4話 ミカエル5歳②
魔都を出て二時間程歩き、途中綺麗な花畑が広がっている場所で、お弁当を食べ、少し休憩した。
「わぁー!綺麗なお花がたくさんです!姫様!少し摘んでも良いですか?」
「ジスは花が好きなのね。良いわよ」
なんて、のんびりとピクニック気分で魔女の森へと向かっていたら到着に3日ほどかかった。
異世界なめてました。すみません。
ようやく魔女ノアの住む森へ辿りついた。
森ではあったが、ちゃんと馬車が通れる位の道があり、迷う事なく魔女の家らしき建物を見つける事が出来た。
入口に着くと扉が、勝手に開いた。
「ええっ?」「ひっ!」
二人して驚いてしまった。
すると中から女性の声がした。
「お入りなさい」
「お、お邪魔します……」
恐る恐る家へと入って行く。ジスは私の手をギュッと握ったままだ。
リビングらしき場所の椅子に腰掛けた長い銀髪を後ろに纏めた紅い眼の魔女ノアがニコリと微笑む。
「いらっしゃい。待ちくたびれたわ、二人とも疲れたでしょう?今お茶を淹れるから座ってて」
「は、はい」
凄い魔力を感じる。流石は魔女と言われるだけあって唯ならぬ力を持っている。ジスは完全に萎縮してしまっている。
「そんなに怯えないでくれるかしら。別に何もしないわよ。大事な姪ですもの」
「あの、はじめましてミカエルです」
「じ、ジスですっ」
「サクヤから聞いているわ。娘がお友達連れて行くから、よろしくねって丸投げされたわ」
「そう……だったんですか……」
あの母親め、連絡手段を持ってるなんて一言も言って無かったわ。話からすると、道中の監視も魔女ノアに任せたのだろう。
「さて、ミカエルは魔女から何を聞きたいのかしら?あらゆる属性の魔法かしら?それとも呪術?」
「あの……醤油とお米の作り方を……」
「……はい?」
ミカエルのまさかの返答に魔女ノアも驚いた。
魔女の知識など、欲しがる者は多くいるが、大抵は魔法に関する知識が殆どである。だって魔女だもん。
自分が最強の魔法使いである事を自負していたが、まさか醤油と米の作り方とは……。
しかし、醤油と米の作り方ならば、知っている。
何故なら、ノアは家庭菜園で稲を栽培していた。かなり昔からだ。亡き夫リョーマが米を食べたいと言って、二人で試行錯誤の末に米を完成させたのはかなり昔の事だ。醤油も同様に作った事がある。今は作っていないが。
「ミカエル……一応聞くけど何故、醤油と米を作ろうと思ったのかしら?」
「実は私、転生者なんです。故郷の食事を再現するのにはやはり醤油と米が必要なんです」
「転生者?と言うと異世界人って事ね。それもリョーマと同じ世界の」
「はい……私の場合は生まれ変わりですが」
「かなり稀なケースね。たまに異世界から不意にやって来る事があるらしいけど……分かったわ、醤油と米の作り方、教えて上げる。その代わり……」
魔女との契約の対価。
何だろう?まさか命を取られたりはしないよね?
「私の弟子になりなさい」
「え?弟子?」
「そう、弟子。私の知識を授けるわ。そうね。これから毎週ここに来る事。城との転移魔法陣も必要ね。あと……」
「姫様!凄いです!流石姫様です!」
ジスが可愛らしい悪魔の尻尾をフリフリしている。犬かお前は!
こうして私は醤油と米の作り方を手に入れたついでに漆黒の魔女の弟子になった。