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耳を塞ぐ理由
私は、人の声が怖い
圧力的な声や感情的な声は、私の心を怯えさせる
焦燥感、不安感、疑心暗鬼
色んなものが入り乱れてしまう
大したことじゃない、そんなことは分かってる
けれど、声に紛れた暴力的な感情が、ふとした時に襲いかかってくる
声に殴られる、声に蹴られる、声に脅される
そんなイメージで、
この世界の声は、私をとても不安にさせるんだ……
耳を塞ぐ
聞こえてくる音は波打って、綺麗な音色を奏で始める
あちらの世界とは別世界、ここは自分だけの心の世界
綺麗で、素敵で、開放的で、
安心な音の流れは、私の心を穏やかにしてくれる
人という同じ枠組みなのに、声の美しさはぜんぜん違う
明るい音も暗い音も、ロックもクラシックもジャズだって
全ての音色は素敵に時間を彩ってくれる
耳を塞いだ世界はそんな世界
耳を開放すれば、
人の声、雑音、雑多な感情が入り乱れる世界
人々の負の感情が渦巻く世界
やっぱり、この世界は慣れないや
今日も私は、
世界がもっと穏やかで、優しくなればいいのにと、
願いながら、そっと耳を塞ぐことにした――――――




