第二十話 従属神
バラライカは魔王軍を率いている少女、ソーナに話かけた。
「貴殿がこの軍を率いる将で相違ないか?」
「うん。私は魔王軍黒百合騎士団第六位ソーナ・フォン・ベルベット。貴女は?」
「貴殿があの『術姫』か。おっと申し遅れたな。魔王軍独立旅団諜報科団長バラライカ・フォン・カノープスよ」
「独立旅団……エンシェントエルフ」
ソーナは目の前の美しい女性がエンシェントエルフだとわかった途端に身が強張った。
そんな様子を面白げに見つめるバラライカであったが、すぐに本題に入ることにした。
「こちらの旅団員が原因体を二体討滅した。竜型と蟲型の二種だ。正門方向の魔物はあらかた駆逐した。損害はゼロだがこちらでは何が起きたのだ?」
「詳しくはわからない。私がここへ駆けつけた時には、既に獣型の原因体と先ほどの少女が戦っているところだった」
「ミーシャが戦っていた?あの子はついこの間までレベル1だったのよ」
「嘘じゃない。あの子が放った光魔法?のおかげでこの場所が分かった」
「なるほど。ミーシャも頑張ったのね」
バラライカは、少し複雑そうな笑みを浮かべた。
「それで魔王軍はどうするんだい?」
「どうするとは?」
「今後の処理さ」
「知らない。私は実践担当、今後のことは魔王の指示待ち」
「はぁ……そうかい。それじゃあ私達は報告したからね」
バラライカはソーナにそれだけ言うとその場を後にした。
歩きながらバラライカは、自身の部下に念話を飛ばした。
『お前達、何故獣型の原因体の存在を見落とした』
その声には隠し切れない怒気が混じっていた。
『申し訳ございません。原因体は強敵と聞かされていたため……対象が脆弱な魔物で気づきませんでした』
念話で理由を聞いたバラライカは、目頭を抑えながら顔顰めた。
まったく、強すぎるというのも考えものだな……。
まぁ里に帰ったらこやつらには、さらなる修練を積ませねばな。
『あいわかった。主ら帰ったら修練をかす。覚悟しておけ』
『……』
部下との連絡を終えたバラライカは、アンナ達と連絡をし、死傷者の数の確認を行った。
アンナ達の話によると三十人ほど死者と百人以上の負傷者が出たらしい。
死者のほとんどは、気の毒ことに新米の冒険者たちであったらしい。
負傷の治療を終え、もはややることがなくなったバラライカは、まだいるかもしれない魔物達を駆逐するために森へ向かうのだった。
全ては愛しのあの子の平穏のために——。
暴走から一夜明けた。
私が目を覚ますとそこには、いつもと変わらない天井があった。
「そっか、私疲れて寝ちゃったんだ」
私は昨日ことを思い出していると、あの時スルーしていたことを思い出した。
あの時は、魔物でそれどころじゃなかったけれど、私魔物を倒して結構レベル上がった気がするんだよなぁ。
私はベッドに寝転がったまま自身のステータスを開いた。
名前 ミーシャ・フォン・シリウス
種族 エンシェントエルフ
レベル 35
生命力 +70
魔力 +175
筋力 +30
耐久力 +39
敏捷 +100
スキル 転生{三分料理・月弓女神}
称号 転生者 神から愛されし子 神殺し
おぉなんとレベルが35になっていました。
それにしっかりと新しく手に入れたスキルも表示されている。
ちなみに新しいスキル『月弓女神』はというと……。
スキル 月弓女神
発動条件 聖句の詠唱
効果 月弓女神の加護(常時発動)
月光の弓矢(最大弾数2・残弾0)注:満月時に残弾を全て回復する。
—————(使用制限)
—————(使用制限)
—————(使用制限)
—————(使用制限)
……なにこれ。私がスキルを使ったときと何か効果が違うんだけど!
それに何この使用制限ってこれはもう奴に念話するしかないですね。
私は、ステータスを切り替えて奴へクロリスへ念話をした。
案の定クロリスはワンコールが終わる前に念話に反応した。
『やぁ~ミーシャ。見てたよ~やるねぇ~流石だね。それでこそ私の主人公だよ~』
念話に出て早々私のことをべた褒めするクロリスに私は若干照れてしまう。
「そ、そうかな~」
『うん。よく頑張ったよ。自分の命を賭けて友の命を守った。主人公っぽくて私、ミーシャにキュンキュンしちゃったよ』
「えへへへぇ~そうかな~」
『うんうん。それに手に入れたスキルが異世界の神様のスキルとは流石だね~』
「えへへへぇ~それほどでも~って違う!そのスキルだよ!私が使ったのと効果が違うんだけど!」
『そ、それは——』
「おい、クロリス私のスキルに何をしたの?」
私はクロリスを問い詰めた。
仮にも女神が相手に使う口調ではないと思われるのだが、この駄女神には関係ない。
私は少し乱暴な言葉で問い詰めるとついに自白した。
『だって~チートスキルってずるくない?やっぱり過ぎた力って身を滅ぼすっていうか~』
「……」
『ごめんなさい。予想以上のチート能力で私のあげたスキルが使ってもらえないと思って『神様のいたずら』でスキルの能力に制限かけちゃいました。テヘ』
「ふ~ざ~け~ん~な。やっと手に入ったチートスキルに制限かけるとか嫌がらせにもほどがあるだろ!」
『だ、大丈夫。ちゃんと制限もそのうち解けるようになってるから』
「どうやって制限が解けるのよ」
私が問いかけるとクロリスは口をもごもごとさせているかのように言い渋った。
だが、私の追求からは逃れることはできず、小さな声で漏らした。
『……スキルをいっぱい使えば解けます』
「おい、このスキル月に二回しか撃てないんだが……」
『が、頑張って……ね?』
「クロリス!貴様またやりおったな!ネタスキル、漬物石神具の次はチートスキルを改竄……どんだけ私をネタキャラにすれば気が済むんだよ!サイテー、駄女神、バーカ、アーホ」
『あははは……もうしないからね、ね』
「次やったら、ぶっ飛ばすからね」
『……はい。もうしません』
「言質取ったからね」
『……』
その後は、まぁ他愛ない話をしてクロリスとの念話は終わった。
ようやく全てが終わりひと段落したと私は、安堵し二度寝を敢行するのだった。
クロリスはミーシャの念話を終えると自身の神域いるもう一人の神物に目を向けた。
月の様な美しい白銀の髪と衣を身に着けた美女がいた。
だが、その神物は目に涙が浮かべながらクロリスを睨めつけていた。
通常神域には、その神域の主である神、一柱しかいることはできないのだが、何事にも例外がある。
それは、その神が自分の神域招いたときか、その従属神であるかだ。
そして、今回は後者のパターンだ。
泣きそうな神物は、何かをクロリスに伝えようとするも口もとに付けられた猿ぐつわのせいで何も言えず、身体は金色の鎖で拘束され身動きさえも取れない状態だった。
そんな少しアブノーマルな状態な神物を見て、クロリスは嗜虐的な笑みを浮かべた。
「ふふふ、動けないでしょ。君達の世界の神話の『グレイプニル』ってのを参考に作ったんだよ。まさか、ミーシャの手に入れたスキルの影響が私達にも及ぶなんてね。女神『アルテミス』」
アルテミスと呼ばれた美女は、猿ぐつわ越しに何かを伝えようとするもまったくクロリスには伝わらない。
女神アルテミス。本来ならいるはずの無い異世界に彼女は強制的に召喚された。
それ自体は彼女にとって別に不幸なことではない。
寧ろ退屈な世界から連れ出してくれて感謝しているくらいだ。
不幸だったのは、彼女が他でもない女神クロリスの従属神になったことだった。
「まったく、あのスキルで神の権能を得るだなんて流石私の適合者だよね~。惚れ惚れするよ」
スキル 転生
発動条件 スキル所持者が死亡したとき
効果 スキル所持者を完全回復した状態で蘇生し、覚悟に比例した強さのスキルを獲得できる。
備考(スキル発動に伴い身に着けている衣服はすべて焼失する)
これが本来の転生の説明文だ。
ミーシャには見えないようにステータスを隠している全文だ。
転生のスキルによって手に入れたスキルは転生の中に組み込まれる。
本来であれば、スキルの及ぶ範囲はミーシャだけであるのだが、こと『神の権能』においては話が違う。
神を神たらしめるその至高の力は、その元の所有者つまり神ですら影響を強く受ける。
本来であれば別世界、ギリシャ神話の女神アルテミスが女神クロリスに従属神になるのはありえない。
だが、女神クロリスの創った権能によってミーシャは女神アルテミスの権能を簒奪してしまった。
結果転生に権能を組み込まれた自身の力からアルテミスはクロリス従属神になってしまったのだった。
「ねぇ~アルテミス。貴女って月の女神とか、狩猟、豊穣の女神とか色々な側面をもっているのよね?そして、貴女は純潔の女神でもある。そんな貴女が処女を喪失したらどうなるのかしらね?」
クロリスはそう言うと何やらいやらしい手つきをしながらアルテミスに近づいた。
アルテミスは懸命にクロリスの魔の手から逃れようとするも、拘束されており逃げられなかった。
そして、まぁ何があったかは省くが、アルテミスの無言の悲鳴が神域で響くのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
第一部はこれで完結です。
以降の投稿は不定期で行います。




