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紅
崩れた街並み、石造りの建物が轟音を立てて崩壊していく。
燃え上がる炎、灼熱の海に人が燃えていく。
苦悶の表情を浮かべて人が死ぬ。
苦痛を訴え人が死ぬ。
この世界に神はいない。
焼け落ちる屋根、下敷きになり死んでいく。
崩れ去る石の壁、重みに潰れて死んでいく。
潰れた死体に泣き叫ぶ家族。
埋まる地面に泣き叫ぶ家族。
この世界に神はいない。
街の中心地には巨大な龍が塔に縋りつくようによじ登っている。
崩れながらも巨大な龍は上を目指して爪を立てて這いあがる。
巨大な龍は泣いていた。
何かを訴えるその瞳には憤怒が見える。
何かを訴えるその瞳には悲哀が見える。
この世界に神はいないと訴える。
巨大な龍が大きく息を吸い込んだ。
大気が微動を始め、崩れた建物が揺れる。
上空に向けて吐いた龍の吐息。
業火となって街に降り注ぐ。
街が紅へと染まった。
――手記『生き残った龍の最初で最後の姿』より
龍って壮大で格好良いんですよね……。荘厳で雄大で、なのに慈悲深い印象を与えてくれる。。。
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