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第十八話 オルトロス

時は少しさかのぼりミーシャ達が裏門で警備に加わったところまで戻る。

裏門で警備をするミーシャ達であったが、魔物が攻めてきている正門とは打って変わり平和そのものだった。


「平和だね~」


「そうね。大規模な暴走スタンピードと言っていたからてっきりこっちにも魔物が押し寄せてくると思ったのに案外拍子抜けね」


「お嬢様、油断は禁物ですよ。こちらにも少なからず暴走スタンピードの影響は出ているのですから」


ギルの言うと通り、ごくわずかであるが、こちらにも暴走スタンピードの影響によって増えた魔物や住処を追われた魔物たちが散発的にであるがこちらにも出現している。

しかし、こちらに出現してきている魔物はどれも下級のゴブリンなどの魔物であるため、現れた途端に低級の冒険者によって狩られてしまっていた。

そのせいで私たち貴族には、まったく戦う出番はなく、ただその場で話していた。


「あっちは大丈夫なのかしら?ギル少し様子を見に行ってきてくれないかしら」


「私は、お嬢様の護衛なので、お嬢様から離れることは——」


「はぁ……だってこちらには、魔物が全く来ないのよ。それにさっきから聞けてくる爆発音。私はお母様が心配なのよ。わかったら様子を見に行ってきて」


私たちが裏門に来てからずっと大した魔物も出現せず、正門の方向から響く轟音が気がかりであるのは事実であった。

そのため、ギルは渋々といった様子でセリナに従うことにした。


「かしこまりました。それでは失礼いたします」 


ギルはそういうとすぐにその場から離れ正門の方へ向かった。

正門に向かうギルの姿を満足気にセリナは見つめると、やっと邪魔者が消えたと言わんばかりに安堵の息を吐いた。


「ふぅ~。これでもう邪魔はいなくなったわ。あの鬼畜執事め!よくもミーシャの前で恥をかかせてくれたわね。帰ったら絶対にクビにしてやるんだから」


どうやらセリナの心は未だに幼いらしく、先ほどの馬車の中での件を引きずっているのだった。

ギルから賄賂ならぬ迷惑料を受け取ってしまった私は、セリナに特に声をかけずにそっとしておくことにした。


セリナと私二人だけになり、裏門の上で周りの様子を警戒していた時だった。

それは突如として出現した。


森の茂みから現れたそれは、スライムやゴブリンとは一線を画する存在感を放ち、裏門を目指してまっすぐに突っ込んできた。


「お、オルトロスだ!に、逃げろ!」


「誰か!助けを呼んでくれ!」


オルトロスと呼ばれた魔物は、体長が2メートルを超えるほど大きな魔物で、私の前世の知識通り双頭の頭を持った犬の魔物だった。

下級の魔物以外相手にしたことのない低級の冒険者たちは、その魔物の姿を見ると背を向け一目散に逃げていく。

しかし、背を向けたものたちをオルトロスは、逃すことなく、鋭利な爪で逃げる冒険者たちを切り裂いていった。

オルトロスの登場によって先ほどまでの平和なムードから一変、裏門はパニックに見舞われた。


「に、逃げろ!あんなの無理だ!」


「ひ、引くんじゃない!私たちは貴族だ!民を守る責務があるだろ!」


オルトロスは周囲の者に次々に襲い逃げ惑う者達を優先して攻撃した。

門の下では、自らの生命を守ろうとする者と、自身の責務を果たそうとする貴族たちが対立している。

今は争っている場合ではないのだが、目下の状況では仕方ないのかもしれない。

門の上でその状況を見ていた私だからこそ、辛うじて冷静でいられたが、現場は阿鼻叫喚といった様子だった。


オルトロスの攻撃によって切り裂かれたもの、弾き飛ばされ骨を折ったもの、中には味方の波に飲まれ踏みつぶされたものなどもいる。

少なからず死傷者の出ている現場では、パニックが伝染し、すでに収拾がつかなくなっていた。

辛うじて門の直前まで戻ってきたものたちは、皆心が折れ、剣を取り落とすものもいた。


オルトロスの周囲では、既に何人もの逃げ遅れた冒険者達は血を流しその場に倒れている。

だが、こちらもやれているばかりではない。少しずつだが、騎士たちも落ち着きを取り戻していた。

流石は街の騎士団というのか、立ち上がりオルトロスを抑えようとする者、傷ついた冒険者たちを回収する者など平静を取り戻した騎士たちは各々のやるべきことをするために行動している。

騎士たちは武器を構え、オルトロスに戦いを挑んでいく。


矢や魔法、魔術が次々とオルトロスに放たれる。

攻撃を受けたオルトロスだったが、矢も魔法も硬い皮膚に阻まれまともなダメージにはなっていない。

無駄に思える攻撃だが、それでも騎士たちは攻撃をやめない。

矢がなくなれば剣や槍を持ち、オルトロスに向かっていく。


「絶対に街に向かわせるな!」


「これ以上進ませるか!」


騎士たちは、必死にオルトロスをこの場に押し留めようとした。

オルトロスの攻撃を数人がかりで耐え、一撃離脱の波状攻撃で少しずつダメージを重ねていく。


鋭い爪を持った前足の攻撃を盾で受け止め、時には避けたりと単調な攻撃を繰り返すオルトロスの動きに騎士たちが慣れ、徐々に攻撃の頻度が増えてきた。

騎士たちの攻撃に徐々にオルトロスは、苛立つように乱雑な攻撃になってきた。

このまま行けば討伐できると騎士たちに希望が見えてきたときだった。


『ウォォォォォン』


オルトロスは突然大きな咆哮を上げた。


急なオルトロスの咆哮に僅かに騎士たちの動きが止まった。

その隙をオルトロスは見逃さなかった。

動きの止まった騎士たちにオルトロスは、タンク役の騎士に狙いを定めると双頭の口から紅蓮の炎を吐き出した。

騎士たちは、迫りくる紅蓮の炎を受け止めようと大きな盾を構えた。

オルトロスの放ったブレスを盾で全身を隠し、何とか耐えた騎士たちであったが、甘かった。

オルトロスの動きを確認しようと、盾から顔を出すと、そこにはオルトロスの姿はなかった。


「どこに行きやがった?」


盾を持った騎士たちは、辺りを見渡しオルトロスの姿を探した。


「上だ!」


「なんだ——」


他の騎士が叫び、慌てて上を見上げた。

そこには目前まで迫ったオルトロスの姿があった。

気が付くのに遅れた騎士たちは、落下してきたオルトロスに押し潰された。

落下の勢いと重量で押し潰された騎士たちの鎧はひしゃげ、見るも無惨な姿になってしまった。

そこからの攻防は、一方的なものになった。

タンク役がいなくなり、防戦一方になる騎士たちを嬲るようにじわじわと追い詰める。

先ほどまでの攻撃が遊びと言わんばかりに、跳躍、ブレス、尻尾の薙ぎ払いなど機動力の高さと多彩な攻撃で騎士たちを翻弄し、一人、また一人と確実に無力化していく。


オルトロスの凶行は、僅かに見えた希望を絶望に塗り替えた。

生き残っていた騎士たちの戦意をそぎ落とし、貴族達に恐怖心を与える。

それは門の上にいたもの達も例外ではない。

騎士たちが倒れる様子を目にした貴族たちには、先ほどまでの民を守るという勇ましい様子はなかった。


「ば、化け物だ!」


「嫌だ、死にたくない!」


貴族には、民を守る義務がある。

しかし、義務があるからと言っても全ての貴族が強いわけではない。

ほとんどの貴族は、与えられた権力を使って私兵や騎士を雇い、彼らに戦わせるのだ。

だが、頼みの騎士たちがやられればこうなるのも仕方ない。

命の危険から逃れようと貴族たちは、その場を去ろうと我先にと出口に殺到した。

かく言う私もそのパニックに呑まれ、気が動転した。


「せ、セリナ、このままじゃダメだよ。早く逃げよう」


「…………きゃなきゃ」


「セリナ?」


私はセリナの服を掴み必死に呼び掛けた。だが、とうのセリナはうわ言のように何かを繰り返し呟いている。

その言葉は徐々にはっきりとしていき、何かに取り憑かれたかのように叫んだ。


「守らなきゃ、今度こそ、私が守らなきゃいけないの——」


セリナは、オルトロスを見ながらそう言うと、自身のスキルを発動し、白銀の武具を纏った。

突然現れた白銀の鎧によって、服を掴んでいた私の手が弾かれ、セリナから手を離してしまった。


ダメ、いけない。このままセリナを行かせちゃダメだ!


セリナの行動の意味をいち早く察した私は、急いでセリナを止めようとした。


「セリナ!ダメ!」


だが、セリナは私の制止も聞かず、急に走り出すと門から飛び降りた。

下に降りたセリナは即座に抜剣すると、一目散にオルトロスの元へ向かっていた。


私も慌ててセリナを追いかけようと門から飛び降りた。


「『空中浮揚レビテーション』」


鬼人であるセリナと違って私の身体能力は高くはない。

私は魔法で落下の勢いを落とし、ゆっくりと門から飛び降りるとセリナを追いかけた。




騎士たちを惨殺したオルトロスは、新たな獲物を求めていた。

先ほどまで相手をしていた騎士たちは、歯応えはあったが煩わしく、つい本気を出してしまった。

気が付いたらほとんど殺してしまっていた。

まったく、まだ時間ではないというのに……。


だが、オルトロスに退屈が訪れることはなかった。



辺りには、オルトロスにやられた冒険者や騎士達が倒れ血だまりを作っている。

錆びた鉄のような臭いが辺りに充満する中、白銀の鎧を纏ったセリナは、周りの様子などを目にもくれず、全速力でオルトロスに接近した。


私が守らなきゃいけないんだ。今度こそ私がミーシャを守る!

セリナを死地に赴かせるのは、勇ましいまでの正義感や、気高い貴族の誇りなどではない。

大切なものを失いそうになったあの日を再現してしまいそうになる恐怖だけがセリナの心を支配していた。


「私が、私が守る!守るんだ!」


鬼人の身体能力を生かし、大きく跳躍すると白銀の剣を大きく振り下ろした。

勢いの乗ったセリナの一撃は、オルトロスの頭を直撃した。


『キィィィン』


セリナの剣とオルトロス頭が衝突し、火花が散った。

しかし、直撃したセリナの一撃は、オルトロスの頭に掠り傷程度のダメージしか与えられていなかった。


「この!この!この!」


無駄とわかりつつもセリナはガムシャラに剣を振った。

セリナの攻撃がまともなダメージにならないとわかるや、オルトロスはセリナを玩ぶように吹き飛ばしたり、故意に攻撃を受けたりした。

セリナの剣は硬い皮膚とぶつかり合う度に火花を散らし、吹き飛ばされたり、攻撃を受ける度に鎧や盾が壊れていった。

私が近くまで来た時には、セリナの鎧は既に半壊し、剣には亀裂が入っていた。

額からは血が流れ、身体中傷だらけになっていた。


「セリナ!もうやめて!」


私はセリナを止めようと叫んだ。だが、私の声はセリナに届かない。

オルトロスに吹き飛ばされたセリナは、ボロボロになりつつも何度も立ち上がり剣を振った。


「きゃぁぁぁ」


「セリナ!」


吹き飛ばされたセリナは悲鳴をあげた。


「私のセリナに手を出すな!」


私はセリナの屋敷から借りた弓矢を構え、オルトロスに放った。

放った矢は、狙い違わずオルトロスに向かって一直線に進んだ。

しかし、大人の攻撃にさえたいした傷を与えられない硬い皮膚を持つオルトロスだ。

エンシェントエルフとは言え、子供の私が放った矢はオルトロスに命中したはいいものの、当然ながら矢は皮膚に弾かれた。


「くっ!やっぱり硬い皮膚には矢が刺さらないか」


攻撃を受けたオルトロスは、私に気が付くとセリナを先に始末をしようとした。

吹き飛ばされ、その場に倒れているセリナに向かってブレスを吐こうとする。

ここからでは距離があり過ぎてあの時のようにセリナを庇うことができない。

双頭の口内が赤く光るのを見た私は、大急ぎで矢を構え叫んだ。


「セリナ!逃げて」


「ミーシャなぜここに?」


「そんなこといいから、速く逃げて」


私の声に気が付いたセリナを軋む体に鞭を打つように、よろめきながら立ち上がった。

しかし、オルトロスの方もブレスの準備が整い、セリナに向かって大きな顎を開いた。

セリナもまた、攻撃を避けようと魔術を発動しようとする。


「『風霊よ、我を地上の楔から解き放ち、天を駆けさせよ『タラリア』』」


私もセリナを守るために動く。


「させるか!」


オルトロスがブレスを吐く直前、私は限界まで引き絞った矢を放った。

硬い皮膚ではオルトロスの動きを止められない。

なら、硬い皮膚で覆われていないところを狙えばいい。

魔物と言えど、生物に変わりはない。

であれば、流石に眼球まで硬くはないだろう。

放った矢は一本、だけど一本あれば十分。いや寧ろ放った矢が一本であるのがいい。

一本だけであれば、確実に目を貫けるという確信が私にはあった。

幼いときから矢の鍛錬を積んできた、私に必中以外はありえない。


放った矢は、先ほどよりも速く重い。私の全力の一撃だった。

矢は真っ直ぐに突き進み、オルトロスの眼球目掛けて飛んでいく。

瞬間、オルトロスの眼球がギョロリと矢の動きを捉えると邪悪な笑みを浮かべるように口角があがったような気がした。

魔物がそんなことをするとは思えないが、私は背筋がゾクリとした。

気付かれた……でも、今更矢に気が付いたところでもう遅い!

もらった。


私は矢がオルトロスの眼球を貫く光景を幻視した。

矢が眼球を貫くと思われたその時、オルトロスは瞳を守るために瞼を閉じた。


今更瞼を閉じたところで無駄だ!私の全力の一撃、瞼程度で防げるはずが……。

ないと思いたかった。

だが、現実は非情だった。


針の穴を通すような精密な狙いで放たれた矢は、瞼に命中した。

しかし、瞼もまた皮膚と同じ硬度があり、貫くどころか刺さることすら叶わず、地面に転がった。


「そ……そんな……」


私の不意討ちを瞼を閉じただけで防いだオルトロスは、セリナに向かってブレスを吐きだした。

双頭の口から放たれた灼熱の炎がセリナを襲った。


「セリナ!」


私は堪らず叫んだ。

ブレスの過ぎたところには、焼けた大地だけがあり、他には何もなかった。

オルトロスのブレスは、セリナの死体すらも残さなかった。


「う、嘘、セリナ!」


私はその場に泣き崩れそうになった。

セリナが死んだ、そう思った時だった。彼女の声が聞こえたのだ。


「くらえ!」


声の聞こえた方向、空を見上げるとそこには、上空からオルトロスを斬り裂こうとするセリナの姿があった。

セリナはブレスの攻撃を上空へ飛び上がることで回避したのだ。

そして、上空から勢いをつけオルトロスに特攻したのだ。


一度目よりもより高度からの勢いの乗った一撃は剣はオルトロスの左側の頭、丁度右目に深々と刺さった。


『ギャォォォォン』


オルトロスは初めてつけられた大きな傷に、暴れまわった。

未だに剣を握るセリナを強引に振り払おうと首を振り回す。

セリナも振り下ろされないように懸命にすがった。


オルトロスはそんなセリナを何とか振り払おうと地面に自らの頭を叩きつけた。

地面に叩きつけられたセリナは、内臓を傷つけられたのか血を吐いた。


「セリナ!」


私の声に反応したセリナは、こちらに手を伸ばし残った力を振り絞るように言った。


「ミ、ミーシャ……逃げて」


セリナはフラフラ今にも倒れそうになりながらも立ち上がろうとした。

私はそんな様子のセリナに近づこうとする。

だが、それより速くオルトロスがセリナに襲いかかった。

今までの動きとは違う。騎士たちを相手にしていたときの様な確実に命を奪うような動きだった。


オルトロスはその大きな顎でセリナに喰らいついた。


「イャァァァァ」


セリナの絶叫が響く。

セリナの右肩に噛みついたオルトロスは万力の様に徐々に顎に力を加えていく。

セリナはオルトロスの牙から逃れようと必死で剣を振う。

私も何とかセリナを助けようと矢を射続けた。

だが、オルトロスは意を介さず力を強めていく。

そして、首を僅かに傾けると顎に力を入れるのと同時にセリナを投げ飛ばした。

吹き飛ばされたセリナは、鬼人故の生命力の高さからか、辛うじて息はあった。

だが、セリナの右腕は食いちぎられ、止めどなく血が溢れている。瀕死の状態だった。

このまま血を流し続ければセリナは、命を落とすだろう。

しかし、オルトロスは自身の片目を奪ったセリナが余程憎いのか、じりじりと詰め寄り直接止めをくだそうとしていた。


「やめろ、やめろ、やめろ!」


「…………」


何か、何かセリナを助ける方法はないの?

弓矢は?ダメだ。オルトロスの皮膚には届かない。

なら魔法は?それもダメだ。弓矢以上の火力が出る魔法を私は使えない。

いや、でも私の概念魔法なら……やはり、これもダメだ。

あの魔法は射程が短過ぎてオルトロスに当てることもできないだろう。

何か、何か他に方法はないのか。

私は頭をフル回転して考える。

私のために命を賭して戦ってくれた大切な友達を守るために何かできないかを——。

その時、私に一つのアイデアが閃いた。

あまりに無謀で部の悪い賭けであるが、この状況を打破するこのできる可能性があることに。

そのとき、瀕死のセリナが何かを呟くのが聞こえた。


「に……げて……逃げて……ミーシャ」


もはや起き上がることもできない状態であったが、セリナは私に逃げろと告げる。

自らを省みず賭す姿、深手を負っても私を守ろうとする姿に私の決意は固まった。

セリナが私にしてくれたように、私も文字通り命を賭けてセリナを守る覚悟ができた。

私は身に着けた全ての武具を外し、唯一オルトロスに傷を与えられる可能性がある魔法、概念魔法を発動した。


「『絶対切断レーヴァテイン』」


私は自分に言い聞かせるようにか細い声で言った。


「セリナ、今度は私が守ってみせるから」


私は覚悟決め、万物の全てを切り裂く刃物と化した指で自身の胸を貫いた。

指は胸を貫き、口から血が零れる。自らの心臓を貫いた私の指は深紅に彩られ、辺りを鮮血で染めた。

そして、大地を深紅で染め上げた鮮血と対象に私の身体は蒼い炎で包まれた。


今の私には、オルトロスを打倒する手段はない。

ないのならその手段を手に入れればいい。

私の力は、『転生リンカネーション』死ぬ度に蘇り新しい力を手に入れる力。

だが、手に入る力は必ずしも強力な力とは限らない。

部の悪い賭けであるのは重々承知の上だが、それでも活路はここにしかないと思ったのだ。

私は自身の命を賭け金に文字通り博打を打った。




同刻、神域でクロリスは大笑いをしながら鏡を見ていた。

もっとも鏡に写っているのは、クロリスではなく蒼い炎に包まれたミーシャだった。


「ははは、そう!そうだよ!やっぱり私の目に狂いはなかった!友のためにその身命を賭し運命に抗う。その意思、その行動称賛に値するよ。そして——ふふふ、やっぱり君は私のいや、君の物語の主人公だ」




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