第三百四十九話 全軍集結
出涸らし皇子の第四巻が八月一日発売に決まりました!(`・ω・´)ゞ
これから少しずつ情報を出していけると思うので、お楽しみに!
数日後。
グナーデの丘に一万二千の騎士たちが集結した。
もっと待てばさらに数は増えるだろうが、これ以上は待てない。
「では出陣ということでよろしいか? 殿下」
ローエンシュタイン公爵が俺の天幕で確認を取りに来た。
俺の存在は会議に参加した貴族と一部の騎士しか知らない。
ここで大々的に発表してもいいんだが、そうなるとレオとの合流を全力で阻止されてしまう。
今はまだ、北部貴族が動き始めたという程度に考えていてほしい。
「ああ。しばらく総大将として振る舞ってくれ、公爵」
「いいだろう。だが、決戦前には姿を現してもらうぞ? 士気にかかわる」
「俺が前に出たら士気が下がりそうだけどな」
「そこをなんとかするのが総大将というものだ」
手厳しい返しをされて、俺は肩を竦める。
そんなことを話していると、天幕にセバスが現れた。
「お話中に失礼いたします。ご報告が」
「なんだ?」
「レオナルト様が打って出たようです」
「レオが?」
前線で動きがあったか。
シャルたちを向かわせたとはいえ、本隊が行くまで大きな動きはないと思っていたが……。
「竜王子と衝突したのか?」
ローエンシュタイン公爵の質問にセバスは首を横に振った。
「いえ、ウィリアム王子は前線を離れていたようです。包囲軍の指揮を取っていたのはヘンリック皇子だとか」
「ヘンリックが? どういう状況だ?」
さすがに意味不明すぎる。
ウィリアムがいるから、レオは身動きが取れなかった。
それなのに抑えであるウィリアムが前線から下がり、代わりにヘンリックが軍の指揮をとるなんて。
打って出てくださいと言っているようなものだぞ。
「敵軍内のことゆえわかりませんが、敵軍の動きを見て、レオナルト様は五千を率いて奇襲。それに合わせてシャルロッテ様たちも攻撃を加えたようです。たまらず敵本陣は撤退し、全軍が敗走となったということです」
「本陣撤退か……ヘンリックらしいといえばヘンリックらしいな」
呟きながら俺は考え込む。
これでレオは自由に動ける。
こちらもわざわざ城に向かう必要がなくなった。
「公爵、敵軍はどう動く?」
「レオナルト皇子を封じ込めておけない以上、軍を一か所に集めて戦略の練り直ししかあるまい」
「ゴードンの性格的にレオとの決戦に持ち込もうとするだろう。ウィリアム王子もそれには反対しないはず」
問題はいつ、どこでやるのか。
レオが攻め込む場合もあるし、ゴードンが攻め込む場合もある。
それを予想して動かないと戦況を有利に運ぶことはできない。
「セバス、敵軍の戦力を探れ。ゴードンにしろ、ウィリアムにしろ、戦力的に劣っている状況をよしとはしないだろう」
「援軍を要請すると?」
「いや、援軍はもう要請しているはずだ。膠着状態を打破するために、な。しかし、状況が変わった。こちらも向こうも色々と戦略の変更をしなくてはいけない」
「しかし、ここからではいざというときに間に合わん。前線に軍を進めるのは必須だ」
公爵の言葉に頷く。
どう動くにせよ、前線に出ないことには話にならない。
「全軍を前線へ。積極的に交戦する素振りは見せるな。ゆっくりと、様子を見ながら進むんだ」
「敵の注意をこちらに向けないようにということか……シャルロッテが参戦している以上、援軍として注意を向けられると思うが?」
「結果的に注意を向けられるなら仕方ないが、積極的に注意は買いたくない。北部のためにも、な」
言わずとも俺が言いたいことを理解したのか、公爵は一つ頷いて天幕を出ていった。
レオの援軍に北部貴族が駆け付けるのと、北部貴族の援軍にレオが駆け付けるのでは印象が違う。
まぁこちらに注意を割くほど、敵に余裕があるとも思えないが。
「ゴードンはこれで苦しくなったな」
「どういう形であれ、負けは負けですからな」
「さて、ここからどうやって士気を保つつもりかな? ヘンリックを斬れば全軍が恐怖に支配される。しかし、何もせずに許せば、撤退したことを容認したことになる」
ゴードンとウィリアムの腕の見せ所だ。
ヘンリックを斬るようなら調略を仕掛け、将軍たちを離反させることもできる。
しかし、ヘンリックを斬らずに士気を高めるなら小細工は通じない。
「お手並み拝見といくか」
そう俺が言うとセバスは一礼してその場を去る。
俺は北部の地図を見ながら、レオならどう動くか考え始めたのだった。
短くてすみませんm(__)m
今日はちょっと体調がよくなかったです