れる
これをあと何回繰り返せばいいのだろう
――私は泣きながらコーヒーを飲み干した
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