第六百十話 連合軍総司令官
第十五部完!!('◇')ゞ
19日はBL小説を賭けたコラボだよ~('ω')ノ
旗艦アルフォンスから降りた俺を、二人の人物が待っていた。
「よぉ、待たせたな、レオ」
「全然待ってないって言いたいけど、今回は待ったよ。ちょっと遅いんじゃない?」
「色々と邪魔が入ってな」
そう言って俺はレオの後ろにいるアンセムに目を向ける。
アンセムは軽く顔をしかめつつ、告げる。
「――援軍に感謝する。無事に民を逃がせたのは帝国軍のおかげだ」
アンセムはそう言って頭を下げた。
プライドの塊みたいな男が頭まで下げるとは。
「どういう風の吹き回しだ? アンセム王子」
「人質となっていた姉を救い出すことができた。王太子に従う理由はもう俺にはない。民をモンスターに変えるような奴なら、なおさらな」
「民をモンスターに? なるほど。状況は思っていた以上に悪いな」
言いながら俺は笑う。
愚かな一手だ。
冒険者に喧嘩を売る一手としか思えない。
考えなしに打つ手ではない。
だから王太子はすべて承知の上で動いている。
「大陸全体と喧嘩するつもりか。さぞや奥の手に自信があるんだろうな」
「……もはや王国は大陸の敵だ。だが、王国全体が王太子の考えに賛同しているわけじゃない。俺は反対派を率いて、王太子と戦う。その許可をくれ」
「反対派を率いて戦ったとして、その後は? すべて終わったあとにどうするつもりだ?」
「……どうかこの首で許してほしい。それほどの価値はもはやないのは承知しているが……この首で此度の戦争のけじめとしてほしい」
王太子は大陸の敵となった。
これから対王太子の戦いが幕を開けるだろう。
それに勝ったとして。
帝国は軍を退くだろう。すでに帝国対王国の構図ではないからだ。
とはいえ、遺恨は残る。
なにせ先に仕掛けてきたのは王国だ。それによって帝国は多くの犠牲を出した。
何か得る物がなければ納得できない。
だからアンセムは首を差し出すと言っている。
だが。
「断る。お前の首に興味はない」
「……では戦うと?」
「どうして戦う必要がある? 王太子を倒したなら終わりだ。すべて王太子のせいにすればいい。帝国は戦を求めているわけじゃない。立て続けの戦で帝国も疲れている。休めるなら休みたいっていうのが本音だからな」
「……納得しない者もいるはずだ」
「いるだろうが……不満は所詮、不満だ。どうにかなる。それよりも王国が崩れるほうが問題だ。王国が崩れれば、きっと侵攻を訴える奴がいるだろう。王国が崩れれば、治安が悪化して難民が流れてくるだろう。それを防ぐためには強力なリーダーが必要だ。リーダーさえいれば、分裂せずに済む。分裂しなければすぐに復興に移れる。隣国の安定こそ帝国の国益だ。本国の考えはわからないが、俺とそんなに差はないだろう。だから……生きろ」
自分は死んでもいい。
アンセムからそういう思いが伝わってくる。
すべて自分の責任だと。
けれど。
「命が短いなら、意地でも伸ばせ。これから王国は建国史上、もっとも弱い期間に突入するだろう。大陸三強と呼ばれた力は失われる。だから、他国の介入を拒絶する力が必要だ。お前以外、それを成せる者はいない。自分の力で立っていられないなら、他人に支えてもらえ。王国にお前がいることこそ、王国のためであり、帝国が望むことだ」
大陸の安定は王国、帝国、皇国という大国が存在していたから成り立っていた。
その一つが大きく崩れれば、帝国はより大きな戦に巻き込まれる。
ただでさえ、王国と皇国に挟まれ、帝国は両方面に大きな軍事力を割いている。王国が分裂して泥沼の内乱にでもなれば、より警戒が必要となる。
考えうるかぎり、最悪な結果だ。
そうならないために、帝国が切り取った領土を併合するのも無理だ。冒険者ギルドが許さないだろう。
帝国の侵略戦争に加担したことになる。それでは冒険者ギルドの中立性が疑われる。
ほかの国もそうだ。帝国だけが得をすることに納得するわけがない。
だからこそ、アンセムにはしっかりと王国を支えてもらわなければならない。
「……帝国が望むなら……やれるだけのことはやろう」
「安心しろ。体調面のことは帝国も協力する。とはいえ……」
「まずはこの戦に勝ってから、だよね?」
「その通り。全軍に集結を命じる。ここを拠点として王国の都市をすべて保護するぞ。放っておけばすべての民が犠牲になる」
■■■
一週間後。
王国各地に散っていた帝国軍と王国軍が要塞に集結した。
要塞は半壊状態なため、多くは外で陣を敷くことになったが、両軍合わせておよそ二十万。
完全に収容するのは難しい大軍だ。
そんな二十万の大軍の前に用意された壇上。
そこに俺は立っていた。
「王国の王太子、リュシアンは民を利用してモンスターを作り出した。これは明確な過ちだ。これよりリュシアンは〝大陸の敵〟と認識されるだろう。よって、我々はこれよりリュシアンに対して敵対するすべての者を取り込み、ここに〝連合軍〟を結成する。すでに皇国をはじめとした各国も参戦を表明している。目的は二つ。リュシアンの打倒と王国の民を保護することだ。リュシアンの強気な動きにはおそらく悪魔が関わっている。しかし、悪魔はまだ姿を見せない。ゆえに冒険者ギルドの最高戦力、SS級冒険者はまだ来られない。彼らは常に後手だ。そうなるように我らが仕組みを作った。だからこそ……先陣は我らが切る! 総力を挙げて我々は民の保護に動く! これより我々は人類の代表である! 向かう先は最前線! いつ悪魔が出てくるかわからない地獄だ! それでも我々は前に出る! 人類最強の者たちが出てくるまでに、より多くの民を救うために! それこそ多くの国の軍人たちが手を取り、立ち上げたこの〝連合軍〟の本質だ! ゆえに!! 我々が心に刻むべき言葉を諸君らに教えよう!」
二十万の将兵がジッと俺の言葉を待つ。
一息いれて、じっくりと彼らの顔を見渡す。
そして。
「我らが心に刻む言葉、それは――〝民のために〟。冒険者ギルドが受け継いできた絶対の理念を我らも共有する。どの国の者でも関係ない。貴族であろうと、平民であろうと関係ない。この言葉こそが我らの旗印だ。この言葉に賛同する者こそが我らの仲間だ。恨みはあるだろう。わだかまりはあるだろう。しかし! 今はそれを捨て去り、共に立て! 諸君らの指揮は参戦しているすべての王の許可を得て、連合軍総司令官アルノルトが執る!! 民のために!!」
一拍の後。
二十万の将兵たちが歓声と共に拳を突き上げた。
俺はそれをじっくりと見たあと、踵を返した。
「悪くなかったわよ?」
「そりゃあどうも」
傍に控えていたエルナがそう言う。
壇上から下りると、三人の指揮官が俺を見ていた。
王国軍指揮官アンセム。
連合王国軍指揮官ウィリアム。
帝国軍指揮官レオナルト。
いくら連合軍とはいえ、いきなり混成にはできない。
それぞれの軍はそれぞれの指揮官が指揮を取ることになるだろう。
「言ったとおりだ。全体の指揮は俺が執る。不満はあるか?」
「私は元より異論はない。元帥の指示に従おう」
「俺も異論はない。異論をとなえられる立場でもないのでな」
ウィリアムとアンセムの言葉を聞いたあと、俺はレオのほうに目を向ける。
すると、レオは笑った。
そして。
「――元帥の命に従います。非才の身ではありますが、全力を尽くします」
「良い心掛けだな。文句言うなよ?」
「命令によるかな」
「おい? さっそくか?」
そんな言い合いをしながら俺は三人を引き連れて要塞へと向かうのだった。
(*'ω'*)はい、というわけで、第十五部はここで終わりですm(__)m
約一か月半にわたり、お付き合いくださりありがとうございました( ;∀;)
正直、もうちょっと先に進むかなと思ったんですが、思ったより進みませんでしたね(笑)
今回はレオのパートが長く、不満に思う方も多かったと思いますが、必要なパートでした。ただ、そういうパートですよと事前にお知らせすべきだったかなとは、反省しています。次から気をつけます。申し訳ありませんでした。
次回からはアルの活躍をしっかりと楽しめるんじゃないかと思います( *´艸`)
また時間を空けて、十六部という形になると思います。これから十一巻の原稿をやったり、ひそかに進めていた新作を書いてみたりしたいと思います。
出涸らし皇子なくて暇だなぁって方は定期的にYouTubeでSS書いたりしているので、見に来てください(/・ω・)/
今回はYouTubeやったり、SS書いたりと頑張りましたm(__)m
まだまだ忙しいですが、なるべく早く皆さんに第十六部をお届けできるように頑張りますので、これからも応援よろしくお願いしますm(__)m
ではでは。
タンバでした(*'ω'*)