第四百九十六話 使者出発
とりあえず今回はここまで!
またしばらく間隔が空きますが、よろしくお願いします!
次の日。
俺は正式に父上の下に呼び出された。
もちろん、アルバトロ公国に使者として赴く話についてだ。
「状況は理解しているな?」
「ある程度は」
「対王国戦の鍵はどうやってアルバトロ公国を引き離すかに掛かっておる。こちらの予想より早く王国は本腰を入れてきた。すでにアルバトロ公国にも手を伸ばしているかもしれん」
「俺の派遣はやめますか?」
「正面の戦力を削ぐわけにはいかん。お前に行ってもらうしかない」
レオが王国との決戦に備える以上、他の者がアルバトロ公国に行くしかない。
だが、アルバトロ公国が支援しているかぎり、王国は難攻不落。
始めたが最後。
数年は続く泥沼の戦争となるだろう。
どちらも退かない以上、どちらも傷を負うだけだ。
「現在考えている案は二つです。一つは近衛騎士団による厳重な警護です」
「刺激しかしないでしょうね」
「同感です。私としても武力を誇示するのは下策だと思っています」
宰相であるフランツがそう言って、二つ目の案を語り出した。
「多少危険ですが、護衛は絞り込むべきでしょう。その上で公子との対話を重視するべきかと。レオナルト殿下とアルノルト殿下が公国へ向かってから、公子は一貫して帝国よりの人物ですから」
「公子に国を動かす力があると?」
「王国と公国は長い間、同盟関係でした。恩と感じている者は多い。ですが、状況は変わった。それをこちらが説いても無駄でしょう。新しい世代がそれを説くべきです」
「確かに帝国に対する恩と王国に対する恩。どちらが大きいかなんて、比べるまでもない。公国は小国。日和見はできない。どちらかに加担するしかない。難しい選択となる。俺の言葉より、公子の言葉のほうが聞きやすいでしょう。それで? 失敗したらどうするんです?」
王国につくと決められたら、俺は絶好の人質となるだろう。
身柄は王国に渡される。
護衛を絞っているなら逃げるのも至難の業だ。
「それについてはだな……ワシは反対したんだが……」
「護衛を必要以上に連れていけない以上、万が一に備えるのは難しい。ですので、万が一が起きないようにするべきです。というわけで、人質になりえる方を増やします」
「何かあった時、わかっているな? という圧をかけると?」
「その通りです。問題はその人選なのですが……」
「俺とフィーネ。足りないなら皇族から誰か追加ですね。クリスタかルーペルトか」
「ふざけるな! 子供を巻き込むなどありえん!」
「子供でも皇族です。しかし、そういうことなら俺とフィーネにしましょう」
「お二人なら圧としては十分でしょう。あまり圧をかけすぎると交渉にもなりませんから、ちょうどいいかと」
さっさと話はまとまる。
父上は顔をしかめている。
父上としてはフィーネを行かせることにも反対だったんだろう。だが、真っ先に子供たちのことを否定してしまった。
今更、フィーネも駄目では話が進まない。
「フィーネが了承するなら……構わん」
「では、俺が説得しましょう」
そう言って俺は一礼して背中を向ける。
そんな俺に父上が声をかけた。
「アルノルト」
「何でしょう?」
「無茶はするな。人質になるなら、それでいい。向こうも価値があるなら丁重にもてなすだろう」
「恥では?」
「恥よりも命だ」
父上の言葉に頷き、俺はその場を後にしたのだった。
■■■
数日後。
帝都を出る馬車に俺とフィーネはいた。
「行ってらっしゃい。兄さん、フィーネさん」
「はい! 行ってまいります! レオ様」
「まぁ無理なら帰ってくるから心配するな」
見送りに出てきたレオに俺はそう言った。
もちろん気休めだし、レオもそれはわかっている。
だが、今から心配していては身が持たないだろう。
「心配はしてないよ。人質になったら、僕が助けに行く」
「期待しているよ」
「うん、期待してて」
そんな会話をした後、城から慌てた様子でエルナが出てきた。
急いで仕事を終わらせてきたらしい。
「フィーネ! アル!」
「エルナ様」
「もう! 私がついていけば心配なんてないのに……宰相に却下されたわ! 無茶しちゃ駄目よ? 二人とも」
「心配いりません。セバスさんもいますし、護衛にはフィン隊長もつきますから」
「でも……」
エルナは心配そうにフィーネの手を掴む。
普通、不安なフィーネを落ち着かせる立場だろうに。
まったく。
「そろそろ時間だ。行くぞ」
「アル!」
「心配するな。勝算はある」
「本当……?」
「本当だ。だから準備しておけ。俺が戻ってきたら、王国と本格的な戦争だ。そこで手柄を立てて、エリク兄上を追い抜く。もう玉座は目の前だぞ? 覚悟はいいな?」
「もちろん。準備はできてるよ」
「よろしい。それじゃあ行ってくる」
二人に手を振り、俺とフィーネは公国へ出発したのだった。
「公国へ行くのは楽しみです!」
「王国の手が伸びてたら、罠に飛び込むようなものだけどな」
「危険に飛び込んでこそ得られるモノもあります」
「それもそうだな……君がいると心強いよ」
「私もアル様の傍にいると安心します」
そんな会話をしていると、空で白い飛竜が鳴いた。
上を見るとフィンが護衛として空を飛んでいた。
「さて、何が出てくるかな?」
呟きながら俺は目を瞑るのだった。
はい! というわけで、第十二部はこれにて完結です!
もうちょっと続けようと思ったんですが、とりあえず十万字は超えて一巻分にはなったのでここで終わらせますm(__)m
次回の第十三部ですが、編集さんからもう少し連載スピードを遅らせてほしいと言われているので未定です('ω')ノ
もうラストも近くなってきたので、相談しながらやっていきます。ご了承ください。
ただ、空いている期間に何もしないというのもあれなので、何か考えて動こうかなと思っています( *´艸`)
来月の一日に第七巻も発売しますし、累計で三十万部も突破しました。
順調すぎるくらい順調なので、あとはどうやって終わらせるか。それだけを考えています。
なるべく皆さんが納得できるように書くつもりですので、これからもよろしくお願いしますm(__)m
タンバでした。




