第四百三十話 先行協議
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ギルド本部の地下。
クライドについていくと特別な遠話室にたどり着いた。
そこにあったのは円卓。
席の前には水晶が置かれていた。
同じ部屋が各国の王都に存在している。
この部屋を用いた会議が〝賢王会議〟。
開催権限は冒険者ギルドのギルド長だけにあり、ギルド長の個人的判断か三か国以上の国王からの要請を受けて開催される。
「帝国皇帝を真っ先に呼んでくれ」
水晶の前には各国王都支部のギルド職員が待機している。
彼らは会議の開催を国王たちに伝える役割を持っている。
だが、今回はまず帝国皇帝が先に呼ばれることになった。
「帝国は当事者だ。状況を説明しておくべきだと思ってな。贔屓に見えるか?」
「黙っていれば各国の王は気づかない。それに手間を取らせてしまった。説明してから来ればよかった」
「問題が問題だからな。真っ先に来てくれたのは助かる」
そんな話をしながら俺たちは皇帝を待った。
まず城にいる皇帝に謁見し、皇帝を帝都支部に案内しなければいけない。
時間はかかる。
だが、王を呼び出すというのはそういうことだ。
そして一つの水晶から煙が浮かび上がり、その煙の中に人の顔が浮かび上がった。
『――待たせたようだな』
「いえ、迅速な対応に感謝いたします。皇帝陛下」
『賢王会議となれば何よりも優先させるのは当然のこと。しかし……ワシだけか?』
父上は参加者が誰もいないことに眉をひそめた。
たぶんすべての予定をキャンセルして、急いできたんだろう。それで誰もいないでは良い気分はしないだろうな。
「実は皇帝陛下だけ、先に来ていただきました。説明はシルバーから」
『帝都で説明すればよいものを。どうせ好きな時に城へ侵入できるのだからな』
「まずはギルドを動かすことが先決だと考えた。非効率的なのは謝罪しよう。しかし、聞く価値はある問題だ。簡単に説明するが、帝国内にあった魔奥公団の拠点はすべて潰した。そして魔奥公団が帝国内で様々な問題にかかわっていた証拠が出てきた」
『ほう……』
「あまり驚かないのだな?」
『これだけ事件が続けば、後ろに何者かがいたほうが自然であろう。魔奥公団ならば納得だ』
「だが、それだけで会議を開催させたりはしない。問題なのは幹部に悪魔がいた点だ。見た目は人と何ら変わらない。人に溶け込んでいた」
『な、に……!?』
父上の表情が変化した。
南部で偶然召喚された悪魔というわけではない。
それが問題だ。
「魔奥公団は人を依り代として悪魔を召喚する術を確立させている。しかも召喚された悪魔は強い。SS級冒険者クラスの実力がなければ確実に勝つことは難しいだろう」
『……悪魔がまたこの大陸を手に入れに来るということか』
「すでにもう動いている。帝国が狙われたのは、五百年前も頑強に抵抗した国だからか、それとも勇者がいるからか。どちらにせよ、奴らは帝国を狙い、王国と帝国は戦争状態に陥っている。今のところはシナリオどおりだろう」
『すべて手の平の上だと……? ワシが娘を処刑したのも、息子が兄を討ったのも……』
「帝国の皇族は優秀だ。数が減ればそれだけ帝国の戦力は低減する。奴らは帝位争いに乗じる形になったわけだが……その帝位争いも自然に起こったものか怪しい」
『……皇太子の死にまで関与していると言うのか?』
「憶測だ。しかし、あの皇太子が戦場で死ぬとは考えにくい。あなたも事故よりは暗殺と考えているのでは?」
『……』
父上は押し黙る。
怒りを押し殺しているようだった。
そんな父上を見て、クライドが話題を変えた。
「今回の会議開催理由はその悪魔です。悪魔を用いる犯罪組織。大陸全体の問題だと判断しました」
『その通りだ……何としても潰さねばならん』
「そこでお願いがあります。王国との戦争を停戦という形で落ち着かせていただきたい」
『……すでに全面攻勢の準備に入っている』
「存じております。そこを何とか」
『……こちらの混乱に乗じて攻めてきた国だ……魔奥公団と繋がっている可能性もある! 何もせずに停戦では誰も納得せん』
「――安心していただきたい」
父上の言葉に対して俺は告げる。
納得しないのは俺も一緒だからだ。
魔奥公団が表に出始めた時、王国も動き始めた。
魔奥公団が逃げ込んだのも王国だ。
繋がりないと思うほうがおかしい。
今すぐにでも関係を暴いてやりたいが、こちらにも立場がある。
だから。
「王国が魔奥公団と繋がっていると発覚した場合……悪魔と協力する国家ということで大陸の敵となる。それは冒険者の討伐対象になるということだ。その場合は共に戦うことを約束しよう。絶対に俺が逃がしはしない」
『シルバー……』
「だが、それはまた後の話だ。皇帝陛下、あなたが一歩引いていただければ会議を進めやすい。どうかご協力いただきたい。大陸のために」
『……大陸のためにと言われれば断ることはできまい。元々、一撃を加えたうえで講和を引き出す予定だった。何もせずにというのは納得できんが……そういう流れになるならば了承しよう』
「感謝いたします」
これで事前の交渉はまとまった。
あとは各国の王を呼ぶだけだ。
王国がどんな反応をするか。それ次第で進め方も変わってくるが……。
『そういえばギルド長。一つ伝えておかねばならないことがある』
「なんでしょうか?」
『連合王国の国王は出席できん』
「どういうことでしょうか?」
『現在、秘密裏に我が国に向かっている最中だ。我が国との今後について話し合うために、な』
それはそれでとんでもない報告だった。
さらに連合王国の立場が悪くなる状況でもある。
『ギルド長から先にそれを報告してほしい』
「なるほど……では代理の者でも構わないと伝えておきましょう。出席しないというのはあまりにもマイナスですから」
連合王国も帝国に攻め込んだ国だ。
ここで出席しなければ疑惑の目が向く。
しかし、すでに動いていたか。
あの男らしいな。
国内が安定した時点で真っ先に帝国との関係改善に動いたか。
「では、他の国王たちを呼びましょう。大陸の危機を話し合うために」
そのクライドの言葉を受けて、各王都にいるギルド職員たちが動き出したのだった。




