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第六百六十二話 訃報

予約投稿忘れてました!

すみません!!

 帝都・帝剣城。

 常に前線からの報告を受けていた帝剣城だが、直近の状況については不明だった。


「前線の状況は!? なにか報告は入っていないのか!?」


 帝国宰相フランツは、帝剣城の全権を預かっていた。

 現在、帝国の実権はすべてフランツの下にあると言ってよかった。

 しかし、そのフランツの下に情報はやってこない。

 帝国の外で起きていることゆえ、情報収集がうまくいかないのだ。

 

「冒険者ギルドの観測班との連絡が途絶えました!」

「付近の部隊はなにをしている!? 総司令部から連絡は!?」

「総司令部とも連絡が取れません!」

「完全に目と耳を失ったか……」


 連合軍が悪魔と交戦開始してからも、報告は逐一入っていった。

 しかし、戦闘が佳境に入ったタイミングで、報告は断続的になった。

 戦闘が激化したのだ。

 観測班は戦場から少し離れた場所で、情報をギルドと帝国に送り続けていた。

 最後の報告はシルバー、エルナ、レオナルトの三人で敵悪魔に挑むというものだった。

 結果についてはわからない。

 すべての連絡がそこで途絶えたからだ。


「連絡がつく部隊はないのか!?」

「連絡ラインが繋がっていたのは総司令部と観測班だけでしたので……」

「冒険者ギルドの支部とはどうだ!?」

「情報が錯綜しています! とにかく王国内で大規模な天変地異が起きたことは確かなようです!」

「天変地異を巻き起こすような戦闘ということか……!」


 フランツは顔をしかめながら、とにかく情報を集めることを指示し、自分は深く息を吐いて、少し休憩する。

 帝国はあまりにも多くの人的資源をこの戦争に投入している。

 連合軍が壊滅などという事態になれば、帝国は立ち直れない。

 なにより、連合軍には皇帝が参加している。

 実権を握っているフランツがいれば、帝国自体の運営は回る。

 しかし、混乱をおさえる力はフランツにはない。

 せめて皇帝の安否さえわかれば。

 そんな焦りを抱えていたフランツの下に伝令が飛んできた。


「宰相閣下! 急報です!」

「どこからの情報だ!?」

「ヴィンフリート様が率いる補給部隊からです!」


 連合軍の数は膨大だったため、総司令部との中間地点に補給物資を管轄する部隊が置かれた。

 それを統率していたのがヴィンフリートだった。

 総司令部からの増援を得て、連合軍本隊への援軍に向かっていたが、到着する前に戦闘は終了してしまった。

 そのヴィンフリートからの情報は、かなり前線に近い情報だ。


「聞かせろ!」

「宰相閣下……できればお人払いを」

「どういうことだ?」

「ヴィンフリート様から宰相閣下だけにお伝えするように、と」

「……こちらに来い」


 フランツは伝令を連れて、自分の部屋に向かう。

 そして。


「さぁ、話せ。何が起きた?」

「ヴィンフリート様からの情報では……連合軍は王都ごとどこかに消えてしまったとのこと。そして……」

「まだ何かあるのか……?」

「……総司令部が襲撃に遭い……アルノルト元帥が生死不明とのことです……」

「なん、だと……?」

「総司令室を中心に巨大な爆発があり、アルノルト元帥はたしかに総司令室にいたという情報も……」

「なんたることだ……」


 皇帝も皇太子候補も行方不明の中、連合軍の総司令を務める皇子までが生死不明。

 あまりの報告にフランツは思わず膝をつく。


「宰相閣下!?」

「……エリク殿下はどちらだ……?」

「いざというときに皇国へ渡れるように、東部へ向かわれました」

「すぐにお呼びしろ……」


 現在、存命が判明している皇族の中で最上位は間違いなくエリクだ。

 ゆえにフランツはとにかくエリクと連絡を取り、帝都に来てもらうことを優先した。

 そして。


「玉座の間へ皇后陛下にお出まし願うのだ……」


 フランツは覇気のない声で指示を出し、ゆっくりと立ち上がるのだった。




■■■




 玉座の間。

 そこでフランツは現状、判明している情報を皇后であるブリュンヒルトに伝えた。


「皇帝陛下は万が一の場合に備え、遺言書を残しておられました。レオナルト殿下を皇太子に任じるというものです。しかし、お二人とも行方不明となると、次点はエリク殿下になるかと思われます」

「その判断には賛成です。状況が明瞭になるまではエリクを暫定的な皇太子として扱うべきでしょう」

「はっ、ではそのように」


 皇后は皇帝の名代でもある。

 皇帝不在の状況では、権威の部分では皇后が最上位だ。

 その皇后の了解を得て、実権を持つ宰相として動く。

 しかし。


「ですが……あくまで暫定です。皇后は皇帝不在の状況では皇太子を指名する権利がありますが……私はその権利を使う気はありません」

「しかし、いち早く帝国を立て直すには……」

「あなたがいればいくらでも帝国は立ち直れます。しっかりなさい。皇帝陛下の最大の功績はあなたを宰相に任じたこと。その評判が間違っていると思ったことは一度もありません。何もはっきりしていないのです。落ち込むのはまだ早いですよ」

「皇后陛下……」

「陛下はレオナルトに皇太子を任せることに決めたのです。ならば、最後まであきらめずにそうなるように努力すべきでしょう。エリクにも暫定であることはしっかりと伝えてください」

「……かしこまりました」


 皇后の意向ははっきりした。

 フランツはそれを受けて、深々と頭を下げた。

 どこかで皇帝やレオナルトの生存を諦めている自分がいた。

 けれど、皇后は諦めていない。


「帝国は一度、皇太子を失っています。今度は皇帝と次期皇太子……そんなことは許されませんし、誰もがそれを阻止するはずです。帝国の精鋭たる近衛騎士たちに期待しましょう」

「はい……」

「何か必要なことがあれば言ってください。後宮に関しては私が抑えておきます。誰にも好き勝手はさせません」


 エリクが暫定の皇太子となると、口を出してきそうなのはエリクの母であるカミラだ。

 しかし、皇后は口を出させないと宣言した。

 皇后の発言力は無視できない。

 誰であっても、だ。


「感謝いたします」

「帰ってくる場所を守りましょう……傷ついた人たちには帰る場所が必要ですから。それと……アルノルトの件については伏せておくように。あの子は弟妹たちに慕われていましたから。幼い子たちに一度に心労を与えるべきではありません」

「……はっ」


 皇帝とレオナルトについては消息不明だ。

 消えたということしかわからない。

 しかし、アルノルトについては生死不明。証拠がないだけで、ほぼ死んだとみていい。

 その事実にフランツは目を伏せる。


「陛下は……悲しまれますな」

「陛下が……子供の死を悲しまなかったときはありませんよ」


 そう言って皇后は玉座の間をあとにするのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ここで皇后が立ち直ったことが活きてくるのですね。 はたして偽のヴィルヘルムに対して冷静な判断を出来るかどうか。
[一言] 皇后が皇后らしく振舞ってるのが新鮮。 アニメ化おめでとうございます!! スニーカーの生放送で情報出たとき嬉しすぎて声出ちゃいました。
[一言] リーゼロッテ元帥って今どこにいるっけ?
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