表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

446/819

第四百四十四話 三人のSS級冒険者



 王国領内に入った冒険者ギルドの調査隊は三つに分かれて行動していた。

 その中で最も少ない人数で動いていたのがジャックの部隊だった。

 本来、弓使いには前線を維持する前衛のパートナーが必要ではあるが、ジャックには必要なかった。

 そのためジャックは五人のS級冒険者の内、四人を他の二人に回していた。

 残る一人は自分の補佐として、傍に置いた。あくまで補佐。実力をあてにしたわけではない。

 だが。


「ジャックさん、悪魔の討伐は僕に任せてくださいよ」

「百年早ぇよ」


 魔奥公団が潜んでいると思われる地下拠点。

 そこにジャックは襲撃をかけていた。傍にいるのは一人。

 イーグレット連合王国を拠点として活躍するS級冒険者。

 名はブルース・ターラント。

 氷の魔導師であり、その紳士的振る舞いと容姿から〝氷結の貴公子〟と呼ばれる青年だった。


「地上で待機しとけ。悪魔は俺がやる」

「そういうわけにはいきませんよ。ついてきた意味がないじゃないですか」

「ついてきた意味は調査要員の護衛だ」

「AAA級冒険者がいますよ」

「お前も加われ」

「手厳しいな。これでも僕はS級冒険者なんですよ?」


 言いながらブルースは右手を振るう。

 それだけで物陰に隠れていた数人の敵が凍り付いた。

 先ほどから雑魚の相手はすべてブルースがしていた。


「少しは役に立てると思うんですが?」

「戦闘面で期待して連れてきたんじゃねぇよ」

「そう言わずに。相手は悪魔ですよ? 僕らも協力したほうがいいと思うんですよ」

「そうか」


 言った瞬間、ジャックは足を止めた。

 その目の先には一人の小柄な少女がいた。

 なぜ少女が?

 ブルースは疑問に思いつつ、ジャックの前に出て少女を保護しようとする。

 だが、ジャックより前に出た瞬間。

 強烈な悪寒に襲われた。

 咄嗟に距離を取り、一瞬で戦闘態勢に入る。


「SS級冒険者が来たっていうから出迎えに来たんだけど? あたしの相手ってどっち?」

「俺だな」


 言いながらジャックは肩に担いでいた弓を手に持ち、軽く首を回す。

 平然としているジャックを見て、ブルースは自分との差を感じた。

 どう考えても目の前の少女が悪魔なのは間違いない。

 先ほどの悪寒を思い出し、ブルースの足が少し震える。

 だが。


「ジャックさん……僕がやります」

「あら? 私のところに二人も来たの?」

「僕はブルース・ターラント。S級冒険者だ」


 S級という言葉を聞いた瞬間、少女の顔に退屈の色が浮かんだ。

 そして。


「冒険者ギルドの最高戦力ならまだしも、その下じゃ相手にもならないわよ。さっさとお帰りなさい」

「舐めるな!」


 ブルースは一瞬で無数の氷柱を生み出し、少女に向かって放つ。

 多数の氷柱を見て、少女は楽しそうに拍手する。


「すごいわ。手品師でやっていけるんじゃない?」

「このっ!」


 その氷柱を少女に向かって放つが、少女はゆったりとした動きで歩き始める。

 それは目に追えないという速度ではなかった。

 だが、少女に氷柱が当たらない。

 常に少女が隙間にいて、氷柱は少女の後ろに着弾するばかりだった。

 そのまま、ブルースが氷柱を撃ち終わった時。


「ご苦労様」


 少女はブルースの隣に立っていた。

 いつの間に立っていたのか。

 ブルースには全く理解できなかった。

 咄嗟に防御という言葉が出るが、その前に少女が右手をあげる。


「それじゃあね」


 死の予感がブルースを襲う。

 せめて一太刀だけでもと反撃の準備をするが、それらは無意味なものだった。

 次の瞬間には少女が吹き飛ばされていたからだ。


「てめぇがな」


 ブルースがまったく反応できなかった少女の動きを、ジャックは正確に追えていた。

 そして少女を蹴り飛ばしたのだった。


「ジャックさん……」

「早く地上に行け。調査要員を退避、そして報告をあげろ。悪魔と遭遇したってな」

「……了解しました」


 自分の無力さと高い壁を感じながら、ブルースは背を向けて走り出す。

 それを少女は追わない。

 ジャックの蹴りを食らったにもかかわらず、少女には全くダメージが入っていなかった。


「すごいスピードね。久々に防御しちゃったわ」

「そうかい。じゃあこれも防御してみな」


 無駄話はしないとばかりにジャックは弓を構えて魔力の矢を放つ。

 構えてから撃つまで目にも止まらぬ速射。

 それを少女はまたゆったりとした動きで避けてみせた。


「あら、怖い」


 少女の後ろにあった壁に大穴が空く。

 少女はそれを楽しそうに見ていた。


「ふざけたガキだ」

「失礼ね。あたしの名前はイペス。これでも魔奥公団の幹部よ?」

「そうかい。じゃあこっちも自己紹介しておこう。冒険者ギルド所属、SS級冒険者のジャックだ。お前を討伐しに来た」


 それと同時にジャックは連射で少女を制圧しにかかったのだった。

 そして同じ頃。


「嫌だわぁ……私の相手はせめてイケメンであってほしかったのに」

「それは失敬した」


 同じく拠点を制圧しに入ったリナレスも悪魔と対峙していた。

 対峙する悪魔は精強な肉体を持った中年の男。

 そんな男は自らの肉体を誇示しながら自ら名乗る。


「我が名はマルバス。あなたとの戦いを心待ちにしていた」

「あいにく、私は待っていないわ。まったくもう……そろそろ肌の手入れをしないといけない時間なのに……」

「侮られたものだ」


 リナレスの態度を受けて、マルバスは一瞬でリナレスの懐に潜り込む。

 そしてそこで正拳突きを放つ。

 次の瞬間。

 マルバスは空中にいた。

 飛んだわけではない。

 飛ばされたのだ。


「せっかちな男は嫌われるわよ?」

「なるほど」


 自分が投げられたとわかったマルバスは空中で体勢を整え、着地する。

 そして構えた。


「手合わせ願おう。〝両極の拳仙〟」

「仕方ないわねぇ……冒険者ギルド所属SS級冒険者のリナレス。あなたを討伐するわ」


 そう言ってリナレスは気だるげに微笑むのだった。




■■■




 王国領内のとある町。

 そこで小さな少年とエゴールが対峙していた。

 予定通り拠点を襲撃したエゴールだったが、自らの勘の命ずるままにこの町までやってきた。

 誰かが自分を呼んでいると思ったからだ。

 そしてそれは正しかった。


「あなたは……」


 町は燃えていた。

 人々は逃げ惑い、そこはまさに惨劇だった。

 そこで茫然と立ち尽くす少女がエゴールに問いかける。

 エゴールはそんな少女の頭を撫でながら、呟いた。


「冒険者ギルド所属、SS級冒険者のエゴールじゃ。よう頑張った」

「おいおい、爺さん。邪魔しないでくれるか? 今、逃げる人間を撃ち抜くゲームしてるんだけど?」


 あくびをしながら少年は空中で寝転がる。

 そんな少年を一瞥したあと、エゴールは自らの杖で地面をたたく。

 それだけでとんでもない突風が巻き起こり、町を覆っていた炎が消え去った。


「そんなに遊びが好きなら付き合ってやろう。これから鬼ごっこじゃ。儂が鬼で、貴様が子。無様に逃げ回るがいい」


 エゴールは呟きながら杖から愛刀を引き抜くのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 少女悪魔の名前がイポスではなくイペスであること。 [一言] まだまだ寒い日が続きますが、どうかくれぐれもお体にはご自愛ください。
[一言] マジで72体出す勢いなんだろうか… それはそれとして、イケメン希望のアクマ=サン…残念ながら、SS級は仮面✕2、オカマ×1、オッサン×1、ジジイ×1で、要望に応えるのが難しいんだよなぁ…仮…
[良い点] SとSSの差が果てしない 悪魔の力量の物差しとして有能だわ、SS級の活躍に期待
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ