外伝2 第一話 宰相の休日
皆さん、長くお待たせしてすみません。
タンバです。
最終章ですが、編集さんと相談して時期を決めているので、もう少しお待ちください。
その最終章の更新前にシルバー主役の外伝を挟みます。
時系列はアルが藩国で宰相をやっているとき。
またしばらくお付き合いいただけると幸いですm(__)m
藩国の宰相に就任してから半年ほど経った頃。
セバスが俺の下に奇妙な情報を持ってきた。
それは。
「古代遺跡?」
「はい。藩国内で発見されたようです」
セバスの報告に俺はため息を吐く。
藩国はガタガタだ。
国として成り立っていたのが不思議なほどで、各地の開発はまったく進んでいない。
富はすべて王と貴族が吸い上げていた。
国内の辺境は開発すらされておらず、ほぼ未踏だった。
それでは国を立て直せないと察したトラウ兄さんは、国内の開発を指示し、それによって貴重な鉱山が発見されていた。
しかし、古代遺跡はちょっと厄介だ。
「知っているのは?」
「発見した周辺の村人だけです」
「宰相権限で口外を封じろ。そのうえで、トラウ兄さんへの報告も遅らせる」
「よろしいのですか?」
「古代遺跡はあまりにも危険だ。藩国の騎士たちは未熟。調査させれば、暴走させる危険もあるし、遺跡内の物を懐に入れる可能性もある」
藩国の者は不正に慣れすぎている。まだ体制が変わって間もない。信頼できる者は少ない。
だから、まだ古代遺跡を扱わせるのは怖い。なにより、古代遺跡に眠る魔導具は、人を豹変させるかもしれない。
人を操る魔剣だってあるわけだしな。
危険ではないと判断するまで、表には出さないほうがいいだろう。
「冒険者ギルドに知らせますか?」
「ノーネームが出てくる可能性がある。国内が不安なのに、魔剣のレベルアップのためなら遺跡を破壊するような奴は呼べない。俺が調査するしかないだろう」
「しかし、アルノルト様は宰相で多忙です」
セバスの言葉に俺は頷く。
宰相としてやるべきことはたくさんある。
改革はまだまだ途中。
だが。
「締め付けすぎると暴発する。今まで不正だらけだった国が、俺によってだいぶ締め付けられた。ここらで宰相の束縛から解放してやろう」
「というと?」
「少し休みを取る。その休みを利用して、古代遺跡を調べるとしよう」
「なるほど。では、トラウゴット陛下にご相談ですな」
「喜んでくれるさ。トラウ兄さんなら、な」
■■■
「や、休みを取りたいと!? ほ、本当でありますか!?」
「嘘をいってどうするんですか」
「さ、最近、仕事ばかりだったので、つい疑ってしまいましたぞ……そ、それではアルノルトが息抜きをするということは……」
「ちゃんと王としての務めは果たしてください。ただ、多少、手を抜くことは認めましょう」
トラウ兄さんが目に見えて明るい表情を浮かべた。
元々、トラウ兄さんはやる気に欠ける。能力はあるけれど、それを生かそうという考えがないのだ。
そんなトラウ兄さんを、俺は鬼の宰相として働かせ続けた。
しかし、俺が休むならトラウ兄さんも休んでいいだろう。
とりあえず体制は整えた。少しペースダウンしても良い頃ではある。
「や、やっとマリーと落ち着いて過ごすことができるでありますよ……」
「休むといっても、一週間だけです。羽目を外さないようにしてくださいね。あとでしんどくなりますよ」
「わ、わかっているでありますよ」
釘を刺しつつ、俺は一礼してその場を後にする。
こうして俺は一週間の休みを得たのだった。
■■■
「とりあえずこの洋館が拠点だな」
古代遺跡の傍。
かつて領主が使っていた洋館。
しかし、この地の領主は不正により捕まっている。
新しい領主は、この洋館を使っていないため、俺の休暇用に貸し出してもらった。
ついてきたのはフィーネとセバス。
一応、護衛用に騎士もついているが、洋館の周りを護衛するだけに留めてもらっている。
「さて、大したことない遺跡ならさっさと終わるんだが……」
「それも入ってみないとわからないということですね?」
さっそく紅茶を淹れていたフィーネに対して、俺は頷く。
外からでは危険かどうかもわからない。
それが古代遺跡だ。
だから一週間も休みを取った。
「何か起きたときは二人でなんとかしてくれ」
「はい! どうにかします!」
「世間的には愛人を連れて休暇を満喫しているということになっていますから、多少、伸びても平気ですな」
「まあ……そんな風に思われているんですね」
「好都合だ。勝手に勘違いしていてもらおう」
「嫉妬を買いますぞ?」
「平気さ。今の俺は怖いからな」
言いながら俺は紅茶を飲み干すと、立ち上がる。
そして一瞬で服を変え、銀色の仮面を身に着ける。
「さて、それじゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
「お気をつけて」
二人に見送られながら、俺は転移したのだった。
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