第三百八十七話 ドワーフ王
昨日はすみませんでしたm(__)m
かなり体調を回復できました!
ありがとうございます!(`・ω・´)ゞ
「さすがはドワーフだな」
避難民の街をつくる計画は順調だ。
職人として最高級の腕を持つドワーフたちが日夜動いてくれている。
大きな村程度の規模だが、もう人が住める物になっていた。
「わっはっは!! そうだろ? そうだろ? さすがだろ? もっと褒めろ!」
「これはマカール王」
見物に来た俺の後ろから豪快な笑い声が聞こえ、振り向くとそこにはたっぷりとした髭を蓄えたドワーフがいた。
名はマカール。
ドワーフの王だ。
その手には大きなジョッキが握られており、まるで水かのように中身を飲んでいる。
しかし、中身はドワーフ特製の酒だ。普通の人間なら強すぎて飲めたもんじゃない代物だ。
「我らドワーフの技術は大陸一だ! それに目をつけるとはさすがあのお姫様の弟だ!」
「要請に応えていただき感謝しています」
「堅苦しい! 帝国には借りがある! 困ったらお互い様だ!」
豪快に笑いながらマカールは酒を飲む。
作業をしていたドワーフたちも、王の姿を見ると喜々としてジョッキに酒を注いで酒を飲んでいる。
献杯くらいのノリかもしれないが、豪快すぎてちょっと引く。
そしてまだ仕事中なのによく酒が飲めるな。
繊細な作業もあるはずなんだが。
「皇子! 皇子もどうだ!?」
「あいにくドワーフの酒を飲めるほど酒豪ではないので」
「それもそうか! あのお姫様は顔色変えずに付き合ってくれるから忘れていたぞ!」
わっはっはとまだマカールは笑う。
リーゼ姉上は酒豪だ。とにかく酒に強い。
だからといって、ドワーフの酒まで飲めるとは。
外だけじゃなくて中も頑丈か。困った人だ。
「マカール王、お礼の話をしたいのですが?」
「お礼? ああ、そうだったな。あの公爵に誘われるままに来たからな! 俺だけなら美味い酒でいいと言うところだが、これでも王だからな! 向こうで話すとしよう!」
すっかり忘れていたという感じだな。
さすがに豪快過ぎないか?
まぁこういう性格だから帝国に自治領を許されているともいえるか。
もっと狡猾なら帝国から警戒されて、自治領など許されない。
近くにある小屋。ドワーフたちが仮住まいとして建てたものだ。
そこに入ると、マカールはドシッと腰を下ろした。
「面倒な腹の探り合いは好みではない! 俺が求める物は領地だ!」
いきなりマカールはそう言ってきた。
とんでもない要求だが、仕方ない要求でもある。
「ではこちらも正直にお返ししましょう。マカール王の領地を拡大するのは難しいかと」
自治領の拡大はそれだけドワーフの影響力が増すということだし、自治領の周りにいる貴族から領地を取り上げる必要も出てくる。
それは難しい。
だが、理解もできてしまう。
「各地に散っていたドワーフの方々は時間をかけてマカール王の下へ戻ってきているとか?」
「そうだ。さすがに自治領が手狭になってきた。拡大したい」
「その案件は俺ではどうすることもできません。もちろん宰相や父上に話すことはできますが、大した力にはなれないでしょう」
「そうか……うーむ、難しいなぁ」
本当に難しいといった顔をマカール王は浮かべた。
なんとかしてやりたいが、問題が大きすぎる。
「皇子、何か策はないか? 協力したのだ。そちらも協力してくれても罰は当たらんだろ?」
「策ですか?」
「そうだ。エゴール翁の付き人が皇子なら何とかできるかもしれないと言っていてな」
「なるほど」
きっとこの問題は自治領内でも話し合われていたはず。
その時にソニアも意見を求められたんだろう。
ドワーフの問題を考えるハーフエルフというのも面白いな。
しかし難題であることには変わりない。
あまりドワーフに肩入れすると俺が睨まれる。
そこらへんのバランスを考えると。
「ご自分の領地という形には拘りませんか?」
「拘らん。必要なのは生活する場だ」
「では……北部に一部のドワーフを入植させるというのはいかがでしょうか? 北部はいまだ復興途上。ドワーフの仕事はたくさんあります。そしてドワーフの工芸品や技術でお金や人を回すこともできます。北部には大きな益ある入植といえます」
「おお! いい案だ! それで行こう!」
「残念ながら俺は代官です。復興が一区切りすればこの地を去ります。この問題は北部貴族との話し合いが必要となるでしょう。父上はこちらで何とかします。マカール王は北部の代表者と協議をお願いします」
「それもそうだな。こちらも入植させる者を選ばねばならん」
「入植して終わりというわけではありません。人とドワーフ。違う種族ゆえに衝突もあるでしょう。そのたびに頭を悩ますことになります。それでも構いませんか?」
「それも王の役目と引き受けよう! 民のために頭を悩ませられるのも幸せというもの。国を失ったとき、その幸せを一度失ったからな」
少しだけマカールが後悔の混じった表情を浮かべた。
皇国に侵攻を受けたとき、ドワーフたちは全力で抵抗した。
しかし、国は守れなかった。
国の規模が違いすぎた。どれだけドワーフが勇猛でも負けは見えていた。
「降伏しなかったことを悔いていますか?」
「我らはドワーフの誇りにかけて戦った。命が助かったとしても、皇国に奴隷のように扱われるのは我慢ならん。だから戦った。それは後悔していない。俺が後悔しているのは隣国に助けを求めなかったことだ。当時、帝国は王国と戦争中だった。助けてくれるわけがないと決めつけ、何も言わなかった。そして負けた後に帝国に頼った。皇国よりはマシという判断だったが……帝国は体を張って我らを守ってくれた。強硬な態度を崩さなかったため、我らが皇国に悩まされることはその後なかった。皇帝とミツバ殿には感謝しかない」
そういうとマカールは立ち上がる。
そして豪快な笑みを浮かべた。
「この地のため、我らは全力で協力しよう。恩人の子である皇子を信じ、この帝国の地に住む人たちを信じ、我らは励む。その対価というわけではないが……一つお願いを聞いてくれないだろうか?」
「聞ける範囲であれば」
「国を失った者として、国を失う悲しみがよくわかる。そのときにどれほどの犠牲が出るかも、だ。帝国にとって藩国が憎き敵だということはよくわかっている。だが、その民に罪はないはずだ。力の差は歴然。いらぬ犠牲は出さないでほしい」
「それは俺にではなく、リーゼ姉上に言うべきでは?」
「すでに言った。考えておくと返されただけだ」
リーゼ姉上らしいな。
安易な約束はしなかったか。
リーゼ姉上は長兄を一番近くで見てきた人だ。
藩国への恨みは誰よりも深い。
だが。
「その願いは不要です。俺は藩国の民を害する者を見過ごす気はありません。すでに約束があるので。俺は俺のできる範囲で藩国の民を守ると約束しています。とある人物と」
「ほう? そんな約束を受けるとはな。変わっているな?」
「よく言われます」
「だが、好ましい。俺は馬鹿のほうが好きだからな! その約束が守れたなら、アルノルト皇子。貴公は大陸中のドワーフの信を獲得するだろう」
「期待しておきます」
そう返すとマカールはニヤリと笑って、豪快に酒を飲みながらその場を後にしたのだった。




