2/140
人が好き、だけど嫌い
「人は好き?」
彼の問いかけに自分はいつも決まった台詞を返す。
「好きだけど、嫌い」
彼は決まって微笑みながら尋ねてくる。
「なぜ、好きだけど嫌いなの?」
笑顔の裏に隠れた本性が怖いから。
とは言えない。だって、怖いから。
一番見知った彼ですら、自分は恐怖の対象になる。
無言を貫く自分に彼は笑う。
「まぁ、別にいいけどね」
優しい笑みに心が抉られる。
何が良いのか分からない。
「言葉にしなければ、誰にも何も伝わらない」
彼は遠い目をして呟いた。
青い空に消え入りそうな薄い雲が一つ、掴まれたかのように引きちぎられようとしている。
自分は無言を貫いた。
小さな公園のベンチ。三人掛けの椅子。両端に彼と自分。
誰も居ない公園。
晴天だが、気持ちは曇天。
「じゃ、また来るよ」
「分かった」
彼は立ち上がり、自分は目を伏せてその場をやり過ごした。
お気軽に感想・お題をお待ちしています(_ _)