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状況把握

 戦場から少し離れた崖の上に二人の人影。

 フードを被り足を崖下へと投げ出している少年が隣の男を見上げて呟く。


「そろそろ終わりだね。疲れたなあ……、よくこんなに長い時間戦えるよね」


 隣に立つ大柄の男もまた、フードを深く被り表情は窺えない。


「おい、仕事はまだ終わっていないんだ、怠けるな」


 足をぶらぶらと揺らしている少年に男が喝を入れたが―― 


「もううるさいなあ……、今日は味方が五十くらい。視界が悪くて遠くの方は全然見えなかったよ。まあ味方も五十で済んだなら耐えたほうだと思うけどね」


 無邪気な声に幼さが残っている。


「もっと戦場を歩けと言っているだろう。自国の兵士は後で墓を作ってやらねばならんのだ。誰一人としてここに残すことは許されん」


 男は静かに怒りを込めて呟いた。


「でもさ、墓作るの面倒だからって理由で僕たちが加勢するってのはどうなの?」

「……っごほん」


 少年の質問に男は何も言わず咳ばらいをした。そして、問いかけとは別の言葉で話を始める。


「敵兵の死者は三百十二人……十分だろう。兵士と死者の数が半々といった所……向こうも撤退するしかあるまい」


「こんなに人が死んでいるのにアレフはいつも冷静だよね」


 少し馬鹿にしたような少年の笑い声に、アレフと呼ばれた男は溜め息をついた。


「ギメル……お前は気楽に戦場に居過ぎだ。異能を使えるのは我々だけだと思うなといつも言っているだろう。もしお前よりも格上の相手と戦場で不意に出会ったらどうするつもりなんだ。いくらお前が鉄壁を誇ったところで発動出来ない瞬間を狙われたら――」


「あーもう分かってるってば! 今日はもう帰ろう! 疲れた!」


 言葉を遮り子どものように喚くギメルと言う少年に、アレフは呆れながら崖と反対側へと振り返る。

 一人で足を岐路に向けるアレフ。


「ちょっと待ってよ!」


 投げ出していた足を崖に上げ、急いでアレフの元へと駆け寄っていくギメル。


「早く掴まれ、置いて帰るぞ」

「なんかアレフってさ、僕に対して冷たくない?」

「知らん」


 ギメルがアレフの腰にぐっとしがみ付く。

 フードを深く被り直したギメルがアレフを見上げて呟いた。


「アレフ、途中で吹き飛ばしたら怒るからね」

「黙ってしがみ付いておけ」


 アレフがしがみ付くギメルの体に腕を回し掴む。アレフの次の一歩が地面へと触れる寸前――


 二人はその場から消え去えていた。

 舞い上がる砂塵が上空へと渦を巻く。


 崖の上には、戦場から響き渡る鉄と鉄の打ち合う音が微かに鳴り響いていた。

自作品の始まりの部分いじっただけなんですけど……なんか無性にこれにしたかった……。

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