第二話 アーテル村 カンガルーファミリー
アーテル国アーテル村にカンガルーの獣人一家が引っ越して来たのは、今から丁度一ヵ月前の事だった。
コアラさんの家の隣の家は、緑色の屋根で、とても大きい家だ。
カンガルーの獣人一家は、この家に引っ越して来たのである。
お父さんの仕事の都合で、お父さん、お母さん、娘二人の四人家族で外国から引っ越して来た。
お母さんは、まだ産まれたばかりの赤ちゃんを抱えた引っ越しはとても不安だった。
しかも、国内ではなく外国という事で、さらに不安が増した。
この国に住む者の性格や、国の事など、全く分からなかった。
来てみたら、どんより雲の天気で、この国に住む者も、どこか暗い人が多く見える。
アーテル国アーテル村は、お母さんにとって、居心地の悪い場所でしかなかった。
“こんな所で、産まれたばかりの子供を育てなきゃいけないなんて”お母さんは、常にそう思っていた。
唯一、心を落ち着かせる事が出来る時、といえば、隣に住む「コアラさん」と呼ばれている男性の家族の存在が、大きかった。
コアラさん一家も、同じ国の出身者で、住んでいた地域は違っても、「同じ国の者」というのは、なんとなく安心できた。それは、コアラさんの家族が皆、とても優しく、また、親切だからだろう。
お母さんの救いは、それだけではない、カンガルーの家族は、この国に永住するのか、また、時期が来たらどこかへ行くのか、元の国に帰るのか、今の段階では分からないが、とりあえず、このコアラさんチの隣に建つ、緑色の屋根の大きな家に住める、というのもありがたかった。
一方、お父さんは、赤ちゃんも産まれ、家族もこの国へ、一緒に来てもらったのだし!と、仕事を早く覚えようと、張り切っていた。
この国の言葉を覚えたり、積極的に活動していた。
元々、『本が好き』という事もあり、こちらの国へ来る時も、沢山の本を持ってきたのだが、少しずつではあるが、こちらの国で販売されている本を数冊買って、勉強に使っている。
娘がこの国で、小学校に通う事となり、村の小学校の転校生になった。
一年生のクラスに入れられ、教科書を持って帰ってきた際、お父さんも目を通した。
一年生の教科書は、お父さんにとっても、言葉などを勉強するのに、丁度良かった。
お母さんは、毎日不満を漏らすが、お父さんにとっては、不満は無かった。
お父さんは、元々、学ぶのが好きだからなのか、新しい国について、学べる事が楽しくてしょうがなかった。
それでも、妻の愚痴を聞くのを、億劫にせず、ちゃんと毎日聞いている。
カンガルーの獣人の家族、ブラウン家の長女、カーラは、お母さん同様、不満を持っていた。
名乗る時に「カーラ・ブラウン」と名乗ると、聞いていた者達の頭上に、クエスチョンマークが付くことが多いように見える。
名前の「カーラ」も、苗字の「ブラウン」も、自分達が住んでいた国では、ごく普通の名前だったかからだ。
しかし、この国では「変な名前」と思われているようだ。
なので、いつもカーラは一人で過ごしている。
「カーラ」とは、「愛しい人」という意味がある。と母親から説明を受けているし、「父が名付けてくれた」とも聞いている。
そのような意味の名前は、この国では存在しないの?と、父に聞いた事もある。
父はその時、「調べてみるよ」とだけ言って、話を終わらせた。
その後、カーラは、家の中にいる時、父に声をかけられ、父と一緒に二階の夫婦の寝室へ入って行った。
父に言われ、梯子を上り、小さい部屋へ、入った。父も梯子を上ると、「そっちに入ってごらん」と言い、カーラは小さな部屋から、「屋根裏部屋」へ、入って行く。
初めて入ったそこは、父の書斎だった。
周りを見渡すと、母国の言葉の書いてある本が、いくつも本棚に入っている。
多少、天井が低いが、まだ小さいカーラには、充分な高さである。
父はギリギリ立って歩ける。といった感じだ、後ろから窮屈そうに、歩いてくる。
本棚も高さはなく、カーラの背丈より多少低い。
父が書斎の机の前にある、椅子に座ると、本棚は、丁度良い目線の位置にある。
父は、本棚に興味を示して、キョロキョロしているカーラを呼び、父の近くへ座らせ、カーラの顔を、しっかりと見た。
「カーラ、君の名前は、お父さんが送った、君への最初のプレゼントだ。お母さんも気に入ってくれた。それは、君も分かってくれているね。愛しい子、愛すべき子だ。しかし今、この国に来て、この国の小学校に行くようになったら、君の名前を聞いて、戸惑う者ばかりで、君は自分の名前に、自身が持てなくなっている。そこでお父さんは、調べてみた。カーラと似たような意味を持つ名前があるのか。そしたら、あったよ。この国にも。『あいこ』や『あい』といった名前だ。それが君の名前のような、意味合いを持つ名前らしい」
そう言われても、ピンと来なかった。
しかし、似た意味を持つ名前は、あるらしい。
カーラの顔を見て、父はさらに、カーラに紙を見せてきた。
その紙には、父の字が書いてある。
父の字と、意味不明な文字がチラホラしている、カーラは、それが何を示しているのか、父に聞いてみた。
「その、よくわからない文字?はなんなの?」
「これは、かすみと読む。こちらの言葉で、「かすみ」という名前があるらしい。「カーラ」という意味とは違うらしいが、「カスミ」とは、色々な意味合いがあるらしいが、名前としては、「花の名前」、「かすみそう」というのが、あるらしい。あとは「花」という「漢字」という物を使い。「澄み渡る」という言葉が、この国にはあるらしく、この「漢字」を使って、「花澄」という名前、「香り」という言葉があるらしく、これと、澄み渡るで、「香る、澄み渡る」の漢字から、「香澄」と、「漢字」という物を組み合わせれば、名前が完成するらしい。」
この国の言葉は、知らない言葉ばかりで、カーラの顔は、ずっと不信感を抱いているような顔だった。
「花」というのは、最近知った言葉の気がする。
その後も、「花純」という言葉の意味を、父から教わったが、「いまいち」という感想しか、浮かんで来なかった。
日にちが変わり、別の日。
カーラは、最近知った「としょかん」という場所に向かって、自転車を漕いでいた。
図書館で、子供向けの本を見るのが、段々と日課になっていた。
学校で教わる言葉も、母国の言葉も、成長に合わせて、少しずつ勉強していく事になっている。
今、コアラさんという、隣人のおじさん(たまに女性のようになるが)に、勉強を教わって、学校の勉強を、補ってもらっているが、それでもまだこちらの言葉は、殆ど分からない。
しかし、この国は、別の国からの移住者が来るからか、世界の共通語である言葉が、至る所にある。
大人は何とかその共通語を読めば、理解できるのだが、カーラはその共通語すら、まだ分からない。
とにかく読める文章だけ、読んでいる。
カーラは、棚の文字は読まなくとも、絵が描いてある本を探した。
それならあまり、字が読めなくとも、楽しめるからだ。
カーラは、その場所に飽きると、次は別の場所へ行った。
近くで、カーラくらいの子が、「ねぇ、ずかんこっちにあるよ!これでしゅくだいできるんじゃない?」といった。
別の子が「ほんとだ!花のずかんある?」と言っている。
二人は女の子で、友達らしい。どうやら学校の宿題があるらしい。
カーラにはその宿題が無いことから、カーラとは違う学年の子だろう。
アーテル村の学校は、人数により、一クラスから二クラスある。
カーラは一年生で、一クラスのみである。 「しゅくだい」という物は先生から、教えてもらった。
「先生が、しゅくだいって言ったら、ブラウンさんは、先生が言った事を、お家に帰ってから、やってきて下さい」と「先生」という大人は、そう言った。
コアラさんからも、「先生」という者と「しゅくだい」という物を母国語と、アーテル語で教わった。
その日、コアラさんからも「しゅくだい」という物を出されて、親と一緒に、コアラさんのしゅくだいをやった。それが、数日前の事だ。
カーラは、今、その「しゅくだい」だけ、聞き取れた事が、嬉しかった。
自分もこの国の言葉を、少しずつ覚え始めている。
言葉が分かれば、少しはこの国の学校も、楽しめるかもしれない。
例えば、いまの子達のように、この場所で友達と一緒に「しゅくだい」が出来るようになるかも知れない。
カーラは、さっきの子と同じ物を手に取った。
それは、カーラにとって、すごく重たい物だったが、その子たちも苦労して持って行った。
カーラにとって、あの子達がそうだったから、自分も重たく感じるのは、間違っていない。と思えた。
その重たい本を持って、落とさないように、ゆっくりと歩く。
さっきの子達は見失ったが、カーラは子供用のソファーを見つけ、そこに一旦、その重たい本を置き、自分もソファーに座る。
持ち上げて、落とさないようにしながら、本を広げる。
その本は、「はなのずかん」と書いてある図鑑で、重たいのは当たり前である。
低年齢向けの図鑑で、カーラの年齢でも丁度良い物である。早い子は幼稚園から読めると思うが、これは小学生用の図鑑である。一年生から三年生向けと、書いてある。
カーラは、少しずつ、少しずつ、ページをめくり、読める文字だけ読んでみる。
中は、花の写真が綺麗に並び、名前などが書いてある。
名前も説明も、殆ど読めないが、花の写真はとても綺麗だった。
子供用の図鑑である以上、落書きや汚れ、傷が所々にあるのだが、元はもっと綺麗だったのだろう。カーラは残念に思えた。
同時にこの本が欲しくなった、これは図書館の物で、持って帰れない。もって帰れる本は、「かしだし」という事を、コアラさんが初めてカーラをここに連れてきてくれた時に、言っていた言葉だ。
「かしだしできるもの」と「かしだしできないもの」があると、説明された。
これは、「かしだしできるもの」とは思えない。
なぜならば、大きくて重たいからだ。
カーラは、閉館時間まで、「はなのずかん」を読んでいた。
「音楽が鳴ったら、ここは閉館だから、読んでた本を元に戻して、ここを出るのよ。借りたい本があるなら、「かしだし」の所まで、持っていくの、分からなかったら、図書館のエプロンつけてる人に聞くのよ、わかった?」と、コアラさんから言われた。
母国語も共通語もアーテル語も話せる、たまにおばさんになる、隣人のおじさんは、カーラにとって、とても頼れる「せんせい」だった。
そのコアラさんが言っていた、「おんがく」というのが、フロアに流れ始めた。
カーラは椅子から降りて、図鑑を元の位置に戻しに行った。
その後、『カウンター』と呼ばれている場所の近くで、カーラは見慣れた子を見つけた。女の子は、同じ学校の一年生だ。名前は知らないが、見た事がある。
女の子の隣に、見知らぬ男の子がいるが、その子は知らない。
男の子は、女の子のそばで立っているが、兄弟、または双子に見える。
カーラは話しかける事はせず、出入り口の方へ向かった。
カーラが自転車から降りると、数段の階段を上がり、玄関を開けると、父親が出迎えてくれた。
「おかえり、カーラ」
「ただいま」
お父さんの顔は、すごく優しい顔で、カーラはなぜだか、心から安心できた。
まだ、この国に住んで、一ヵ月ほどで、ようやく一人でも図書館と家の往復は出来るようになったくらいで、出来るようになったのも、ごく最近である。
だからなのか、すごく、【知っている顔】というのは、安心できた。
「お父さん、お母さんは?」
「お母さんなら、お隣にいるよ、隣のコアラさんの奥さんが、お母さんをお茶に誘ってくれたんだ」
「そうなんだ」
「お母さんも、息抜きが必要だからね」
「お父さんには、“いきぬき”って、ひつようないの」
「お父さんの息抜きは、図書館で本を読んだり、家で本を読んだり、とにかく本を読んでいる時間が、“お父さんの息抜き”だから。」
「ふーん、あっそういえば、今日、としょかんでいい本があったの。」
「へぇー!どんな本だろう?聞かせてくれる?」
「うん。」
カーラは、お父さんの後ろを歩いて、リビングまで行くと、ソファーで向き合って座り、今日の図書館での事を話した。
お父さんは、カーラの話をちゃんと聞いてくれる。優しいお父さんだ。
カーラの話を最後まで聞くと、「じゃあ、今度の休みは、大きな街へ行ってみよう。お父さんも行くの初めてなんだけど、コアラさんが連れてってくれるらしい。だから、みんなで行こう」と、言ってくれた。
さらに、そこにはデパートがあって、沢山の本が売っている店がデパートの中に入っている。と、教えてくれた。
カーラは、その日が来るのが、楽しみになった。
カーラは、夕飯までの間、二階の自室で過ごしていた。
学校から配られた教科書と、コアラさんお手製の教科書を開いて、アーテル語の練習を始めた。
少しずつしか進まないが、アーテル語の書き方、読み方を勉強していく。
カーラは、言葉が分からない事が多く、勉強内容が皆より遅れている。
今のうちに、なるべく遅れを取り戻さないと、次の学年で、また困るかも知れないからだ。
この学校は、お国柄か、海外出身者のサポートは優れている。
そのおかげで、カーラもある程度サービスは受けられているのだが、年齢はどうしても壁になる。
大人以上に、ものが分からず混乱するのだ。
まだ、友達もいないカーラは、担任の先生と一緒に過ごす事が多く、言葉は分からないが、なにか嫌な物は、察していた。
アーテル語で話しかけないと、無視される事など、日常茶飯事である。
一人、訳が分からず、教室に居た事もある。
その時は、移動教室で、先生が迎えに来てくれて、初めて「きょうしつをいどうするときがある」と知った。
それからは、なるべくみんなの行動を観察していたら、同じクラスの女子に何かを言われた。
意味が分からなかったが、その後、彼女たちの立ち振る舞いから、バカにでもされたのだろうか?と思い、そこでようやく傷つく言葉を言われた事に、気づいた。
子供というのは、残酷である。存在が純粋であるからこそ、残酷である。
カーラは親にすべてを話しているが、「コアラさんの家で、不登校児を面倒見てくれているから、そこにしばらく行ってても良い」と言われたが、なんだか悔しくて、それは出来なかった。
その事がきっかけで、今は、言葉の勉強に力を入れている。
翌日
カーラは、学校へ行ったら、昨日会った子に話しかけるか迷った。
苦手なイメージがついているからだ。
その子は、いつも大人しくて、一人ぼっちだった。
周りの輪の中に入ろうとしないのだ。
周りも、その子が近づくと、避けるように動いていた。
いつも俯いている事が多く、楽しくなさそうだった。
それでもちゃんと学校へ来ていて、クラスで授業に参加している。
昨日は、カウンターの司書さんと、話をしていた。その姿を見かけただけだが、にこにこと、楽しそうだった。
“学校で会っている姿と全然違う。”というのが、カーラが見た感想だ。
あと、彼女の隣の男の子の存在も気になっていた。
見てすぐに、障害がある。と分かったからだ。
足の障害でも抱えているのだろう、その女の子が生活を支えているようだった。
「たいへんそうだな」とカーラは正直に思ったが、それ以外の感情は湧いてこなかった。
教室に着き、辺りを見渡すと、その子はもう来ていた。
「おはよう」と声をかけてみたら、小声で「おはよう」と、返ってきた。
何とか聞こえたレベルで、もし、教室がうるさかったりすれば、聞こえなかっただろう。
カーラもようやく聞き取れたレベルだ。
後は特に何も話さぬまま、ボケっと突っ立ってしまった。
カーラはしかたなく、“自分の席に行こう。”と、その場を去り、自分の席へ向かった。
自分が使っている机に、ランドセルを置き、教科書やノートは、お道具箱を引き出し代わりに使っている場所へ入れ、ランドセルは、後ろの棚へしまうために、立ち上がり、自分の名前が書いてある所にしまった。
その時、クラスメイトの子から話しかけられ、「あの子と、はなしたり、ちかづかない方がイイよ」と言ってきたが、カーラには、いまいち理解できない部分があった。
言葉がまだ、うまく聞き取れないからだ。
その子は忠告のつもりで、カーラに話しかける。
それが、この子にとっては、とても良い事だと、信じているからだ。
「あの子のおとうと、とくべつがっきゅうってところにいるんだって、ふつうじゃないんだって、ママ言ってたよ、びょうきがうつるから、その子にちかづいちゃいけないって、ほんとうは、その子も、おなじクラスじゃだめなのに、むりやり、はいってるんだって、びょうき、うつしちゃダメなのにね」
カーラは理解が追い付かず、その場を無言で立ち去った。
それが駄目だったのだろう、話しかけてきた子は、なにか騒いでいる。
それでもカーラは無視をした。
分からない言葉ばかりで、何を言われているのか、チンプンカンプンだからだ。
自分の席に座り、やっぱり話しかけたのは、駄目だったのだろうか、あの子に話しかけたら、なぜか別の子が話しかけてきた。
まだこちらの言葉では、分からない言葉がある為、なんとなくの雰囲気で察するに、あまり良い事は言われてないのだろう。
なんだか嫌なクラスだ、とカーラは思った。
外国から来ただけで、こうも嫌な思いをしなきゃいけないのか?
この国は移住者でも住みやすい土地ではないのか?
父の言っていた事は嘘だったのか。と、考えた。
現実は、カーラが話しかけた子は、いじめられっ子だった。という話なのだが。
カーラは、友達が欲しかったが、このクラスでは難しいのか?と思い始めた。
でも、カーラが「おはよう」と言ったら、彼女は答えてくれた。
それは、カーラにとっても、その子にとっても、大きな一歩だった。
その事実に気付くのは、もう少し先だろうが。
今日も退屈な日だった。
少しずつ、言葉を理解できる事が、増えつつある。繰り返す言葉は、何とか覚えた。
宿題とか、ごく簡単な言葉から、分かるようになりつつある。
教科書、ノート、鉛筆。そういうのは分かるようになった。
「いどうきょうしつ」もあれ以来覚えた。
そういえば、今日話しかけた子が移動教室で、カーラだけ教室に残っていた時以来、カーラが周りを見て動いているのを見て、カーラの様子を見ている事がある。
あれからよく目が合うのだ。きっとカーラを心配してくれているのだろう。
カーラが教科書やノートを持って、教室を出るまで見つめていて、カーラが教室から出ると、彼女も出てくる。今日もそうだった。
カーラの後ろを歩き、背中を見張られている気がして、ちょっと気まずいが、でもどこか安心感があった。
道を間違えそうになると、無言で追い抜いて、「こっち」と、訴えるように、カーラを見ている。
カーラは、本当は優しい子なのでは?と思い始めた。
学校が終わり、帰宅してからは、気が楽になった。
多少、宿題が出されても、周りを気にせず、カーラのペースで出来るからだ。
カーラは今日も図書館へ行くことにした。
雲がいつにも増して分厚く、雨が降りそうなので、自転車で行くのは止めて、歩いていく事にした。
途中、橋に差し掛かる時、今日「おはよう」と声をかけてみた子が、お母さんと歩いているのを見かけた。なにか、楽しそうに歩いている。
どうやら、どこかへ行く途中らしい。
カーラは“気まずいな。”と思ったが、仕方なく後ろを歩いた。
二人はそのまま、「アーテル村乳児院保育園」と書かれている看板が掲げてある場所へ入って行った。
カーラはちょっと前の事を思い出していた。
カーラのお母さんと、この場所の前を通った時、カーラは、なんて書いてあるのか、お母さんに聞いた事がある。
建物がちょっと変わっていたから、気になったのだ。
お母さんもなんて書いてあるのか、分からなかったが、その看板とは、別な場所に、外国語の説明が書いてある物を見つけ、お母さんはそれを読んでくれた。
アーテル語以外の言葉で、共通語が一番でっかく書いてあったが、その下に、さらに三ヵ国語くらい書いてあった。
お母さんは共通語を、読み書き出来るため、共通語の文を、読んでくれたが、ちゃんとカーラに説明しながら読み進めてくれた。
その母から、親の居ない乳児の面倒を見ている施設、または保育園。と教えてくれた。
さらにカーラにも分かるよう乳児院がどんな場所なのか、分かりやすく説明してくれた。
そんな記憶が蘇ってきた。
たしかここは、赤ちゃんの為の場所。そうカーラは解釈している。
あの子とあの子のお母さんが、ここへ入って行ったのには、どんな理由があるのだろう。とカーラは思ったが、近くに図書館が見えてきた為、カーラは図書館の方へ興味が抱いた。
図書館の敷地内を歩いていたカーラは、毎日学校ではなく、図書館で勉強なら良かったのに、と考えていた。
出入り口を通って、静かな館内に足を踏み入れると、心が落ち着いてきた。嫌な事でさえ忘れられそうだ。
カーラは、外国からの移住者向けコーナーへ向かった。大人向けフロアーと子供向けフロアー両方にそのコーナーがある。
カーラはまず、見慣れた母国語が書かれている場所を目指した。
子供向けの本がずらりと並ぶ中、カーラはお気に入りの本が置いてあるか探した。
アーテル語はすぐには読めないが、母国語ならばそれなりに分かる。探すと簡単に出てきた。
カーラはその本を持って、椅子を探すと丁度開いている椅子があった。
その椅子の場所まで行くと、カーラは椅子に座り本を開いた。
幼稚園に通っていた年齢から今まで、カーラはずっとこの本が好きだ。
もう販売されてない本で、その理由としては多少古い本だからだ。
まだ母国に居た時も、カーラは図書館でこの本を読んでいた。
こちらの国で、この図書館に初めて来た時、これを見つけた時は感動した。
まさかこれがあるとは思わなかったのだ。
カーラがこの本を読みたい時は、だいたい嫌な事があった時だ。
特に友達と喧嘩して嫌な気分になった時、いじめられて嫌な気分になった時に読むと、その嫌な気分が晴れるのだ、それで今日は真っ先にこのコーナーへ来た。
この本の内容は、カンガルーの女の子が主人公の話で、街に住むその女の子は街を歩いて、色々な人に声をかけて、人を助けたり新しい友達が増えたり、冒険したりする話である。
この本を図書館で読む瞬間が、カーラにとって癒しの時間となっている。
この本は、初めて見つけた時から、すでに販売終了していた為、買えなかったがこうして引っ越し先でも読めるのはとてもありがたかった。
しばらく椅子に座り、読んでいると、「カーラじゃない?」と、言われた。
聞きなれた声だと思い顔を上げると、そこにはコアラさんがいた。
『コアラさん』といっても、男性の方ではなく、女性の方で、いつも「コアラさんの奥さん」と呼ばれている人だ。
「おばさん、こんにちは」
「今日は、一人なの?」
「はい」
「あら?その本、カーラも好きなのね、うちの子も探してたのよ」
コアラさんの奥さんは、後ろに赤ちゃんをおんぶして、片手に幼稚園生の娘と手をつないでいた。
その幼稚園生の子が、カーラが持っていた本を探していたらしい。
カーラは戸惑ったが「後で読み終わったら、教えてくれない?その本、借りていくから」と言われ、それならと思い「分かりました」と返事をした。
カーラは、再び本に集中すると、あっという間に時間は過ぎていった。
フロアーに音楽が鳴り響く時間となったらしい。
カーラは、本を閉じると、コアラさんの奥さんを探した。
その時、同じ学校で同じクラスの女の子と会った。
この間も図書館であった子で、今日の朝「おはよう」と声をかけた子だった。
真正面に彼女も立ち、ボケっと突っ立っている。
先ほど、お母さんと一緒に、乳児院に入って行ったはずなのに、まさかココで出会うとは、予想できなかった。とカーラは思った。
相手も一人だった為、思い切って話しかけてみる事にした。
「えっと、おなじクラスの」
「うん、ブラウンさんだよね、こんにちは」
「こんにちは」
「よくここに来るの?」
「えっと、うん」
カーラはアーテル語が上手く出てこない。
それでも何とか会話は出来ているようだ。
「私もよく来るよ、えーっと、共通語分らないけど、えーっと、朝は声かけてくれて、ありがとう。
伝わったかな?」
若干分からない部分もあったが、あいさつとして、最初に教わった部分は、分かっている。
彼女が「ありがとう」と伝えてくれた事は、カーラにとって、嬉しい出来事だった。
話しかけて良かったと、カーラは認識して、「こちらこそ、ありがとう」と返事した。
二人は微笑み合うと、「じゃあ、またね」と言い、別れた。
その後、すぐにコアラさんを見つけ、カーラはコアラさんの奥さんと帰る事になった。
コアラさんの奥さんと手をつなぐ、幼稚園生の娘さんと、カーラは手をつないだ。
図書館を一緒に出て、同じ場所に帰るから丁度良い。とおばさんに言われ、娘が手を差し出してきた為、手をつないだ。
カーラより少し小さい手は、あたたかく、柔らかかった。
帰り道で、おばさんから、「カーラはこっちの生活どう?困りごとはない?」と聞かれ、正直に話した。
一番は言葉の壁。
しかし、それは「コアラさん」が今、カーラに教えてくれている。
後は、やっぱり学校の事だろか。
カーラはそれもおばさんに話す。
「先ほどの子は?」と聞かれて、「同じ学校の同じクラスの子だけど、殆ど話した事はない、なんの獣人なのかも、名前もまだ分からない。」と言った。
おばさんは「あの子はハムスターの獣人じゃないかしら?たしか、乳児院の経営している、ハムスターさんチの娘さんだったような」と、独り言のように話始めた。
この国では、名前が分からなかったり、分かっていても種族名で認識する事がある、だからコアラさんや、ハムスターさんという言葉が出てくるのだ。
同じ種族が沢山いれば、苗字や名前のが、分かりやすいが、種族が少ないと、そのまま種族名だけでも伝わりやすいから、そうしている。
カーラはふいに、おばさんに話しかけてみた。
「おばさんは、こっちに来たばかりの時、どうだったんですか?」
「そうねぇ、右も左も分からず、大変だったわ、今のあなたみたいに。でもね、焦らず自分のペースで、やっていこうって思ってからは、多少楽になったわ、友達もできたし、なにより、お父さんの存在が大きかったの」
「そうですか」
「カーラも大丈夫よ、言葉も少しずつ覚えて良いし、友達も話が合わない子と一緒に居たって、楽しくないわよ。自分に合う子をみつけなさい。そうすれば、自然と言葉も分かるようになるし、楽しくなってくるわよ。カーラはまだ小さいんだから、少しずつ成長するしか出来ないのよ。
自分を忘れないで」
カーラの中で、なんだか楽になった場所があった。
そうか、それで良いんだ。と思い始めたら一気に元気が湧いてきた。
知らぬ間におばさんも、鼻歌を歌っていた。
よく聞くとカーラも知っている歌だった。
カーラも一緒に歌い始めると、コアラさんの娘も大きな声で歌い始めた。
母国語の歌は、なじみのある歌でカーラも昔、良く歌っていた。
幼稚園で習った曲だった。
カーラやコアラさん達にしてみれば、誰もが歌える歌だ。
歌を歌っていると、すれ違いざまにジロジロ見られたが、気にしない事にした。
家が近づきコアラさん親子と別れを告げ、玄関前の階段を三段上がり玄関のチャイムを押した。
すぐにお母さんが玄関のカギを開けてくれる。
カーラが帰って来たのをすぐに気づいたらしい。
まぁ歌を歌って帰って来たのだから、分かる人には分かる。
お母さんは、赤ちゃんを抱えていた。
カーラには、まだ喋ることができない妹がいる。
今日、コアラさんと一緒に帰って来た時、歌っていた歌をいつか妹に教えてあげ覚えてくれたら、一緒に歌おう。と思えるようになった。
きっと妹も喜んでくれるだろう。
今日の歌は、明るく楽しい歌だ。
妹が悲しい時、歌ってあげるねとお母さんが抱っこしている赤ちゃんの妹に向けて、いってみると、赤ちゃんはうっすらと笑ったように見えた。
お母さんも「あらあら」と言い、赤ちゃんをみた。
部屋に入る時には、お母さんと一緒に今の歌を歌った。
お母さんも楽しそうに歌う。
まだまだ、引っ越してきて一ヵ月、不満も不安も
沢山あるが、少しづつこの国の事、この村の事が、分かるようになってきた。
父親のわがままで、連れてこられた感は否めないが、お母さんとカーラは、少しずつこの村の生活になじみ始めている。
まだどうなるかは分からないが、とりあえずはここで生活出来そうだ。
家の一番上のお父さんの書斎で、お父さんは音楽を聴きながら、なにか作業していた。
作業に集中しているらしく、真剣な表情だ。
お父さんの職業は、翻訳家である。
同時に自分の作品も少しだけ書いている。
今は自分が作っている小説の、執筆作業中である。
お父さんの周りは、本が開きっぱなしで置いてある。
アーテル語で書かれている本もあれば、別の国の言葉で書かれているのもある。
本がタワーのように、高く積みあがっている所もある。
本のタワーが出来上がっている所の本には、何冊か図書館のシールが付いている。
カーラとお母さんに図書館を教えたのは、お父さんで、お父さんの影響で、カーラも図書館が好きなのだ。
カーラはそれを覚えている。
この国の図書館は、外国の図書が沢山ある。
国柄しょうがないのだが、カーラはそんな図書館が好きだ。
いつか、色々な国の本が読んでみたい。と思っている。
大人になったら、そんな事、簡単に出来るようになるだろう、とカーラは思っている。
現にお父さんは、何ヵ国かの言葉を理解しているからだ。
カーラの憧れの姿は、お父さんのようになっている自分だ。
カーラは歌を歌い終えると、自分の部屋へ行った。
やらなきゃならない事があるのを、思い出したからだ。
机に教科書を広げ、アーテル語を学び始めた。
「いっしょにあそぼう」という言葉や「いっしょにいこう」といった、「一緒」という言葉を覚える事にしたのだ。
ハムスターの獣人の女の子に、もっと話しかけるためだ。
『図書館に通う友達』
その友達が欲しいだけで、つまらない学校の事は、考えていない。
図書館でより、楽しい時間を過ごしたい。その願いを叶えるには、図書館に頻繁にくる子ではないとだめだ。
“あの子なら、図書館で会える。”カーラはそう考えたのだ。
カーラの目的はただ一つ。
思う存分、言葉の勉強が出来て、図書館で過ごせて、楽しく会話できる子と友達になる。それが叶えば良いのだ。
カーラは人に話しかける練習をし始めた。
アーテル語で、なるべく話す。それが今の目標だ。
夕飯時、カーラはお母さんに呼ばれた。
お父さんに「お夕飯」だと伝えて。と言われ、お父さんの書斎へ向かった。
お父さんは、音楽を聴いて、多少の音だと気づかなかった。
仕方がなく、カーラはお父さんに近づいて、ご飯の時間だという事を伝えた。
二人はダイニングへ向かうと、テーブルには、美味しそうな料理が並んでいた。
その中に、見慣れない料理が並び、カーラがお母さんに尋ねると、「アーテル料理を教わったから、作ってみたの、食べてみて」と返ってきた。
キッチンとダイニングを行き来しているお母さんは、どことなく楽しそうだった。
久しぶりに、なんだか楽しい食卓になった気がする。
カーラは、全員が食卓に着き、食事を始めると、まずはアーテル料理に手を付けてみた。
不思議な味だが、食べれないわけじゃない。お父さんも同じらしい。
お母さんは、先に味見しているからか、普通に食べては「うん、上手くできたみたいね。」と独り言を言っていた。
母国の食べ物は、普通にいつも通り美味しいが、アーテル料理も、少しづつ食べれるようになりたい。と、カーラは思った。
その日の夜、日記を書き終えると、母国にいる友達へ、手紙を書くことにした。
アーテル語は難しい。図書館は楽しい。学校はつまらないなど、思った事をそのまま書いた。
母国語は、それなりに読み書き出来る。
いつか、この言葉も、殆ど使わなくなってしまうのだろうか、さすがにそれは悲しい。
母国へ、帰りたい気持ちもあるが、そう簡単には帰れない。
今はとても複雑だが、この国で生活するしかないだろう。
向こうの友達の顔が浮かぶたびに、寂しくなる。
昔の家、風景、遊び場に買い物していた場所。
向こうの図書館。
思い出せば、思い出すほど、悲しく寂しくなってくる。
しかし、カーラは、手紙を書く手を止めず、最後まで書いた。
【また、会いたいね】
この言葉は、カーラの目に涙をためる事となったが、涙をぬぐい、封筒に手紙を入れ、封をした。
“明日、お母さんに頼もう。”
カーラは、手紙はそのまま、机の上に置き、下の階へ行って寝る準備をして、ベッドに入ろう。と、部屋をでた。
洗面台のある一階まで下りてくると、父と母の声が聞こえた。
「すまないな、ソフィア」
「今更?」
「本が完成するまでの間、今まで通り、助けてくれ」
「もう、何回も言ってるじゃない、ったく、分かったわよ」
ソフィアというのは、母の名前だ。
カーラの前では、名前で呼び合わないのに、二人きりだと、名前で呼び合うのか。とカーラは思った。
そのまま洗面所に向かい、歯を磨き、両親の元へ行くと、カーラは、両親におやすみとあいさつをして、二階に上がり、自室に入った。
ベッドに入り、寝ようとするが、話の内容が気になってしまった。
また、何かあるのだろうか。
もしかして、またどこかの国へ行くのか?と不安になった。
また嫌な思いをするのは嫌だ。
しかし、母国に帰れるなら、それなら話は別だ。
楽しみになってくる。
手紙もまた、書かなくてはならないかも知れないが、今、真相は分からない。
明日、それか、お父さんの本が出来上がったら?カーラは頭で色々考えたが、眠くなってしまった。
いずれ、なにかあれば、お父さんなり、お母さんが言ってくれるだろう。と思えば、それを待つしかなさそうだ。
とりあえず今は、眠ることにした。
翌日。
カーラが朝の支度をし、朝ご飯を食べてると、お母さんからは、とくになにも言われなかった。
ならば、お父さんが?とも思ったが、お父さんも何も言わなかった。
カーラは、学校へ行く支度をし、学校へ行くと言っても、何も無かった。
カーラは、モヤモヤした気持ちのまま、学校へ行くことになった。
学校は、相変わらずだった、しかし、教室へ入ると、カーラの元に、ハムスターの獣人の女の子が現れ、「おはよう」と声をかけてくれた。
カーラも「おはよう」と返すと、その子は席へ戻って行った。
両親の事で、頭が一杯だったが、今、あいさつしてくれたのは、嬉しかった。
もう少し、話をしたいが、カーラはまだ、上手く話が出来ないし、話しかけるのは、勇気がいった。
“時間をかけて、仲良くなろう。“そう、心に決め、今日は向こうから話しかけてくれた事に、また一歩進んだ。という事にした。
カーラは、今日は図書館へ行くのはどうするか考えた。
結局、手紙もお母さんに頼むのを忘れてしまった。
ダメだ、なんだか昨日の事が気になってしまう。
カーラは、帰宅したら、お母さんに直接聞いてみる事にした。
帰宅後、カーラはお母さんを探しに、家の中を歩いた。
リビングには、何冊かの本がある。それとメモ書きだ。
全部、お父さんの字で書かれている。
「カーラ?お母さん、図書館に行って、お父さんが借りた本を返して、メモにある本を借りてこなくちゃいけないから、あっ、頼まれた本を探して買わなきゃ!全くお父さんは、本を作り終えるまで、手伝ってくれっていうから、いつも手伝ってるのに、またこんなに!本って重たいのよ?分かってるでしょうにねぇ!」
「お母さん、あの、なんかまた引っ越しとかあるの?」
「ないわよ、なんで?」
「いや、きのうの夜、なんか、二人がしゃべってたから」
「あぁ、もしかして、図書館と本屋に行くの手伝えってはなしかしら?引っ越しなんてないわよ、一ヵ月で引っ越してたら大変よ!この家も住めなくなるなんて、もったいないわ!」
「そっか、よかった。あっ、としょかんとほんや、私もてつだう」
「あら、ありがとう!」
「じゅんびしてくるね、あと、てがみわたしたいから、ポストよって?」
「わかった、図書館の所で、手紙出しましょうね」
「うん」
カーラは急いで部屋に向かった、ランドセルを下ろし、いつも持っているバッグを手に持ち、手紙をバックに入れた。
バッグを手に、またも急いで部屋を出る。
リビングに行くとお母さんは、赤ちゃんを隣に預けてくるといい、出かけて行った。
カーラは、置いてある大きな手提げバックに、図書館の本をしまった。
お母さんが、その手提げバッグとメモを持ち、「じゃ、行きましょうか」とカーラに声をかける。
カーラも返事して、お母さんの後ろを歩く。
「今日は、さっきコアラさんの奥さんに車を借りてきたの、車で行きましょうね」
「うん」
そうして、家をでて、車に乗り込み、カーラとお母さんは、図書館と本屋を目指した。
お母さんとこうして車で出かけるのは、久しぶりだった。
とっても楽しい時間となりそうだ。
カーラは車の窓の外を見ながら、村の景色を見た。
途中、ハムスターの獣人親子を見つけた。
今日も仲良さそうだ。
カーラだって負けてはいない。お母さんと図書館と本屋へ行く。
まだ一ヵ月しかこの場所に住んでいないが、少しずつ好きになりつつある。
お母さんもカーラもだ。
二人は車の中で、アーテル語の歌を歌い始めた。
昨日、テレビでやっていた歌が気に入ったのだ。
所々、分からなくなったり、間違えたがそれで良かった。
大事なのは、楽しいことである。
第二話 終わり。